2005年度地理B本試験[第2問]解説

2005年地理B本試験[第2問]

 

産業と都市化というあいまいなジャンル設定である。難易度は低く、全問正解を狙いたいところ。ただし唯一問4だけが難問で、これは失点しても仕方ない。

 

問1 

[講評]これは簡単でしょう。見ればわかる。落ち着いて解きましょう。

 

[解法]インドや中国と、西ヨーロッパの光の量を比べればいい。まさかインドや中国の位置を知らない人はいないよね!?

 

[関連問題]特別な知識を必要とせず、その場で図や表を見て考えればそれだけで解ける問題というものは毎回出題されているのだが、本問はその中でも最も簡単な部類に入るだろう。

こういった種類の問題をここでは「その場」問題と名付けてみよう。そんな「その場」問題の出題例をいくつか挙げてみる。数が多いので、00年以降の地理Bにしぼって主なものだけ。何となく似た雰囲気があるような気がしない?

04B追第1問問1参照。「安定陸塊」「亜寒帯」「チベット」「ヒマラヤ」などの言葉は出てくるものの、解答には関係ない。

04B追第4問問3参照。南アメリカや東南アジア、地中海など地域名がわかれば問題なく解ける。

03B本第5問問6参照。人口ピラミッドを読み取る。

01B本第5問問3参照。単なる表の読解。数字に注意。

01B本第5問問6参照。これも単なる人口ピラミッドの読解。

01B追第2問問6参照。旧社会主義国として東ヨーロッパとソ連がわかれば問題ない。

01B追第5問問1参照。日本語が読めたらできるでしょ?

01B追第5問問1参照。上に同じ。間違えようがないぞ(笑)。

00B本第4問問5参照。人口ピラミッドの問題だが、実はこれはちょっと難しい。でも数値を詳しく読み取れば何とかなる。

00B追第1問問3参照。これも問題を読むだけ。

00B追第1問問5参照。おもしろい問題なんだけどね~簡単すぎます。

00B追第4問問4参照。グラフを正しく読解する。

 

[今後の学習] もちろんインドや中国の位置を知らなくては話にならないわけだが、それはさすがに大丈夫だったよね。え、怪しい?そういう人は、白地図なんかを使って主な国の位置だけは確認しておこう。

またちょっと話がズレるかもしれないけれど、選択肢②の、光の量が「少ない」っていう言い方って実は結構微妙なんじゃない?インドだけ、中国だけなら、一目でヨーロッパより光が少ないっていうのがわかるけれど、インドと中国を足し算したらどうかな?ヨーロッパにはかなわないかな?

ちょっと微妙?いや、そうでもないか、やっぱりこの2つを足してもヨーロッパより光の量は少ないな。

っていうか、そもそも問題自体に、この2つの地域の光の量を足すなんてことは一言も書かれていないのだから、そんなことを心配しても仕方ないね。ゴメン、ゴメン、無視してください(笑)。

 

問2

[講評]おっと、フランスの原子力発電ネタとはずいぶんオーソドックスですな。単純な問題。

 

[解法]総発電量(「水力」+「火力」+「原子力」+「その他」)を求め、それと「人口百万人当たり発電量」とを照らし合わせることによって人口は計算できるのだが、そんなことはしなくてもいいかな。

とりあえず「原子力」に依存する割合の高い国がフランスであることには間違いない。「総量」÷「原子力」を考える。イが最も高い。計算式は、4152÷(718+530+4152+2)である。まず、イがフランスとなる。

で、ここからはインドとカナダの判定だが、カナダについては、水力に依存する割合が高いイメージが持てればいいのでないか。ゆえにアが該当。またインドは石炭の産出量も多く(統計で確認)火力発電の割合が高いとみて適当。よってウとなる。

せっかくなんで確かめもしておこうか。この表を見る限り、ア・イ・ウの3カ国はそれぞれ総発電量に大きな差はないようだが(よかったら計算してみてね)、人口当たりの発電量は大きく異なる。つまり、人口規模を想像してみると、ウが最大で、次いでイ、最小がアだと思われる。これは、インド10億人、フランス6千万人、カナダ3千万人という各国の人口規模と合致している。

 

[関連問題]発電に関する問題を挙げてみよう。

98A追第3問問4参照。米国、カナダ、ドイツ、フランスのエネルギー源別発電量の構成比。本問とほぼ類似した問題。

04B追第1問問7参照。日本のエネルギー源別発電量の変化。

04B追第4問問6参照。二酸化炭素排出量。エネルギーや発電を直接示したものではないが、参考にはなるだろう。インドの値は以外に大きい。

04A追第1問問4参照。自然エネルギーを用いた発電。

02B本第1問問5、00B追第2問問2参照。ノルウェーにおいて総発電量に占める水力発電量の割合の高さがポイントとなっている。水力発電の割合がとくに高い(約100%)の国として、ノルウェー、ブラジル。ニュージーランドを押さえておき、比較的高い(50%を超える)国として、カナダ、スウェーデンを知っておく。ともに「降水量が多い」「人口密度が低い」など特徴があるが、ただし前者は「冬でも凍結しない国」、後者は「冬は凍結する国」であり、カナダやスウェーデンでは冬の電力を補うために他のエネルギー源も使用しなくてはいけないのだ。

00B追第3問問3参照。発電ではなく一次エネルギーだが、類似したものであるので参考になる。インドが登場。本問と同様に「総量」と「人口当たりの量」が示され、人口を算出することができる。

97A追第3問問5参照。エネルギー問題。

原子力発電が話題となっている問題について。

04B追第4問問7参照選択肢①参照。スウェーデンの原子力発電事情。スウェーデンだけではなく、ヨーロッパ全体がもう原子力による発電を抑える方向にある。

02A本第2問問6選択肢②参照。とはいえ、新規に原発を建設する計画がないだけで、現在稼動中のものに関してはとくに廃止する動きはないようだ(でも将来的にはどうなるんだろう?)。

02B追第4問問6参照。ウクライナのチェルノブイリ原発の事故に関する問題。

00B本第3問問2参照。都心近くに原発なんて!?

99B本第1問問2参照。原発は燃焼ではなく、核融合(核分裂)による熱を利用。

これ以外にも、「総量」と「1人当たりの量」が示され人口が計算できる問題や、インド・フランス・カナダの人口規模が解答のカギとなる問題など、多数あるので、各自研究を進めてほしい。

 

[今後の学習]上にも挙げたように関連問題が非常に多い。特別な対策は不要だが、過去問から得られる情報だけは整理しておいてもらいたい。

 

問3

[講評]えらいそのまんまな問題やなぁ(笑)。こんなシンプルな問題はちょっとセンター試験ではあまり見られないぞ!?中学の問題みたい。形式的にも内容的にもオーソドックス極まりないですな(だから逆にセンターぽくないっていうわけだ)。

 

[解法]①「北東部」と「南部や西部」との対比が出てくれば、これは米国。北東部はニューイングランドや五大湖など「古いアメリカ」であり、南部や西部はサンベルトや大西洋岸など「新しいアメリカ」。古いアメリカでは20世紀初頭に自動車工業や鉄鋼業がさかえ、世界の工業をリードしたが、現在は衰退傾向。新しいアメリカでは近年(選択肢の文では「70年代以降」となっているので、だいたいそれぐらいの時期をイメージしてほしい)石油化学工業や航空機産業、宇宙産業、そして先端産業など最新鋭の工業が栄え、世界で最もテクノロジーが進んだ地域となっている。

②「臨海部」を中心に工業が発達しているのは日本。原料を海外からの輸入に頼っているので、臨海部に工場が集積した方が有利なのだ。もっとも「電気機械・電子工業」など機械工業は労働集約型の工業でもあり、内陸部にも立地する。さらにそういった機械工業は、まさに労働集約型工業であるがゆえに、安価な労働力を求めて海外へも進出している。賃金の高い(1人当たりGNIの高い)国、日本。

③「地下資源に恵まれない」という点から、石炭・原油・天然ガスなどの資源が豊富な米国とロシアは消える(統計を確認)。さらに「商業」と「貿易」という言葉からオランダが浮かび上がっているのではないか。何といってもオランダは、江戸幕府が鎖国をしていても日本にやってきていたガメツい国であるし(笑)、香料貿易のためにインドネシアを植民地化した国でもある。さらに「近隣諸国に比べ重化学工業化が遅れた」のが日本なわけはないだろう。「可航河川」というのはライン川。ライン川の河口付近は三角州になっていて砂浜の遠浅海岸であるため天然の良港としては利用しにくく、開発が遅れた。そのため、近年になって人工的に砂浜海岸を掘削することによって港湾を建設し、これをユーロポートと名付けた。現在ではヨーロッパ最大の貿易額を誇り、また資源を輸入しやすいという立地条件を生かし、石油化学工業も興っている。

④「市場経済への転換により」という部分から、この国がもともと市場経済ではなかったことがわかる。つまりソ連時代には計画経済であったロシアが該当。

(追加)米国について。南部や西部に工業の中心が移動していく理由について。文でも説明されているように「気候が温暖であること」「土地が広大であり、安価で工業用地が手に入ること」「もともとの経済レベルが北部より低いため、労働賃金も安価であること」などが挙げられる。これ以外にも「石油などの資源に恵まれている」「州によっては企業を誘致するための優遇政策も実施している」などがある。

ロシアについて。このような「国営」から「民営」への流れは絶対的なもの(ただし例外あり・注)。わが国でも国鉄や電電公社に典型的にみられるように、公共性の高い一部に業種については国営企業がつくられていた。しかし、それぞれ前者がJRに、後者がNTTに変わったことからわかるように、次々と民営化されていく。次は郵政公社が民営化されるだろう。

(注)この「国営→民営」のベクトルの例外として、プランテーションと油田がある。ともに、主に宗主国の資本家たちによって植民地に開発されたもの。例えばイランの油田はもともとはイギリスが掘削し、石油メジャーの支配下にあったもの。しかしイラン独立後、油田の国有化を宣言し、現在ではOPECのものとなっている。つまり「イギリスの資本化→イラン政府」へと持ち主が変わったのだ。プランテーションも同様。03B本第2問問3参照。かつて米国の資本家がキューバにサトウキビプランテーションを作った。しかしキューバは革命によって米国とは断絶し、以降はこのプランテーションを国有化し、政府が管理するようになった。ま、そもそもキューバは米国の植民地でも何でもないんやし、こんな風に勝手にプランテーション作ったらムカついて革命も起こすわな(笑)。

 

[関連問題]形式的には01B本第3問問7が近いニュアンス。異なる4つの地域の産業が具体的に述べられ、難易度も低い。

米国の工業について。非常に出題率が高いジャンルなので、本問と直接重なるものだけ挙げてみよう。

02B本第2問問5参照。北東部で鉄鋼業など比較的古い工業、南部や西部では航空機や石油精製など新しい工業。

03A追第2問問1参照。「古い」北東部から「新しい」南部・西部への移動。

99B本第2問問2、問4参照。米国の都市と工業。

97B本第3問問6参照。古い工業地域と新しい工業地域の対比。

日本の工業について。臨海部と内陸部の対比を強調した問題を挙げてみよう。

97B本第3問問7参照。製鉄所の分布。

98B追第1問問4参照。太平洋岸の製鉄所。

99B本第3問問3参照。石油化学コンビナート内に含まれる化学繊維工場は沿岸部中心。

04B本第5問問2参照。内陸部で機械工業が成立する要因。

オランダの工業について。

98追第1問問6参照。オランダに■のマーク。これは「石油などの輸入に便利なため、エネルギー革命後、重化学工業が発達した」が該当するのだが、ライン川河口ユーロポートの石油化学工業を指しているのは明らか。

04B本第1問問5参照。Q・カはライン川だが、この河口部であるオランダでは砂丘が広がっていることが示されている。砂丘ということは砂の堆積地形で、三角州と考えていい。天然の良港ではない。

ロシアの工業について。本問との関連性が薄いものもあるが、とりあえず挙げておく。

03B追第3問問4参照。ロシアの一般的な工業の特色が説明されている。

03B追第1問問7参照。ロシアと周辺諸国との経済交流。

98B追第1問問5参照。計画経済について。

また「国営企業の民営化」についても出題された例があるので注意。

00B追第3問問4選択肢④参照。「新たに多くの国有企業が建設」されることは現代社会ではありえない。

03A追第2問問3選択肢①参照。米国のような資本主義国では国有企業の重要性は低い。

 

[今後の学習]今回、最も正解率が高い問題の一つでもあり、特別な対策が必要とも思えない。まあ、オランダっていう国は今までさほど出題率が高い国でなかっただけに、これが伏線となって来年以降また出題されそうな感じはするんだけどね。とりあえず貿易統計でも見ておいて、この国が何を主に輸出しているかは調べておこう。注目は「プラスティック」です。

 

問4

[講評]易問が続く第3問であるが、唯一この問題だけが引っ掛かる。まさか韓国の財閥ネタが出題されるとは!?

 

[解法]これは知らないとできないのかなぁ。韓国っていうのは「財閥」という大資本家が中心となってグループ化された企業集団による産業活動に特徴があって、みんなが名前だけは知っているかもしれない自動車の「ヒュンダイ」も電気機械の「サムソン」もそれぞれ同名の財閥の主たる企業(漢字では前者は「現代」、後者は「三星」)。日本にも明治時代以来「住友」とぁ「三井」とかいろいろな財閥があったのだけれども、戦後にいずれも解体されてしまい、今だにその名前のみは残っているけれども、韓国経済における財閥の影響力に比べれば、日本のそれは微々たるものである。

で、本問はこうした韓国の特殊性が問われているわけだが、このことを知識として知っておけっていうのはかなり無理があるんじゃないかなぁ。感覚的に解くしかないと思うよ。

一応、それぞれの選択肢の解説を。

①韓国の高度経済成長は「1980年代」とインプットしておくべきだが、問題文やこの選択肢にあるように「1960年代以降」「1970年代」とされていても間違ってはいないのだと、フレキシブル(柔軟)に考えてほしい。要するに、韓国の工業化は60年代にその兆しが見られ、70年代に次第に発展し、80年代になり世界有数の工業国の仲間入りを果たした(1人当たりGNIが10000$/人に達し、NIES(新興経済工業地域)とよばれるようになった)と考える。「鉄鋼」「自動車」「造船」についてはっ各自統計を確認すること。

②ICについては統計にはちょっと載っていないので判断しにくいのだが、世界のコンピュータ産業の中心地である米国の他、近年ではアジア地域の生産量の増加割合が高いことを頭に入れておこう。っていうか、何となくそんな感じがするよね。日本、台湾、中国、シンガポール、そして韓国あたりで半導体産業がさかんになっているっていうイメージは違和感ないよね。

③農村から都市への人口移動は、経済成長期にとくに顕著なものとなる。日本においてもとりわけ60年代の高度経済成長期にこの傾向が大きかった。もちろん正文だが、これが韓国に限った話ではないことも心に留めておく。

④で、上でも述べているようにこれが誤りなんだよな~。やっぱり難しいと思うよ。過去に類題の出題例があって、それが伏線にでもなってれば話は別なんだが。ま、しょうがないか。

 

[関連問題]だから韓国の財閥については過去に取り上げられた例が皆無なのだ!そういった意味で極めて特殊な問題だったといえる。

 

[今後の学習]いや、もうホント、無理な問題だよ。

でも、だからといって「時事問題に強くなるために新聞を読め」とか「教科書は隅から隅まで読め」なんて言ってみてもキリがないわなあ。そもそも新聞でたまたまそういった話題が取り上げられているかどうかなんてわからないし、教科書にも韓国の財閥の話なんて載っているのかなあ(すんません、未確認です)。

だからこういった問題の対策としては、仕方ないから諦めろ!ってことだな。ゴメン、それしかいえないよ。捨て問ですな。

で、ここで最新情報(?)やねんけど、どうやらあの「冬のソナタ」ってこういった韓国の財閥がネタとして出てくるらしいやん。え、マジ!?そんなん知らんねんけど!って世界だぜ。ちゅうことは、あれか、この問題の出題者は「冬ソナ」ファンで、そのネタをセンター試験に使ったっていうことか?おいおい、勘弁してくれよ~。誰がそんなダサいドラマ見るかっちゅうねん(涙)。おっさん、頼むからそんなわけわからん問題やめてくれや~~~。

 

問5

[講評]こちらは問4とは正反対で、センター過去問を研究していればかなりの高率で正解を導けたと思う。選択肢②だけはちょっとわかりにくいが、それ以外については過去に出題例がある。

 

[解法]まず最初に「発展途上国」における状況を問うたものであることは頭にキチンと入れておこう。このような経済レベルの低い国々の大都市において、そのような問題が生じているのか。

①これは違うだろう。発展途上国は、全体としては都市人口割合は低いものの、それでも特定の大都市へと投資、経済力、工業生産、文化、そして人口が集中する傾向が強い。これをプライメートシティという。日本のような先進国ならば、東京、大阪、名古屋のようにいくつもの大都市が形成されるが、例えばタイならば大きな都市は首都のバンコクだけであり、こういったパターンが発展途上国では一般的。そもそも「中小都市」なんていうのがほとんどないのだから!

②これはちょっと迷うのだが、多くの国で「貧富の格差」が問題となっていることを思い浮かべたらいいのではないか。例えば世界で最も貧富の差が激しい国の一つとして、インドや南ア、そしてブラジルなどがある。これらの国においては、貧しい者も多いけれども、一部に圧倒的な大富豪が存在しているのだ。想像してみてほしい。インドのコルカタは世界最大のスラムを持つ都市だが、貧しい者が都市周辺部のスラムに居住するしかないのに、富豪は都心近くの一等地に大邸宅を構える。ブラジルのリオも都市を囲む斜面にファベーラというスラムが張り付き、多くの貧民がそこに暮らす一方で、保養地ともなっている海岸付近には広々とした大邸宅が建てられている。南アのケープタウンも、黒人は狭いスラムに住みつつも、裕福な白人は彼らの存在を無視するかのように優雅に暮らす。発展途上国で食糧危機の問題が発生するのは、その国に十分な金(食糧)がないからではなく、金持ちがそれらを独占し、弱者である貧困層まで行き渡らないからだ。だから我々が募金をしたり、救援物資を送ったり、ODAを供出したとしても、結局はその国のためになってないことも多いんだよな~。何ということだ!

③これはまさにスラムのこと。でも先進国でもスラムは存在するわけで、発展途上国の都市ならではのことではないかも。

④「自動車の普及率が低い」のは確かだろう。しかし発展途上国においてはそれ以上にインフラ(社会基盤)の整備が追いついておらず、交通事情も悪い。例えば、信号機がない状況を想像してみればいい。たちまちのうちに交通混乱となり、渋滞どころの騒ぎではなくなるだろう。それが発展途上国で一般的に生じていること。

以上より、②が正解となる。ちょっとややこしい部分もあるけれど、具体的に考えていけば問題ないかな。正解率も高かったようだ。

 

[関連問題] 96年以前を含めればさらに多くなるが、とりあえず97年以降のみ。

04B追第4問問2参照。スラムの問題。とくに選択肢①の大都市と他の都市との関係は重要。

03B追第4問問3参照。「農村部からの人口流入」が大きな問題となっているのは発展途上国。

02B本第4問問6参照。都市問題。発展途上国の大都市における状況として②と⑤が重要。

99B追第2問問5参照。スラムの問題。

99B追第5問問7参照。スラム地域の面積に比べ、中・高級住宅地は広い。ただしもちろん人口は前者が多く後者が少ないので、1人当たりの住宅面積で言えば、スラムの住人は極小であるのに対し、富裕層は極端に広いということになる。問8の写真も一応参考になるかも。金持ちがいて、そして貧しい者もいる。

98B追第3問問5参照。都市名や国名にはこだわらず、発展途上国で一般的にみられる都市問題であると考える。

99A本第3問問2参照。都市問題。

99A本第3問問3参照。発展途上国における農村から都市への人口移動。

98A本第2問問2参照。発展途上国の大都市における住み分け。やはり富裕な白人が広い土地を独占し、黒人は狭い土地に押し込められる。

 

[今後の学習]いかにもセンター試験といったタイプの問題で、普段からセンター試験を解き慣れている人にとってはとくに難儀をするようなものではなかったと思う。具体的な都市名が問われる問題ではないだけに、原理原則論に従って思考していくことが大事。「センター地理はセオリー重視」ということ。「東南アジアの○○っていう街に行ったことあるけど、渋滞そんなにひどくなかったよ。東京の方がひどいよ」などという「君が実際に体験したこと」なんてことは全く意味がない。あくまでセンター地理的な理論に基づいて思考せよ。だから実際に行ったことがあるなんていう体験談は実は問題を解く時の障害にすらなる。旅行好きの奴なんかにセンター地理は解けないんだよ。過去問をしっかり読み込んで、公式なりセオリーなりをつかんだ者こそセンター地理の支配者となる。

 

問6 

[講評]日本の都道府県のキャラクターと、人口集中地区の意味について問われた問題ともいえるんだが、難易度がかなり低いので、何の知識がなくてもその場で解ける問題と解釈した方が自然か。とにもかくにも失点してはいけないボーナス問題。

 

[解法]おおげさなグラフが示されているけれど、全体を漠然と見てしまっては正解におぼつかない。「過疎地域面積」という指標も難解なものではないけれど、ここは過去のセンターにも登場歴のある「人口集中地区」というキーワードに着目しよう。原則としてこれは人口密度に比例するものであると考える。だから選択肢の3つの府県(愛知県、大阪府、山形県)について人口密度さえ見当が付けられれば十分に解答可能。

人口密度は人口に比例し、面積に反比例する。このことを頭に入れながら考えていく。

最も大阪府の面積が狭いことについては異論はないよね?ちょっとでも日本地図を見たことがあるならばこれは簡単に推測できることだ。一応、第5問問5図3に都道府県ごとに区分された日本地図があるけれど、これを見るまでもないと思う(実は大阪府はグラフによって隠されてしまっているのだが・笑)。さらに大阪府には大阪市という人口規模がたいへん大きな都市があり、大阪府そのものの人口規模もかなり大きいことが推測できる(参考までに人口は東京都が1位、大阪府が2位)。よって3府県の中で大阪府の人口密度が最も高いことが想像され、ゆえに図2中で最も人口集中地区面積の割合の高いクが、大阪に該当する。

次いで人口密度が高いのはどちらだろう。面積的にはさほど差がないと思われる(これも第5問問5図3を参照してもいいだろう。ただしやっぱり愛知県は半分ぐらい隠れてしまっているんだが)。よってここは人口を考えよう。愛知県には日本で3番目に大きな人口を持つ市である名古屋市(1位横浜市、2位大阪市)があり、そもそも中部日本の中心的存在の県でもあるので、人口規模も大きいことが想像される。山形県と比べて人口密度は当然高くなると思われ、ゆえに図2中のキが愛知県となる。

最後に残ったカが山形県。人口集中地区面積の割合は低く、全体の人口密度も低いと思われる。また過疎地域面積の割合も高く、これはまさに東北地方に位置する山形県と考えて間違いなかろう。経済レベルの低い「地方」から、仕事を求めて大都市圏などに人口が流出するため、過疎地域が広くなっているのだ。

問題の解き方はここまでだが、この図2はなかなかおもしろいものなのでもうちょっと観察してみようか。

ク(大阪)の上方に位置する点はどこだろうか。人口集中地区割合は高いのだが、同時に過疎地域割合も低くない。これは大阪と同様に人口密度が極めて高い東京都だろう。しかし東京都は伊豆諸島や小笠原諸島を含み、これらの多くは過疎化しているものと思われるため、比較的過疎地域割合が高くなっているのだ。大阪と同様に過疎地域割合がゼロとなっているのはどこか。これは神奈川県ではないだろうか。東京や大阪に次ぐ人口密度の高さ。

逆に、人口集中地区割合が低く過疎地域割合の高い山形県と同じグループに属するところはたいへん多い。北海道はじめ東北地方や中国・四国地方そして九州地方のほとんどの県はこのグループに含まれるのではないだろうか。97B追第3問問7図3に、日本の過疎地域を図示したものがあるので、こちらを参考にしてみたらどうだろう。全国の半分ぐらいが過疎地域となっている。若年人口が流出し、老人たちが取り残されるようになって、社会生活に不便を来たすところだ。

 

[関連問題]解法の項ではあえて「人口集中地区」に関する説明を省いている。単純に「人口集中地区に関する数値は、人口密度の高低と比例する」という公式として知っておいたらいいこと。

ただしそれではちょっと物足りないかもしれないので、過去問を参考にしながらこの言葉の意味を考えていこう。

参考になる問題は99B追第5問問6。この問題では人口集中地区人口の県人口に対する比率によって埼玉県を判定する(その後に県庁所在都市人口割合で石川県と福島県を判定するのだが、本問には関係ないので省略)。注釈では、人口集中地区について「人口密度が高く、実質的な都市地域とみなせる地域」と説明されているが、これがどうにも漠然としていてわかりにくい。極端に人口が集まっている地域というあいまいなとらえ方しかできない。

ただし、それでも、この値が高い県では県全体の人口密度も高いことが想像できるのではないだろうか。濃度が高い水溶液に、さらに水を加えることを想像してほしい。具体的に言うならばカルピスの原液だね(笑)。例えば、埼玉県というコップの中には、78%のカルピス原液と22%の水が入っているということ。これは濃いなぁ~。それに対し、福島県というコップには37%のカルピス原液と63%の水が入っているということ。これは薄いね(っていうか、これぐらいがちょうど飲みやすい?いや、実際にはこれでもまだ濃いか・笑)。

ま、こんな風にイメージを含ませれば、本問についても、「濃いカルピス」大阪府、「普通のカルピス」愛知県、「薄いカルピス」山形県と考えることができる。もちろんカルピスでなくても、インクでも墨汁でも何でもいい。濃い水溶液をさらに水で薄めることを想像する。

さらに3つの都道府県について。

大阪府が登場したものは、02B本第5問問6、03B追第2問問2など。02年の方では大阪市の「都心」的キャラクターが重要となっている。03年の方は図形的な問題であり、とくに大阪である必要性はない。

愛知県は工業、とくに自動車工業のさかんな県としてしばしば登場。登場回数は多いのでここでは省略。

山形県は01B本第5問で大きく取り上げられている。ただしいかにも「取り残された過疎の村」的な扱いをされてしまっているような気がして、どうなんだろうね~。ま、東北地方ってそもそもがそんなキャラなのかもしれないしね(涙)。

 

[今後の学習]幸い今回は大阪府や愛知県といったメジャーな都道府県が出題対象だったので助かったと思う。ただし関連問題でも挙げた99年の問題のように石川県や埼玉県といったマイナーな県(ごめん・涙)が出題された場合にどう対応するか。例えば、都道府県ごとにはっきりとしたキャラクターがある場合にはそれをしっかりと知っておかなくてはいけない。

とりあえずいくつか例を挙げておこう。

(面積の小さな都道府県)香川県・大阪府・東京都・沖縄県・神奈川県・埼玉県

(面積の大きな都道府県)北海道・岩手県・福島県・長野県

(人口の多い都道府県)東京都・大阪府・神奈川県・愛知県

(人口の少ない都道府県)鳥取県・島根県・高知県

(内陸県)群馬県・栃木県・埼玉県・山梨県・長野県・岐阜県・滋賀県・奈良県

(人口最大都市が県庁所在地ではない)福島県・三重県・山口県

(地方中枢都市が含まれる都道府県)北海道・宮城県・東京都・愛知県・石川県・大阪府・広島県・福岡県

。。。以上、おしまい。と言いたいところなんだけれども、ここまで読んでいて君は気付いていたかな?僕がとんでもない「ゴマカシ」をしていることに。いや、「ゴマカシ」っていうのは大げさかな。そもそも大勢に影響はないことなので、かえってややこしくなるだけだから、思い切って説明をカットしていた部分やねんけれども。ま、ヒマな人はここから先も読んでください。

本問注目。「人口集中地区面積の割合」とある。さらに99B追第5問6にも注目。こちらは「人口集中地区人口」なのだ。つまり前者は「面積」に関するデータであり、人口密度がとくに高い地域がその府県全体の何%を占めているかということを表しているのに対し、後者は「人口」に関するデータで、その人口集中地区にどれくらいの人口が住んでいて、それがその県全体の人口の何%を占めているのかという数値。だから実際にはこの2つは違うんだよね。いやぁ、なかなか複雑ですな。何気なく読んでいたら素通りしてしまうところや(涙)。

でも、どうかな?このことを無理に意識する必要なんてあるんだろうか。この2つを混同していたとしても(実際に君はそうだったと思う)問題を解くことには全く関係ないではないか。ちゅうわけで、ここはとにかく「人口集中地区という言葉が出てきたら、人口密度を結びつけて考えろ」というセオリーを優先して問題に当たっていこう!細かいこと気にしてもしゃあないしね(笑)。

 

問7

[講評]これ、すごく迷った。原則としてその場で考える「その場」問題には違いないわけだけれども、選択肢があいまいなんじゃない?これはちょっと間違えても仕方ないんじゃないかな。でも実際には正解率は高かったようで、それは僕の余計な心配!?

 

[解法]東京大都市圏における人口増減に関する問題。例えば、人口は大都市圏で増加し、非大都市圏で減少する傾向がある。ただし、大都市圏においても都心近くでは人口は減少し、郊外に向かえば向かうほど増加率は高くなるというように、地域による差はある。同様なことは非大都市圏においてもいえ、地方部は概して人口は減少しているが、地方中枢都市のみ人口が集まりやすい。

ただし、本問については以上のような人口増加に関するセオリーは関係なく、図を見て、選択肢の文を読んで、その場で考える問題となっている(つまり誰でもできるってことですわ・笑)。

①ドーナツ化現象というのは都心部で人口が減ってしまうこと。地価が高いことなどがその原因。1960~70年の図を見ると、東京の都心部で人口が減少しており、これはまさにドーナツ化現象といえよう。

②1970~80年の図参照。「30キロ」という数字が気になるので、下のスケールを利用して計ってみよう。たしかに千葉県などでは都心(★)から30キロぐらいともいえそうだが、神奈川県においてはどうだろうか。より内陸部の50キロぐらいの市町村においてこそ人口増加率が50%を超え、極めて高い数値となっているのではないか。どうにもこの選択肢は怪しい。保留。

③これははっきりしてるでしょう?1980~90年には「50%以上増加」はかなり少なくなっている。

④「外縁部」とあるが、例えば埼玉県の最も西端の部分などが典型的でわかりやすそうだ。60年代から一貫して「減少」となっている。同様の地域は千葉県の東部や南部にも見られる。

以上より、①③④が明らかに正文なので、あいまいで判定が難しいところだが、ここは思い切って②を誤文(つまり正解)としよう。

 

[関連問題]形式はともかくとして、ネタ的には05B本第4問問7と全く一緒だね(笑)。同じ人が作ったのかな。これ以外にも日本国内の人口の社会増加の問題は多数あるので、ここでは省略。

ただしそういったジャンル的なことよりも、この問題で気になるのは選択肢のあいまいさ。ここまであいまいなものって結構珍しいと思うよ。それに、文章正誤問題でありながら、数字がポイントになったというパターンも珍しい。この方面から関連問題を探してみると。。。

00B追第4問問2選択肢③参照。「8キロ」っていうのが、道路が曲がりくねっていることもあってわかりにくいんだよね~

00B本第4問問4選択肢③参照。「約半数」ってあるんだけれども、これって半数どころじゃなく4分の3ぐらい流出してしまっているのだ。でもやっぱりわかりにくい。そこまで細かい数値を問われているってことにまず気がつかないよね。

まあ、いずれにせよ、文章正誤問題ってどうしても言葉の方に気が取られて、数字があっても目に入らなかったりしてしまうんだが、こんな風に意外と数字そのものに誤りがあるっていうパターンも決して少なくはないので注意してほしい。

 

[今後の学習]本問を解く際にはあまり関係なかったけれども、日本の人口の社会増加に関する法則を紹介しておくので、頭に入れておいてほしい。

最初に言葉の定義から。人口増加は自然増加(出生と死亡の差)と社会増加(転入と転出の差)の和によって表されるが、日本の場合は出生率も死亡率も低いので、主に国内の地域ごとの人口増加は社会増加を中心に考えるべきである。ここで「都道府県の人口増加=社会増加」と定義し、さらにここから後は単に「人口増加」という言葉を使ってしまうが実際には主に社会増加の意味であることを心に留めておくこと。

では具体的に話を進めよう。日本の地域は「都心」「郊外」「地方中枢都市」「地方」の4つのキャラクターに分類できる。このうち、「都心」と「郊外」を合わせて「大都市圏」、「地方中枢都市」と「地方」を合わせて「非大都市圏」という。

知っておくべきセオリー。「郊外」は非常に人口増加率が高い。これを「++」の記号で表すとする。「地方中枢都市」も比較的人口増加率は高い。「+」とする。「都心」はさほどでもない。むしろ減少していることすらある。「-」である。「地方」は人口の流出地域である。「--」としよう。

 

「都心(-)」と「郊外(++)」を合わせて「大都市圏」なので、これは「+」となる。また「地方中枢都市」と「地方」を合わせて「非大都市圏」であり、これは「-」となる。大都市圏とは中心部の都市への通勤可能な地域のことで、非大都市圏は通勤圏外。東京や大阪など特定の都市に企業や雇用が集まるので、そこに通勤できる範囲では人口が増加するが、それを外れると減少する。非大都市圏から大都市圏へと、人々は仕事を求め住居を移す。

このことを頭にいれながら、図3を参照しよう。1970~80年が一番わかりやすいだろう。都心部付近では人口が減少していく。「都心=-」の公式に当てはまっている。地価が高いことなどが原因である。これに対し、都心から50kmぐらい離れた地域の人口増加率が高い。「郊外=++」である。都心部には住めない(住みたくない)、しかし職場が都心部にありこれに毎日通勤することを考えると、都心部から極端に離れた場所には住めない。こういったことが原因となり、半径50kmの円周付近の人口増加率がとりわけ高くなるのだ。この付近なら地価も安い。そして交通の便も沿う悪くないので都心に通勤はできる(もちろんかなり時間はかかるだろうが)。

しかし一方、それを越えると人口は減少に転ずる。埼玉県や神奈川県の西部、千葉県の南部など。これは「都心への通勤圏=大都市圏」を外れてしまった「非大都市圏」なのだ。遠隔地であるばかりではなく、鉄道が整備されていなかったり、地形的な制約などもあるのだろう。とにかくこれらの地域は都心部への通勤が不可能であるため、ここに住む人は通勤可能な範囲へと転居しないといけない。よって人口減少地域となるのだ。

以上、簡単ではあるが、ポイントだけまとめてみた。このことに関する問題は非常に多いので、過去問を解きながら、大都市圏と非大都市圏の違い、都心部と郊外の差異などについて考えてみてほしい。