2015年度地理B本試験[第1問]問2 解説

問2 [インプレッション] いや、もうホントにケッペンの気候区分じゃないわけさ。実際にこういった問題ばかり出題されている事実をどう思う?気候の問題は「ケッペン気候区分」という「結果」を覚えるのではない。「風系の移動」という「理論」を理解することが大事なんだわ。そんなこと、ボクは15年間ずっと言い続けているんやけどね。でもこれが理解されない。どうしようもない状況だわな。そんな絶望感を携え(?)、それでも自分の意見が正しいことを証明するために、この問題に取り組むのです。

[解法] 降水量が問われる。なるほど、風系の移動の問題だね。気圧帯が移動することによって多雨となる地域、雨が降らない地域が移動する。
Eの1月が問われているわけだが、アフリカ大陸がポイントになるのはもちろんのことなのです。
では、まず基本的なことから。地球の風系を考えよう。太陽からの受熱量が年間を通じて大きい低緯度地域には「赤道低圧帯」が形成され、激しい上昇気流を生じ、多雨となっている。それに対し、中緯度地域には下降気流の帯が形成され、これが「中緯度高圧帯」。雲も発生が抑えられ少雨気候となる(とくに「降水量<蒸発量のバランスとなるので、乾燥地域となる」。春や秋など太陽が赤道直射(太陽から地球をみて、赤道が真正面にみえるということ。赤道直下では正午の太陽高度が90度となる)となる時期には、赤道直下に赤道低圧帯、北緯25度・南緯25度付近に中緯度高圧帯が位置し、それぞれ多雨気候や少雨気候の原因となっている。

さぁ、大切なのはここから。地球は地軸を傾けた状態で太陽の周囲を公転している。つまり、時期によって太陽直射の位置が変化するということ。7月を中心とした時期(北半球が夏、南半球が冬)には太陽直射の位置は北半球側にずれ、太陽からの受熱量は北半球で大きくなる。1月を中心とした時期(北半球が冬、南半球が夏)には同じく南半球側にずれ、受熱量は南半球側で大きい。熱赤道なんていう言葉を聞いたことがある人もいるかもしれないけれど、(同一経度上において)7月の平均気温が最も高い地点を結んだラインは北半球側に、1月の平均気温が最も高い地点を結んだラインは南半球側に、それぞれ描かれる。ようするに、7月は北半球が暑く、1月は南半球が暑い。

このことをふまえて考えてみる。赤道低圧帯は最も太陽からの受熱量が大きい緯度帯に形成されるのだから、7月を中心とした時期には北半球の低緯度地域に赤道低圧帯が移動することになる。そしてもちろんこの緯度帯の降水量が多い。スコールに見舞われるのだ。


選択肢のグラフを参照してみよう。これを時計回りに90度回転させるといいね。どうかな、北緯10度ぐらいで最も降水量が多くなっている。この緯度帯に赤道低圧帯が位置しているということがわかり、Eの7月に該当する。
また北緯35度や南緯20度付近には少雨地域が形成されている。これは、春や秋にはそれぞれ北緯25度、南緯25度に位置していた北半球と南半球の中緯度高圧帯がそれぞれ緯度10度分ぐらいずつ北上し、少雨気候をもたらしている。地球の風系(気圧帯)全体が北上している様子を思い浮かべる。



さらに選択肢のグラフ。これはEの1月。南半球側の受熱量が多い時期である。地球全体の風景(気圧帯)が南下し、赤道低圧帯が南緯10度付近に位置しているため、この緯度帯に多雨気候がみられる(スコール)。また北緯15度付近、南緯30度付近に中緯度高圧帯が南下しているため、この緯度帯を中心とした地域の降水量が少なくなっている。

赤道低圧帯と中緯度高圧帯の季節的な移動による影響がもっともはっきり現れるのがアフリカ大陸であり、本問はそれがテーマとされている。


[アフターアクション] 説明をシンプルにするために、Fについては上では全く言及しませんでした。よかったら以下の解説を参考にしてください。季節風の影響。
F
でポイントになっているのはシベリア。夏季はそれなりの降水量はあるが、冬季には極めて慣例となるため気圧が上昇し(シベリア高気圧)、降水はほとんどみられない。北緯60度付近に注目し、がFの1月となり、消去法でがFの7月。
なるほど、そうしてみると、南半球の中緯度高圧帯の動きがちょうどEと共通していておもしろい。では南緯15度を中心とした緯度帯で降水量が少なく、ではそれが南緯30度付近に移動している。