2016年度地理B本試験[第1問]解説

たつじんオリジナル解説[2016年度地理B本試験第1問]      

 

例年通り、第1問は自然環境に関するもの。そしてこれまた例年通り、問題のバリエーションが多彩で、難しい。とくに今年はハイレベルな知識や深い思考が求められる問題が多く、とりわけ「理系的」である。新テストの「地理総合」が意識されているのならば、さらに理科的な傾向は強まるのではないか。

 

<2016年度地理B本試験第1問問1>

 

[インプレッション]ありがちな問題であり、解答自体は簡単。インドネシアが問われているだけ。ただ、外れ選択肢とはいえハワイが登場しているのには驚く。最近本当によく見かけるネタなんだよなぁ。

 

[解法]「プレート境界」や「火山」を考えるまでもないと思う。インドネシアのジャワ島やスマトラ島では地震が頻発し、(Aの枠内からは外れるものの)スマトラ島沖地震はその被害が大きかったことでインパクトがあった。地震の数が極めて多い①が正解。なお、A〜Dの中でプレート境界となっているには、Aだけである。ジャワ島、スマトラ島の南岸に沿って海溝が走り、これはプレートのせばまる境界である。

他の選択肢について。Bはオーストラリア大陸北東岸であるが、そもそも安定陸塊と古期造山帯からなるこの大陸は地震がほとんど発生しない。④に該当。

Cはハワイ。ほぼ東西の方向に並ぶハワイ諸島は、いずれも火山島である。火山活動に伴う地震が、島々の各所で発生している。③が該当。

Dのカリフォルニア州は、サンアンドレアス断層がみられるなどプレートのずれる境界の上に位置する。断層に沿って、数は少ないが、大きな地震が多い。②に該当。

 

[アフターアクション]海溝と火山についてはほぼテンプレ(定番ってことね)なので何の問題もない、インドネシアのスマトラ島で地震が多いのはイメージ通りだよね。しかし、たった一つ気になるのはハワイ。プレート中央部のホットプレートが原因である火山(火山島)について、授業で取り上げないといけないのかな。プレート中央のホットスポットにおいて火山が噴火し、海底からそびえる巨大な島となった。プレートが少しずつ動くことで、最初にできた火山島は西へと移動するが、さらに続けて同じ場所(ホットスポット)で火山が爆発し、また島が生まれる。このような過程を繰り返すことで、東西に並ぶハワイ諸島が誕生した。西ほど古い島であり、東が新しい。とくに激しい火山活動がみられる地域である。

とはいえ、ハワイ諸島は標高の割に裾野が広い楯状火山(アスピーテ)であり、爆発力は弱い。粘性の小さい溶岩が火口から流れ出ている。噴火しないので、ヘリコプターによって火口の内側を直接覗き込むような観光ツアーも実施されているそうだ。ハワイ島の標高4000メートルを超える巨大火山の山頂には北半球全体をカバーする天体望遠鏡も。火山灰は噴出されないので、空気はきれい。

 

 

<2016年度地理B本試験第1問問2>

 

[ファーストインプレッション]ん、ありがちな問題と思いきや、ちょっと悩むぞ。だがしかし、「確実な言葉」が一つ入っているので、これが急所になる。「何となく」では解けない問題になっているのだな。

 

[解法]2015年は鹿児島の問題が出てきて、火山灰に由来する土壌であるシラスが広がる土地においてはイモ類(サツマイモとみていいでしょう)の栽培が主であるというトピックが問われていた。なるほど、火山灰土壌は水田には適さないものの農業自体ができないというわけではないのだな、ということを学ぶ。そうなると、選択肢③が正文に思えてくるのだ。なるほど、もしかしたら何からの理由によって肥沃な土壌担っているのかもしれない。そういえば、関東平野をおおう関東ロームという赤土も富士山などの火山灰から形成されたものじゃないか。これだって農業には役立っている。関東地方には野菜の生産が盛んな県が多い。そうか③については今まで知らなかったけれど、正しいネタなのだ。

 

と思ってしまうと、そこに落とし穴がある。これに気づくかどうかってことなんだわ。言葉の定義には一つ一つ十分に留意しましょう。ここにある言葉は、「イモ類」でもなく「野菜」でもなく、一般的な「農作物」という表現でもない。そう、「穀物」じゃないか!穀物とは小麦やトウモロコシが該当するが、日本においてはやっぱり「米」だよね。火山灰土壌は水はけが良く(水もちが悪い)、決して水田耕作に適するものではない。シラス台地、関東平野はいずれも農業はさかんではあるものの、米作が中心というわけではない。「穀物」が絶対的なNGワードになり。これが語文(正解)となるのだ。

 

他の選択肢について。①についてはまさにその通りだろう。逆にこういった観光資源としての価値が、地熱発電所の開発を妨げていることもあるのだが。

②はその地熱発電所に関する話題。もっとも、日本は火山が多いわりには地熱発電が少ない国でもあるんだけどね。大分県や岩手県でさかんな程度。

①と②はスムーズに正文と判定できるのに対し、④は悩む。③が絶対に誤りなので、この選択肢の判定は不要ともいえるのだが。後付けで考えるならば、なるほど、富士山はそうなんだわ。火山を形成する溶岩や火山灰は浸透性が良く、地表面に水流が見られない代わりに、地下水が豊富になる。「富士の天然水」みたいによく言うじゃない?火山の周辺には名水の里があったりするのだ。あるいは、この豊富な水を工業用水として富士山周辺では製紙工業が発達している。

 

[アフターアクション]日本地理が重要となる問題だと思うんだわなぁ。鹿児島県から宮崎県に広がるシラス台地の特徴は絶対に知っておくべきであるし、関東平野の関東ロームについても知識を持っておくといい。

さらに言うならば、本問の場合「穀物」が最大のキーワードになっているのだから、こうした何気ない言葉も見逃さず、意味をしっかり捉えないといけない。観察力、注意力が大切なのです。

 

 

<2016年度地理B本試験第1問問3>

 

[ファーストインプレッション]植生の高さ!?なんじゃそりゃ!?そんなんわかるわけないって!果たしてどうやって解けばいいのだ?

 

[解法]植生の高さについて。一般論として、熱帯雨林の樹高は高い。樹齢何十年といった巨大な常緑広葉樹が繁茂し、地面まで太陽光が届かないことが多い。逆にサバンナ(サバナ)は、樹木は点在するものの、草原が主体であり、植生は高くないだろう。地中海沿岸の硬葉樹も樹高が低いことが特徴。乾燥地域のステップは短草草原であって、まさに樹高は低く、さらに砂漠は植生がない状態なので、樹高以前の問題。

これぐらいを予備知識として、図を読解していこう。

なるほど、圧倒的に高い樹高となっているのが④。熱帯雨林が広がるコンゴ盆地である。高木が茂るジャングルなのだ。

さらに①もわかる。これは植生が全くない「砂漠」の状態。Eに該当。ここがサハラ砂漠っていうことはわかるよね。北緯20〜25度付近で中緯度高圧帯(亜熱帯高気圧)の影響によって少雨となっており、高温であるため蒸発量が多く、強い乾燥地域となっている。

さぁ、残った2つが難しいのだ。Hは西がエチオピア高原、東が紅海沿いの低地である。Gは南緯10度一帯で、コンゴ盆地の南側である。選択肢は②と③。どこが違う?植生の高さはほとんど同じ。サバンナ(熱帯草原と疎林)が広がっているのだろう。しかし、よく見てほしい。②の東部については何も描かれていないではないか。これを「砂漠」とみることは可能。さぁ、東部が砂漠となっているのはHとG、どちらだろう?

例えばGについて。沿岸を寒流が北上することから沿岸部に砂漠が見られる可能性はある(海岸冷涼砂漠。ペルーの沿岸部を考えよう)。しかし、内陸部については雨季と乾季の明瞭な気候はみられると思うが、砂漠となっているとは考え難い。上でも述べているようにサバンナの可能性が高い。

ではHはどうだろうか。全体的に降水量は少ないと思われるが、エチオピア付近は高原であり気温が低いため蒸発量も少ない。そのため、乾燥の度合いは弱くなって、植生は十分にみられるはずだ。同じ低緯度の高原であるケニアがサバンナとなっているが、これと同じと想像できる、それに対し、紅海に近い東部は低地の分だけ気温が高く、蒸発量も多い。乾燥の度合いが高くなるので、砂漠となる可能性が高い。標高差があるので、気温差があり、蒸発量に差があるため、植生も異なっているのだ。東西で自然環境に違いがあるとみられるHが、②に該当。残った③がG。

 

[アフターアクション]これ、難しいな。Hについて、エチオピアが高原(アフリカ地溝帯に沿う)であることはパッと思いつくのだが、沿岸部に注目するのを忘れてしまう。解法でも述べたように、まず①と④を削って、②と③にしぼってからあれこれ考える(そして無理矢理こじ付ける?)というアプローチで解けば、何とかなるのだろうか。

 

 

<2016年度地理B本試験第1問問4>

 

[ファーストインプレッション]変わった問題だね。おっと、バイカル湖!と思ったけど、よく見たら違った(笑)。最近少しずつこうした湖に関する問題が登場しているが、一つの新傾向といっていいのかな。

 

[解法]湖の成因と形状との関係を問う問題。結構難儀しそうな予感がするが、取り掛かってみよう。

湖の形状が明らかに他と違うのが2番目のものであって、1番目と3番目はちょっと似ている。これって判定が難しいんじゃないかって思ったんだが、よく問題文を読んだら(当たり前だけど、問題文にはヒントが隠されているね)、それぞれ地図のJ〜Lの位置にみられる湖なんだそうだ。Jはヨーロッパの中央部でアルプス山脈あたりだろうか。Kは北海道。Lはニュージーランドの北島。形状だけでなく、位置も絶対的なポイントになるはず。

では文章を解析していこう。アには「火山噴火」というキーワード以外に「カルデラ」というヒントがある。カルデラは火山の山頂部が爆裂あるいは陥没するなどして巨大な凹地になったもので、例えば阿蘇山が巨大なカルデラでることで知られている(日本地理なので中学までに学習しているね)。そのカルデラに水が溜まって形成されたカルデラ湖は、きれいな円形になることが多く。これはKに該当するだろう。北海道には洞爺湖や屈斜路湖など有名なカルデラ湖があるが、そもそも日本の湖の多くは火山性の湖なのである。ちなみに、Kの湖は、中央部に島がみられるけれど、これはカルデラ内部でさらに新しく火山が爆発して、その山頂部が水面から顔を出している状態。こうしたカルデラ湖も多い。専門用語(?)でいえば、「カルデラ内の中央火口丘が島となっており、その周辺の火口原に水が溜まったもの」ということ。

さらにウの文章をみる。「氷食作用」という言葉がある。例えば氷河期には日本も標高が高い地域に山岳氷河が形成され、モレーンなどの氷河地形も一部にみられるが、さほど一般的なものではない。ニュージーランド北島は北半球と南半球の違いはあるが、日本列島と緯度的には近く、氷河地形が多くみられるとは思えない(なお、南島の南端にはフィヨルドがみられる。この地域だけは大陸氷河に覆われていたのだ)。それに対し、ヨーロッパは最終氷期に広く大陸氷河に覆われており、とくにアルプス山脈にはカールやホルンなど氷河による侵食地形が多くみられることで知られる。どうだろうか。ニュージーランドに氷河由来の湖が絶対に存在しないとは言わないが、可能性としてはJの方に、より氷河湖と判定するべき材料は揃っているのではないか。そうして考えると形状の面からもたしかに氷河っぽいのだ。氷河の侵食作用による地形の代表例はフィヨルドであり、細長い狭長の入江は氷河が深く削り取った後。U字谷という。どうかな。氷河の流れによって(氷河は文字通りの「氷の河」をイメージしよう)、地面が深く削られ、谷状の低地に水が溜まって湖となった、と解釈すればJの形は合点がいく。ウをJと判定する。

残ったイがLとなる。複雑に尾根と谷が入り組む山岳地帯に形成された湖。こうした地域ならば山崩れや地滑りはあるだろう。JとLは写真から判定するのは難しいのだが、なるほど、言われてみれば「谷」という言い方がふさわしいのはJのような気がする。正解は⑤なのです。

 

[アフターアクション]これは難しいわ。とりあえず確実なものとして「カルデラ」および「カルデラ湖」については整理しておこう。火山の山頂部が爆裂もしくは陥没することによって形成された凹地がカルデラ(それぞれ「爆裂カルデラ」、「陥没カルデラ」という)。カルデラの輪郭線となる円弧状の山脈が「外輪山」、その内側が「火口原」、カルデラ内部に新しく生まれた火山が「中央火口丘」。阿蘇山が巨大なカルデラであることは有名だね。カルデラ湖は日本の湖に多く、とくに北海道によく見られるので、地図帳で確認しておくといいだろう。

また氷河湖については、このように細長い谷に水が溜まった形状のもの(まるでフィヨルドのように)もあるけれど、一般には平坦な地形に形成された水深の浅いものが多い。北米五大湖が代表例。フィンランドやスウェーデンにもこうした湖は多く、湖水は水力発電に利用されている。

 

 

<2016年度地理B本試験第1問問5>

 

[ファーストインプレッション]おっと、どうなんだ?ネタとしては意外性はない。似たような問題は模試でも作ってる。しかし、こうやって「見慣れない」図として登場した場合、慌ててしまわないだろうか。じっくり図を解析していけば、問われている内容は(簡単とは言わないが)センター地理では非常に出題率の高いトピックであるし、絶対に解けるはずなのだが。良い問題すぎて、実は難しいという典型的な問題だと思う。

 

[解法]南米の気候がモチーフとされた問題だが、地球全体の風系を考える必要がある。季節による気圧帯の移動を理解しているかどうか。

 

まず降水量から判定していこう。赤道に線を引くこと。4月や10月は、太陽が赤道直射(赤道の正面から太陽光線が当たる)ので、熱帯収束帯(赤道低圧帯)はほぼ赤道直下に形成される。地面が強く暖められることで地表付近の空気が膨張し、上昇気流が生じる。スコールに見舞われ、とくに降水量が多くなる。

さて、7月はどうなるだろうか。地球が地軸をかたむけながら回転していることによって、7月を中心とした時期は太陽光線が北半球側に集中する(北半球が夏、南半球が冬)。熱帯収束帯も北上し、北緯10度ぐらいの緯度帯においてとくに降水量が多くなる。南米大陸の北部で降水量が多いYが7月。

それに対し、1月はどうなるだろうか。同じく地軸の傾きによって、南半球側に太陽エネルギーが片寄る(今度は南半球が夏、北半球が冬)ので、熱帯収束帯の位置は赤道より南下する。南半球側で降水量が多くなっているZが1月となる。

降水量については、スコールをもたらす熱帯収束帯の季節的な移動で簡単に説明できる。ここまでは簡単。

 

さらに風向をみていこう。これも冷静に図を解析していけば決して難しくないのだが、実際のセンター試験でこういった見慣れない図が登場するとテンパったりするんだよなぁ。その辺りのメンタルコントロールが厳しい。

7月と1月の違いがもっとも現れるのは、降水量のところでも取り上げたように、赤道周辺の低緯度地域なのだ。熱帯収束帯つまり低気圧が、7月を中心とした時期は北上し、1月を中心とした時期には南下する。「風は高気圧から低気圧に向かって吹く」というセオリーが理解できていれば大丈夫。まずWから見ていこう。風が吹き込む(つまり矢印の先が集まっている)箇所が南米大陸の北部にある。Yで多雨地域として示されている部分と同じではないか!低気圧の帯である熱帯収束帯がやや北半球側に移動している様子がうかがい知れる。7月である。

一方、Xではブラジルの中央部に向かって風が吹き込んでいる様子が確認できる。南半球側である。Zの多雨地域へと風向が向かっているのがわかるだろうか。熱帯収束帯が南半球側に下がっていることが想像され、こちらが1月となる。

 

降水量の判定は難しくないと思う。そして、それさえわかれば風向については「高気圧→低気圧」の流れを丁寧に観察していけば絶対に解ける。一見、難しそうにみえるのだけれども、気圧帯の移動のシステムにのっとった部^シックな問題でもある。

 

[アフターアクション]実はこの手の問題は、個人的には模試でよく作ったりしている。季節による風向の違いは、南アジアや東南アジアにおける季節風をテーマとした問題でしばしば取り上げられるものの、地球全体の気圧帯の移動に関するものも出題される。例としては、2007年度地理B追試験第2問問1でオーストラリアが取り上げられたものがある。

地球全体の風系を考えた場合、本来なら偏西風や貿易風という言葉を使って説明するべきなのだろうが、この問題については熱帯収束帯(赤道低圧帯)の移動だけで解釈してしまった方が適切。

 

 

<2016年度地理B本試験第1問問6>

 

[ファーストインプレッション]少し前に水資源の問題が出て、エジプトも登場したこともある。もっとも、そちらは人口を計算して中国を求める問題だったので、純粋な水資源の問題というわけでもなかったのだけれども、とりあえず形式だけは本問はその問題の類題といえる。しかし、これ、解いてみて思ったのだけれども、結構難しい。最後はカンで解かないといけない。苦しいぞ。

 

[解法]水資源の問題。以前似たような形式で人口を計算することで解答が求められる問題が出題されたことがある。本問についても、計算できる箇所がないかチェックしてみるのだが、しかし、データが少なすぎてどうやらそういう問題ではないようだ。

ここはエジプトのパブリックイメージ通りに解いてしまっていいと思う。つまり「砂漠」だ。

エジプトは「ナイルの賜物」。乾燥の強い砂漠気候の国であるが、人口は7000万人に達し、乾燥国としては例外的。この莫大な人口を支えるのが、外来河川のナイル川。外来河川というには「湿潤地域に水源を発し、乾燥地域を流れる川」のこと。乾燥地域はそもそも「降水量<蒸発量」であり河川や湖、地下水など存在しないのだから、この地域を流れる河川があるということは、水源となる上流側が湿潤地域であるのは当たり前。とりあえず「乾燥地域の川」としてしっかり覚えておこう。

砂漠のエジプトであるので、国内の水は少ない。国外に賦存(存在)する水の割合は当然高くなる。この時点で選択肢を「97」の①と、「91」の③となる。もう片方の国がわからないのだが、エジプトは砂漠の国であり、水が余っているとは思えない。人口も7000万人と決して少ないわけではなく、「1人当たり」の水の量は少なくなってしまっているとみていいんじゃないか。他に手掛かりがないから、イメージで解くしかない。最後はカンで行こう。1人のエジプト人が自由に使える水は少ないはずだ。正解は①。手掛かりがないから、シンプルに解くしかない。

 

[アフターアクション]結局最後はカンだったわけだよね。ヒントが少ない(統計指標が少ない)から素直にイメージ通りに解くしかないと思う。

なお、他の国についても考えてみよう。③がバングラデシュ。バングラデシュはガンジス川やブラマプトラ川など南アジアを代表する巨大な河川の三角州に位置する国。国外からの水の流入は多い。しかし、バングラデシュ自体の降水量も多いし、米作がさかんなことからもバングラデシュ人の1人当たりの水資源量は大きいとみていい。

さらに②と④がチリと中国だが、いずれも「国外水資源賦存量の割合」が極小。例えばチリを考えてみたらわかるんだが、アルゼンチンとの国境線が山脈となっており、アルゼンチン川から流れる河川は原則として存在しない。国土の北部も乾燥地域となっており(海岸冷涼砂漠)、そもそも河川が存在しないだろう。国外から水資源はほとんどない。同様のことは中国にもいえ、国境線がほとんど山脈であるのだから、外国から流入する河川はない。一部に河川国境(ロシアとの国境アムール川)があるので、外国から入ってくる水がゼロというわけではないだろうが。

②と④の決め手は「1人当たり」でいいだろう。チリは人口1500万人程度の小国(4カ国中で唯一の小国なのだ)であるのに対し、中国は14億人。人口が100倍違うのだから、1人当たりの水資源量も何十倍も違っていて当たり前。②が中国、④がチリ。