2015年度地理B本試験[第1問]問3 解説

問3 [インプレッション] 気候判定問題。問2では降水量だったが、こちらは気温。通常の雨温図ではなく、ちょっと変わったグラフになっているので、読解がカギとなる。
ちなみに問題を解く最大のポイントになるので、先に気温年較差について説明しておきますね。気温年格差は最暖月の平均気温と最寒月の平均気温との差で、東京ではおおよそ20℃程度になる。原則として緯度と密接な関係にあり、低緯度地域では気温年格差が小さく、高緯度地域ではその反対。これは季節による太陽からの受熱量を考えればいい。低緯度地域は季節による昼(日の出から日の入りの時間)の長さに差が小さく、年間を通じて太陽からの受熱量に大きな変化がない。そのため、気温年較差が小さくなるのだ。
一方、高緯度地域は夏には昼の長さが極めて長くなるのに対し、冬は大変短くなる(例えば北極圏や南極圏では、夏は24時間昼、冬は24時間夜なんていう極端なバランスにもなるのだから!)。そのため季節による太陽からの受熱量に大きな差が生じ、気温年較差が大きくなる。
おおよその目安を覚えておくといい。日本の場合、気温年較差は札幌で30℃(最暖月25℃、最寒月−5℃)、東京で20℃(最暖月25℃、最寒月5℃)、那覇で10℃(最暖月25℃、最寒月15℃)である。おっと、最暖月の気温が同じじゃないか!と気付いたキミ、鋭い!高緯度地域は、低緯度地域に比べ太陽高度は低いけれど、昼の時間が長い(つまり太陽に長時間照らされている)ので、意外に気温は上がるのだ。北海道も、寒流(千島海流)の影響を強くうける東部はともかくとして、西部や内陸部は比較的気温も高く、米作もさかんに行われているのだ。

[解法] 気温から判定する場合、まず絶対的な「暑い・寒い」が重要となる。それぞれの平均気温を考えてみると、①が8℃、②が20℃、3も20℃、④が25℃となる。一つだけ決定的に「寒い」地点があり、これから判定してしまおう。とくに①は気温年較差も大きいのだが、原則として「緯度と気温年格差は比例する」のだから、緯度もそれなりに高いことが想像できる。図1中のJ〜Mにおいて、最も高緯度に位置し、寒冷と思われる(そして気温年較差も大きいと思われる)Lが①に該当。
さらにM。JやKよりやや緯度が高く、さらに大陸中央部である。この場所で、気温年較差がJやKより小さくなるとは思えず、①に次いで気温年較差が大きい②がMに該当。緯度が高い分だけ、やや気温もJとKより低くなっているのも納得。
さて、ここから。さらにポイントになるのは「30℃」という数字。普通に考えて、月の平均気温が30℃を超えるなんて有り得ないよ。昼間は30℃を超えるかもしれないけれど、夜は多少は気温が下がるし、しかも1か月の平均で30℃を上回るなんていうのは異常事態だ。日本にしても、どんなに暑いところでも夏の月平均気温は28℃ぐらいで(もちろんこれでもとても暑いけど)、30℃には達しない。それでは、そんな異常事態が生じている④って、どんなところなんだろう。
こういった特殊な状況については、まず「砂漠」を考えて欲しい。温度を保持する水分が極めて少なく、昼間の気温は40℃以上に達することも。もちろん夜はある程度は冷えるものの、昼の気温が高い分だけ平均気温は高くなる。しかし、JもKもいずれも砂漠であるのだ。これは判定材料にならない。
ではもう一つ。「熱風」の存在。低緯度方向から風が吹き込むことによって当然気温は上昇する。JとKでいずれにおいて、高温の風が夏に吹き込むのだろうか。これについてはKが南アジアの地点であることがポイントになると思う。南アジアはモンスーンの影響が強く、とくに冬季には北東からの、夏季には南西からの風が卓越する。この南西からの風によって、Kは夏季に異常な高温に見舞われるのだ。④がKとなる。

[アフターアクション] 意外と一筋縄ではいかない難問だったように思う。今後似たような問題が登場した際は、まず最初に「平均気温」を考え、そして「気温年較差」を確認する。その上で、選択肢を絞ってから、最後はカンになっちゃうのかな(苦笑)。いずれにせよ、難問でした。