演目紹介

 壬生六斎念仏踊りの演目をご紹介します。
 演目には、元々の六斎念仏由来の“念仏”と芸能的曲があり、さらに芸能的曲は“太鼓もの”と“芸もの”に分類されます。

 念仏は、総演目演じる際の冒頭と末尾にのみ行います。使用する楽器や所要時間の短さなどから推して、芸能六斎なりの念仏曲に編曲されてはいるようですが、“六斎念仏”踊りたる由縁を彷彿とさせる貴重なものです。

 芸能的曲は、そのほとんどが地歌や長唄等より取り入れられた二次創作物です。それらは本来三味線や唄で演奏されるのが常ですが、六斎踊りではこれを太鼓・鉦・笛の三種の楽器のみで表現するところに特色があります。とりわけ太鼓は数種類ある中から使い分け、その掛け合いを聴かせる趣向となっております。

 また芸能的曲の分類として、演奏と踊りのどちらに比重があるかによって、“太鼓もの”と“芸もの”に整理することもあります。主として、衣装替えのあるものは“芸もの”です。

〈用語解説〉
  • “上打(かみうち)”“側打(かわうち)”

 太鼓方の役割として、先導して打つ役を“上打”、それ以外を“側打(「か」とも)”と呼びます。上打は1~2名で、主として演奏担当です。残りの者は皆側打で、上手下手に分かれて並び、太鼓を振って踊り、また上打に合いの手を入れます。

  • “オモテ”と“ウラ”

 上打が2人の曲や太鼓方が4人のみで行う曲では、先に打つ者を“オモテ”、後に打つ者を“ウラ”と呼びます。両者は掛け合いで、交互に太鼓を打ちます。太鼓方は、自分がオモテかウラか最初から決めて練習します。

  • “ドラ” “カタ”など

 いずれも太鼓の名称です。ドラは皮の面に黒い三つ巴の模様が入っている太めの太鼓で、低い音がします。カタは面が白く胴の細い太鼓で、高い音がします。カタは芸能六斎になってから取り入れられた楽器です。

  • “オモテ”と“オク”

 曲の中には前段と後段に分かれているものがあり、原則として前段を“オモテ”、後段を“オク”と呼びます。

カタ側打ち
“カタ”の“側打ち”の様子
〈演目一覧〉
曲名概要種類
寄せ太鼓(よせだいこ)開始を知らせる合図。また曲間のつなぎ。----
発願(ほつがん)六斎念仏本来の念仏。一山打ちの冒頭で行う。念仏
鉄輪(かなわ)特別に解釈が伝わる代表曲。地歌より取材。太鼓もの
四季(しき)上打1名と側打の掛け合い曲。義太夫節より取材。太鼓もの
海士(あま)上打2名と側打の掛け合い曲。地歌より取材。太鼓もの
四ツ太鼓(よつだいこ)唯一の据え打ち太鼓曲。入門して最初に習う。太鼓もの
祇園ばやし(ぎおんばやし)祇園会傘鉾由来と伝える。棒振りの芸が入る。芸もの
願人坊主(がんにんぼうず)坊主に扮した4名が踊る。常磐津節より取材。芸もの
手毬唄(てまりうた)豆太鼓4名が踊る。長唄「京鹿子娘道成寺」より取材。芸もの
越後獅子(えちごじし)上打2名と側打4名の長編曲。長唄より取材。太鼓もの
太鼓獅子(たいこじし)「獅子舞」に付随する曲。太鼓もの
獅子舞(ししまい)獅子が碁盤乗りなどの芸を見せる。終盤は蜘蛛との決闘。芸もの
結願(けちがん)一山打ちの最後や棚経で行う。念仏
種蒔三番叟(たねまきさんばそう)未詳曲。清元節より取材か。----
玉川(たまがわ)未詳曲。他の六斎講に同名曲が残る。----

 上記総演目一通り演じることを「一山打ち(いっさんうち)」といいます。地元である壬生寺での奉納は必ず一山打ちです。全体の所要時間は昔より短くなったとされ、現在は1時間半ほどです。日頃は持ち時間に応じて、「祇園ばやし」と「獅子舞」のみ、などと抜粋して演じることが多いのですが、依頼によっては一山打ちを行います。

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