2018年度地理A本試験解説

たつじんオリジナル解説【2018年度地理A本試験】          

<第1問;地理の基礎的事項>

問1 「陸地の最高点」と「海底の最低点」が問われているという非常に珍しいパターン。標高の高い山岳と、深い海溝の両方を考慮しないといけない。

まず山岳について。Eはアルプス山脈を有し、標高は5000mを超える。Fは富士山を含み、約4000m。Gはハワイの巨大な火山が位置し、4000mを超える。Dのみ険しい山岳地形がみられず、この時点で①がDに該当。

さらに海溝について考えよう。E〜Gのうち、海溝がみられるのはFのみ。Eの地中海はプレートの狭まる境界ではあるが、海溝はみられない。Gのハワイ島は火山島であるが、プレート境界ではなく(ハワイ諸島はプレート中央のホットスポットに形成された火山列島である)海溝もみられない。

以上より、Fは最も高低差があると考えられ、④が該当する。海溝は最も深いものがマリアナ海溝(日本の南方、フィリピンの東方。グアム島やサイパン島がこれに沿う)で深度は10000mを超える。海底の広い面積を占める大洋底が深度4000〜6000mぐらいであるので、一般的な海溝でも深さは8000〜10000mほどになるのではないか。そうなると、最高点(富士山)と最低点(日本付近の海溝)の高度差が「14000」mというのは無理な数字ではない。

数字でものを考える習慣がついているかどうかっていうことはとても大切。海溝の深さについても、「マリアナ海溝=深度10000m」は確実に知っておこう。

問2 問1に続いてこちらも興味深い問題。形式的には目新しいが、問うている内容はオーソドックスな良問。

先に作物に注目しよう。「ナツメヤシ」、「バナナ」、「ライ麦」の3つたある。ナツメヤシは少雨気候に適応する作物。砂漠地域において灌漑(かんがい)農業(オアシス農業)によって栽培されている。バナナは熱帯や亜熱帯の湿潤地域で栽培される。沖縄でも栽培されるが。主にプランテーション農業で栽培される作物である。ライ麦はポーランドが主な栽培国であり、冷涼な気候に対応。小麦と大麦の中間的な性格。豚の飼料となり、混合農業に対応。

以上のことをふまえてグラフを判定しよう。まずアだが、気温は十分に高い。東京が最暖月25℃・最寒月5℃、沖縄が最暖月25℃・最寒月15℃であることを考えよう。夏、冬とも沖縄の気温に近く、亜熱帯の気候といえる。しかし、降水量はどうだろうか。夏にほとんど降水がみられない地中海性気候のパターンであるが、それ以前の問題として年間の総降水領が極めて少なくなっている。せいぜい200〜300mmであろうか(東京が年1500mm、沖縄が年2000mm)。気温が高いことから蒸発量が多いわけで、この程度の降水量ならば「降水量<蒸発量」のバランスとなり、乾燥気候と判定できるだろう。ナツメヤシが該当。

さらにイ。こちらは年間を通して温暖である。赤道に近い地域だろうか。雨季と乾季は明瞭だが、年間の総降水量は多く、乾燥気候ではない、熱帯気候と考え、バナナが該当。

「アは地中海性気候だ!温帯だからヨーロッパで生産が多いライ麦じゃないか」っていう思考パターンが最も危険。センター地理ではかくも徹底的にケッペンの気候区分に基づいて解答を導く思考方法が否定されているのだ。

問3 緯度40°を中心とした一帯で卓越するのは偏西風。北緯50°のイギリスなど西ヨーロッパが偏西風の影響を強く受けていることは知られているが、日本上空にも偏西風が卓越し、その影響は小さくない(例えば移動性低気圧は西から東へと動くが、これは偏西風の影響)。Jの航路に注目しよう。西風である偏西風に対し向かい風となっており、その分移動は困難となる。

Kは偏西風が、Lは貿易風が、それぞれ追い風となり、航空機は早く到着する。Mは赤道直下だが、この緯度帯は無風である。熱帯収束帯は別名「赤道無風帯」とも。上昇気流つまり縦方向の空気の動きが主であり、横方向の空気の移動すなわち風は弱く、一定しない。

問4 このパターンの問題は初めて。でもおもしろいな、良問やわ。じっくり解いてみよう。

まずは文章の読解。どの文章も似たようなことを述べているので、混乱しないように。例えば、カとキはともに、「尾根」→「沢」→「尾根」という経路。なお、沢については川と考え、要するに「谷」である。

キのみ「沢」という記述はない。こちらは「尾根」→「尾根」→「尾根」。ただし、厳密にいえば、「急な尾根」→「小山の頂上」→「なだらかな尾根」→「急坂」である。等高線の疎密(まばらならゆるやか、密ならば急)に絞ってみていけばいいので、意外にこれが一番判定は楽かな。

さらにカとクについては重要な箇所があって、カは「右上に小さな頂上」、クは「右下に田園風景」。これ、すごく大切!

とくにクがわかりやすいような気がするんだが。「田園」って間違いなく、図の西部の水田が広がる一帯だよね。集落もあって、田園地帯といっていい。これが「右下」に見える可能性がある経路はどれだ?山の上からみているのだから「下」なのは当たり前として、ポイントは「右」だよね。Rの経路を歩けば、田園は左側もしくは後ろ側。Qもやはり後ろ側。Pは山頂に向かって北西から南東に歩いていく経路だが、これに沿っていくと、西部の田園は「右」側に望むことができると解釈していいんじゃないか。Pがクとなる。

さらにQを見てみよう。登山口から200mの等高線付近までは急な坂となっている。「Q」の文字の横を通って、300mの等高線が閉曲線となっていることを確認。ここに「小山」がある。それを越えて、やや下り坂となり、再び上り坂となるのだが、この付近は等高線も疎らで「なだらかな尾根」とみていい。最後は「急坂」になっているのだが、それも等高線の混み具合から推察される。キがQである。

消去法でカがRとなるが、これについても一応確認してみよう。登山口からしばらくの間は尾根を走行している。「R」の文字の左側の閉曲線となっている等高線は小さな丘を示し、そこで進路が北東から東へと変わる。150mの等高線を越えるまでの経路は、等高線にほぼ並行しており、この箇所をもって「斜面を横切る」と記述しているのだろう。そこから進路が再び北東になり、大きく湾曲して南東へと変わっているのだが、この部分で「大きな沢」を渡っているのだが、わかるかな。

さらに進路は湾曲し、北へと向かう。なるほど「山頂」という文字のやや下側に「測候所」の地図記号がみられ、等高線が閉曲線となっている。ここが「右上に小さな頂上」なのだろう。

非常におもしろい問題だと思う。文章をそのまま読むのではなく(そもそも地理に文章読解力は不要)、他の文章と対比しながら、特徴的な箇所のみピックアップして確認していく。そういった作業が必要な問題。地理Bではこういった「尾根線」や「谷線(沢)」にこだわった問題はほとんど出題されないが、地理Aだけにとどめておくのはもったいないなとは思う。

問5 妙な問題。①〜③については否定するところがなく、おそらく④が誤りでいいと思う。セは東経および西経180°の経線であるが、この線がそのまま日付変更線というわけではない。キリバスなど国土が東西半球にまたがっている国もあり、そうした国の状況を鑑み、日付変更線は国境に沿って屈曲して設定されている。

①;これは基本でしょう。イギリスのロンドンを通過している。

②;これについてはシに限らず、ほとんどの経線についてこのことは言える。日本の標準時である東経135°も、ロシア東部においては日本と時刻が異なる。

③;問題ないと思います。日本の標準時子午線が兵庫県明石市を通過する東経135°の経線であることは小中学校の社会科で学習する内容。世界標準時(GMT)より「9時間早い」ことも必ず知っておこう。西(ヨーロッパ)より東(日本)の方が時間が進んでおり、経度差15°で1時間の時差。

問6 よくわからない問題なんだな。①については、次の行に「共助」という言葉があり、それと並列するものとして「自助」の考え方は非常に大切なので、とくに否定するべきところもない。②についてはまさにそのとおりで、ハザードマップを描くためにはコンピュータの利用は有効。コンピュータにより様々な情報を編集し、図に整理する。地理情報システム(GIS)である。

おそらく両方正しいということでいいのでしょう。

問7 非常に難しい。まず海溝型と内陸直下型の2つの地震のタイプについて考えよう。近年でいえば、阪神淡路大震災の地震や、熊本の地震が内陸直下型の典型例。日本列島の内部で生じ、震源が浅い。マグニチュード(地震の規模)は小さいものの、都市の周辺など多くの人間が住む地域を直撃するため、被害が大きい。逆にいえば、人間が住んでいないところ(例えば海底など)で直下型地震が起きても、それは「災害」にはならないわけだ。わざわざ「内陸」直下型とも称されていることからも、海洋で発生した地震については当てはまらないことがわかるね。

それに対し、海溝型は規模が大きい。プレートのせばまる境界で生じ、海洋プレートが大陸プレートの下に潜り込む際の激しい摩擦力が原因である。震源は深く、マグニチュードも大きい。東日本大震災の地震は日本海溝(太平洋プレートが北アメリカプレートの下に潜り込む一帯)で生じたが、マグニチュードは9に達し、未曾有の大地震であった。海底地震であるため、沿岸に津波被害を与える。

以上のようなことを簡単に頭に入れて考えてみよう。

まず②について。そもそも「東南海」地震というのだから、「内陸」直下型ではないだろう。日本列島の南東には日本海溝や南海トラフ(フィリピン海プレートとユーラシアプレートの境界)、伊豆・小笠原海溝(太平洋プレートとフィリピン海プレートの境界)など、海溝(トラフは小規模な海溝)が多く走行し、地震も多く発生している。「海溝型」に改めよう。

さらに③について。海溝は「狭まるプレート境界」である。誤り。

そして④。これ、どう思う?たしかに「周期的に発生する特徴」はあるのかもしれない。過去の断層活動を調べればある程度はそういったデータは偉えるだろう。しかし、それだからといって「発生年の予測が可能」といえるだろうか。阪神淡路大震災にしても、それまで近畿地方は大規模な地震に皆割れたことがなく、予測不可能な地震であった。地震の研究が進む日本ではなるが、地震の発生予測などできないと思う。

以上より、残った①が正解。正直なところ、関東大震災を引き起こした地震がどちらのタイプに分類されるかなど全くわからない。そういえば、沿岸部には津波の被害が多少はあったと聞いたことがあるような。。。

というわけで、調べてみました。どうも関東地震の震源って、相模トラフにあるみたいね。相模トラフは相模湾から伊豆諸島へとつらなるトラフ(小規模な海溝)で、フィリピン海プレートと北アメリカプレートの境界。富士山周辺には3つのプレート(北アメリカプレート、ユーラシアプレート、フィリピン海プレート)と2つのプレート境界(相模トラフ、南海トラフ)が集まる収束点となっているのだ

関東地方にも活断層はあるし(というか日本列島で活断層がないところはない)、富士山や浅間山など周囲には火山も多い。関東地方にも内陸直下型の地震が生じる可能性は十分にある。巨大地震だからといって海溝型と決めつけるわけにはいかない。他の選択肢を十分に否定してから、①が正文であることを判定しないといけない。難問だと思います。

問8 図をそのまま読解してみよう。ネは低地に位置し、さらに周辺には河川も流れている。河川が氾濫した場合、ネの地域は浸水するものと思われる。

①;一般に、台地の方が低地より地盤が安定しているものと思われる。ただし、山地斜面の場合には土砂崩れの被害なども考えられるが(ナに関しては台地なのでそういった心配はない)。

②;地盤が水分を多く含んでいる場合、液状化の被害が生じやすい。振動によって地中の水の分子が押し出され、地表へ噴出してくる。地盤が軟弱となり建物の倒壊など生じる。ニのような埋立地の他、三角州や干拓地などで液状化の可能性が高い。

③;ヌはかつて河川の一部だった。現在は陸化しているが、周囲を河川が流れ、低湿な地形であることが想像できる。洪水の被害は大きいだろう。

<第2問 世界の生活・文化>

問1 キーワードに反応する。バンコクは大河川(チャオプラヤ川)の「デルタ」に位置する都市で、市内を多くの「水路」が走行する。運河の町である。

①は「自転車」の利用がみられるので、オランダのアムステルダム。環境対策として自転車の利用が推奨されている都市であり、とくにオランダは平坦な国土で自転車の走行に適している(冬には凍結した河川をスケートで通勤通学するそうです。どれぐらい平べったい国なのかがわかりますね)。

③は「放し飼いの牛」でインドの都市に該当し、デリー。

④は自動車化が著しい都市ということでアメリカ合衆国のロサンゼルス。

文章をじっくり読むより、キーワードだけ拾っていくという読み方が大切なのです。

問2 いずれもわかりやすい典型的な建築様式。

もっともわかりやすいのはウだろうか。「冬季に行う床暖房のためにかまどの熱気を用いている」のは朝鮮半島のオンドル。ウに該当。

さらにイにも注目。「壁が石灰」で塗られているが、こうした白壁の家屋は地中海地域特有のもの。樹木に乏しい(オリーブなど硬葉樹は建材に適さない)ため、石造りの家が多い。Aに該当。

残ったアが東南アジアのイ。写真はないが文章から判定はできるだろう。「風通しをよくする」のは高温多雨の地域の特徴。樹木に恵まれ。とくに竹が建材として用いられる。

問3 文章そのものは正しいので、問題はそれぞれの場所に適するかどうか。Gの中国・東北地方はとくに冬季寒冷な気候がみられる冷帯気候地域。大豆や小麦、(品種改良した)米などの栽培はみられるが、さすがに熱帯雨林気候の作物であるアブラヤシの栽培は不可能。

①;北極海沿岸のツンドラ地域ではイヌイットが伝統的に狩猟生活を営んでいる。

②;地中海沿岸はオリーブの栽培地域。その油は様々な用途に利用される。

④;フィリピンはココヤシの栽培が多い。ココヤシの胚珠を加工したコプラからは油(ヤシ油)が採取される。

問4 カは羊毛。オーストラリアでは企業的に毛羊種のメリノ種が放牧されている。

クは豚肉。豚の飼育頭数は中国が世界最大。

キは消去法でヤギ乳。ヨーロッパでは地中海式農業地域においてヤギが飼育される。インドは家畜の乳を主な動物性タンパク源とする。

問5 写真はないが、十分に解答できる。

サ;「砂糖」はもちろんサトウキビを原料とする。熱帯亜熱帯の雨季と乾季のある気候に適応する作物であり、カリブ海のジャマイカなどに多くのプランテーションが開かれた。北アフリカは地中海性気候や砂漠気候など、降水量が少ない。

シ;ガーナが世界2位のカカオの生産国かはわからないが、ガーナが位置するギニア湾沿岸の低地が世界最大のカカオ生産地域であることは間違いない。ガーナの隣国であるコートジボワール(こちらは旧フランス領)はカカオの生産量世界1位。タンザニアはサイザル麻の生産が多い国だが、センターで問われた例はない。

問6 これ、ちょっと特殊な感じもするけど、教科書でも説明されている話題なので、確実に知っておいて欲しいな。朝鮮半島で使用されているハングル文字は、比較的新しい年代に人工的につくられた表音(文字が音声を表わす)文字である。かつて朝鮮語を表わすためには漢字が用いられたが、現在は公式の文書など一部で使われるに過ぎず、日常生活で目にするのはほとんどがハングル文字である。朝鮮語自体を「ハングル」と呼ぶこともある。①が誤り。

例えば、韓国では古い時代に伝わった仏教より、近代になって伝わったキリスト教の方が信者が多い。仏教寺院のほとんどが山間部にあり、都市内部にはキリスト教の教会が多かったことなどが理由であるのだが、このように韓国(朝鮮半島)は大陸の一部でありながら、むしろそれを否定し独自の文化を築き上げようという考え方があるように思う。

他の選択肢では④をチェックしておこう。ロシアやギリシャなど、東方正教が信仰される地域においてはキリル文字(ΣやΦなどの文字は見たことがあるのでは)が使用される。ロシア語とギリシャ語はそもそも言語系統が全く異なるのに、宗教が近いため同じ文字を用いているという点がおもしろい。

問7 ウズベキスタンは旧ソ連の構成国の一つで、中央アジアに位置する。国土のほとんどは乾燥地域で綿花栽培がさかん。シルクロード交易の中継地として栄えた都市も多く、アラブ商人たちによってイスラム教が広められた。チがイスラーム。

インドで割合の高いタがヒンドゥー教(比較的イスラム教も多いのだが)、スリランカで多数派であるテが仏教、ポルトガルで大多数を占めるツがキリスト教。

なお、スリランカは多数派のシンハリ人が仏教徒、少数派のタミル人(北部に居住)がヒンドゥー教徒。

<第3問;オーストラリア>

問1 パースは「緯度35°・大陸西岸」の条件を満たし、地中海性気候のみられる典型的な地域。南半球の地中海性気候のパターンとして、1月(夏)にほとんど降水がみられず。7月(冬)に一定の降水がある①が該当。

参考までに他の判定も。気温が年間を通じて高く(気温年較差が小さい)、常に高温である④が低緯度のダーウィン。南半球の低緯度に位置し、1月(夏)は南下する熱帯収束帯の影響で多雨、7月(冬)は北上する亜熱帯高気圧の影響で少雨。

さらに残った②と③のうち、シドニーは③。沿岸を暖流である東オーストラリア海流が流れ、年間を通じて多雨となる。

残った②がカルグールリー。内陸部であり少雨気候となる。砂漠が広がる。なお、カルグールリーは金鉱が位置するので知っておくといい。

問2 現在アボリジニーの多くは都市で生活を送っている。

問3 Aはイに該当。グレートバリアリーフに面する。

Bはウに該当。首都キャンベラである。主要な2つの都市(シドニーとメルボルン)の間の山間部に建設された政治都市。計画的に建設された街路区画を有し、人口は少ない。

Cはアに該当。国内第2の都市メルボルン。

問4 とりあえずこういった問題は伸び率の極端に高いものを挙げればいい。「アジア」だけれども、もちろんその多くを占めているのは中国だよね。「1981年」という年次も大切。中国は1980年に改革開放政策を打ち出し、経済特区の設置など急激な変化がスタートしている。「1981年」が中国の近代化以前、「2011年」が近代化後ならば、この期間に大きな変化をしたものが中国に関する統計数値であり、本問の場合は「アジア」と断定していいだろう。

①が「イギリス・アイルランド」。アイルランドは人口が少ないので、イギリスだけと考えていい。イギリスはオーストラリアの旧宗主国であり、歴史的にも文化的にも深い関係になる。しかし、1970年代にイギリスがEC(現EU)へと加盟し、ヨーロッパ地域との関係を深めると、オーストラリアとの

問5 鉱産資源の分布はあまり出題されない話題ではあるが、オーストラリアだけは例外。とくに「鉄鉱石」は何回も出題されている。オーストラリアの最大の輸出品目でもあるので(中国へと主に輸出)やはり重要性は高いんだろうね。

鉄鉱石は安定陸塊に分布するが、オーストラリアの場合とくに北西部に多くの鉄山が集中する(ピルバラ地区。マウントホエールバックなど)。この地域に多く集まる②が正解。

他は判定の必要はないが、参考までに、石炭は古期造山帯に多く分布し、グレートディバインディング山脈の走行する東岸に集まる①が石炭。③と④はよくわかりませんが(すいません・笑)、おそらく③が石油、④が鉛・亜鉛だったような気がする。違っているかもしれませんが???

問6 そもそもグレートサンディー砂漠というのがどこかわからない(苦笑)。センター未登場のマイナーな地名でもあるので、ここは無視してしまっていいと思う。「適当なもの」を選ぶ問題であるので、(解答ではないいうことは)②は誤文と考える。

他の選択肢では③が消しやすいと思う。オーストラリアの人口が集中する地域は国土の南東部。グレートディバイディング山脈の東側、オーストラリアアルプス山脈の南側、海岸に面するエリアで、シドニーとメルボルンといった人口400万人を超える都市も居並ぶ。塩性化が確認されている地域とは重ならない。

最もおもしろい選択肢は④。「土壌の塩性化」と「灌漑」の関係が問われている。

問7 オーストラリアは面積で世界6位の大きさを有するが、人口はわずか2500万人でむしろ「小国」と考えるべきだろう。とくにここでは「世界文化遺産」とあるが、それらに登録される歴史的な建造物などは、歴史の浅い国であるオーストラリアで豊富とは思えない。

他の3つの選択肢についてはとくにチェックの必要はない。とくに疑問となる部分もないだろう。

<第4問;貿易・国際関係>

問1 実はかなり難しい。魚介類のアの判定は簡単なのだが、そこからが厳しい。穀物類と肉類が微妙なんだわ。イはアメリカ合衆国・カナダ・ブラジル、ウはアメリカ合衆国・オーストラリア・タイ。ブラジルといえば鶏肉だし、タイといえば米。でも、ブラジルはともかくとして、そもそも日本がタイから米を輸入しているんだろうか。さらに穀物類といえば、小麦と米、トウモロコシは確実に含まれる。日本は米の自給率が高い国なので、主な輸入穀物といえば、トウモロコシと小麦になるわけなんだわ。ブラジルは世界的なトウモロコシの生産国の一つ(生産順位は世界3位)なのは気になるところなんだわなぁ。非常に判定が難しい。

というわけで、ここはオーストラリアに注目してしまっていいと思う(第3問に続いてオーストラリアだ)。牛肉の輸入先については確実に知っておいてほしい。1位オーストラリア、2位アメリカ合衆国、3位ニュージーランド。原則として農畜産物の輸入先1位はアメリカ合衆国、ただ、牛肉の場合はBSE問題という特殊な事情があり、アメリカ合衆国の順位が低い。他大陸から離れており、BSEの蔓延がないオーストラリアからの輸入が主なのだ。

このことを考え、肉類の輸入にオーストラリアが入っていないとは思えない。たしかにブラジルからは鶏肉の輸入があるのだが、牛肉に比べれば金額は少ないと思う。というわけで、以下のように考えて解いてみた。

アは魚介類。世界最大の水産国(漁獲量および養殖生産量)である中国からの輸入が多い。

イは穀類。アメリカ合衆国からの輸入が圧倒的。ブラジルからはトウモロコシなど。

ウは肉類。とくに牛肉に関してはオーストラリアからの輸入が多いことが重要である。BSE問題により、一時的にアメリカ合衆国からの輸入が凍結され、オーストラリア産のビーフの輸入が拡大した。

しかし、それでも腑に落ちないところはたくさんあるんやなぁ。。。タイから肉類の輸入が多い?たしかにかつて鶏肉の主な輸入先はタイだった。しかし鳥インフルエンザの被害によってタイからの輸入が激減し、主要輸入先がブラジル(南半球には被害が及ばなかった)に変化した経緯がある。

う〜ん、やっぱり決め手がない。厳しい問題だわ。自信をもって解答できなかった。

問2 これはシンプルに考えてしまっていいと思う。グローバル化する世界経済の中で、日本の農産物の輸入総額は増えている。ただ、輸出額もそれなりに増えていると思うよ。日本の農業がダメだっていう問題ではなく、農畜産物が国境を越え、世界全体で消費されるようになってきたっていう、貿易の拡大に関する問題なんだと思う。

問3 ありそうでなかった、いい問題。真っ先に考えるべきは「木材伐採高に占める薪炭材の割合」。木材の用途には「用材」と「薪炭材」があり、前者は先進国で利用が多く(紙の原料になる)、後者は発展途上国で多い(ガスや電気の代わり)。②や④は先進地域、①と③は発展途上地域であり、とくに③でこそ経済発展が遅れていると考えていいだろう。このことから、②と④がオセアニアか北・中央アメリカのいずれか、①が南アメリカ、③をアフリカと判定する。

他の大陸に比べ面積が大きいわけでもないのに、南アメリカは「森林面積」が大きいものとなっている。熱帯気候の占める割合が高く、とくにブラジル北部のアマゾン低地は広くセルバと呼ばれる熱帯雨林に覆われている。他大陸に比べ、総面積に占める森林の割合が高いと思われ、森林面積自体もヨーロッパ・ロシアに次いで大きいものとなっている。

なお、②と④については、②が北・中央アメリカ、④がオセアニア。これは面積で考えてしまっていいだろう。オセアニアは地域全体の面積も狭いが、乾燥大陸オーストラリアが主であり、森林面積割合も低い。

なお、今回は「森林面積の増加率」は考慮せずに解いてしまったが、これも非常に興味深いデータであるので、参照してみよう。アジアは増加しているが、これは中国が積極的に植林を行っているから。また、ヨーロッパ・ロシアと北・中央アメリカは現在の値をキープしているが、針葉樹が広い面積を占める地域であり、商業林として価値の高い(パルプ・紙の原料としての利用)タメ、企業的な管理がなされているからである。

一方で、南アメリカやアフリカでは原料率が高い。熱帯林が失われ、一部で降水量の減少による砂漠化も生じる。

参考までに、オセアニアでも減少率が高い。オーストラリアでは灌漑農業によって植生が失われ、砂漠化が進行しているが、その影響が樹木にも及んでいる。大規模灌漑によって土壌の劣化(土壌侵食、土壌流出)がみられる。

問4 非常にやっかいな問題。珍しい出題パターンなので、問題文をしっかり読むことから始める。取り上げられているのは、アメリカ合衆国、アラブ首長国連邦、日本の3つ。いずれもその地域の中心的な国の1つ。さらにカ〜クは、それぞれの首都を中心とした正距方位図法。日本なら東京、アラブ首長国連邦ならアブダビ(もちろんこの都市名は知る必要はない)。アメリカ合衆国はワシントンだが、この国のみ広大な国土の東端に首都が位置していることを意識する必要があるかも知れない。

さらに各線は、その国の代表的な航空会社の国際線運行便を示しているのだそうだ。日本ならばJALだろうか。

とりあえずドイツの図をみながら解釈してみよう。ドイツの首都は国土東部のベルリンであるが、人口規模は大きいものの、産業や経済の発達の度合いからみて、決して国内の中心都市というわけでもない。最も大きな空港は国土西部のフランクフルトにある。図の中心近くに位置する点のいずれかがフランクフルトなのだろう。

「上位20位までの空港」に注目。ベルリンから極めて近いところに5つの大きな点が存在。これらはヨーロッパの空港のはず。ロンドンやパリの空港ではないか。狭いエリアに5つも大きな空港があるというのはヨーロッパ特有のことだろう。国際的な人口流動がさかんな地域である。オランダやイタリア、モスクワなどにも大きな空港があるのだろうか。よくわからないが。

さらに北西に1つ大きな点がある。ヨーロッパからみて北西側といえばアメリカ合衆国である(方位を考える場合には地球儀を想像しよう。平面の地図で考えてしまうと、ヨーロッパからみてアメリカ合衆国は「西」にあるような感覚だが、実際の地球は球体であるので、正しくは「北西」の方向になる)。ニューヨークの空港だろうか。

その一方で、北東にも多くの大きな点がある。これはアジア方面と考えて妥当だろう。中国のいくつかの空港や韓国のインチョン、日本の成田などが含まれているはず。東側にもいくつか大きな点があるが、これらは西アジアやインドなのだろうか。ちょっとよくわからないが。

以上の位置関係をふまえて、各図を検討。とにかくポイントになるのは「ヨーロッパの5つの点」。このセットをカ〜クの図において探していけばいいと思う。まず目立つのはキ。比較的近距離(5000km以内)に5つの点が集まっている。東側にも点が多いが、こちらはバラけているからヨーロッパではないと思う。キからみて、北西側にヨーロッパ、しかも近い距離。どうだろうか、キを西アジアの「アラブ首長国連邦」と考えていいんじゃないか。ドバイの空港である。西アジアには人口規模が小さく、産業もさほど発展していないので、中心付近には一つの点(つまりドバイ)しか存在しない。

さらにクに注目。中心に一つだけ大きな点があり、「ヨーロッパの5つの点」は北東側の、5000〜10000kmの付近にある。これを「アメリカ合衆国」とみることはできないか。アメリカ合衆国から見てヨーロッパは北東の方向にある(すでに述べているが、平面の地図では北アメリカからヨーロッパは「東」の方向に見えるが、正しくは「北東」の方向である。地球儀を考えてみて欲しい)。「運行路線」の数も極めて多くなっているが、なるほど、これがアメリカの会社のものと思ったら納得だろう。

最後のカが「日本」になる。日本からみてヨーロッパはやや遠く、距離は10000kmほど。方位は北西である。東アジアと西ヨーロッパを結ぶ航路は、ロシア上空を通過しているのである。北北東の大きな点はニューヨークだろう。西側の近距離に三つほど大きな点があるが、これらは韓国のインチョン、中国のシャンハイとホンコンか。5000kmほど離れた南西の大きな円の一つは間違いなくシンガポール。

以上より正解は⑥となるのだが、本当に変わった問題だった。類似問題は地理Aでは出題歴があるとはいえ、考え方が非常に難しい。交通ネタは地理A特有のものであり、地理Bでは出題されないから安心していいが、しかし「ヨーロッパの5つの点」に注目するなど、テクニックを使ったパズル的な問題であるので、チャレンジの価値は十分に高い。

問5 ①もそれっぽいように思えるんだけど、やっぱり④が誤りだよね。「農村のUターン」とあるけれど、農村の人口は増えない。高度経済成長以来、継続して都心部の人口は減少を続けてきた。いわゆるドーナツ化現象。それにしても、都心部から「郊外」への人口流出であり、「農村」へ人口が帰ったわけではない。

問6 ODAは先進国から発展途上国へと供与されるものだが、とくにヨーロッパ諸国についてはかつての植民地だった国へと供与されるものが多い。中央・南アメリカの多くの国はスペインの植民地だった。

旧宗主国から旧植民地へのODAの流れがみられるものは他にフランスがある。フランスはアフリカに多くの植民地を有していた。③がフランス。

他の2か国について位置的な関係から近隣国へとODAが供与されている。東・東南・南・中央アジアの値が高い①が韓国、オセアニアの割合が高い②がオーストラリア。

類題が多い問題だが、ODAを与える国として韓国が登場したのは初。上述のようにODAを与えるのは先進国であり、韓国はそれよりワンランク低いNIEsという認識がこれまでは一般的だった。今後は韓国を、日本と同様の先進国として考えるべきなのかもしれない。

<第6問;高山市の地域調査>

問1 【インプレッション】日本の気候の問題だが、本問のように気温年較差と冬季の日照時間が問われた例は過去にもあった。日本海側の雪が非常に重要なテーマとなっている。

【解法】富山市は日本海側の地域に位置する。冬の北西季節風が日本海から湿った空気を運び、雪雲の多い気候となる。冬季の日照時間は少なく、イに該当。

さらに残った2つについては気温年較差で判定。海陸の比熱差の影響によって、内陸は寒暖の差が大きく、沿岸部は比較的穏やかな気温変化となる。気温年較差の大きいウが内陸の高山市、小さいアが海に近い浜松市。

【アフターアクション】非常にオーソドックスな問題。しかし、高山市の場合、富山県と岐阜県の県境となる山脈を一つ隔てているので、もっと晴天の日が多いかなとは思ったが、意外に富山市と日照時間に差がない(もちろんそれでも富山市の方が短時間なのだが)ことにちょっと驚いたかな。逆に浜松市は日照時間が極めて長い。富山市の倍以上っていうのはかなりの差だね。

問2 【インプレッション】階級区分図を使ったネタはよく出題されるものの、問われる内容はバリエーションに富んでいる。これ、意外に判定が難しいぞ。図の読み取りに気をとられすぎず、文章をしっかり読み解けばいい。

【解法】正解は③。

階級区分図が与えられてはいるものの、文章をしっかり読んでその正誤を判定すればいい。もちろん思考問題であるが、思考問題であるがゆえ(つまり知識問題であるがゆえ)かえって難易度は低いのではないか。

まず①から。「盆地に位置する中心部」という言い方はオッケイだね。たしかに中心部は比較的平坦な、すなわち盆地に位置している。そして人口密度の図を参照すると、たしかに中心部とそれに隣接する地域に「高位」が分布する。これは正しいでしょう。

さらに②。老年人口割合が高い地域は、たしかに「中心部から離れた」ところにみられ、標高についても比較的「高い」とみていいだろう。とくに否定するところもない。

そして③。なるほど、平均世帯人員は中心部と縁辺部において高い。中心部は人口密度の高いエリアであり、高山市の「都心部」である。官公庁や企業、商業施設などが集まり、その周囲に多くの人々が住んでいるのだろう。比較的構成年代が若く、核家族や一人暮らしも多いものと思われ、それが平均世帯人員を引き下げる理由となっているのだろう。③の下線部はそれとは反対のことを言っているね。これが誤り。

最後に④について。縁辺部では過疎化が進んでいる。若年層が流出し、老年人口割合が高い。高齢者だけの世帯が多く、さらに配偶者の死などで一人暮らしのお年寄りもかなり増えているのでは。日本の人口動態における深刻な問題である。

【アフターアクション】図は実はさほど重要ではなかったというのがおもしろいな。文章をしっかり読んで、つじつまの合わない部分を探してみよう。言われてみれば当たり前のことを聞いてるんやけどね。思考問題として完成度は高いと思うよ。

問3 【インプレッション】最近のセンター試験で定番となった会話内容を問う問題。例えば熊本県のいぐさが出題されるなど、日本地理の知識が重要視される傾向が強い。本問はどうかな。

【解法】問題文(文章)が長い場合には必ずその中にヒントがある。地理の文章は、国語(現代文)のように複雑でなないので、素直に読んでいけばいい。

まずはカから。「現在は大都市圏を中心に出荷されている」が、当時はそうではなかったということ。高山市近郊の農家は朝市において直接農産物を販売していた。「大都市圏」が「域外」であるので、「高山市近郊」は「域内」と考えていいだろう。地産地消(地域で産し、地域で消費する)ということである。

さらにキについて。飛騨地方のブリは富山など北陸方面から運ばれる。さらに「標高1000mを超える山脈の峠を越え、海の魚を食べることが困難な地域」にも運ばれたと記述されている。保存のために塩を加えたことも説明されている。選択肢は「名古屋」と「松本」だが、どう考えたらいいだろう。

まず「1000m」という数字にこだわってみる。問2の図2を参照し、高山市の地形を読み取る。名古屋へと達する南に抜けるルートは薄い色で、標高は500mほどだろうか。決して山岳を超える経路ではない。それに対し、松本へ向かう場合の東側については濃い色で着色され、標高1000〜3000mの高所であることがわかる。こちらを抜けるルートは、険しい山脈を抜ける。

また、「海の魚を食べることが困難」という部分に注目してみれば、名古屋は海に面し、少なくとも太平洋で漁獲された魚については不自由はしていないだろう。「日本海の魚」は食べられないかもしれないが、単に「海」ならばいくらでも魚を食べることができる。一方で内陸部の松本市は四方を山地に囲まれ、海からは隔離されている。たしかに海の魚を食べることは、日本海、太平洋にかかわらず困難である。

以上より、キについては「松本」と判定していいのではないか。正解は④である。

【アフターアクション】日本地理の問題とも言えるが、むしろ思考問題としてかなり上質だったんじゃないかな。とくに「飛騨ブリ」の話は、文章を細かく読んでいけば必ず矛盾のない解答に結びつく。問題文が長い場合。そこに必ずヒントが隠されているわけだね。

本問は中学地理の知識はとくに必要とはならなかったものの、地元の農家による朝市の風景などは小学生や中学生でも想像できる、有名な話題だと思う。専門的な知識が問われているわけではない。

問4 【インプレッション】市街地の様子がテーマとなった地形図問題。こういう問題は、古い時代との対比が問われることが多いのだが、今回は現代の地形図のみ。非常にシンプル。また、最近更新されている地形図はよりデザイン性の高いものになっているのだが、ここで使用されているものは更新前の旧来のもの(また最新の地形図に更新されていない地域なのだろう)。オーソドックスというか、ずいぶん古臭い印象すらある。

【解法】正解は③。

市街地を描いた地形図の読解。地形図問題のコツは、先に選択肢を読んで、ある程度見当をつけてから問題に取り組むこと。

選択肢の中で①は城下町特有のことが述べられている。高山市は城下町であるので(選択肢①と②の下線部が引かれていない部分の文章からそのことが読み取れる)、当然①は正文だろう。

選択肢③も問題ないんじゃないかな。寺院が集まる地域で「寺院に由来する町名」は不自然なことではない。

気になるのは②と④。まずこれらについて検証してみよう。

②については「南」と「北」を入れ替えるだけで誤文となり得るのだから、問題作成者としては安易な選択肢でもある。河川は高いところから低いところに向かって流れる。図中から標高を表わす数字を探してみよう。

幹線道路には2kmごとに標高を示す水準点が置かれている。図の南部「名田町一丁目」付近に水準点(四角の中に点)があり「580.2」mとある。「宮川」という文字の辺りに独立標高点(単なる点)があり、「574」m。また、市役所の南に接して三角点(三角の中に点)があり、こちらは「569.9」m。どうだろうか。少しではあるが、南が高く、北が低い地形となっている。宮川が「南から北へ流れる」のは正しいのではないか。

さらに④について。そもそも岐阜県北部の山間地域に工業団地が建設されるだろうか。もちろん東北地方の自動車専用(高速)道路のインターチェンジ付近に電気機械の組立工場や、長野県の諏訪地区に精密機械(情報通信機器)の工場があったりするので、絶対にないとは言い切れないが、かなり怪しいと思う。選択肢④の下線部を続いて検証してみよう。

図のやや西部を苔川が南北に縦断している。河岸は護岸され、多くの橋が架けられている。その西側に沿って太い道路が通っているが、これが「幹線道路」なのだろう。やや着色されているようだが、これは「国道」を表わす(実際の地形図では黄土色)、中央分離帯によって上下の車線が多くの箇所で区切られている。

さて、この道路にそって「工業団地」が造成されているだろうか。工場の地図記号はみられないし、「◯◯工場」のような文字もみられない。これが誤りとみていいだろう。正解は④。

①;上ニ之町の「町」という字から南南西に向かう道路があるが、その先で丁字路となっている。

②;「天性寺町」や「宗猷寺町」など。なお、「鉄砲町」は職業に由来する地名(鉄砲鍛冶が住んでいたのだろう)で、こちらは城下町特有のもの。さらに「国分寺」は奈良時代に各地に置かれた行政機関であり、一般の寺院とは異なる。

【アフターアクション】地形図問題の難易度は下がっている。とくに今回のように、現代の地図を一枚だけ取り上げ判定させる問題は非常に簡単。知識としては「工場」の地図記号を知っておけばいい(もちろんみんな知っているね。小学生の知識だね)。確実に得点しよう。

問5 【インプレッション】データが多い問題は、時間はかかるけれど、手がかりも多いのだから、確実に解答できる。面倒とは思わずに、じっくり取り組んでみよう。だた、こういった問題がラスト近くになって登場すると焦るよね。時間配分が重要だってことだから、模試で時間を使う練習(もしくはメンタルを鍛える練習)をしておかないとね。

【解法】資料読解による考察問題。こうした問題は知識が不要な場合が多いので、時間をかけてしっかり解いてみよう。確実に得点できるはず。

図や表を漫然とみていたも始まらないので、先に文章を読んでみて、怪しい部分をあぶり出してみよう。

まず①から。「交通条件の改善は旅行者数の維持を保証するものではない」なんて難しい文章が登場しているけど、大丈夫かな。地理はそもそも高度な文章読解力は必要としない科目だけれども、この部分は例外みたい。要するに、「交通手段が便利になったら旅行者数も増えるはずだけれど、必ずしもそうではない」ということ。なるほど、そりゃそうだなって感じがする。高速道路を作ったり、新幹線が通じたりすれば、それだけで旅行者は増えるだろうか。そんなことはないんじゃないかな。本選択肢は納得。

さらに②について。「県内市町村の中でも相対的に宿泊をともなわない通過型の観光地としての性格が強い」となる。これもちょっと難しい文章だけれど、この問題って実は文章読解力がかなり必要? とはいえ、大学受験レベルならしっかり読み取ることはできるよね。「県内」とは岐阜県のこと。高山市は岐阜県の北部にあることは図1から読み取れるし、周囲を山地で囲まれた地域であることも図2から判定できる。県内の他の地域としては岐阜市が位置する県南部が代表的なところだろう。岐阜県の県庁所在地が岐阜市、名古屋圏に含まれる都市であることは理解しているよね(中学地理のレベルだけど、対策は大丈夫かな)。「通過型」というならば、岐阜市の方がそれにふさわしいのではないか。名古屋から鉄道や自動車によって大阪に向かう場合の通過点となる。また、「宿泊」に関しても交通の便がいい岐阜市ならば大阪からでも名古屋からでも、そして東京からでも十分に日帰り圏となる。それに対し、高山市はかなり距離があり、さらに山間部でもあることから、ゆっくり観光しようとしたら宿泊した方が絶対にいい。余裕がある旅ができる。どうだろう?明らかにこの選択肢が怪しいのだが?

とりあえず他の選択肢についても先に目を透しておこう。選択肢③は「2015年の高山市の宿泊客数の約2割を外国人旅行者が占めている」だが、なるほどそんなものかも知れない。これは図表の数値を読み取って計算したらいい。

最後の④は「ヨーロッパやオセアニアの割合が高い」とある。いやいや、日本に来る観光客は中国や韓国からが多いでしょ?と言いたいところだが、そこは焦らないで。「全国に比べて」とある。「爆買い」の中国人であったり、近隣の九州でとくに割合の高い韓国人に比べると、以外にヨーロッパ人は高山市のような観光地を好むのかも知れない。これも全国との比較を意識して、図表を読み取ってみよう。

というわけで、ここからは検証に入る。真っ先に疑わしいのは選択肢②である。あれっ?これについては図表からはわからない?日帰り客と宿泊客のバランスが示されているのが図4だが、これは高山市のデータしかない。県内の他の地域のデータがないから、これだけでは判断できないじゃないか!?

いや、違いました、すいません。データは文章の中にあったのだな。これは見落とし。焦ってしまってはいけないね。みなさんも注意してね。「岐阜県全体の日帰り客数は3731万人で宿泊客数は629万人」となっている。両者の合わせた観光客数は約4500万人で、宿泊客数が約650万人ならば、その割合はおおよそ15%ということになる。これに対し、高山市の数値は全体が約350万人で宿泊客が約120万人。割合は30%を超える。なるほど、選択肢②は反対のことを言っているね。やっぱりこいつが犯人だったわけだ。②が正解です。

実際にセンター試験を解く場合は、明らかな答えがみつかったので、この時点で次の問題に移ればいいけれど、ここでは参考までに外れ(正文)選択肢に触れておこう。

③について。宿泊客に占める割合だが、高山市全体では宿泊客は120万人程度。これに対し、表2を参照して、外国人は25万人ほど(高山市の値は宿泊客のみの数値である点に注意)。おおよそ20%ほどだね。正文。

④についても。高山市で外国人旅行者(というか宿泊者だけれども、とくに構わないでしょう)に占めるヨーロッパとオセアニアの合計は31.6%。全国にすると、8.5%。かなりヨーロッパ人とオセアニア人の割合が高いことがわかる。正文。

さらに①については多少強引だが、以下のように考えることができる。その様子を図から読み取るならば、1985年以降2015年まで、観光客はゆるやかに増加傾向にあるものの、年による変動が大きく、とくに激しく落ち込んだ時期もある。年を追うごとに道路など交通手段は整備されていくはずで、それならば継続して旅行者数は増加し続けるはずだが、この図を見る限りかなりのアップダウンがあり、むしろ不規則といっていい。①のように交通条件の改善が旅行者数の維持を保証するならばこういった動きはみせないはずだ。正文とみていいだろう。

【アフターアクション】反対の表現を含んだり、比較の構造をもつ選択肢には注意すること。本問では選択肢②が典型的であり、みるからに怪しい。「高山市」と県内の他の市町村との比較がなされており、文末が「強い」という形容詞で締めくくられているが、これは「弱い」という明確な反意語を持つ。もっとも「誤文」選択肢をつくりやすいことがわかるだろう

他の①、③、④の選択肢も非常に興味深く、表や文章中の数値を用いて計算することで正誤が求められる。地理は数字の学問であり、計算が必要な問題は多く出題されている。数字に対する感覚を養って欲しいな。

【34】【インプレッション】高度による植生の違いを問う問題なんだけれど、写真がちょっと見にくいなぁ。植物がよくわからない。背景の地形も含め、全体を捉えてみよう。

【解法】植生帯に関する問題。図5がわかりやすい。高い方から「高山帯」、「亜高山帯」と続き、最も低いのが「山地帯」。「森林限界」という言葉があるのでわかりやすいね。この標高より高いところは、低温であったり、降水量が少ない(気温が低いということは上昇気流が発生しにくく、大気中の水蒸気量も少ないため、降水量が少なくなる)ことから、樹木がみられない。このことは大きなヒントになりそうだね。

というわけで、「高山帯」から判定してしまっていいんじゃないかな。樹木がみられないものはAだね。草がまばらにみられ、裸地になっている部分も多い。急斜面になっているようで、高山にふさわしいと思う。Aが高山帯。

さらにBとCを判定。亜高山帯と山地帯の違いは(言葉によるヒントはなく)、標高差のみ。ただ、標高が違えばもちろん気温が違うのであって。比較的温暖な山地帯に対し、低温の亜高山帯となる。樹木については、最も高温の地域では「常緑広葉樹」、温暖な地域では「落葉広葉樹」、そして最も冷涼な地域が「針葉樹」。常緑広葉樹は熱帯(ジャングルなど)や、温帯の中でも温暖な地域(地中海沿岸の硬葉樹や西日本の照葉樹など)にみられるもので、乗鞍岳周辺では厳しいかな。でも、落葉広葉樹は十分に生育すると思うので、「山地帯」が落葉広葉樹。そして、冷帯に対応するものが針葉樹なのだが、これが「亜高山帯」と思っていいんじゃないかな。ロシアやカナダ、そして北海道などの寒冷地域に広がるのが針葉樹林であるが、岐阜県北部の乗鞍岳では山地の中腹が針葉樹で覆われているとみて間違いないでしょう。

で、写真判定。でもここからがわかりにくんだなぁ。BとC、さて、どっちが広葉樹でどっちが針葉樹かわかるかな。そもそも葉の形が「広く丸みを帯びている」か「針のように鋭い」かで広葉樹と針葉樹の区別がされるわけで、この写真では葉の様子はわからない。

でも、どうかな。針葉樹に分類される樹種として、スギやヒノキがあり、それらは建築材料として重用されている。Cのように高くまっすぐにそびえる樹木なんて、建物の柱にはぴったりじゃない?それに対し、Bの方は葉の数も多く、光合成も活発に行われているのかな。樹種ははっきりしないというか雑木林のような感じで、多くの種類の樹木にあふれているように見える。針葉樹については「タイガ」っていう言葉をみんなも知っているんじゃないかな。針葉樹の純林(同じ樹種が一面に広がっている)。そう考えてみると、多様な樹木がみられる雑木林は広葉樹から構成されているってことになるよね。Bが広葉樹、Cが針葉樹と考え、Bを「山地帯」、Cを「亜高山帯」と判定しよう。正解は②。

【アフターアクション】う〜ん、写真がみにくいなぁ。決定的なポイントって何なんだろうね。ただ、Cの写真をみて「針葉樹」と問題なく判定できればいいと思うし、それは決して難しくないとは思うんだけどね。地理の問題っていうか、理科それも小学校や中学校のレベルの問題だったと言えるかな。

<解答・配点>

[1]4(2点) [2]1 [3]1 [4]6 [5]4

[6}1 {7}1 [8]4 [9]2 [10]3

[11]3 [12]6 [13]1 [14]1(2点) [15]2

[16]1 [17]4 [18]5 [19]4 [20]2

[21]1 [22]4 [23]1 [24]4 [25]1

[26]6 [27]4 [28]4 [29]6 [30]3

[31]4 [32]4 [33]2 [34]2