天空の間

<地球の家>づくりのために住民の手によって整備された斜面をのぼると、そこは風景が360度見てとれる広場だ。ここは、まさに天空の村だと合点してしまう、絶景の地である。下界を見下ろすと、枕崎市街、枕崎港、そして東シナ海が望める。枕崎のシンボルである立神岩が、海面に突き出ている偉容がよく見てとれる。かって、集落の住民たちが花見の行事を楽しんだ、あの華やいだひとときを味わう空間としたい。<天空の間>は、ひとりひとりの祝祭空間である。

<もたれ柱>
 ここでは、緑柱が斜めに傾いて、立っている。柱にもたれて、ゆったりした気分で、存分に天空の間の気配を受けとめたい。そんな思いを実現してくれる、通称<もたれ柱>がここには、2本ある。傾く角度が異なるので、眼下の風景に見とれるもよし、天空の気配を独り占めにするもよし、大きな自分と出会う時が流れる。

<天水床と湧水床>
 風の音が心地よい。水の音に気持ちが安らぐ。<天空の間>では、耳を澄ませば、自然の音が更に天空気分を誘ってくれる。もたれ柱の根元に、どんと構える巨大な切り株は、<天空の間>の象徴として、各種の枝を集めて新たに作られたものである。上面が、水を保つように丸く凹んであるので、<水床>と呼び親しむ。上方に位置するのが<湧水床>で、どこから水が湧き出すのか、時折ぶくぶくと湧水音が聞こえてくる。下方にあるのは<天水床>で、上面の凹みに水が入ると、どこからともなく妙なる水音が響いてくる。切り株の中に、日本古来の伝統的な造園技術のひとつである水琴窟が、設置されているのである。<湧水床>の水を汲んで、<天水床>にかけてやれば、水琴が始まる。切り株の穴に耳をつけて、地中で奏でられているシークレット・サウンドを傾聴してほしい。
 この<天空の間>は、地球の家の祝祭空間として、生長していくだろう。自然の音を聴く音会を開いたりして、かっての花見の華やいだ時を新たに創り出したい。

もたれ柱に寄りかかれば、目の前には突き抜けるような天空が広がる。青!

水の音、聴こえますか?

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