2008年度地理B追試験解説

2008年度地理B追試験[第1問]

南アメリカの地誌問題。ちょっとベタかな。問1は過去問そのまんまの気候グラフ問題。問2はちょっと難解かもしれないが、一般的に難問が多い断面図問題の中ではまだマシだと思う。問3は意味がわからん。問4は有りがちなネタが出題対象となってはいるんだが、問われ方がちょっと特殊な気がする。問5は南米の自然環境に関する典型的な問題でガチでゲットしてほしい。問6はセンター初出ネタなんだよな~。変わっている印象です。

問1 まず赤道を引いてみよう。エクアドルからアマゾン河口に達する線で、ほぼAを通過する。Aは赤道直下であり、気温年較差はほとんどゼロに近いはず。赤道直下では、年間を通じて昼の時間が12時間で変化しないことを考える。よってアが該当。この都市はマナウスであるが、天然ゴムの交易で栄えた歴史があることを知っておいてもいい(アマゾン低地は天然ゴムの原産地である。

残ったBとCについてはいずれも南半球に位置する都市であり、イとウのグラフのいずれも7月を中心とした時期が低温(つまり冬)となっており、南半球であることを確認。

さらにBについては、ここはペルーの首都リマであるが、沿岸を北上する寒流の影響によって乾燥し、砂漠気候がみられることを知っておくべき。降水量がほとんどないイがBである。消去法でウがCとなり、1が正解。

なお、Cの都市はボリビアの首都ラパスであるが、標高が4000m近くに達し、その分だけ気温が極めて低い都市であることを知っておこう。南米の場合は他の大陸と違って、高山に都市が位置していることが多いため、標高を考えて問題を解く必要がある。コロンビアの首都ボゴタとエクアドルの首都キト、さらにこのラパスが高所に位置し、あたかも「常冬」のような気候が生じていることを知っておくといいだろう。

問2 難問。できなくてもいいと思う。A付近はアマゾン川流域の低地であり、標高が低い。またPの南側のブラジル南部一帯はブラジル高原であり、おおよそ標高1000m(コーヒーの栽培地域が標高1000mの高原であることから連想する)。このことを手がかりとし、正解を2とする。1ではブラジル高原がなく、3や4ならばアマゾンが低地ではない。どうかな?でも判断しにくいよね。

問3 これもよくわからない問題やねんなぁ。重要なのは4なので、これだけ判定してほしい。海溝の位置は頻出なので、知らないといけない。「海溝は太平洋の外周」が基本で、他にはインドネシアやカリブ海の一部にもみられる。Hは太平洋の外周に当たり、ここは海嶺ではなく「海溝」である。まず・は誤り。

またEもNG。大西洋側にも海溝はあることはあるが、それはキューバの周辺のみ。キューバの東にイスパニョーラ島という島があり(ハイチやドミニカ共和国がある)、さらに東にプエルトリコという島があるが、この北岸に沿って、プエルトリコ海溝というものがある。余裕があれば地図で確認しておこう。1も除外。

残った2と3であるが、これは判定ができないんやなぁ。とりあえず正解は3なんだそうです。う~ん、普通大陸棚っていうと魚がたくさん捕れるイメージがあって、東シナ海やタイの近海、さらに北海などが代表例なんだが、さすがにここは知らないなぁ。

2の誤りもよくわからない。アマゾン川については「国際河川」であることだけ知っておけばいいと思うよ。勾配が極めて緩やかな大河で、外洋船舶がブラジルを越えてペルーまで遡っていけるのだ。例えば、本流にはダムが建設されていないことは重要(支流にはあるんだけどね)。ブラジルは水力発電国だが、アマゾン川で発電しているわけではない。

問4 これはガチでいけると思う。正解は4。偏西風の影響が強いのはチリ南部であり、ペルーではない。チリについては細長い国土を持っているだけあって、地域によって全く違う自然環境がみられることがポイント。北部は砂漠。寒流の影響によって大気が安定し、降水がほとんどみられない。ちなみに銅山が位置しているのはここ。中部は地中海性気候。緯度35度、大陸西岸には夏季乾燥型の気候すなわち地中海性気候が分布するのだが、南米大陸ではこのチリ中央部がそれに該当する。1月になると、南下してくる中緯度高圧帯の影響で少雨となるのだ。チリは実はブドウの生産が多いことを知っておこう。

さらに最も重要なのはチリ南部。ここは偏西風帯に当たり、年間を通じて西からの風が卓越している。太平洋から湿った風が吹き込むため、降水量が多い一帯となっているのだ。しかしかつてこの地域を覆っていた大陸氷河の影響によって土壌が削り取られてしまったため、農業には適さず、人口過疎地域ともなっている。なおその大陸氷河の影響で、沿岸にはフィヨルド地形が広がる。ノルウェーとイメージが近い地域。

このことをふまえ、正解を4とする。偏形樹という言葉は始めて聞いたが、このような樹木があるとすれば、偏西風の影響が強いチリ南部だろう。

他の選択肢については不問。とりあえず解説。1;アンデス山脈は新期造山帯だが、ブラジルを中心とした他の地域は安定陸塊。問2でポイントとなったブラジル高原にしても安定陸塊である。南米大陸は石炭資源の乏しい地域なのだが、古期造山帯に含まれる地形が存在しないことと合わせて押さえておこう。2;熱帯の土壌はラトソル。赤色の酸性土壌である。3;オリノコ川というのはベネズエラを流れる川なのだが、これに沿う熱帯草原をリャノという。ま、センターに登場するのはこれで2度目なので、名前だけ知っておいてもいいのかな。

問5 K地域の西岸つまりチリ南部については、「多雨」と「フィヨルド」がキーワード。偏西風の影響によって湿った風が吹き込み年間を通して多雨。かつて大陸氷河に覆われており、氷河の侵食によるU字谷が沈降し、海が入り込むことによって形成されたフィヨルドが海岸に広がる。温帯林に関してはよくわからないのだが、「U字谷」についてはフィヨルドのキーワード(氷河によって削られた谷の断面はU字形となるのだ)なので、まず選択肢は5と6にしぼられる。

さらに反対側の東岸に目を移してみよう。ここはアルゼンチン南部のパタゴニア地方。偏西風の風下斜面側に当たり、降水量は極めて少ない。太平洋から吹き込んだ偏西風は、西岸(風上斜面側)のチリ南部に豊かな降水を与えるが、その過程で水分を使い果たし、風下斜面側には常に乾いた風が吹き続ける。このためパタゴニア地方の降水量は少なく、高緯度地帯には珍しい乾燥地域となる。よってここは「草原」が該当する。一部には砂漠がみられるほどの乾燥地域なのだが、実は大陸東岸で砂漠が分布するのは世界中探してもこのパタゴニア地方のみ!

正解は6。チリとアルゼンチンの国境はアンデス山脈であり、高所であるので、山岳氷河などもみられるだろう。

問6 センター試験初出のネタでちょっとビックリなんだけど、何とかなるかな。カはXのガラパゴス諸島、キは高山なのでYのペルー中部(アンデス山脈)、クは残ったZ。

Zについては「ブラジル=水力発電国」というネタを知っておくべきかも。Zのブラジル・パラグアイ国境には巨大なイグアスの滝がかかっているのだが、滝があるということは降水量が多く地形も険しいということ。ブラジル高原南部のこの地域では多くのダムが建設され、発電がさかんに行われているのだ。

滝なんていう話題が登場するなんてちょっと驚きなんだが、ここではむしろ滝そのものよりそこから派生する水力発電というキーワードを意識するべきだろう。なお、世界三大瀑布の他の二つは、北米五大湖のナイアガラの滝、アフリカ南部ザンビアのビクトリアの滝。ナイアガラの滝は、横に船舶の航行できる水路がくっついている変わった滝。五大湖は内陸水運のさかんな水域である。ビクトリアの滝の近くには、ザンベジ川にカリバダムが建設されており、近隣で採掘される銅鉱の製錬が行われている。ザンビアはカッパ-ベルトと呼ばれている。

2009年度地理B追試験[第2問]

そのまんまホイットルセー農業区分に驚き!僕なら模試でこういった問題を作りたいなって思うんやけどね。そもそもホイットルセー農業区分はセンター試験最重要ネタの一つなので、こうした問題を通じて受験生の意識が高まることは大切だね。このホイットルセー農業区分や、さらに農産物統計などをマスターしておけば、全体としては容易な問題が並ぶ。唯一気になるのが問3で、これはデンマークについての知識問題になっている。問題の解説でも説明しているけど、2と3で迷うんだよね。実は3の「生産過剰の問題」っていうのもヨーロッパのキーワードだったりするわけで、2が正解としてもやっぱり判定はキツい。

問1 あまりにもホイットルセー農業区分そのまんまの問題で僕は驚かされるんだが、みんなはどうだっただろう?ホイットルセー農業区分についてはある程度の知識が必要ってことなのだ。

まずウクライナに注目。個人的にはちょっとこの国が気になるんだよな。これからセンターでブームが来るかもしれない。場所をしっかり目で確認しておくこと。黒海の北岸に接する国である。このウクライナから東方に向かって帯状に広がっているのがチェルノーゼム。厚い腐植層をもつ肥沃な土壌であるが、成帯土壌であるため、気候帯に沿って帯状に分布することとなる。このような肥沃な土壌と一致する農業区分が「企業的穀物農業」であり、小麦の専業地帯である。小麦は地力は大きく消耗する作物であり、肥沃な土壌の存在が栽培条件となる。なお、小麦は家畜の飼料とはならないので、企業的穀物農業は「無畜」であることも知っておくといい。Aが企業的穀物農業。

さらに「混合農業」について。混合農業で君たちが知っておくべきは「ドイツ・ポーランド」と「米国コーンベルト」。ドイツ・ポーランドでは土壌は大陸氷河に覆われており、家畜の排泄物を肥料として農業が行われているが、飼料作物としてライ麦とジャガイモを輪作し、豚を飼育する農業形態。米国も同様に飼料作物と家畜を組み合わせた農業が行われているが、こちらはトウモロコシ・大豆と豚・牛。

このことをふまえて考えてみると混合農業地帯は、ドイツやポーランドを含むCとなる。ここではロシアを含む広い範囲が含まれているが、まぁそんなに意識する必要はないかな。

プランテーション農業は、熱帯・亜熱帯地域における農業形態で、商品作物が栽培されている。ギニア湾岸のカカオなどが代表例。Bが該当。スリランカも黒く塗られているが、これは茶かな。インドネシアのジャワ島も真っ黒なんだよな。ジャワ島は棚田がみられることからわかるように本来ならアジア式(集約的)米作地域と考えるべきなんだが、ここではプランテーション農業地域となっている。ん~、よくわからないな。どうでもいいかな。

問2 アフリカのコンゴ盆地に注目。「焼畑農業」である。3が正解。1は企業的牧畜、2は園芸農業、4は地中海式農業。

問3 1の「企業的」、4の「粗放的」ないずれも新大陸のキーワード。選択肢中で新大陸は2つあり、「アメリカ合衆国太平洋岸」と「ニュージーランド」がこの・か・に該当。

残った2つについては2の「協同組合」に注目。デンマークは国土が大陸氷河に削られてしまったというハンデを抱えた国であるが、耕地面積を拡大させたり(国土面積に占める耕地面積割合は50%を越える)、協同組合制度を充実されるなどして、このハンデを克服し、現在は小麦輸出国へと転化している。2が正解。

残った3は北海道。北海道は本来「アジア式(集約的)畑作農業」地域に区分され、「酪農」ではないのだが、とりあえずオマケって感じです。センター過去問に参考になる問題があるので参照してみよう。02B本第5問問5で、北海道東部の根釧台地の農場の

様子が取り上げられている。これはパイロットファームとよばれる実験農場。「第二次世界大戦後に入植によって酪農が広く行われるようになった」とはこのパイロットファームの存在を意識したもの。

問4 サ(ラクダ)は乾燥地域でアラビア半島のG、シ(トナカイ)は寒冷地域でスカンジナビア北部のE、ス(馬)はモンゴルでF。正解は・。

問5 アジア式(集約的)畑作農業とアジア式(集約的)米作農業。Rの地域(華中から華南)はアジア式米作農業地域であり「稲作」が該当。年降水量が1000mmに満たない東北区や華北はアジア式畑作農業地域。より寒冷なPが「春小麦」、比較的温暖なQが「冬小麦」。4が正解。

なお、Qは黄河の流域であるが、上流から黄河の流れによってもたらされる肥沃な黄土(レス)を利用して、小麦が広く栽培されていることも重要。

問6 何ちゅうベタな問題や!生産量が多い1が中国、輸出量が多い2がタイ、3が日本、4が米国。なお、タイは土地生産性が低いので「1ha当たりの米収穫量」が低い点にも注目しておこう。

2009年度地理B追試験第3問

これ、変わった大問だよね。新課程になって新たに地理Bに取り込まれた分野がテーマとなっている。これまでは地理Aの分野だったところなんだが、その分だけちょっと戸惑うし、考えにくい問題が並んでいる。もしかしたらあっさり解けてしまった人も多いかもしれないけれど、僕としては、全体的にはかなりクエスチョン。問1も決めてはない。問2もイマイチ。問3と問4は宗教的偏見を助長するような内容で僕は好みではない。問5は唯一ナイスな問題とは思うんだが、だからといって例えば授業で使用するレベルでもない。問6はもはや意味がわからないんだが、出題者もそれを意識してか、ある低程度一般常識の範囲で解答可能な問題としている。地理Bっぽくないけれど、だからといって得点しにくいわけではない。

問1 食事に関する問題っていうのは、今までは地理A特有のジャンルだったんだが、新課程になって地理Bでも取り入れられたところ。結構難しいんじゃないかな。イの「ライ麦」に注目。ライ麦はポーランドなどで生産が多い作物だが、小麦やトウモロコシに比べて寒冷な気候環境下で生育可能。AからCの中でポーランドに該当する地点はないが、これに最も近いもの、そして寒冷な気候がキーワードとなり、Aがイに該当する。

イとウに関してはなかなか判定が難しいんだよね。ただ「雑穀」なんていう言葉から、経済レベルが高くより近代的な農業経営がなされている西ヨーロッパで雑穀っていうことはないんじゃないかな、って考える。西ヨーロッパは普通に小麦でしょ。Bがアに該当。Bってよくわからないんだが、フランスの南部っぽいよね。小麦を食べているってことでオッケイだと思う。正解は3。

ちなみにCはウ。エチオピアではトウモロコシをすりつぶして粉状にして固めた「ウガリ」というものを主食にしているんだそうだ。過去に地理Aでは出題例がある。ただ、トウモロコシは新大陸原産のものであり、エチオピアには近代になって持ち込まれたものだろうから、決して伝統的な食べ物っていうわけでもないんだろうけどね。

問2 家屋の問題。これも地理Aっぽいんだが、問1よりは考えやすいし、楽だと思う。問題としての重要性もこちらの方が高い。

わかりやすいキーワードは「日干しレンガ」。乾燥地域では火を用いて焼かず、太陽で乾かしただけの日干しレンガが建築材量として使用されている。もちろん雨が降ったら溶けてしまうんだが、乾燥地域ならそもそも雨の可能性が低いからね。このことから、ニジェール川沿いのサヘル地帯を示すFがクに該当。乾燥地域と思われる。

さらにカに注目。地中海沿岸地域の特徴として建築材量として木材を用いず、石灰など石材を使用することを知っておこう。地中海沿岸の植生はオリーブに代表される硬葉樹であるが、これらは硬い上に樹高が低く、枝や幹も細いため、建築材量には適さない。この地域に豊富である石灰岩を生かした家造りが行われている。

問3 これがよくわからないんだよな。この第3問っていうのは実は微妙な問題が揃っているような気がするんだわ。これにしてもインドネシアで女性が全身を衣服で覆っているのは「強い紫外線から皮膚を守る」ためではなく、「イスラム教の教義に従って」のことであるので、この点がNGってことなんやろな。たしかに正解は3なわけです。

でもそもそも乾燥地域で生じたイスラム教は、乾燥地域で生活する「知恵」のようなものが教義に含まれているのであって、イスラム教が女性が肌を見せるのを禁じる根底には、紫外線対策の意味も絶対にあったと思うんだよね。その点はどうなんだろう?

それに一般的に女性の権利が迫害されているとみなされているイスラム教であるけれど、実はイスラム教国に女性の首相が多かったりして、日本の方がよっぽど女性の社会的地位が低いんじゃないかと感じさえもする。イスラム教に関する偏見がセンター試験には満ちあふれているのか?

問4 これもやはりイスラム教に関する問題。イスラム教では戒律によって豚の肉を食することが禁じられているので、イスラム教徒に食事を提供する場合にはそういった点に気を遣わないといけない。4が正解。

でもこれも妙にイスラム教に対する偏見を助長するような選択肢だよね。戒律によってある食材の使用が禁止されてる例はイスラム教だけではなく、むしろ全ての宗教にある。それにそもそもイスラム教が豚を嫌う理由は、牧草を食べて「勝手に」成長していく羊や牛に比べて、人間が餌をわざわざ与えないといけない豚は、本来人間が食するはずの穀物などを消費してしまうため、食糧の少ない乾燥地域では存在を許されない家畜であるからだ。そこんとこどうなんだろ?ま、しゃあないか。

他の選択肢についてはよくわかりません。

問5 地価の高い都心部は人口増加率の低い地域(っていうかむしろ減少していると考えるべきかな)。ドーナツ化現象を考える。もちろん3が正解です。

問6 これもよくわからない。この第3問はあえて新課程っぽいジャンルを意識して問題を作っているせいか、なかなか問題作成者が苦労しているよね。でも作成の先生もさるもので、それならそれで一般常識で判断できるような問題にすればいいんじゃないかって開き直っている。本問がその典型。どうだろう?「働き蜂」と揶揄(やゆ)される日本人労働者の余暇時間が他の国に比べて長いっていうことがありえるか?バカンスといった長期休暇が一般的であるヨーロッパ諸国の方がたっぷり余暇時間を満喫しているんじゃないかな。OECD加盟国っていうのがよくわからないけれど、ここはそれにこだわる必要はないと思う。正解は1です。

2009年度地理B追試験[第4問]

西アジアを中心とした地域の地誌。03年の追試で登場した範囲であるが、やっぱり本試験ではちょっと取り上げにくいのかな。そんな気もするな。でも問題自体はオーソドックスだったりする。問1は大地形に関する問題で、このジャンルにありがちな傾向として、難しいのは仕方ない。問2はハイサーグラフが使用されてはいるが、わりと普通の問題。問2はまたしてもホイットルセー農業区分。しかしこの写真と「カナート」という言葉はセンター初出だったりする。問4はそのまんま解くしかない。問5は1人当たりGNIが話題の中心だが、解答しにくいということはないだろう。むしろ意外な難問だったのが問6。僕は楽だと思うんだが、間違えた人が多いんだよね。文章正誤問題のニュアンスというものを意識するべきだろう。

問1 かえって難しいんだよな。でも大地形の問題ってこうして出すしかないと思う。正解は1。イランの大部分を占めるイラン高原やその周辺の山脈は、アルプス・ヒマラヤ造山帯に属する新期造山帯である。2;これは全く関係ない。3;Cは「紅海」という海域であるが、東アフリカ大地溝帯の延長上に位置し、むしろプレートが「広がる」方向にある。大地の裂け目に海水が入り込んだもの。4;アラビア半島はかつての古大陸ゴンドワナランドの一部なんだよね、実は。だから安定陸塊。っていうかこんなん知らないか。とりあえず「アフリカ大陸=ゴンドワナランド」は知っておいてほしいけど、他はどうでもいいような。

問2 定番の問題。暑いか寒いか、気温年較差は大きいか小さいか、で判定する。

リヤドの判定。最も低緯度に位置し、最も高温であると考える。4が該当。

トビリシの判定。最も高緯度に位置し、最も冷涼であると考える。3が該当。

ベイルートとテヘランについては、ペイルートが地中海に面する沿岸部の都市であり、テヘランについては(カスピ海に近いが、決して接しているわけではないことに注意)内陸部の都市であることを考える。気温年較差が小さく、海洋性の気候とみられる2がベイルートで、気温年較差が大きく、大陸性の気候がみられる・がテヘラン。なお、ベイルートもテヘランも東京とほぼ同じ緯度に位置する都市であり、原則として気温や気温年較差に違いはないはずなのだが、東京(東岸に位置する)の気温年較差が約20℃であるのに対し、西岸のベイルートは10℃程度、内陸部のテヘランは30℃近くにまで達する。降水量は、東京が最も多く、次いでベイルート。最も少ないのがテヘラン。「西岸」「内陸部」「東岸」の気候のキャラクターを確認しておこう。

問3 X地点の農業区分だが、「企業的」な農業・牧業形態は原則として新大陸(アメリカ・オーストラリア)でしかみられないので、ここでは「オアシス農業」を選ぶ。伝統的な灌漑農業のことで、西アジアなど乾燥地域においては最も広くみられる農業形態。外来河川や地下水路から取水することで、耕地に水を与え、小麦やナツメヤシ、時には綿花など栽培する。

さらに写真に注目。これはカナートとよばれる地下水路を上空から撮影したもので、あたかも「手術の跡」のような連続した点々がみられる。これは地下水路を建設する時に設けられた縦穴で、補修時にもこの穴は利用されている。

よって正解は1。カナートなんていうカタカナ言葉が登場するのは珍しいが、追試験でもあるし、また実質的にクリークとの2択であり、カンでも当たるもんね(笑)。さほど重要性は感じません。

ちなみに「クリーク」は水田に送水・排水するための水路であり、東アジアから東南アジアの米作地域にみられる。「アジア式(集約的)米作農業」に対応するキーワード。

問4 これは素直にペルシャ湾岸に多くみられるものを選んだらいいと思う。3でしょ、おそらく。他はわかりません。

問5 ウが鉄板。「トルコ=ドイツ」である。EUには加盟していないものの、実際にはヨーロッパ諸国との間に自由貿易が実現しているトルコは、貿易など経済的な指標においてヨーロッパと強い結びつきがある。ヨーロッパ最大の国ドイツが貿易トップに来るのは当たり前。

アとイの判定がちょっと難しいんだわ。1人当たりGNIで考えるしかない。サウジについては世界最大の原油産出・輸出国であることを必ず知っておくのだ。たしかにイランもOPECに加盟する産油国なんだが、それにしてもサウジより1人当たりGNIが高いということはないだろう。アをサウジ、イをイランと考えるのが適切なように思う。正解は3。

ここからおまけ。イランは人口約7000万人に達する人口大国であり、人口が2000万人に満たないサウジアラビアより「1人当たり」の値が低いのは当然のこと。でも逆にいえば、7000万人もいるのに1人当たりGNIが2000ドルを越えているっていうのは、なかなな凄いと思うよ。さすが産油国。さらに貿易国に注目すると、イランの主要貿易相手国に米国の名前がない。イランは米国から「テロ国家」に指定されており、まさに米国から敵対視されている。米国とイランとの間に経済的交流が少ないというのは当然のことなんだろうね。でも日本はちゃっかりと貿易してるけど(笑)。米国の主義や主張は、決して日本の国益とは一致しないのだ。

問6 原則として、発展途上国で先端産業は発達しない。コンピュータソフト開発がさかんなインドのような例外もあるが、それにしても「南アジア」であり「中央アジア」ではないよね。過去にも「中国」「ロシア」「メキシコ」「ボリビア」などが対象になってハイテク工業が発達しているかどうかが問われたが、もちろん全てNG。今回のターゲットは中央アジアだったっていうこと。4が誤りです。

で、せっかくなんで追加でしゃべっておくと、近年はそのインドを初めとして案外と発展途上国でもハイテク産業が発達しつつある地域があるのでややこしい。センターでも「マレーシア・クアラルンプール郊外のサイバージャヤ」で先端産業が育成されているというネタが登場した。今後はこういった発展途上国の先端工業ネタにも変化があるのかもしれない。

1;その通り。「金は人を動かす」のだ。2;よくわからないが、そんなもんかもしれない。3;これについては、サウジアラビアが実は「小麦の輸出国」であるというネタが過去に出題されたことがあるので、それを例として知っておこう。サウジは有り余るオイルマネーを農業振興にも利用し、小麦の増産に成功、現在の自給率は100%を越えている。

2009年度地理B追試験[第5問]

環境問題っていうネタ自体は非常に出題率が高くて、今回もその例に倣ったものであることは十分に理解できるのだが、それにしてもちょっと出来が悪い感じがするなぁ。問1~問3はやや手抜きっていう印象だぞ!ま、簡単だからいいけど(笑)。逆に問4は地理Bでは本来出題されることのないはずの国際条約に関する問題。やっかいだよな。問5はさらに困ったことに、非常な難問となっている。おそらく今回間違えるならこれだろうな。難問っていうか、問題の意図がちょっと理解しにくいんだわ。ただし、問6についてはよくもまぁこんなデータを探してきたなって感心させられるもの。この問題だけは結構好きだな。

問1 地球温暖化で「氷河の拡大」が生じるわけがなかろう。4が誤り。

問2 古い時代から消費されていたGが石炭。1960年代ぐらいから急上昇してきたFが、石油。近年急上昇のHが天然ガス。ここは1960年代のエネルギー革命がポイントとなる。エネルギー源が石炭から石油へと転換されている。正解は3。

なお、石油については1960年代の上昇の後、70年代のオイルショックの時期に落ち込み、1980年代の省エネの時代にまた低下する傾向にあることも確認しておこう。興味深い動きである。

問3 急激に割合の上昇したものと考えていいと思う。4が正解。他はよくわからない。

問4 地理Bでこういった国際条約に関するネタが出題されることは極めて珍しいのだが、追試験だから仕方ないかな。とりあえず最低限のことだけ知っておこう。

二酸化炭素など温室効果ガス排出の削減を求めた京都議定書によって、先進国は二酸化炭素排出の削減義務を負い、例えばわが国は6%を将来的に削減することを求められた。しかし米国はこれに批准せず、世界最大のエネルギー消費国が参加しない、いわば実態のない条約になってしまったのだ。

また、発展途上国については、二酸化炭素排出削減は発展のさまたげになるという理由で、その義務を負うことはない。中国などは世界第2位の二酸化炭素排出国でありながら、その排出量については何の制限もない。

以上、それぞれの選択肢の内容を把握し、京都議定書には実は「穴」が多く、地球温暖化防止への道は全く順調ではないということを知っておこう。

問5 国土面積がわかれば、(国土面積)×(国土面積に占める森林面積の割合)で(森林面積)を求め、その(森林面積)を(人口1人当たりの森林面積)で割って人口を算出できるんだけど、どうかな?

まぁでも「人口1人当たりの森林面積」が人口密度に反比例するっていうイメージは簡単に持てるんじゃない?カナダは広大な国土にわずか3000万人の人口という人口過疎国であり、1人当たりの森林面積は当然広いと思っていいんじゃないかな。1がカナダである。森林面積割合は他の3か国に比べ低い数値となっているが、カナダは国土の北部にツンドラが広がっているなど寒冷な気候環境を有し、意外に森林ばかりの国でもないんかな?っていうイメージはあるよね。森林面積の増減率についても「0.0」で減少していない。針葉樹など冷帯林は企業的な管理がなされ、植林などもしっかりと行われている場合が多い。問題ないでしょう。

残った3つのうち、同じく1人当たりの森林面積が高いことに注目し、これをやはり人口密度の低そうなブラジルと判定。人口は2億人と多いものの、日本の20倍を越える人口を有し、人口密度は当然低いはず。ブラジルは熱帯林の国であり、森林面積も減少しているのではないか。

さらに残った2と3。ここも1人当たりの森林面積に注目したいところだけど、マレーシアの面積とか人口って知らないよね。ちょっと人口密度も概算しにくいかな。だからここは「森林面積の減少率」に注目するしかない。熱帯に位置し、熱帯林が国土を覆うマレーシア。こういった国でこそ森林の減少率が高いのではないか。輸出用木材として過剰な伐採が行われ、沿岸域ではエビの養殖のためマングローブ林が失われ、さらには人口増加により焼畑によって焼き払われる森林も増えているかもしれない。「-12.3」などという極端な数値が登場している2こそ、マレーシアと考えていいだろう。

ちなみに、日本とマレーシアというのは面積がほぼ同じ(日本が38万平方キロメートル、マレーシアが30万平方キロメートル)にも関わらず、人口は日本が1.25億人、マレーシアが2千万人とずいぶん違う。2と3において人口1人当たりの森林面積が5倍ほども違うのは、この人口密度の差から考えて納得だね。

(参考)熱帯林の減少の要因の一つに土壌の問題がある。熱帯の土壌であるラトソルは金属を多く含む土壌。樹木が取り払われて裸地となると、土壌が直接日光にさらされることにより土壌中の金属分子が地表面へと持ち上げられて硬化し、ラテライトという物質を形成してしまう。ラテライトに覆われてしまうと、もはや樹木が根を張れるような軟らかい土壌ではない。きわめて植物の生育しにくい地面の状態となるわけだ。このラトソル(そしてラテライト)の存在も熱帯林減少を助長している。ま、センターに登場したことのないネタなんでどうでもいいんですが、とりあえず参考までに。

問6 僕が使用している原版も印刷の程度が悪くて、それぞれのエリアの判定が難しいんだが、とりあえず推測しながらやってみます。

文中の注釈にもあるように、「値が小さくなるほど酸性が強い」のだが、要するに数値が小さくなればなるほどヤバいっていうこと。「酸性の度合いが高い」っていうイメージから数値が大きくなるほど酸性と考えてしまうと混乱する。ちゃんと「数値と酸性度は反対向き」であることをふまえてから考えてみよう。

1;北東部にはたしかに「pH4.3」未満の場所が多い。この地域はたいへん酸性雨が深刻となっていることを理解しよう。そして04年にはこの地域が縮小している。全体的にpHの値が高くなっているわけだ。「酸性が弱まっている」ことは間違いないだろう。1は正文。

2;中西部から南部などpH4.3~4.8の場所はある。しかしテキサス州の辺りに顕著なのだが、こうした「4.3~4.8」の地域が「4.8~5.3」に転化している。数値が上昇している、つまり酸性度は弱まっているのだ。文章にあるように「酸性が強まった」のではない。

3;2と同様に、「4.3~4.8」のエリアが縮小し、「4.8~5.3」のエリアが拡大したことを考える。酸性は「弱まっている」のだ。

4;たしかに米国全体で環境は改善され「酸性は弱まっている」ことは正解。ただしここでは「pH5.3以上」の地域は「縮小」せずに「拡大」していることがポイント。

1が正文なのだ。こういった「見るだけ」問題で最初の選択肢が正解というパターンは実は珍しかったりするんだが、逆にとまどうよね(笑)。やっぱり最後までしっかり洗濯しを読むクセをつけておかないと。

2009年度地理B追試験[第6問]

リオさんっていう名前が特殊(笑)。変わった問題だなぁ。でも最近は北海道や青森県、山形県、さらに富山県などやたら雪国ばかりが出題されていて、今回も同じ傾向。むしろベタすぎてビックリかな。問1はオーソドックスな気候判定。輪島を当てるだけなので無理ではない。問2は簡単だなぁ。問3はなかなかおもしろい断面図問題。傾向が今までとは違う印象。問4は過去問にも出てるし、簡単でしょう。問5は見るだけ、問6も過去問に類似の例あり。全体としても難易度は低いし、全問正解を狙いましょう。

問1 ホント、日照時間っていう言葉はよく出るよね。「日本列島の日本海側の地域は冬の日照時間が短い」ということを意識すれば十分だと思う。北西からの季節風が卓越する冬であるが、大陸から吹き出した乾いた風が、日本海上空で水分をはらみ、日本列島にぶつかる。日本列島の日本海側は冬の間はずっと曇りがちの天気になるわけだ。よってここは単純に・を選択。しかし1ヶ月で「42時間」っていうことは、冬の日の昼の時間が10時間とすると、4日のみ晴れで、残りの25日以上は雪か曇りってことだよ。すごいとこだよな!!!

他については不問。3の「-5.5℃」っていうのはいくら何でも低すぎると思うので、これは標高が高そうな(図から判断するしかないんだけどね)高山と考えていいと思う。2と4は全く分かりません。っていうかそもそも名古屋と彦根でそんなに気候が違うか?

問2 4 これは問題ないと思いますが。

問3 1 ちょっとおもしろいな、この断面図問題。等高線にこだわったら案外と解きにくい。土地利用が分かりやすかったりするんだわ。

Aからスタート。まず「畑」を通過するよね。だからここはちょっと高いわけだ。そこからすぐに「田」となる。一旦、低地を通過するのだろう。そして「体育館」の辺りはいくつか等高線もみられ、さらに「針葉樹」となっていて「田」が消えているので、ここは高所であることがわかる。

この「高所→低地→高所」という組合せに注目し、選択肢を1と3に絞る。ここまではオッケイだよね。

ここから厄介かも。1と3って形が同じなんだワ。でも唯一違うのは「標高」。1では最高所(体育館の辺りだと思う)の標高が60m程度であるのに対し、3ではその倍の約120m。さぁ、どっちだと思う?

この地形図の縮尺は2万5千分の1(これは問題文に書かれている)。等高線の間隔は高度差10mである。体育館のやや南に「55」という独立標高点がみられ、これが手がかりになる。「55」を囲むようにやや太い等高線があり(太い等高線を計曲線といい、50mごとに引かれているのだ)、これが高度50mを表すことは明らか。これをずっと延長していくと、体育館の近くまで行くんだが、体育館の建物自体は等高線もう一本だけ上にあるよね。どうだろう?このことから標高60mぐらいと判定していいと思うんだが。よって正解は1となります。土地利用や具体的な数値にこだわって判定するという、いかにもセンター試験的なひねくれた(?)断面図問題だったりするのです。

問4 写真が見にくくて申し訳ないっす。これ、棚田なんですよ。棚田の写真はよく登場するので、過去問のどこかで見ておいてください。とりあえず01B本第1問では東南アジアの棚田が登場してます。

問5 1;計算しないといけないな。1992年の総入込客数は2300人。2005年は1700人。3分の1っていうことはないよね。2;2001年から2003年は増加している。3;ともに減少している。4;総入込客数は1700人であるが、宿泊客数は200人。たしかに3割以下である。4が正解。

しかしこういった「見ただけで解ける」問題(ま、計算はしないといけないけど、その場でできることにはかわらないよね)って意外と4が正解っていうことが多いんだよね。

問6 過去問そのまんまだね。「若者が移動する」というセオリー。

こうした地方農村では、人口は確実に減少するのだが、その理由は若年層の流出。若い世代が流出することによって人口が減っていくのに対して、老年層は相対的に数値が上昇していく。老人ばかりが取り残されていくのだ。「人口減少地域は必ず老年人口割合が高い」ということもセオリー。

最も減少の程度の著しい1が「15歳未満」、それに次ぐ2が「15歳以上65歳未満」、そして「取り残されている」ため人口がずっと横ばいになっている4が「65歳以上」、全体の平均となっている3が「総人口」。

別解法として、老年人口率と幼年人口率の関係を考えるという方法もある。横ばいの4が「65歳以上」の人口であるのは確実だよね。全体の人口は減少しているわけだから、横ばいの老年人口の割合については相対的に上昇していることになる。ここで意識するのは「老年人口率と幼年人口率は反比例する」という数学的セオリー。老年人口率が上がっている一方、幼年人口率はそれと相反して下がり続ける。ここでは最も極端な値として1を選択する。昔の日本では、子供が多く老人が少ない社会だったが、その様相は現代社会においては完全に逆転している。