2018年度地理B追試験[第3問]解説

<第3問 都市と村落>

【13】 【インプレッション】 村落の立地に関する問題って意外に良問が少ないので、こうした形で出題してもらえるのは助かる。練習になるし、研究材料にもなる。あまり見慣れない言葉もあるけれど、(カタカナ言葉じゃなく)日本語だから解釈は難しくないよね。

【解法】 村落の立地の問題。とっつくにくいかも知れないが、言葉自体は難しくないと思う。とくに「輪中」に関しては中学校でも登場するし、「林地村」は過去問で最近になって何回か登場している。

まずアについて。「集落と高知の周囲に堤防をめぐらせた」集落は「輪中」集落。長良川の河口付近の濃尾平野南部にみられ、河川の氾濫や台風による高潮の被害の大きいところ。家屋の周囲を堤防を囲み、洪水対策とする。

さらにイについて。「林地村」はドイツ東部における開拓村。中世以降に、森林を切り開き、道路をもうけ、それに沿って家屋が並ぶ(路村形態)。道路からみて家屋の背後に短冊状の長方形の地割り(耕地)がみられることに特徴がある。「外敵の侵入や病気・暑さを避けるため」ではなく、もう片方の「丘上集落」が正解となる。丘上集落は南ヨーロッパに多くみられる。ローマ時代に建設されたもので、丘の上につくられ、外敵の侵入に備えた。また冬は雨が多いところであり、病気も蔓延した。これを防ぐためにも丘の上の衛生環境のよいところに集落をつくるのは有効だった。

【アフターアクション】 上では触れなかったので、環濠集落についてもちょっとだけコメント。環濠集落は日本の古代の集落で、防御用に村の周囲を濠(ほり)で囲んでいる。奈良盆地の条里集落(古代の計画的な村落)にしばしばこの形がみられる。

集落は重要度が高いにも関わらず、過去の出題例が少なく勉強しにくい。最低限知っておくべきことを以下にまとめておいたので参考にしてほしい。

(1)まずは日本の計画的な集落を知っておこう。

中央政府(朝廷や幕府、明治政府)によって号令がかけられ、計画的につくられた集落(村落)が日本には何種類かある。いずれも周辺に正方形もしくは長方形の地割り(耕地)がみられ、計画的に入植が進められた。

古代・・・条里集落。奈良時代につくられた。東北地方より南の日本全体にみられるが、とくに奈良盆地に多い。戦乱に明け暮れた時代であり、防御機能を高めるため、家屋は密集し、塊村形態となる。「条」や「里」の地名。

近世・・・新田集落。江戸時代に人口が増え、さらに年貢として米を収めるため、食糧増産の必要性が増した。干拓地や扇状地、台地の上など。開拓道路を伴うことが多く、集落は道路に沿った路村が多くみられる。開発の時期が新しい砺波平野(富山県)では散村形態。

近代・・・屯田兵村。明治政府によって北海道へと屯田兵が送られ、開発が行われた。アメリカ合衆国中西部のタウンシップ制を参考にし、各農家に正方形の土地が与えられた。住居と耕地の中に分散し、散村形態となる。

(2)さらに世界各地の集落について。

タウンシップ制・・・アメリカ合衆国中西部の開拓方式。政府により土地が用意され、入植者が募られた。各農家に0.5マイル(800m)四方の土地(64ヘクタール)が与えられ、散村形態となる。なお、アメリカ合衆国の農業は現在はこうした家族農場は少なくなり、企業による大規模化が進んでいる。

林地村・・・ドイツ東部の開拓村。中世以降に森林を開いてつくられた。開拓道路に家屋が並ぶ路村形態である点が、新田集落と似ている。

なお、本問では「輪中集落」の知識が問われたが、これは中学までに学習している内容だよね。集落は発展的な学習内容と思われるけれど、中学地理での知識も重要となるのは他のジャンルと変わらない。

【14】 【インプレッション】 変な問題。こういった、単純に知識を問うだけの問題って実は難しい。

【解法】 「都市名と関連する項目」とある。シアトル、ジュネーブ、パリ、ロンドンとある。シアトルは地理では非常に重要となる都市で必ず知っておかないといけない。パリとロンドンは有名だから知っているね。ん、ジュネーブってどこだ?これ、知らない人も結構いるんじゃないかな。でも、それは有利なことなのだ。センター地理では。みんなが知らないような「特殊なネタ」は出題されない。ジュネーブなんか知らないぞ!?ってキミは、最初から選択肢②を除いて考えればいい(つまり、誤文判定問題なので、②は無条件に正文。解答ではない)。そういうとこ、開き直ってしまえばいいと思うよ。

メジャーな3つの都市について考えればいい。ここで気になるのはシアトル。シアトルはアメリカ合衆奥北西端の都市。緯度は高いものの(北緯50°。北海道より北)だが、沿岸流れる暖流の影響で冬でも温暖で、氷結しない。気候区分としては地中海性気候だが、一般的な地中海性気候が年降水量が少なめであるのに対し(だからこそ、耐乾性のブドウやオリーブが栽培されているのだ)、シアトルはやはり暖流の影響によって湿った空気がもたらされ、年降水量は多い。周辺は豊かな森林地帯となり、林業が発達した。多雨であるため水力発電がさかんでアルミニウム精錬がなされるため、アルミニウムを素材とした航空機工業も立地した。

シアトルの産業としては、「林業」と「航空機」が挙げられる。ここで述べられている「穀物市場」については該当せず、これが正解となる。アメリカ合衆国で(というか世界において)穀物市場がキーワードとなる都市はシカゴ。中西部最大の都市で、五大湖に面する。五大湖周辺の酪農地帯、五大湖の南側のコーンベルトの境界であり、また国土中央部の小麦地帯にも近く、さまざまな農産物の集散地となった。世界的な穀物マーケットが置かれ、農産物の価格決定に大きな影響力を有している。

③と④についてはとくに問題ないだろう。パリは、イタリアのミラノと並ぶ世界のファッション産業の中心地である。ロンドンは都市圏人口1000万人に達する世界都市であり、ニューヨークや東京、ホンコン、シンガポールなどと並ぶ金融業の拠点である。ロンドン市内のシティと呼ばれる地区は金融街として有名。

残った②のジュネーブだが、せっかくの機会なのでぜひ知っておこう。センター試験初登場の街であるが、名前はよく知られているんじゃないかな。スイス西部の都市で、フランスとの国境湖沼であるジュネーブ湖(レマン湖)に接する。かつては国際連盟の本部が置かれた都市で(なお、国際連合の本部はニューヨーク)、現在は WHOやIMFの本部などが位置している。

なお、スイスはヨーロッパで唯一の「人口最大都市と首都が一致しない」国であり、ジュネーブを始め、金融業の発達するチューリヒ、ライン川に面する工業都市のバーゼルなど首都以外に人口が大きい都市がある。首都ベルンは人口数十万人程度の小都市。カントンという州に分けられ、それぞれの独自性の強い連邦国家である。

【アフターアクション】 初めての形式の問題なので、解きにくかった。「シアトル→林業・アルミニウム・航空機」、「穀物市場→シカゴ」と決めつけて考えないといけない。たしかに穀物市場がポイントになる都市はシカゴであるが、だからといってシアトルに穀物市場がないと絶対に言えるのだろうか。教科書では触れられていないものの、資料集でアメリカ合衆国の農業地域を調べたらわかるのだが、実はシアトルが含まれるワシントン州の内陸部のコロンビア盆地は、国内を代表する冬小麦地帯の一つなのである。コロンビア川からの灌漑によって小麦の栽培が行われており、ワシントン州の小麦生産も全米トップ5に入る。シカゴほど大規模なものでなくとも、シアトルに穀物市場が存在する可能性はあるのだ。かなりあいまいな問題だとは思う。

また、この問題で特筆すべき点は、ジュネーブが初登場したこと。良かったら地図で位置を確認しておいて欲しい。スイス東部のフランス語圏に含まれる都市(スイスはドイツ語、フランス語、イタリア語、レートロマン語の4つの公用語がある国であることを忘れずに!)。ヨーロッパの都市は河川流域ごとにまとめるのが適切なので、このジュネーブについてもローヌ川沿いにあることを知っておこう。ローヌ川はスイスに水源を発し、スイス・フランス国境のジュネーブ湖(ジュネーブが面する)を通過し、深い谷を形成しながら繊維工業(レース編みで有名)のリヨンを経由し、フォス湾から地中海に注ぐ。フォスは臨海型の製鉄条が置かれる都市。

③と④については問題ないかな。パリもロンドンも都市圏人口1000万人に達する世界都市。ファッション産業といえば、パリとミラノ(イタリア)。金融センターとくれば、ロンドンとニューヨーク、東京が有名だが、経済レベルが高いことから金融業がキーワードになる都市として、ホンコンやシンガポール、チューリヒ(スイス)、そして欧州中央銀行が位置するフランクフルト(ドイツ)。

【15】 【インプレッション】 非常におもしろい図。リオデジャネイロは海岸に接する街で、ビーチに接する高級住宅街もみられるが、周辺の丘陵にへばりつくスラムも広がっているという、典型的な発展途上国の大都市である。その様子が本図からは明確に伺える。

しかし、問題なのは、色分けがはっきりせず判別が困難な箇所がいくつかあるということだ。薄いグレーで塗られた「低級」と、全く着色されていない空白の部分の区別がつきにくい。これでは解答に困ってしまうのだが。。。

【解法】 図から内容を判別する思考問題となっている。図はリオデジャネイロの市街図。発展途上国の大都市においては、中心部のCBDに接して高級住宅地が位置し、都市の周辺部にスラム(低級住宅地)が拡大していく。その様子が本図からも確認できるだろう。発展途上国は資本力に乏しく、都市の広い範囲を近代化することができない。中心部の限られた地域のみが、道路が舗装化され、電気はガスが通じ、下水道がつくられている。そうした場所にCBDが形成され、それに接して富裕層が居住している。商業施設も自ずと集まるだろう。中枢管理機能と高級住宅地が狭い場所に集まることは、治安や防犯の観点からも好ましいものである。

リオデジャネイロは港湾を備えた貿易都市、さらにはビーチを有する観光都市として発展した歴史がある。沿岸部はインフラ(都市施設)の整備が進み、高級住宅地となっている。しかしそこから離れるにつれて中級住宅地、低級住宅地と続き、山地の裾(すそ)には多くの不良住宅地区がみられる。家賃を払う能力もない失業者が、不法占拠して勝手に住み着いているのだろう。治安や衛生環境はもちろん劣悪である。

このことをふまえて文章を読んでいこう。

1行目。たしかにリオはそういった地形を特徴とした街である。商工業が発達し、「経済発展」も遂げている。ブラジル全体の1人当たりGNIは10000ドルに達し、発展途上国ではあるものの、新興工業国の一つといえる。仕事を求め「農村から大量の人口が流入」しており、経済力によって棲み分けがなされていることは図からも伺える。

①の選択肢について。薄いグレーで着色された「低級住宅地」であるが、なるほど格子模様の「工業地区」を取り囲むように配置されている。彼らの働き場所なのかもしれない。さらに「商業地区」はどうか。これは点々で表されているね。ん、どうなんやろ?低級住宅地区と接しているだろうか?ちょっとそうは見えないが。商業地区とはいっても、比較的高級な商品を扱っている店舗が多いのかも知れないし、その場合は低級住宅地区に住むような人たちがそこで職を得られるとは思えない。「就業機会」となるかは大いに疑問なのだ。これを誤りとみよう。

他の選択肢も検討。②についても、①と同様に図から直接読み取ったらいい。たしかに低級住宅地区と高級住宅地区は直接隣り合っていないようだ(もっとも、色がとにかく読み取りにくいのだが)。

③と④は図とは関係ないが、いずれも正しい内容を説明している。不良住宅地区は本来居住に適さないような場所を不法占拠して広がることがあり、リオの場合は、山地斜面である。リオのスラムはファベーラと呼ばれるが、解答のポイントとはなっておらず、知識は不要。

【アフターアクション】 ①と②は図から読み取る内容で、③と④は知識(とはいえ、難しいものではないが)に基づくもの。変則的な印象を受ける。

発展途上国の大都市における所得階層別の棲み分けについては、2013年度地理B本試験第3問問4でメキシコシティの事例が取り上げられているので、こちらを参照して欲しい。発展途上国においては、都心にCBDと高級住宅地区、そこから外側に向けて、中級住宅地区、低級住宅地区が並び、最も外側を不良住宅地区が取り囲む形が一般的。ただし、リオについては海岸に面する丘陵地であるという地形の複雑さもあり、メキシコシティほど明確な分かれ方はしていない。それでも、面積の限られたスラムに莫大な数の人々が住んでいるという点においては、他の発展途上国の大都市と共通する都市問題を抱えている。

【16】 【インプレッション】 似たような問題が地理Aで数年前に登場したことがあるが、満を持して地理Bに昇格って感じかな。交通ネタって地理Bではあまり出題されないが、これぐらいならさほど難しくないんじゃない?

【解法】 港湾の規模と、都市そのものの規模。東アジア・東南アジアは世界のコンテナ貨物輸送の中心地で巨大名港湾施設を有する都市が多い。ホンコン、シャンハイ、シェンチェン(中国)、プサン、シンガポールが代表的なところ。日本は国全体ではそれなりのコンテナ取扱量があるものの、重要港湾が分散しており、世界的な貨物港は存在しない。こういうとこが日本の弱さなのかなとも思う。国が政策として重要港湾の建設をリードしていかないと、世界の貨物流通の潮流から取り残されてしまう。

2010年の段階でコンテナ貨物取扱量が多い①と④がシャンハイとシンガポール。さらに注目すべきは成長の度合い。1990年からの20年間で①は5倍ほどの伸びを示しているが、④は極端な増加率の高さ! シンガポールの高度経済成長の時期は1960年代で日本と変わらず、シンガポール港の取扱量も1990年の段階でそれなりの規模だったはず。それに対し、1980年に改革開放政策に転換した中国は「若い」国である。日本からの企業が多く進出し、高い経済成長率を示すようになるのは、1990年代後半からである。1990年の段階の値が低いのは当然だろう。①がシンガポールで、④がシャンハイ。

②と③については判定は不要だが、参考までに。都市別の総生産が大きい②が東京、少ない③がシドニー。ただ、これは別に東京が凄いとかシドニーがダメっていう話ではなく、単に人口規模から比べたらこれぐらいでしょってこと。人口を比べたら東京が1000万人規模であるのに対し、シドニーは500万人に満たない。シンガポールも人口は500万人程度であるので。この指標が人口規模に比例していることがよくわかる。一方で、シャンハイは1000万都市であるが、総生産は大きくない。これは1人当たりGNIの差じゃないかな。一人一人が持っている「お金」が少ないので、経済活動のスケールも小さくなるってことだと思うよ。

【アフターアクション】 東京はニューヨーク、ロンドン、パリと並ぶ世界都市であり、アジアの金融の中心。しかし、それがそのまま港湾の規模の大きさには結びつかず、世界の船舶交通の主役や中国や韓国、シンガポールの後塵を拝している。コンテナ貨物取扱量の多い港湾として、ホンコン、シャンハイ、シェンチェン、プサン、シンガポールを知っておくといい。ヨーロッパではユーロポート(ロッテルダム)、北アメリカではロサンゼルスの規模が大きいが、東アジア・東南アジアの港湾に比べると、コンテナ貨物取扱量は全く及ばない。

【17】 【インプレッション】 何だ、これ?変な問題。日本地理というほどのものでもないんじゃないかな。

【解法】 これ、次の【18】の問題が参考になっちゃうんじゃない?東京を始めとする関東地方は人口の伸びが著しいのに対し、東北地方は減少傾向にある。指数が表されているだけで実際の人口はわからないけれど、とくに問題ないでしょう。カが関東、キが近畿、クが東北で、正解は①。

【アフターアクション】 変わった問題っていうかサービス問題なのかな。せっかくなので、グラフの細かい読解もしておきましょう。

スタートは1950年。1950年代後半から70年代前半までが高度経済成長なのだが、日本全体の人口が増加しているはずのこの時代であっても、東北地方の人口は停滞しているのですね。若者が大都市圏へと流出した。

その労働力の受け入れ先である関東や近畿は高い人口増加率をみせている。ただ興味深いのは1980年以降で、関東地方は継続して人口が増加傾向にあるのに対し、近畿地方は伸びがストップしている。この時期は日本全体の人口もほとんど変わらず、完全に停滞期に入ったということ。

現在、伸びを見せているのは関東地方のみ。っていうか東京の都心部だけ。今後、人口減少社会となる日本だが、東京だけが生き残り、他の地域が無残にも衰退しているだけの未来が垣間見える。

【18】 【インプレッション】 なんだかちょっとややこしそうな。図と文章を対応させて考えていかないといけない。

ちなみに、出生率と合計特殊出生率はいずれも出題率の高い話題ではあるけれど、

【解法】 合計特殊出生率と人口の自然増加率が示されている。合計特殊出生率というのは、女性が一生涯にもうける子どもの数の平均。男性は子どもを産むことはできないので、1人の女性が子どもを2人産めば、将来的に現在の人口数が維持されるっていう計算になるね。少ない割合ではあるけれど、子どものうちに死んでしまう人もいるだろうから、2.0をちょっとだけ上回る2.1という数字をその目安と考えるといいだろう。

で、選択肢③について検討してみる。非大都市圏に限らず、日本全体の値は低い。一応、「1.6以上」という県はいくつかみられるものの、それにしても2.1を上回っているとは限らない。それに、仮にこれらの地域の値が

全て2.1以上だったとしても、この限られた数の県を指して「非大都市圏の多くの地域」とはとても言えない。これが誤りで、正解だね。

他に関してはとくに検討の必要はないでしょう。

【アフターアクション】 「2.1」という数値が重要な問題だったね。

合計特殊出生率について、教科書より該当箇所を抜粋しておきます。

1人の女性が一生の間に生むとされる子どもの数を、合計特殊出生率という。静止人口となる合計特殊出生率を人口置換水準といい、先進国では一般的におよそ2.1とされるが、多くの先進国の合計特殊出生率はこれを下回り、人口減少が心配されている。

このように人口置換水準である「2.1」という数字は特別な意味を持っているんですね。とはいえ、本問についてはその数字を知らなくても十分に解答できたと思うよ。1人の女性が「1.6」人未満しか子どもを生まなければ、将来的に人口は間違いなく減少するからね。

高校レベルでは合計特殊出生率についてはこれぐらいの知識で何の問題もない。過去問でも、「合計特殊出生率と出生率は比例する」という考え方で解く問題もあったし。でも本当は似て非なる指標なんですよ。簡単に説明しておくので興味ある人は以下も読んでください。大学に入ったらもっと専門的に勉強してね。

合計特殊出生率は、20歳から49歳までの女性が子どもをもうけた割合を合計したもの。例えば、20歳から49歳までそれぞれ1000人ずつの地域があって、どの年齢でも1人ずつの子どもが生まれた。20歳は1000人に1人で「0.1%」、49歳も1000人に1人でやはり「0.1%」。これが30歳分にわたっているのだから、0.1を30年分足して「3.0」が合計特殊出生率。

この地域で、20歳だけ10000人いて、他の年代が1000人ずつ。同じように各年齢で子どもが1人ずつ生まれる。20歳は10000人で

1人なので「0.01」。よって合計特殊出生率は「2.91」。

逆に20歳だけ100人で、他が全て1000人。同じように各年齢で1人ずつ子どもが生まれたら、20歳の新生児率が「1.0」なので、こちらは合計特殊出生率が「3.9」になる。

つまり、同じ数だけ子どもが生まれたとしても、女性の年齢ごとの人口の多少によって数字が異なるということ。女性人口が少ない年齢で子どもが生まれる傾向が強ければ、合計特殊出生率は高くなるし、逆に女性人口が多い年齢で子どもが生まれても、その数値は合計特殊出生率には反映しにくい。

非大都市圏で合計特殊出生率が高いからくりはここにある。非大都市圏では若い世代が少なく、もちろん出産年齢である20代の女性も少ない。彼女らが早く結婚して家庭に入り、そこで子どもをもうけたら、合計特殊出生率へと数値は大きく反映される。

反対に、大都市圏では出産年代の20〜30代の女性が多く、彼女らが出産しても合計特殊出生率には大きくカウントされない。とくに晩婚化が進み、30歳以降の出産が増えるわけだが、そもそも日本における30代の人口は20代より多い(少子化の影響だね)。たとえば、東京では自然増加率が極めて高く、つまり出生率が高いわけだけれど、合計特殊出生率は極めて低い。人口の多い年齢層の女性が主に子どもをもうけているということ。

以上、これが簡単な合計特殊出生率の説明。で、ここまで読んでくれて気づいたと思うんだけど、「合計特殊出生率と人口置換水準ってそもそも関係あるの?」っていう話し。うん、実は両者には直接の関係はない。ただ、結果として合計特殊出生率が2.1だと、将来的にも人口が変化しないみたいだよっていう、あくまで結果論なんだよね。だから僕はあまり合計特殊出生率というデータを信用していないし、「地方は子育てにはいいところだよ。だからみんな子どもを生むんだ」みたいな、悪意のあるキャンペーンの道具に使われているだけのような気がするんだな。だって、実際のところ、非大都市圏の出生率は低いわけだし。

もっとも、僕は専門家じゃないから言ってることは全くの的外れ7日も知れない(笑)。ホント、君たちは大学に入ってもっと専門的に研究してみてくださいね。