2018年度地理B追試験[第1問]解説

<第1問;世界の自然環境と自然災害>

【1】 【インプレッション】 大地形に関する問題。第1問問1はだいたいこのパターンだね。しかし、ちょっと待て! アはギアナ高地のことなんじゃないか?これがセンターで出題されたケースは過去にないぞ! 嫌なところを出してくるな。かなり厄介な印象。

【解法】 大地形が問われている。一つ難しいトピックが取り上げられているが、それは無視してもいいだろう。3つ組合せ問題なので、2つがわかれば、一つは消去法でいける。問われる内容は難しいが、解答そのものは簡単だと思う。

もっともわかりやすいのはウかな。「地溝帯」って書いてあるもんね。君たちが確実に知っておくべき地溝帯は、東アフリカを縦断する「アフリカ大地溝帯」。プレートの広がる境界であり、安定陸塊であるアフリカ大陸が、今まさに東西に裂けようとしている。将来的にはアフリカプレートが、コンゴプレートとソマリアプレートに分裂するのではないか(あ、名称は仮名です。何となく雰囲気出るかなと思って・笑)。

そして地溝帯に沿って断層が形成され、そこに水が溜まってできた細長い湖がいくつも見られる。タンガニーカ湖やマラウイ湖など。形が特徴的なので地図で確認しておこう。

また、この地域には火山もいくつかみられ、キリマンジャロ山は有名。ほぼ赤道直下の成層火山で、標高は6000mにも達するため、山麓は熱帯、山頂は氷雪の世界と、多様な気候環境がみられる。ウがBであることは自明だろう。

さらにイもわかりやすい。「大陸氷河」とあるが、現在大陸氷河が分布するのはグリーンランド内陸部と南極大陸のみ。しかし、つい数万年前(地球の歴史からみたら、ごく最近だ)の最終氷期には北半球と南半球の高緯度地域は厚い大陸氷河に覆われており、ヨーロッパの北半部も氷の下だった。氷河に押しつぶされ、土砂が削られ、そして堆積し、多くの湖が形成されている。そんな光景が「森と湖の国」フィンランドには広がっている。Aがイとなり、正解は④。

知っておく必要はないが、消去法でアがCとなる。ここには安定陸塊に含まれる地形であるが、比較的険しいギアナ高地が存在している。地盤がおそろしく硬いので、巨大な滝が存在しているのだ。ほら、水流ってそもそも地盤を削るものだから、滝があるところってどんどん土地が削れていって、段差のない地形(つまり滝のない地形)になってしまうんだわ。堅牢たる岩盤からなるギアナ高地では地盤が水流に負けず、極めて古い時代の滝が残されている。よかったら「アンヘル(エンジェル)の滝」を検索してみてください。僕は高所恐怖症なので、こういった風景をみるとビビって仕方ないんだが(苦笑)、好きな人は画像からイメージを膨らませてください。

【アフターアクション】 さすがにアンヘルの滝が登場したのには驚いた。僕はこういうの全然ダメなんだけど(涙)、みなさんはいつか実際に訪れてみてくださいね。

ただ、落差は大きいもの横幅は小さいので、あまり有名ではないと思います。世界三大瀑布(滝のこと)といえば、北米五大湖でカナダとアメリカ合衆国の国境に近い「ナイアガラ」、ブラジルとパラグアイの国境である「イグアス」、アフリカ南部のザンベジ川の「ヴィクトリア」ですね。こちらもよかったら検索してみてください。

【2】 【インプレッション】ケッペンの気候区分は原則として出題されないものの、地中海性気候だけは知っておこう。夏に雨が降らないって異常なことだよ。夏は気温が高いから上昇気流が生じやすく、飽和水蒸気量が多いから大気も水分を多く含み、多雨となるのが当たり前。それなのに、逆に夏だからこそ少雨になるなんて!?

地中海性気候は「大陸西岸・緯度35°付近」に必ず出現する。緯度35°は、夏に低緯度側から亜熱帯高圧帯(中緯度高圧帯)が移動してくる緯度帯で、この時期に下降気流が卓越する。ただし、東岸(日本など)は季節風の影響で海洋から湿った風が吹き込み降水が多い。「大陸西岸」限定なのだ。

【解法】気候グラフ問題。ハイサーグラフの判読は大丈夫かな。数字が「月」を表しているだから、気温が高い月がいつなのかを判定するだけで、北半球なのか南半球なのかはわかるね。北半球のカとクが7月の気温が高い②と③のいずれかになり、南半球のキとケが1月の気温が高い①と④のいずれかになる。

選択肢を2つに絞ってから、さらに考察を進める。本来なら、緯度差から気温差を導くのだが、残念なことに(?)キとケはほぼ同緯度。さらに両者とも沿岸部であり、気温年較差の小さい海洋性気候がみられるはず。いずれかが内陸部ならば、気温年較差の大きい大陸性気候となったはずだが、このパターンでの判別も難しい。

というわけで、ここからは降水量。キが大陸東岸に位置するのに対し、ケは大陸西岸。「大陸西岸・緯度35°付近」に必ず地中海性気候が出現することを思い出そう。緯度的にはもうちょっと高く南緯40°付近と思うのだが(オーストラリア大陸とタスマニア島の間のバス海峡、ニュージーランド北島と南島の間のクック海峡がいずれも南緯40°である。また南アメリカ大陸東岸のラプラタ川河口のエスチュアリーが南緯35°であるが、ケはそれよりやや南に位置する)、広くみれば「緯度35°付近」ではあるので、降水の季節的な変化に地中海性気候的な特徴が現れるとみていいだろう。

グラフより、気温の高い時期(つまり夏)にほとんど降水がみられず、気温の低い時期(つまり冬)に50〜100mm程度の雨が降る①がケとなる。一方のキは④である。こちらは東岸なので、日本と同様に夏に多雨、冬に少雨となる気候がみられる。

②と③は判定の必要はないが参考までに。冬の気温に注目しよう。0℃を下回り極めて寒冷になる②がクに該当。大陸東岸の高緯度地域のパターン。

カの西ヨーロッパは、暖流や偏西風の影響によって冬でも比較的温暖(高緯度なので、夏は冷涼だが)。気温が0℃より高い③がカである。

【アフターアクション】地中海性気候だけは必ずチェックしておこう。

・西アジアの地中海沿岸(イスラエルやトルコなど)とイスタンブール。

・南ヨーロッパの地中海沿岸とポルトガル。

・アフリカ北西端の地中海沿岸とモロッコ(北東端のエジプトは砂漠気候なので注意)。

・アメリカ合衆国太平洋岸とヴァンクーヴァー。

・アフリカ南西端ケープタウン。

・チリ中央部(サンティアゴ)。

・オーストラリア南西部(パース)とアデレード。

いずれも「緯度35°付近、大陸西岸」であることに注目しよう。オーストラリアのアデレードは東岸に近いけれど、多雨気候と少雨気候をわけるグレートディヴァイディング山脈の西側であることは確かで「西岸」と考えるべきなのだ。

例えば、アフリカ南部の地中海性気候についてあやふやに「南アフリカ」と覚えておくと( )がそれに該当すると勘違いしやすい。( )は大陸東岸であり、地中海性気候地域には該当しない。大陸東岸の中緯度(緯度35°付近)は、日本が典型的であるように、季節風や暖流の影響によって水分の供給を受け、夏の降水量は十分に多い。地中海性気候が生じるシステム(夏は亜熱帯高圧帯の影響によって少雨)をしっかり理解し、その上で大陸東岸にはそういった気候がみられないことを認識しないといけない。

地中海性気候は大切だけれども、単に丸覚えでは危ないよというメッセージを含んだ良問に思います。

なお、参考までに外れ選択肢については、カ(アイルランド)が③、キ(南アフリカ共和国の南東部)が④、ク(カムチャッカ半島)が②。カについては緯度は高いが、暖流や偏西風の影響によって年間を通じて気温と降水料の差が小さい穏やかな気候がみられる。「高緯度・大陸西岸」の典型的な気候パターン。キは「中緯度・大陸東岸」ということで、日本に似た温暖で季節による降水量の差が大きい(夏に多雨、冬に少雨)気候となる。クは「高緯度・大陸東岸」であり、とくに冬は寒冷となる。

【3】【インプレッション】大陸棚が問われている。水深200mまでの浅海。東シナ海が典型で、好漁場となるほか、海底資源の開発が行われるところもある。

【解法】これは見ただけでわかるんちゃうかな。どうみても30%もないでしょ?①が誤り。

大陸棚は陸地の縁辺部にみられる極めて水深の浅い海底。水深200m未満が目安となる。繰り返される氷河期の中で、海水面が低下していた時期に河川の堆積作用などで平坦な土地がつくられた。氷河期が終わり海面が上昇すると、そうした平坦な土地が海面下となり、大陸棚となった。

【アフターアクション】大陸棚のみられる位置は出題率が高いので本問の図で確認しておこう(地図帳をみるとかえってややこしいと思う)。

今まで出題されたところを挙げておく。

・日本と朝鮮半島の間・・・東シナ海。大陸棚が陸化していた最終氷期には大陸から日本へと人々が移動した。

・タイとインドネシアの間・・・とくにマレー半島とスマトラ島の間のマラッカ海峡は水深が浅く、タンカーの座礁事故も発生。

・オーストラリア北部・・・アラフラ海という海域。

・アラビア半島とイランの間・・・アラビア半島の西側の紅海が断層によって形成された海域で比較的深いのに対し、西側のペルシャ湾は浅い。海底油田の開発も進む。

・イギリスと北ヨーロッパの間・・・北海。水深の浅さを利用してトロール漁法(巨大な船で網を引き、海底の魚を獲る)が行われる。とくに水深の浅い部分をバンクという。1970年代より海底油田の開発も。

・ユーラシア大陸と北アメリカ大陸の間・・・ベーリング海峡。最終氷期には陸化しており、両大陸はつながっていた。モンゴロイドの大移動がみられ、エスキモー(イヌイット)、アメリカインディアン。インディオとなった。

・アルゼンチン沖合・・・ラプラタ川の河口から南にかけて大陸棚が広がる。

参考までに。バルト海やハドソン湾の水深も浅いが、これらは大陸氷河の重さで押しつぶされたもの。北ヨーロッパやカナダは最終氷期に分厚い氷河に覆われていた。

【4】 【インプレッション】正文判定問題。3つの誤りを指摘しないといけないので、ちょっと苦しい。2つは簡単に誤りとわかるのだが、一つがわかりにくい。

【解法】Eはシベリア地域を北流する河川。

①について。シベリアは広く針葉樹林に覆われている。誤り。

④について。南から北に向かって流れる。シベリアは平坦な土地であり、標高差が少ないため、単に南ほど温暖(とはいえ十分に寒いけどね)、北ほど寒冷。春季に融解が始まるのは上流側である。下流側は凍りついたままなので、南から流れてきた河川水が行き場所を無くし、周囲に氾濫する。

さぁ、ここからが難しい。②と③で悩むわけだ。②は絶対に正しいと思う。永久凍土とは地下の氷の層。冬は全面が凍結するシベリアの大地だが、夏は気温が高く、地面の浅い部分は融解する。しかし、熱が届かない地下には氷の層が残り、これを永久凍土という。永久凍土が邪魔をして、水分が地下深くに浸透せず、シベリアの春は地面が泥だらけになる。「湿地」だらけになると考えて妥当だろう。

そうなると、③を誤りとして消さざるを得ない。これ、どうなんだろう?

「涵養」っていうのは育てるってことだよね。例えば、樹木を植えておく。樹木は日陰をつくり、その部分は蒸発量が少ない。雨が降った場合、多くの水が蒸発するかもしれないが、樹木のそばの日陰では水の蒸発が抑えられ、地下へと浸透していく。これが長い間繰り返されることによって。地下水が「涵養」されるのだ。このように、地下水を涵養するための最も一般的な方法が植林であることをぜひ知っておこう。逆に樹木がなくなってしまえば、降った雨はすぐにかわいてしまって。地下水は養われない。砂漠化地域ではこうしたことが生じているのだ。

そう考えると「永久凍土から涵養される」っていうのはどういうことだ? そもそも永久凍土は常に凍っているから永久凍土というわけで、そこから地下水が湧き出してくることは考えにくい。シベリアは湿潤地域である。「降水量>蒸発量」のバランスとなっている。日本と同様に、シベリアの河川も普通に雨水を集めて流れているだけなんじゃないか。地下水によって流れる川っていうのがどうにもイメージできない。よくわからない選択肢だなぁ。

以上より、すっきりしない部分もあるけれど、②が正解となる。

【アフターアクション】 「永久凍土」についてしっかり認識しておこう。【1】で登場している「大陸氷河」とは全く異なるものなので、ちゃんと区別するように。

・大陸氷河・・・大陸の表面を覆い尽くす巨大な氷の塊。現在はグリーンランド内陸部と南極大陸にのみ見られる。数万年前の最終氷期には、ヨーロッパ北半部や北アメリカ大陸の五大湖以北、南アメリカ大陸南端、ニュージーランド南端にも(こういった地域には氷河湖やフィヨルド、モレーンなどの氷河地形がみられる)。ただし、ウラル山脈以東のユーラシア大陸(シベリアや中国)には大陸氷河はみられなかったので注意。

・永久凍土・・・年間を通じて融けることのない地下の氷の層。冬季に極端に寒冷となるシベリアやカナダ北部などにみられる。1月の平均気温がマイナス20℃まで低下し。夏は気温がある程度上昇しても、地下の氷は融けない。ヨーロッパのように暖流や偏西風の影響で冬の気温が比較的高い地域には存在しない。

両者の近いをしっかり認識すること。例えば、以下のように。

・北ヨーロッパ・・・大陸氷河には覆われていたが、永久凍土はみられない。

・シベリア・・・大陸氷河には覆われていなかったが、永久凍土が存在する。

最後に、それぞれの選択肢について再度整理しておこう。

①について。シベリアやカナダの広い範囲は永久凍土に覆われているが、むしろ森林資源は豊富である。林業やパルプ工業が発達。とはいえ、北極海沿岸のツンドラ地帯には樹木はみられないが。

②について。アイスクリームで言えば、冷凍庫から出してきてしばらくして、表面だけが融けてしまうということ。内側は凍りついたまま。地表面は泥濘(でいねい)の状態となる。ロシアの春の風景。

③について。シベリアは年間の降水量は決して多くない地域(とくに冬は気圧が高くなるため、降水量はない。つまり雪が降らないということ)。しかし、寒冷であるため蒸発量は少なく、「降水量>蒸発量」の関係から「湿潤」となる。河川への水の主要な供給源は降水および雪氷の融水である。

④について。シベリアの河川の多くは北に向かって流れている。春先は上流部から融解し、まだ凍結している下流側へと水が押し寄せるため、広い範囲が洪水の被害に見舞われる。

【5】 【インプレッション】砂漠化の成因を問うという極めてオーソドックスな良問。こうした問題がスムーズに解けたらかなりいいと思うよ。

なお、一応砂漠化についてキチンと定義しておこう。砂漠とは、地形用語ではなくあくまで植生用語であることを意識。つまり、「砂だからの土地」という意味ではなく(それならば砂浜や砂丘って言ったりするよね)、乾燥の度合いが高く「地表面を覆う植生がない」状態のこと。熱帯にはジャングルやサバンナが、地中海沿岸には硬葉樹が、西日本には照葉樹が、冷帯にはタイガが、そして乾燥地域には砂漠が、といった感じ。

さらに、乾燥とは「降水量<蒸発量」となる状態のこと。反対が湿潤でこちらは「降水量>蒸発量」。乾燥により植物が生育せず、そして湖が干上がる。砂漠化とは、それまで地表面にあった樹木が草原が失われ、裸地化すること。土壌は植物の根によって支えられていたのだが、それもなくなってしまうので、風や雨(砂漠も多少は雨が降るのです)によって土壌が削られ、失われてしまう。「土壌侵食」や「土壌流出」も砂漠化と紐付けられるキーワード。

【解法】砂漠化に関する問題。砂漠とは植生が表面を多い尽くしていない状態。

関係ないのは③の酸性雨だね。石炭の燃焼によって硫黄酸化物が生じ、自動車の排気ガスには窒素酸化物が含まれる。それらが上空で水と化合し、硫酸や硝酸となり、雨とともに地表にもたらされ、土壌や水域の強酸性化が進む。雨水を直接浴びても全く問題がないが(硫酸や硝酸は極めて濃度が薄い)、それが蓄積されることで、生態系に大きな影響を及ぼすことになる。森林は立ち枯れし、湖沼の生物は死滅する。北ヨーロッパや北米五大湖周辺、中国内陸部でとくに酸性雨の被害は大きい。

ただし、酸性雨は砂漠化には全く関係がない。そもそも砂漠のような乾燥地域は土壌がアルカリ性である(地表面に水酸化ナトリウムが集積)。酸性雨によって中和してもらった方が、動植物にとっては生存に適した環境となるのだ。③が誤りで、これが正解。

他の選択肢についてもしっかり整理しておこう。まず①だが、これが典型的にみられたのが中央アジアのアラル海。アラル海は旧ソ連のカザフスタンとウズベキスタンの間の国境湖沼であるが、テンシャン山脈を水源とするシルダリア川、パミール高原を水源とするアムダリア川などの水の供給を受け、世界4位の面積を誇る湖であった。しかし、周辺で綿花の大規模栽培が始められ、農業用水としてシルダリア川やアムダリア川からの取水が行われると、アラル海に流入する水量が減少し、湖面の縮小が生じた。かつて湖だった部分が陸化し、さらにそこは塩分を含んだ土壌であり(アラル海は塩湖である)、植物が生育しない。砂漠の面積が拡大した。

②については、地球温暖化と対応させて考えよう。酸性雨や森林減少、オゾンホールの拡大など、かつて地球にはさまざまな環境問題があったが、人類の耐え混ざる努力によってそれらは現在克服される傾向にある。しかし、そういった状況の中でひたすら深刻さを増していく環境問題こそ、地球温暖化なのである。二酸化炭素など温室効果ガスの削減は進まず、地球全体の平均気温もわずかずつではあるが、上昇する傾向にある。温暖化対策って、ホントに真剣に取り組まないとヤバいよ。主な環境問題で解決のメドが立たないのはこれだけ。気温が上昇すれば蒸発量も増えるよね。乾燥地域ではとくにその傾向が強く、砂漠が拡大する要因の一つとなっている。

④について。アラル海の縮小によって、かつて湖底だった部分が陸化する。湖底の土砂は極めて目の細かい細砂である。風によって周辺に飛散し、農地を砂だらけにし、さらにこの細砂には塩分が含まれていることから、濃厚に適さない土地となってしまう。植物も生えず、裸地化が進む、つまり砂漠化である。

なお、この細砂は人間の呼吸器も冒す。呼吸障害などの疾病の原因ともなっている。

【アフターアクション】ただ、本問は厳密には「砂漠化」の問題っていうより「アラル海の縮小」に関する問題だったよね。砂漠化を考える上ではあまりいい問題ではないような。でも、酸性雨に関する認識はキチンとしておこう。酸性雨の影響が、北ヨーロッパや北米五大湖周辺でとくに深刻になるのは、冷帯地域でありそもそもの土壌(ポドゾル)が酸性であるからである。酸性土壌に酸性雨が降り注ぐことで、生物の生存が許されない強酸性の土壌となるのである。

逆にオーストラリアは石炭の多消費国であるのに砂漠化の影響がないのは、乾燥地域でアルカリ性の土壌であるため、土壌が中和されるので、逆に酸性雨がありがたいよね。

乾燥地域でも生育できてしまうという特殊な樹木がユーカリだが、オーストラリアでコアラの餌とされているのは有名だね。かつてセンターで「酸性雨によってユーカリが失われ、コアラが個体数を減らした」という文章が出題されたが、これが誤りだってことはわかるよね。酸性雨が常に悪者というわけではない。アルカリ性の地域ならば全く問題にならないわけだ。

「乾燥地域=アルカリ性」という認識は非常に重要で、本問が砂漠化を主に論じているということは、土壌がアルカリ性の地域であることが大前提であり、酸性雨は反対の概念となる。砂漠化の誤りキーワードとして「酸性雨」は定番なのだ。

【6】 【インプレッション】 これ、難しいなぁ(涙)。どの図も一見同じように見えるから詳しく観察していかないといけない。サはヨーロッパに多いようだ。シは東南アジアに多い。スは北アフリカが空白地帯になっているのだが、意味があるのだろうか。件数をみるとシだけ単位が違う(100件。他は20件)。日本に注目するのも一つの手だと思う。

【解法】 災害の問題。かなりわかりにくいと思う。とりあえず「代入」してみて、つじつまの合わないところはないか、確認していく。決定的な部分は少ないように思う。

こういった問題の「裏技」として日本に注目してしまうっていうのがあるんだわね。サもシもそれなりに日本は小さくない円が描かれているのだが、スだけ皆無。これ、何だと思う?「干ばつ」、「極端気温」、「洪水」の3つのうち、日本で発生しないものってどれだ?降水量が多い日本では洪水はしばしばみられるし、中には「被災者100人以上」というものはかなりあったと思う。極端気温もそうなんじゃないかな。猛暑であったり、寒波であったり、寒暖の差が大きな日本では毎年のようにあるし、中には大きな被害をもたらすものもある。その点、干ばつって怪しいんだよなぁ。たしかに水不足っていうのはあると思うんだが、干ばつっていう言葉を日本で耳にすることって稀だと思う。スを「干ばつ」とみていいんじゃないか。なるほど、アフリカの北緯10〜20°一帯で干ばつの被害が多いようだが、ここは「サヘル地帯」だよね。降水がみられず農業に大きな打撃が与えられる。北アフリカの国々が皆無なのだが、こちらはもともと雨が降らないところだから、改めて干ばつの被害ってないってことだと思う。ヨーロッパも南部に分布するものの、北部では被害はない。矛盾はない。スが「干ばつ」は決定的。

残ったサとシについて。サはヨーロッパに多いんだな。これ、何なんだろう?さらに今気づいたんだが、東南アジアが空白地帯になっている。シはその反対で、比較的ヨーロッパが少ないんだが、東南アジアがとくに多い。一応、シの方が件数が多い(大きな円が100件。サは20件)ことは頭に入れておこう。

さぁ、どっちなんだろう?洪水でパッと頭に思い浮かぶのは、モンスーンアジアを流れる多くの河川。タイの首都バンコクはチャオプラヤ川に沿い、しばしば洪水の被害に見舞われる。バンコクの郊外には日系の自動車工場が集まっているが、チャオプラヤ川の氾濫により施設が水没し、しばらく操業が止まったことも。このことを考え、タイを中心に東南アジアの値が大きいシを洪水と判定する。中国やインドの円が大きいのは納得なのだ。東南アジア同様にモンスーンアジアに位置し、雨季あるいは降水量の多い時期には河川の氾濫が頻発するだろう。また、河川沿いは肥沃な低地であり、人口が集中していることが多いので、「死者10人以上、被災者100人以上」という基準に照らした場合、そうした被害が生じる可能性は十分に高い。アフリカで多いのが疑問なのだが、インフラが整備されず堤防工事なども十分に行われていないのではないか、そうすると納得はできる。

サは「極端気温」と考えられる。これには熱波や寒波があるのだが、ヨーロパで値が大きいのは主に寒波だろうか。ロシアでも大きな被害が出ている。アフリカ大陸とくにサヘル地帯でほとんど発生していないのがちょっと気になるのだが。熱波などかなり多そうなんだけどね。また、南アジアで全体的に多いのはおそらく熱波と考えられるのだが、バングラデシュで値が大きいのが気になる。バングラデシュは、ガンジス川水系の三角州に国土が乗る低地国。国の半分が水田であるほど低湿であり、こうした国でこそ洪水の被害が大きいと思われる。しかし、シを洪水と考えると、サよりシが小さいことが大きな疑問となる。どうなんだろう?この部分だけ、つじつまが合わないのだが。

ただ、他の点を考えるとやはり、サが「極端気温」、シが「洪水」しかないのだ。自信はないが、答えを④とする。

で、正解を確認。良かった、④で正しかった!しかし、こりゃ難しい問題だわ。

【アフターアクション】 とにかく難しかった。多少の矛盾(バングラデシュで洪水が決して多くない!?)には目をつぶって、折り合いをつけながら解いていかないといけない。最も使えるワザはやっぱり日本に注目すること。これで干ばつは決定的にわかる。さらに、極端な違いのある地域に注目すること。本問ならば東南アジア。そして、特定のトピックに絞って考えていく。タイのバンコクには日系の自動車工場が多いが、チャオプラヤ川の氾濫によって被害を受け、自動車生産が滞ってしまった。

全体をあいまいに眺めるのではなく、ポイントを絞って観察していく。そして、最後は多少疑問に思う箇所にあるかも知れないが、勇気をもって解答を絞ってしまう。難しい問題では有るけれど、センター試験の醍醐味を味わうことができる面白い問題でもあると思う。