2014年地理B本試験第6問解説

たつじんオリジナル解説[2014年度地理B本試験]第6問                 

 

第6問 地域調査の問題。愛知県は初登場!なんやかんやセンター試験ってバランスをもって作ってるよね。問題そのものの出来は正直イマイチだと思うんだが、地理の根本にはこういった地域調査があって、それを真っ正面から捉えているという意味において、極めてテーマ的に正統派の問題であるのだ。難しくはないだけど、解答に迷う問題がちょっと多くて、勘弁してくれよって感じは正直、あるんだけどね(苦笑)。

 

 

問1 [インプレッション] 最近よくある正誤組合せ問題。これ、結構やっかいなんだよね。答えにくい。内容的には地形をテーマとしたもの。読み取り自体はヤバくないんだが、本当に解答しにくいのが難。

 

[解法] アについては「正しい」でいいんじゃない?南知多町の辺りなんか色が濃いし、険しい地形になっているのがわかる。最南部は入り組んだリアス式海岸になっていて、斜面が海に迫っているのが想像できる。これは大丈夫でしょ。

で、イについて。これはどうかな。東海市から阿久比町を探してみよう.ポイントは「北東から南西」なんだわ。東海市から阿久比町は、どちらかというと、南東の方向にあるよね。で、色の薄いところがその二つの自治体を結んでいるんだけど、これは「谷」で間違いないでしょう。折り紙の谷折りの部分。そうなると「北西から南東」が谷であって、それは決して「北東から南西」ではない。むしろ東海市から南西方向に走っているのは(常滑市の方向ね)「尾根」(折り紙の山折の部分)なのだ。方向に注目すれば(あるいは尾根と谷の違いに注目すれば)イが誤りであることは明白。

 

[今後の学習] このパターンの問題って難しい。「間違いを一つ探せ」ならわかりやすいんだが、本問のような形式の場合、どちらも間違っているかもしれないし、逆に両方とも正文の可能性もあるし、今回の答えのように、正誤が一つずつの場合もある。慎重に解きましょう。

またイについては、「谷」の反対語として「尾根」を考えたり、方向にこだわって観察したりなど、反対語を意識することが非常に重要だったりする。単に「誤っている」と判定するのではなく、この選択肢を正しいものとするならば、どういった言葉に入れ替えたらいいのか、そういったことまで想像しながら、問題に取り組んでみよう。

 

問2 [インプレッション] 見るだけ問題。確実に!

 

[解法] 余計な先入観を持たず、冷静に統計を読み取ろう。

①;「北部」、「中部」とあるので、「南部」も考える。北部や中部の自治体の方が、南部の自治体より人口が多い。こういった比較の文章を設定して読み込んでみよう。人口の図を参照。正しいね。

② ;今度は人口増加率。人口が減少しているのは、「0未満」である南部の2つの自治体のみ。北部や中部ではどの自治体も少なくとも人口はプラス傾向にある。正しい。

③;老年人口割合に注目。最南部の自治体で25%以上という高い値となっている。正文。

④;セントレアという離れ小島がくっついている自治体が常滑市であるのは問1の図2で確認しておこう。なるほど、人口増加率は高い。4%以上である。で、老年人口割合をみるわけだが、あれっ、本来人口増加割合と老年人口割合は反比例するものだが、常滑市はそうじゃないぞ。「22〜24」の間にあって、「他の自治体と比べて、高齢者の割合は低い」といえるだろうか。そうじゃないよね。なぜか(理由はわからないけれど)意外に高齢化は進んでいる。④が誤り。

 

[今後の学習] じっくり読みましょう。読むだけ問題って意外と選択肢④が答の場合が多くて、つまり最後まで文章は読まないとあかんよってことなんですが、本問はその典型なわけです。

 

 

問3 [インプレッション] 今回唯一の地形図問題。例年2〜3問だから物足りない。しかも、ある市街地において新旧2枚の地形図を比較するという、実にオーソゾックなパターン。一部に砂州やら工場やら登場しているけれど、そういった特殊な地形や地図記号について問われている問題でもないようだ。だったら簡単にできるんじゃない?そんな軽い気持ちで取り組んだら、、、これが思わぬ地獄でした(涙)。本年度の試験の中で最も(唯一というべきか)悩みまくった問題。本番の、もしかしたら時間が足りない、緊張感の中でこの問題にぶち当たったら平常心で解ける自信がないなぁ。厳しいわぁ。

 

[解法] で、解いてみたわけだ。これ、めちゃめちゃ難しくない?全然わからない。思いっきり2つの地形図とにらめっこしてしまったよ。

とりあえず①から検討。

たしかに「知多横断道路」というものがある。これをたどっていくとたしかに沖合のセントレアまで連結しているような。途中に料金所みたいなところがあってここに「りんくうIC」とある。ICとはインターチェンジのことだろう。ここからセントレア大橋を経て、セントレアに達する。直接この道路が空港まで入り込んでいるわけではないが、「連絡」していることは間違いない。正しいと思うよ。消せないなぁ。

続いて選択肢②。「とこなめ」の「め」の字が乗っている突き出した地形が砂州。砂州とは浅瀬に土砂が堆積し、対岸へ向かって伸びている地形。北方から海岸に沿って砂が運ばれ、この地に堆積したのだろう。現在はこの地形は消えてしまっている。全体が埋め立てられてしまって、市街地(市役所などもこの埋立地に移転している)になっている。この選択肢も誤っていないと思うよ。

さらに③。たしかに成岩街道の周辺には溜池が多い。もともと河川が少なく、水が得にくい地域なのだろうか。図中で薄墨で描かれているものが溜池。とくに道路の南側に多かったのだが、それらは現在はなくなり、工場地となっている。間違ってはいなさそう。

で、ラストの④。「愛知用水」がつくられている。用水路って要するに川のことなので、ここでも橋や、斜面(土の崖によって表される)などを手がかりに用水の流れを目で追ってみよう。本来なら河川の流れは青線によって示されるが、本図では印刷の都合上黒線となっているので、判別が厳しいが。そして、周辺の土地利用を確認。うん、「畑」や「田」になっているのだ。用水路が開かれて、耕地として開発が進められた。まさにその通り。これも正文なんじゃない?

 

えっ、ちょっと待ってくれ!?全部の選択肢が正しいじゃないか?それじゃ答にならないぞ。どこが違ってたっていうんだ?全然わからん〜

 

もう一度必死で文章を追ってみる。ひっかかるキーワードを探せ。もしかして、これか?選択肢③の「消滅」だよ。「溜池群が消滅した」って言い方は、全否定だよね。全部の溜池がなくなったってことだ。つまり、逆に一つでも生き残っているものがあれば、この文が誤文となる。探してみよう。そう疑って観察してみると、あるんだよ、これが。「窯業技術センター」の「ン」のところにあるやつとか、「大曽公園」の「園」の字のすぐ右手とか、簡素な堤防(直線と土の崖の記号によって示されている)がつくられ、等高線が湾曲している部分(つまり谷)に水がためられている。薄墨で着色されている(本当の地形図ではブルーだけどね)から判別は可能。なるほど、完全な「消滅」ではなかったのか。非常に苦し紛れではあるけど、選択肢③を誤りとする。っていうか、本当にこれでいいのか?工場を造るために『消滅』させられた溜池があることは事実だぞ。あくまで、全部消えていないからって、この選択肢を誤文とみなすのは、非常に心苦しい見方であるのだが。

 

[今後の学習] で、答をみてみたら、たしかに③が正解でした。いやぁ、これは厳しいわ。とりあえず工場の地図記号は知っておかないと話にならないけど、これぐらいはみんなわかるよね。歯車の記号が工場。でも、本当なそんな知識じゃなくて、執念深い観察眼が非常に大事というわけ。これは厳しいわ。地形図問題としての出来は正直、良くないと思う。でもこういった問題を執念深く解くというメンタルの強さこそ、問われているのだな、と、つくづく思うね。

 

問4 [インプレッション] こういった交通ネタっていうのは地理A特有のもので地理B固有のものではないんだが、地理AB共通問題ならこうやって出題の可能性もあるわけですね。とはいえ、単なる中学地理の問題でもあるし、そもそも特別な知識はまるで必要としない問題でもあるし、センターっぽくないよなっていう印象。

 

[解法] 航空機を使っての輸送は、軽量高付加価値がポイント。コンパクトで値段が高いものしか運べない。大きくて安いものだと採算が取れないからね。注目はZ。半導体等電子部品、電気回路等の機器、電気計測機器などいかにも小さくて(軽くて)値段が高そうなものばかり。これを空港で取り扱われる貨物と考えて支障ないでしょう。Zが「中部国際空港の輸出品」。

さらにXとY。こちらはたしかに重そうなものばかりが並んでいるね。船舶で輸送されるものであることは間違いない。そして日本が原則として加工貿易国であり、資源を輸入して製品を輸出することに特徴があることを理解しておけば解答は容易。資源が含まれているXが「輸入」、自動車が含まれているYが「輸出」。

 

[今後の学習]中学生でもできる問題だよね(笑)。中学校の内容がしっかりマスターできていれば、センターは8割取れるってことだよね。中学地理、しっかりやっておこうぜ!

 

 

問5 [インプレッション] こうした問題が毎回一つぐらいずつ必ず出題されているよね。「当たり前やん」っていう感じでサクッと解いてもらいたいもんだが、結構このパターンを苦手にしている人もいるようで。慣れが必要かもしれないね。

 

[解法] 地形図からはわからんでしょ〜。地形図では確かに「土の崖」の記号によって斜面を表す場合もあるし、「へい」の記号もある。でもそれが土管やかめを利用しているかどうかなんていうのはちょっとわからないよね。①が誤りです。②から④はとくに問題ないでしょう。

 

[今後の学習] できる人には簡単にできるんだろうけれど、この手の問題が苦手な人にとってみれば、チンプンカンプンかもしれないね。でも過去問でこういった思考問題の出題率は低くないので、たくさん過去問を解いて、問題パターンに習熟することはできると思うよ。習うより慣れよ、ってことかもしれないね。

 

 

問6 [インプレッション]今年は36問あったんですね。ここ最近は35問が普通だったんで、ちょっと驚きですが、でもこういった難易度が低い問題が増えたならば、実質的に難易度は下がるということなので大歓迎ではあるのです。

 

[解法]そもそも問題文の中に「焼き物に使える粘土がとれた」って書いてあるんだから、ヒントどころか、答そのものが示されちゃってるよね(笑)。もちろん(カ)の答は「原料地」となります。さらに(キ)について。1事業所当たりの値は計算して求めることになる。1事業所当たりの従業者数は、全体が(5645÷182)、窯業・土石が(1481÷71)で、窯業・土石の方が少ないことがわかる。同様に1事業所当たりの出荷額は、全体が(1541億÷182)、窯業・土石が(320÷71)で、やはり窯業・土石が少ない。規模の小さな工場が多いようだ。「小さい」が該当。

 

[今後の学習] 本問については文章をしっかり読んで計算する(しかも簡単な暗算で十分)だけの問題であり、とくに対策は不要ながら、センター特有のパターンであることは間違いない。

知識問題として捉えた場合も、土石工業が原料立地っていうのは絶対に知っておいてもらいたい.土石工業の代表例はセメント工業なのだが、これは原料である石灰石の得られる地域において成立する。製品のセメントの方が、原料の石灰より運びやすいので(これを「重量減損」という)、先に原料産地で加工してしまってから市場に運ぼうというものなのだ。陶磁器も同様。

また、こうした伝統工場というものは近代的な工場に比べると、どうしても小規模になる。「こうじょう」というより「こうば」という方がふさわしいだろうか。地場産業はこうした小さな工場と職人の手によって支えられているのだ。

それにしてもこうした問題に対面して思うのだけれども、地理の基本ってやっぱりこうした地域調査にあるのだろうね。小学校の自由研究みたいだなって思うかもしれないけれど、本を読んで(今ならネットかな)、町の人に一つ一つ尋ねていって、研究をまとめる。そういった地理の根本的な部分がこの問題でクローズアップされている。問題としての質の高さや難易度うんぬんではなく、本来地理があるべき姿を捉えた、非常に根源的な設問であるとボクは深くうなずかされるのである。非常に良心的な問題だよね。