2009年度地理A本試験解説

2009年度地理A本試験[第1問]

 

問1 [講評] 地理Bではありえない問題。新課程になって地理Aと地理Bとで差別化が強まる傾向にあるが、このように地理Bでは取り上げられない問題が、積極的に地理Aでは取り上げられている。

[解法] アとイの間に「日付け変更線」が通っているわけだ。日付変更線は180度の経線にほぼ沿うもの。イは日本より早く、既に午前9時ぐらいだと思われる。ウは日本とほぼ同じ。エは日本より数時間遅れているから、まだ午前4時ぐらいかな。それに対し、アはまだ「昨日」なわけだ。

ちょっと気になる? ま、どうでもいいでしょ。問題そのものも決して難しくはない。時差については「日本の方がロンドンより9時間進んでいる」ことだけ知っておけばいい。今がお昼の12時だとすれば、時計を9時間戻して、ロンドンの時刻は未明の3時なのだ。

 

問2 [講評] 地理Bではこうやって直接的に新期造山帯と古期造山帯を問う問題は珍しいが、知っておいて損はしない。問題自体はやや難しいものの、研究の価値はある。

[解法] まずAに注目。これはウラル山脈。ロシアをヨーロッパとシベリアに分ける巨大な山脈で古期造山帯。地理Bでは追試でこの山脈が古期造山帯であることが話題とされたことがある。

さらにDに注目。こちらは鉄板だと思う。オーストラリア東岸に沿うグレートディバイディング山脈は古期造山帯の代表例。この地では地震が生じず、火山もみられないっていうネタがたいへんよく出題されているね。

そしてB。これが一番やっかいかも。南アジアは、インド北部のヒマラヤ山脈やチベット高原こそ新期造山帯ではあるけれど、インド半島は安定陸塊なのだ。Bの山脈にしても安定陸塊上の山脈であり、もちろん新期造山帯ではない。正解は消去法でCとなります。

ちょっと気になる? Cの山脈はパトカイ山脈っていって、アルプスヒマラヤ造山帯に含まれる新期造山帯ではあるんだけど、それよりも人種境界としての意味が大きいことで有名だったりする。インドまでは白色人種が分布し、この山脈を越えた東南アジア側は黄色人種。西から移動してきた白色人種の移動はこの山脈が東側の限界となっているわけだ。ま、そんなことはどうでもいいか(笑)。

それよりも気になるのはBなんだわ。インド半島って安定陸塊なんだけどこんなことが問われるのってすごく特殊じゃない?実はインド半島は安定陸塊の中でもかつて地球に存在した古大陸であるゴンドワナランドの一部なんだよね。過去にセンター試験では、アフリカ大陸がゴンドワナランドであることが問われ、さらに昨年の追試ではアラビア半島が同じくゴンドワナランドであることが取り上げられた。で、今回のインド半島でしょ?あと残されたゴンドワナランドのメンバーは南アメリカ大陸とオーストラリア大陸と南極大陸なんだよなぁ。南米とか南極はちょっと問われにくいと思うんで、ここでは「オーストラリア=ゴンドワナランド」っていうのをちょっと頭に入れておこうか。オーストラリア大陸は西部から中央部の広い範囲が安定陸塊のゴンドワナランド、東部のみ古期造山帯という感じです。

 

問3 [講評] 一見何の変哲もない簡単な問題だけど、実は「羊」がおいしいんだよな。僕はそこに激しく注目するのです。

[解法] まぁ文章を読んだだけでモンゴルだっていうことはだいたいわかるとは思うんだけど(笑)、しっかり理屈付けて考えていきましょう。「降水量が少ない」というフレーズからキとクが消える。キは中国の南半部(華中という地域)で長江流域で米作が行われていることからわかるように降水量は多い。クは赤道直下であり、年中赤道低圧帯の影響が強いため年間を通じて降水量が多いはず。残った少雨地域はモンゴルのカとオーストラリアのケだが、ここでポイントは「羊」になるんだよな。オーストラリアの羊は、主に羊毛用として海外から持ち込まれたもので企業的牧畜と対応する。決して「遊牧」されるようなものではない。伝統的な羊の遊牧地域としてはやはり旧大陸を考えるべきで、ここはカのモンゴルを正解とする。

ちょっと気になる? やっぱり羊に注目しておこうよ。オーストラリアを象徴する動物と思われている羊や牛であるが、実は海外から持ち込まれた外来種であり、この大陸の伝統的な家畜ではない。このことは何回も、しかもさりげなく、問われているので知り得なのです。

あ、それから一応ですが、ここでも「遊牧」といったホイットルセー農業区分ワードが登場しているね。キは「アジア式米作」、クは「焼畑」、ケは「企業的牧畜」なのだ。

 

問4 [講評] こういった領土に関する問題も地理A特有のもの。でもいわゆる「見るだけ」問題でもあり、チャレンジする価値はあるかもね。さらに「北極圏」や「北回帰線」など地理Bでも重要となるキーワードが入っていたりして、実は興味深い。

[解法] 1は見るだけで誤りと判定できるでしょう。2についても同様。問題は3と4なんだわ。極圏というのは、夏季に白夜となり、冬季に極夜となる範囲のことで、北半球ならば北緯66.6°より北極側のエリア(北極圏)、南半球ならば南緯66.6°より南極側のエリア(南極圏)。白夜と極夜の生じるシステムと極圏との関係は、地球が地軸を傾けて太陽の周囲を公転している話をしないといけないので、さすがに今回は省略しますが、ごめんなさい(授業ではやります)。赤道(0°)と北極(北緯90°)の位置から、北海道の北端を通過している緯線が北緯45°ということがわかり、そのことからさらに日本の最北端(つまり北方領土のことね)が北極圏には含まれないことがわかる。

というわけで正解は消去法で3になる。北回帰線は北緯23.4°の緯線で、夏至の日(北半球ならば6月21日)に南中高度が90°となるところ。これも地球が地軸を傾けながら太陽の周りを公転しているために生じることなんだけれど、説明省略(だから授業ではするよ)。

ここからは一応具体的な説明をしておきます。「ク」付近を通っている緯線が赤道。M付近が北緯15°の緯線。その一つ上で九州南部を通過している緯線が北緯30°である。これらから判定して、日本の最南端は北回帰線(北緯23.4°)より南にあるんだろうか。

ちなみに日本の最南端は日本のはるか南方にある沖ノ鳥島。波の侵食によって姿を消してしまう懸念から、周辺をコンクリートで囲まれた様子を映像で見たことある人も多いんじゃないかな。よかったら地図などで場所を確認しておこう。

ちょっと気になる? 回帰線はまず出題されないので問題ないとしても、極圏はダイレクトに問われたこともあるので、注意しておかないといけない。地図帳など参照して、本図に北極圏の南限のライン(66.6°N)と、北回帰線(23.4°N)を書き込んでおくといいね。

ところで、実際の問題は消去法で解けるとしても、沖ノ鳥島については地理B本試験でも登場したことがある。98B本第4問なので確認しておこう。もしかしたら重要キーワードかもしれない。

 

問5 [講評] 宗教について写真を用いた問題。地理Bではちょっと目にする機会のないパターンだけれども、おもしろいと思うんでしっかり観察しておいてください。

[解法] サは思いっきり仏像らしきものがあるし(笑)仏教でしょう。ちなみにイスラム教では偶像崇拝が禁止されているので、仏像やキリスト像のような聖像はみられません。

シはイスラム教。中央やや左手の高い塔に目が奪われるかもしれないが、むしろここはちょっと地味目の中央部のドーム状の屋根を持った建造物に注目しよう。これはイスラム教の礼拝所であるモスク。内部が空洞となっており、信者たちがここに集い、サウジアラビアのメッカの方向を向かって礼拝を捧げる。で、ラストのスやねんけど、これはちょっとわかりにくいなぁ。キリスト教なのかな。おっと、よく見たら屋根のところに十字架があるではないか。やっぱりキリスト教でした。

図1参照。Kはすごくわかりにくいんやけど、中央アジア辺りだよな。ウズベキスタンに点があるようだ。中央アジアはシルクロード交易で栄えた地域で、アラブ商人たちが商品と同時にイスラム教を持ち込んだ場所。Kはサに該当。

Mはフィリピンだね。ここはかつてスペインに植民地支配された歴史があり、カトリックが主となっている。Mがス。

残ったLは仏教でサ。東南アジアの大陸部(ベトナムやタイ、ミャンマー)は仏教なのだ。ちなみにLはタイに点がある。

ちょっと気になる? 写真は地理Bでは出題されにくいが、せっかくなのでしっかり見ておくといいね。仏像とモスクと十字架。ちょっとベタですが(笑)。

それからちょっと気になるのが、Kのウズベキスタンだったりする。センター試験は特定の国が「ブーム」のように連続して取り上げられることがしばしばあるが、09年から始まるトレンドはウズベキスタンじゃないか?予想問題を考えておかないと。とりあえず「シルクロード」「イスラム教」以外には「綿花」「オアシス農業」「アラル海の縮小」なんかをトピックとして押さえておきましょう。

 

問6 [講評] 図法の問題だな。これも地理Bでは消えてます。逆に地理Aではこうしたネタを多く取り上げるわけだ。

[解法] 地球一周の長さは40000キロメートルなわけですが、明石市からツ(図の中心にあるので、これが対せき点。つまりちょうど反対側)までの距離が20000キロメートル。ツから最も離れたタは、逆に地球の反対側の明石市からは最も近いということ。

ちょっと気になる? これはどうでもいいでしょ(笑)。

 

問7 [講評] 地理B本試験で「西岸海洋性気候」っていうのが出たりしたけど、それも問題を解くカギでも何でもない。本問にしても「気候区」ではなく「気候帯」なのだ。つまり、熱帯・乾燥帯・温帯・冷帯・寒帯の区分ができればいいっていうこと。これなら中学レベルだよ。

[解法] アマゾン低地に位置するPは熱帯。日本のほぼ反対側に当たるQでは日本とほぼ同じ気候がみられると思われ温帯。Rはサハラ砂漠の西部に当たり(わかるかな?)乾燥帯。Sは寒流の沿岸で大気が安定しているため少雨となり、乾燥帯。

ちょっと気になる? どうなんだろう?だからどうっていうことのない問題。ちょっと知識が必要だし、センターっぽくないな。とりあえずSの位置(アフリカ大陸南西岸)が乾燥地域であることだけは知っておきましょう。寒流が北上するので大気が安定し、上昇気流が抑えられることによって雲が生じにくい。南米大陸のペルー沿岸と同じだね。

 

問8 [講評] すごくヤバいトピックがある!詳細は後述。

[解法] 正解(っていうか誤文)は2。アフリカ大陸の北部はたしかに旧フランス植民地が広い面積を占め、フランスから独立した国が多いものの、「南部はスペイン」っていうのがどうだろうか。スペインがアフリカ大陸で植民地支配したのは西サハラだけであり、その西サハラにしても現在はモロッコが領有しているので独立すらしていない。

ちょっと気になる? 少しずつ過去問ネタを利用しているような選択肢が並んでいて、なかなか問題の作り方もうまいと思うよ。決して雑な問題ではない。だからこそ気になるんだわ、選択肢4が!そう、わかるよね?これってすなわちゴンドワナランドの話題なんだよ。南アメリカ大陸、アフリカ大陸、南極大陸などはかつて地球上に存在した古大陸ゴンドワナランドの一部であり、その地層に含まれる化石や地質構造には類似点も多い。問2でも言ったんだけど、もう後はオーストラリアしかないわけだ。君はどう判断する?僕はヤバいネタだと思うよ。オーストラリアでゴンドワナランドなんていう言葉が出てきたらとりあえず丸にしとけ!

 

2009年度地理A本試験[第2問]

 

問1~問6は地理Bとの共通問題なので解説は省略です。

 

問7 [講評] おい!?これって地味に難しくないか?今解きながら一瞬手が止まった。単なる貿易統計じゃないぞ。

[解法] ぶっちゃけわからない(涙)。だから、唯一確実なものにだけ注目して、それで解き抜くしかない。それは何なんだ?ズバリ「木材」だよな。つまり「原木」と「木材チップ」に注目するしかない。「日本のロシアからの主要輸入品目は、アルミニウム・木材・魚介類である」もしくは「日本の木材輸入先は、第1位カナダ、第2位ロシア、第3位米国、第4位マレーシア」っていういずれも鉄板ネタで攻めろ。

つまりイが輸入、Xがロシアっていうことになる。他は全くわからん。XがロシアでYが中国だとすると、貿易総量がロシアの方が多いことになる!境港は日本海側だからという特殊な条件でそうなるのだろうか?全くわからん。しかし唯一はっきりしていること「木材」で解くならば、この解答しか得られないのだ。

ちょっと気になる? 難しい問題だよね。地理Bではちょっとここまで厄介な問題はないように思う。それはともかく、気になるのは「木材」なんだよね。地理Bでも木材ネタが出題されているし、地理BA共通問題である第2問などで水産業ネタが大きくフューチャーされているじゃないか。林業や水産業といった農業以外の第1次産業にもおおいに注目しないといけないような気がするな。木材や漁獲量の統計については統計要覧でチェックしておいた方がいいかもね。伐採量第1位とか、漁獲量第1位とか。

 

2009年度地理A本試験[第3問]

 

問1 [講評] これはちょっとホッとするね。鉄板ネタです。

[解法] 「日本の最大の輸出相手国は米国で、最大の輸入相手国は中国である」っていうネタは鉄板なんでそのまま覚えておいていいと思うよ。かつては米国が輸出・輸入ともに最大の貿易相手国だったが、近年は中国にその地位が取って代わられつつある。

ウが中国でアが米国。残ったイがサウジアラビア。

ちょっと気になる? 現時点では「輸出額第1位米国、輸入額第1位中国」で覚えておきましょう。でも近い将来「輸出・輸入ともに中国が第1位」の時代がくる(いや、すでに来ている!?)。最新の統計要覧で必ず確認しておくこと。

 

問2 [講評] マジかよ~、またカボチャネタだぜ。直接的に解答になっているわけではないけど、「ニュージーランド=カボチャ」っていうネタは地理Aだけで3回目だぜ!

[解法] 正解は2なんでしょ?でもそんなんどうでもいいよ。で、1がBなんでしょう。これもどうでもいい。

「フィリピン=バナナ」っていうのはまあまあ重要。かつては台湾から主に輸入していたバナナであったものの、工業化に伴って台湾の経済レベルが上昇し、賃金水準も高くなってしまった(つまり1人当たりGNIが高くなったということ)ため、台湾からのバナナの輸入は減少した。現在は安価な労働力が得られる(要するに1人当たりGNIが低いっていうことね。しつこいけど念のため)フィリピンに主な輸入先が変化しているのだ。バナナは経済と密接に関係する果物なのだ。

というわけで、ここでのマストアイテムは「ニュージーランド=カボチャ」なのだ。普通は野菜は鮮度が重要となるために、近隣国から輸入する。たしかに野菜の最大の輸入相手国は中国であり、一部は韓国からも輸入されている(韓国なんてバリバリの工業国だぜ。普通こんな工業国から農産物なんて輸入しないって)。でもカボチャだけは例外。カボチャはビニルハウス栽培などに適さず、日本では旬の時期以外には栽培されにくいもの。ただし野菜にしては表皮が固く、長期保存に適しているという特徴があるため、はるか遠くの南半球からもさかんに輸入されているのだ。端境期である3月から9月の時期にかけて、季節が逆転していることを利用して、ニュージーランドやその近隣の島国であるトンガなどではさかんに日本向けのカボチャが栽培されているのだ。これ、すごく大事。夏になったらスーパーに行って、カボチャを探してください。ちょっと高いかもしれないけど(遠距離を運んでくるから仕方ないよね)ニュージーランド産のカボチャが野菜コーナーに並んでいるはずです。

ちょっと気になる? ちょっとどころかメッチャ気になるっちゅうねん。「ニュージーランドからカボチャの輸入が多い」っていうネタはもう3回目だぜ。全部地理Aだけど。しかし普通こんなにしつこく問われるネタならば、とっくに地理Bに「昇格」していてもおかしくない。どうだろう?来年こそJ1からJ2に昇格してくるんじゃないか。毎年毎年あと少しのところでJ1昇格を逃しているあのチームに似ているじゃないか!?

 

問3 [講評] 僕はすごく重要な問題だと思います。でもこういったネタが地理Bでは出題されにくくなっているのも事実。どうなんだろうね。でも、この問題をしっかり研究することで、地理Bで似た様な問題が出題されても対処できるようにしておいてください。研究の価値がある、いい問題だよ。

[解法] 問題文には「滞在」とあるから勘違いしてしまうけれど、ここでの「滞在」は「居住」と同じ意味なので注意。日本に住んでいる外国人を「登録外国人」というけれど、その数が多い順に「韓国・朝鮮人」「中国人」「ブラジル人」。これに当てはめて考えればいいと思う。カが中国人、キがブラジル人。残ったクが米国人。

中国については、厳格な社会主義路線が見直され、改革開放政策が取られるようになった80年代以降に増加している。近年も留学生の増加などによってその数は右肩上がりに上昇している。

ブラジル人についてはとにかく90年代初頭が大切!これはJリーグが開幕して多くのブラジル人選手が入ってきたから、ではなくて(そりゃそうだ。何万人も入ってきたらビックリするわ・笑)、入国管理法が改正されて、それまで禁止されていた外国人労働者の入国と滞在が、日系人に限っては容認されるようになったからだ。もともと日系人人口の多いブラジルからの入国が「一気に」増加したのは当然のこと。まさに「雪解け」のような増え方なのだ。

とはいえ、日系人とはいっても、日本人の血をなんらかの形で引いているだけであって、外見も中身もブラジル人だものね。カトリック的な生活習慣とポルトガル語の文化を持った人々が日本に急増している現代社会。「多民族国家・日本」の兆しであると思う。

せっかくなので、外国に滞在する(つまり居住している)日本人にも注目。こちらは「在留邦人」といいます。これは米国が多くて、次いで中国。ブラジルは移民が多かった時代には高い数値だったものの、現在は移民もほとんどなく、また古い時代に移民した人々も(日本国籍のまま)老人となり、亡くなってしまった人が多く、その数は次第に減少しているね。

(注)北朝鮮と日本は国交がないので、日本国内に「北朝鮮人」はいないことになっている。北朝鮮にルーツがある人々が持っている許可証には単に「朝鮮」と書いてあるだけ。

ちょっと気になる? 本当はもっともっと深く分析したいほどすばらしい問題なんだが、地理Aということでこの辺りで解説はおしまい。日本からブラジル人に渡っていった人々(彼らは主に農業移民として)、そしてブラジルから日本に出稼ぎにやってくる人々(彼らは主に製造業従事者として)のトピックは、僕は実は地理で最も重要なものなんじゃないかと考えている。テキストでは採用して、授業では大きく取り上げようかな。それだけの「重み」がある問題です。

 

問4 [講評] これはどうでもいいでしょ。

[解法] よくわからないけど1が正解?ソ連時代はシベリア上空は通れなかったっていうし。

ちょっと気になる? 気になりません。

 

問5 [講評] 交通ネタ。ちょっとマニアックな感じはするな。重要とは思いません。

[解法] とりあえず一般常識の範囲かな。「船は人は運ばず、荷物を運ぶ」というセオリー。一応、過去問でも何回も出題されたネタではあるけれど、とくに疑問点はないよね。船を使って旅行したことある人は少ないけれど、原油がタンカーで運ばれていることはみんな知っている。ここまで大丈夫だよね。

このセオリーを利用して、それぞれの選択肢を確認していこう。

まず1について。人の移動に関する文章だが「航空機>船」と書かれている。船による旅客輸送が極小なのだから、相対的に航空機の方が大きくなり、この文章は正文とみていいだろう。

さらに2について。こちらは物の移動に関する文章。ここでもやはり「航空機>船」と書かれている。さて、どうだと思う?船舶による貨物輸送は積極的に行われている。船による物の輸送量は多いはず。一方、相対的に航空機による輸送は小さくなると考えていいだろう。よってこの不等式は誤りということになる。物の移動は「航空機<船」なのだ。

3と4については判定の必要はないだろう。

ちょっと気になる? 「船が人を輸送しない」というセオリーはセンター史上何回も登場しているものであり、知っておいてもいい。97B本の第1問問2なんかをよかったら見ておこう。

航空機についてはICなど軽量高付加価値な品目を運ぶことはよく知られているね。吸収の空港のそばにはIC工場が多いけれど、これは航空機で運びやすいからだ。でもそのように航空機が貨物を運ぶ例は極めて少なく、基本的に航空機は人(旅客)を輸送するものであると考えるべきだろうね。

 

問6 [講評] やっかいな問題だなぁ。地理A独特のチャレンジャーな問題というか。問うているネタ自体は意外と君たちも知っているような気がするけれど、それに気付くかどうかだな。

[解法] 統計的なキーワードが入っている選択肢には注意しないといけない。ここでは「人口密度が低い」っていうのが気になる。数字に関する言葉だね。

ところで君たちは、携帯電話の普及率が北欧で高いっていうことは聞いたことがあるんじゃないかな。北欧の国々は経済レベルが高く、携帯電話のような電気機器はそもそも普及しやすいのだが、それ以外にもたくさんの理由があるのだ。

北欧は伝統的に狩猟や雪山歩行などが行われており、そのために無線通信技術が発達している。国土が平坦(スウェーデンやフィンランドはバルト楯状地)であるため死角が少なく一本の電波塔を立てるだけで広い地域をカバーできる。凍結や積雪の影響があるため有線の電話線などは管理しにくく事故の危険性が高い。人口密度が低いため、有線の電話線を一件一件に対して引くよりも、巨大な電波塔を一つ立ててしまった方がコスト的には安価。

どうだろうか。いろいろと理由をくっつけてみたけど、そういえば世界最大の携帯電話会社であるノキア社もフィンランドにあるし、「北欧=携帯電話の普及率が高い」っていうイメージはしっかり持てるよね。そしてもちろん「北欧=人口密度が低い」のだから、すなわち「人口密度が低い地域であっても、携帯電話の普及率が高いところがある」のだ。誤りは4です。

ちょっと気になる? 本問でちょっと気になるのは問題としてのハードルの高さだよね。例えば選択肢4にしても「人口密度の低い北欧諸国では携帯の普及率が低い」という感じで「北欧」の一言を入れておいてもらえれば、考えやすかったんだけどね。トピックは簡単だけど、問題としては難しい。ひらめきが必要なんだわ。この問題の正解率ってどんなんなんだろう?そこが気になったりする。

 

問7 講評 こういった国際機構ネタも地理A特有っていえばいえんねんけど、結構一般常識っぽいし、国の位置を確認するだけでも価値があるんで、ぜひともチャレンジしてください。とはいえ、軍事同盟は地理Bでは話題とされないので、ここではCISと、そして旧ユーゴスラビアの位置を目で確認することが大切。

解法 1 CISは、旧ソ連15カ国からバルト3国を除いたもの。ウクライナなどが該当。Qである。

2 軍事同盟とはNATO(北大西洋条約機構)のこと。バルト3国は、かつてソ連を構成していた国であるが、既に西側諸国の軍事同盟であるNATOに加盟している。Pが該当。

3 これもNATO。ポーランドなどは既に加盟している。Rが該当。

4 「かつて一つの連邦国家」だったのはユーゴスラビア。スロベニア、クロアチア、ボスニアヘルツェゴビナ、セルビア、モンテネグロ、マケドニアといったユーゴスラビア構成国はそれぞれ分離独立し、さらにセルビアからコソヴォ自治州が「コソヴォ共和国」として独立を果たした。

ちょっと気になる? せっかくなので現在(2009年)のEUの範囲を確認してみよう。PとRの国々、および旧ユーゴスラビアの西端の国(スロベニア)はEU加盟国。この部分だけ色を塗ってみるといいね。一方、Qの国々とユーゴスラビアのそれ以外の国々は未加盟。

 

2009年度地理A本試験[第4問]

 

問1 [講評] 実験的な問題。ちょっと考えればわかるっていうか、当たり前っちゃあ当たり前なんだよね(笑)

[解法] 最も低いのがイ、次がウ、そして一番高いのがア。チベット高原ですね。

ちょっと気になる? チベット高原の位置を確認しておきましょう。標高5000メートルっていえばかなり高いぞ!

 

問2 [講評] 気候判定問題だが、案外と難しかったりする!?知識が必要な感じは地理A特有かな。

[解法] まずは「年平均気温」に注目。原則として「気温と緯度は反比例する」。赤道に近ければ暑くて、極に近付けば寒くなる。最も低緯度のBで最も気温が高いと考え、4が該当。次いで低緯度のCが3となる。AとDがやや微妙だが、とりあえずAの方が低緯度ではあるので、Aを1、Dを2というように「代入」してみよう。

ここでその「代入」を確実にするためにさらに降水量に注目。ポイントはやはりA。ここは古代にはシルクロードが通っていた砂漠地域。もちろん降水量は極端に少ない。それに対し、Dはどうだろうか。シベリア高気圧に支配される冬季には降水量は極少となるだろうが、南東からの季節風が海から吹き込む夏季にはそれなりに降水量があるのではないか。

また農業で考えるのも一つのポイント。Aが位置するウイグルで行われる農業形態はオアシス農業や遊牧など乾燥地域特有のもの。それに対し、Dが位置する中国東北区は、アジア式畑作農業地域として春小麦や大豆の栽培などが行われている。どうだろうか?どちらが降水量が少ない感じがする?僕はAが少雨で、Dは比較的雨が多いと考えていいと思うんだよね。

 

ちょっと気になる? 気温判定問題について最も重要なポイントは「暑いか、寒いか」である。緯度が低ければ暑くて、緯度が高ければ寒い。もちろんこれだけでは判定できず、例えば低緯度であっても標高が高いところでは気温が低いわけだが、センター試験では特別な場合を除いて標高は考えなくていい。標高を考慮しなければいけない場合は、99B本第5問の気候グラフ判定問題などにみられるようその旨がきちんと問題文に示されている(注)。とにかく、図と気候グラフが与えられている場合には、まず緯度と気温の関係に注目するべきだ。

一方、降水量については後から考えればいい。気温だけでまず「代入」し、そこから降水量を考え、矛盾がないか、つじつまの合わないところはないか、確かめていったらいい。

(注)ただしこれには例外があり、南米大陸における気候判定問題の場合は、むしろ最優先で標高を考えないといけない。アンデス高原に位置するボゴタ(コロンビアの首都)、キト(エクアドルの首都)、ラパス(ボリビアの首都)などはいずれも高原都市で、緯度が低いにもかかわれず、年間平均気温は低い。

 

問3 [講評] 地理A特有の問題でしょう。都市名に関する知識が問われる。しかしその一方、シャンハイの風景などはテレビのニュースなどでもしばしば取り上げられているので、一般常識的な側面もある。まぁ、いずれにしても地理B的ではないわな。

[解法] どこから行こうかな?最もメジャーな都市としてホンコンから特定しようか。ホンコンは、GNI(経済規模)より貿易額が大きいという「特殊」な国(本当は国ではないけど、国とみなしてしまってもいいでしょう)。シンガポールとならんで「中継貿易」がキーワードとなる。よってキがホンコン。「世界有数の金融・貿易センター」とあるが、金融はともかく、貿易についてはまさにその通り。世界最大の貿易額を誇るシンガポールの港に次いで、ホンコンの港は貿易額世界第2位なのだ(知っておいてもいいかも)。

残りの2つについてはちょっとやっかいかも?でもここは素直に、シャンハイが今や世界の中心となる勢いを有する都市であることを考えればいいと思うよ。クの左手にそびえる巨大なタワーはシャンハイの象徴でもある。クがシャンハイ。

残ったカがアモイだけれども、ここは台湾の対岸に位置する都市で経済特区が設けられている。台湾だけでなく、日本や米国の企業がさかんに進出し、工業地区をなしている。

ちょっと気になる? 「金融」っていう言葉の使い方に注意しよう。ホンコンではすでに「金融」センターとなっていることが示され、シャンハイについてはこれから「金融」センターを目指すような記述となっている。「金融=1人当たりGNIが高い地域」が大原則なのだが、ホンコンはすでに高い1人当たりGNIを有しており、東アジアの金融センターとしては地位を確立しているといえる。それに対し、シャンハイといえども所詮は中国の都市であり、1人当たりGNIは低い。金融の中心となるには、まだまだ時間がかかりそうだ。

ちなみにクで描かれている地区はシャンハイ東部の臨海地域であるポートン地区。輸出加工区でもあり、外国から多くの企業が進出している。今後、シャンハイの地図が出題されるかもしれない。地図帳などでみかけたらチェックしておくといいかも。

なお、経済特区については、今までは最大の経済特区であるシェンチェンのみが出題されていたし、地理Bで取り上げられたのもシェンチェンのみ。アモイなど他の経済特区を知る必要はないだろう。「経済特区=シェンチェン」で十分。

 

問4 [講評] こうしたベタな民族ネタっていうのは地理A特有のものではあるけれど、地理Bでもウイグルやチベットの位置ぐらいは知っておくべきだと思うよ。

[解法] ベタに行きましょう。AからPに広がる一帯はウイグル族が住むエリア。シンチャン・ウイグル自治区という。シルクロードに沿う地域で、砂漠など乾燥地域が広がり、イスラム教が主に信仰されている。

Qはチベット族のエリア。チベット自治区である。ここも少雨地域ではあるが、それよりも高峻な地形であることが重要!問1にもあったけれど、標高が数千mに達し、それに伴い気温も低い。「少雨」だけでなく「寒冷」であることもキーワード。

Rはモンゴル族。モンゴルに沿っているもんね。

ちょっと気になる? ウイグルとチベットは両方ともすごく大切なので要チェック!ともに少雨ではあるんだが、「低地」であるウイグルと「高原」であるチベットの地形環境の違いは絶対に意識しないといけない。

 

ウイグル 中国北西部(カザフスタンなど中央アジアに隣接) テンシャン山脈など一部に高山もあるが、基本的には低地 羊などの遊牧、山麓の湧水が得られるところなどではオアシス農業 シルクロードに沿いイスラム教

チベット 中国南西部(インドに隣接) 新期造山帯で現在も標高が高まっている高原 ヤクの遊牧 聖地ラサも位置しチベット仏教

 

こうしてみると、ウイグルとチベットって何の共通点もないんだよね。あえていえばともに少雨であることだけだけど、ウイグルは砂漠が広がっているのに対し、チベットは寒冷な高原だからね、自然景観も全然違ってはいるわけだ。両者を混乱しないようにしよう!

 

問7 [講評] おっと、ここでシェンチェン登場かっ!?さっきはアモイが登場したぢゃないか!地理Bでもシェンチェンが直接問われたことがあったので、本問については過去問そのまんまって感じ。とにもかくにも「シェンチェン=経済特区」なのだ。

[解法] 「シェンチェン=経済特区」なのだ。経済特区は5カ所あるけれど、君たちが覚えるのはシェンチェンだけでいい。正解は2。

ちょっと気になる? シェンチェンは経済特区の中でも最大の規模を誇る都市だが、ホンコンに隣接しており、そのホンコンからの企業進出が容易であるという優位点を持っている。白地図を用いて出題されても大丈夫なように、ホンコンの位置(つまりシェンチェンの位置と同じということ)を確認しておくといいかな。

 

問8 [講評] 地理Bではほとんど出題されない文字に関する問題。

[解法] 日本と中国の漢字は微妙に違うよね。中国の漢字は簡略体が使用されていたり、意外と日本人には読めないものもある。

ちょっと気になる? 地理Bで文字に関するネタが出題されたのは2例。一つが朝鮮半島のハングル文字で「独特の表音文字」という言い方で問われた。表音文字とは表意文字の反対語で、その文字自体は意味を持たず、発音のみを示すもの。英語のアルファベット(ローマ文字)がその典型だが、ハングルもその仲間。表意文字は、漢字が該当。

もう一つがインドに関するもので、インドの言語であるヒンドゥー教の表記には独特の文字が使われ、ローマ文字のようなものではない。

いずれもせよ、特別な話題ではないので、ノーチェックでいいだろう。

 

2009年度地理A本試験[第5問]

 

問1 [講評] 地理Bでもありがちな感じの問題。最近は子供や女性に関するトピックを取り上げた問題が増えているんで、こうした問題に慣れておくことが必要。

[解法] アフリカ大陸だけを取ってみても、A、B、Cさまざまに色分けされている。ちょっと難解なので、とりあえず1人当たりGNIで考えてみるか。とりあえず「1人当たりGNIと乳幼児死亡率は反比例する」ので、低体重の子供の割合の高低と1人当たりGNIは関係あることが推測できるよね。

アフリカ大陸で1人当たりGNIが高いのは、大陸最大のGNIを有する工業国である南アフリカ共和国と、アルジェリアなどアラブ産油国。これらの国でCとなっているので、ここで低体重の子どもの割合が低いと考えていいと思う。栄養状態も良く、十分は医療介護も受けられるので、低体重の未熟児は少ないはず。

それに対して、AとBの判定は難しい。全然わからないので、ここでもやはり1人当たりGNIで考えるしかない。アフリカで1人当たりGNIが低いことで特徴的な国は、例えばナイジェリア。OPECにも加盟するアフリカ最大の産油国だが、人口規模が半端なく多いので「1人当たり」の値はどうしても極小となってしまうのだ。さらにエチオピアもそうした国であることを知っておいてもいいかもしれない。コーヒーの原産地であり、現在もコーヒーの生産や輸出に経済が依存するモノカルチャー国であり、他に産業がないこともあり(しかも実は人口も意外と大きかったりするのだ)、1人当たりGNIは極端に低くなる。

この「1人当たりGNIが低い」ことがキャラクターである2カ国でこそ、低体重の子どもは多いと思われ、Bが「高」となる。そうしてみると、マリやニジェールなどサヘル地帯の国々でも「高」となっており、干ばつや砂漠化の影響により食料事情が悪く、十分に太ることができない子どもたちが多い。残念ながらそれは「貧困なアフリカ」を象徴する状況でもある。

ちょっと気になる? 地理Aではかつて「乳幼児死亡率」が問われた。今回もそれに類するものだろう。「低体重」すなわち未熟児なわけだが、そういった子どもは残念ながら、乳幼児のうちに死んでしまう度合いも低くはないと思われる。「乳幼児死亡率と1人当たりGNIは反比例する」のだが、「乳幼児死亡率と低体重の子どもの割合は比例する」と考えられるので、「低体重の子どもの割合と1人当たりGNIは反比例する」という公式もまた成り立つのだ。逆にいうならば、1人当たりGNIさえ上昇すれば(つまり経済成長さえ実現すれば)、乳幼児死亡率や低体重の子どもの割合は低下するということ。世界は経済なのだろうか。

 

問2 [講評] 「見るだけ」問題だが、問われている内容はすごくおもしろいと思うよ。じっくり味わってください。

[解法] 問題そのものは簡単でしょう。正解はもちろん2。図を見てもわかるし、文章を読んだだけでもだいたいわかるよね。

せっかくなんで図を読解していろいろ考えてみよう。

図2参照。おおまかな点の配置をみていると、「右肩上がり」であることに気付く。比例定数は1って感じ(笑)。「動物性食料の割合(以下「動物性」)」と「1人1日当たり供給栄養量(以下「栄養量」)」は比例しているっていうこと。要するに、肉をたくさん食べている連中は、カロリーも高いっていうことだよ。もちろん動物性食料には魚介類も入るし、日本人は世界で最も魚が大好きな民族であるんだけれども、世界的にみればそれはやっぱり少数派なんだよね。インドのように主な動物性タンパク源を乳製品に頼っている国もあるけれど、そうしたミルク民族もやっぱり少数派。肉は飽食の象徴なのだ。

しかも地域差が明確。アフリカの国々は「動物性」も「栄養量」も低い。アフリカの国に低賃金国(1人当たりGNIの低い国)が多いことを考えると、「動物性」や「栄養量」は1人当たりGNIに比例しているっていうことがわかるよね。

とくにヨーロッパに注目するともっとわかりやすい。ヨーロッパの国って「動物性」も「栄養量」も全体的に高い。もちろん経済レベル(1人当たりGNI)も高い国が多いわけなんだけれども、やっぱり肉食民族ってことなんだろうね。

それに比べれば日本ってまだマシなような気がするんだよね。動物性タンパク源を主に魚から摂取している日本民族は、1人当たりGNIは極めて高く、魚を含めた「動物性」も高い国ではあるけれど、おそらく「栄養量」はさほど高くない。ヘルシーな国民性というか民族性を持った国なのだ。でも、最近のファストフードばかり食べている若者を見ていると、そうでもないような気もしてくるのだが。

ちょっと気になる? ネタ自体はおもしろいんだけど、ここからどうやって様々な問題に発展させていくのか、それについてはあまりアイデアがない。ノーチェックでいいかなぁ。

 

問3 [講評] これもおもしろい問題。いや、それどころか、今回の地理Aの全問題の中でもベストの問題なんじゃないか?これ、マジで深いぞ。

[解法] 考えることは多い。意識するのは「裏」と「キャラクター」、そして「ホイットルセー農業区分」。

まずこの表が、輸出と輸入に関するものであることを確認。もちろん重視するのは輸出の方。輸入からその国のキャラクターを特定するのは難しい。輸出品目からその国でどういった産業が発達しているのか推測するのは基本。

では「裏」から考えましょう。つまり「食料品」の裏を考えるのだ。「輸出額に占める食料品の割合」が低い国は、それならば何を輸出しているのだろうかということだ。「食料品」の裏としては、たとえば「鉱産資源」や「工業製品」などが考えられるんじゃないか。「輸出額に占める食料品の割合」が高い3や4は鉱産資源に恵まれず、工業もとくに発達していない国。一方、その反対の1や2は、豊富な鉱産資源を有するか、それとも工業国として工業製品の輸出が多いかのどちら。1・2を鉱業国・工業国と考え、3・4を農業国と考える。「裏」を考えることが必要。

さらに「キャラクター」について。ここで選択肢になっている4カ国が実に絶妙なのだ。めちゃキャラクターが濃い国ばかり!アルジェリアはOPECの代表国、コートジボワールはカカオの生産が世界第1位であることからわかるよう、プランテーション国。イギリスとニュージーランドはいずれも先進国であるが、イギリスが普通の先進国(普通に工業が発達している国っていうことです)であるのに対し、ニュージーランドは酪農製品や肉類の輸出が多い農業国なのだ。このキャラクターは決定的!

このことから、1・2はイギリスかアルジェリア、3・4はニュージーランドかコートジボワールとなる。

さぁ、ここから次のステップに行きましょう!それは農業の特徴について。ホイットルセー農業区分について考える。コートジボワールは「プランテーション農業」、ニュージーランドは「企業的放牧」を始めとして、北島では「酪農」、南島の東岸では小麦の栽培と羊の飼育がみられる「混合農業」である。どっちが3でどっちが4だ?

もちろん3と4とで大きな違いがある「輸入額に占める食料品の割合」に注目するのだ。4は多くの食料を外国からの輸入に依存しており(20%を超える)、3はそうでもない(10%より低い)。4っておもしろいんだよ。食料品を輸出して、食料品を輸入している。これってどういうことだ?これはこう考えるしかないよな。「商品作物を輸出し、自給作物を輸入している」ってパターンだ。コートジボワールはプランテーション作物としてカカオを栽培しているわけだが、これはもちろん商品作物。これは一応チョコレートの原料になるのだから「食料」ではあるけれども、食糧すなわち主食として腹を満たすものにはならない。主食となるような穀物については、外国からの輸入に頼っているのが現状なのではないだろうか。商品作物の生産が優先され、自給作物の生産がおぼつかない。カカオを売ったお金で、小麦などを海外から買っているわけだ。世界にはヨーロッパや米国のような小麦輸出地域はいくらでもある。アフリカは彼らの「いいお客さま」でもあるわけだ。

このことを考えれば4はコートジボワールになるんじゃないか。一方、3はニュージーランド。「新大陸」に含まれるニュージーランドは「商業的」な農業が営まれている。たとえば米国を考えてみよう。米国は小麦の生産が世界第3位であるが、輸出は世界第1位。つまり国内自給は最優先としても、輸出することについても主眼が置かれ、小麦の栽培がなされているということだ。このように、主食となる穀物を作りまくって、国内の自給を満たすと同時に、輸出にも力が入れられているというのが新大陸の「商業的」な農業の本質だとしたらどうだろう?ニュージーランドだって新大陸のメンバーだ。農産物の輸出割合が高い国であるが、国内自給率も高く、そもそも農産物を海外からの輸入に頼っている国ではないだろう。これで納得。矛盾点はない。実に美しい。

ちなみに、問5の選択肢2が興味深いのでそちらも参照してみよう。「モノカルチャー経済により食料が不足する地域では、自給用作物の増産に向けた技術協力が必要とされる。」とある。「モノカルチャー国」っていうのは例えばコートジボワールのようなプランテーション農業国。こういった国では商品作物の栽培が優先されるために、自給作物の生産は軽視され、いつまでも食料自給率は上がらない。上の文章についても、「必要とされる」ということはまだ実現していないってことだよね、以下のように読み替えることもできるんじゃないか。「コートジボワールでは、食料が不足しているが、自給用作物の増産は進んでいない」。どう?アフリカは実は農業がさかんな大陸ではないのだ。お菓子(チョコレートだね)の原料を作ることは、厳密には農業とは言わないんじゃないかって僕は思いさえする。

ちょっと気になる? 講評では軽く書いてしまったけれど、解法を書きながらもこの問題の奥深さに気付いた。これ、マジですごい問題だぞ!ニュージーランドもコートジボワールもいずれも農産物の輸出国なのだが、ニュージーランドは穀物や肉類など自給的性格の強い農産物を輸出していることからわかるように、基本的に食料自給率は高い。まず国内ありきで生産し、余った分を輸出に回るというニュアンス。それに対しコートジボワールはカカオだけに特化した農業を行っているため(商品作物の単一栽培を「プランテーション農業」というのだ)、カカオの生産は極端に多いものの、それ以外の作物の栽培はほとんどなされていない。もちろん、本来必要なはずの穀物の栽培も。間違っているよな。このせいで、彼らは商品作物を輸出し、自給作物を輸入するという貿易構造をもつことになるわけだが、これは「農産物を輸出し、農産物を輸入する」というわけのわからない貿易構造ともいえるわけだ。どうなんだ、この問題?深すぎるぞ!?

 

問4 [講評] 水に関する問題。水のネタはセンターでは06B追で登場しているんだが、私大入試でも最近はしばしば目にするネタ。現代社会を象徴するトピックではあるんやね。

問題そのものも十分に過去問が意識された良問。オーストラリアのスノーウィーマウンテンズ計画は鉄板だね!

[解法] ア~ウ、いずれも非常に重要なトピックなので、どれから考えてもいいし、どれについてもぜひ知っておいて欲しい。

とりあえずアから。ここでは「海水の淡水化」がキーワード。サウジアラビアは砂漠国で天水に頼っただけでは飲料水が不足する国であるが、豊富なオイルマネーを利用して海水から淡水を得る巨大施設を設けている。自然に逆らうとは、おそるべし、オイルマネー。

イについては、「干拓」が重要。浅い海に堤防を築いて、内側の海水を排水し(オランダの風車がそのために利用されたのは有名な話ですね)、干拓地が造成された国、オランダ。オランダはそもそもは3万平方キロメートル程度の面積であったが、干拓によって4万平方キロメートルに国土を広げてしまった。干拓地というのは、その作り方からもわかるように標高は海水面よりも低い。オランダは国土の4分の1が海面下にあるのだ。

ウはスノーウィーマウンテンズ計画。マリー川流域の企業的穀物農業(小麦栽培)はこれによるもの。オーストラリアは、国土の東部を縦断する山脈によって、太平洋側の多雨地域と西側の少雨地域に分けられる。山脈東麓を流下するスノーウィー川をダムによりせき止め、そこから山脈の下に導水トンネルを設け、西側のマリー川流域への灌漑用水とする。何ともスケールの大きな話だが、それもまたオーストラリアということだろうか。

ちょっと気になる? いずれも過去問ネタ。しかも地理Bで出題されたもの。これぐらいは簡単に解きましょう。いい問題ですね。

 

問5 [講評] これ、いいっすね。っていうか、この第5問って全体的に問題の質が高くない?難しいって意味じゃないよ。過去問のネタがしっかり反映された、しっかり勉強した者にとっては解きやすく、そうでない者にとっては難しいというわけだ。

[解法] セオリーは「灌漑は塩害を助長する」というもの。乾燥地域において人為的に農地に水を与えることを灌漑(かんがい)というが、これには塩害(土壌塩性化)のリスクが伴う。植物に水が全て吸収されればいいが、そうでない場合は、余った水分は土中に浸透し、地中の塩分(カルシウムやナトリウムなど)を溶かし込み、水溶液をつくる。乾燥地域の強い蒸散作用によってその水溶液は地表へと持ち上げられ、さらに水分だけ空中に蒸発するものの、塩分は「おいてけぼり」を食らって、地表面に残ることになる。これが何回もくり返されることにより、塩分が地表面に集積、すなわち「塩害」が生じるのだ。

塩害を防ぐためにはどうするか。もちろん灌漑を止めるのがベストなのだが、しかしそれではそもそも農業ができない。より自然と調和した形で、バランスよく、灌漑が行われなくてはいけないのだ。代表的な方策が「点滴灌漑」。水を点滴(つまり一滴ずつ与える)ことによって植物の根に過不足なく水分を吸収させ、水を余らないようにする。これならば水溶液ができるはずもなく、塩害も抑えられる。灌漑は緻密(ちみつ)に行わなくてはいけない。適切な灌漑とはすなわち「ていねいな灌漑」でもあるのだ。

このことを頭に入れて、文章を読んでみよう。もちろんターゲットは選択肢3である。「土壌の塩類化(塩性化)により穀物の栽培が困難になった地域では、大規模な灌漑施設の導入が必要とされる」とある。そもそも土壌塩性化の原因は「灌漑」にある。灌漑によって生じた塩害を防ぐために、さらに灌漑施設を充実させるとはどういうことか。しかも「大規模」なんて、新大陸の企業的農業じゃないんだから、そんなに雑にやってしまっていいもんなんか。点滴灌漑のように、丁寧に行ってこそ、塩害は防止できるのだから、やはり「大規模」ってのはマズイと思う。思いっきり灌漑を行うことで、いっそう塩害が深刻になるのが関の山でしょう。というわけで3が誤り。

ちょっと気になる? 98B本にこのような選択肢がある。「ナイル川下流の乾燥地域では、乾燥農法から灌漑農業へ切り替えることによって、土壌の塩性化を防いできた」。どうだろうか、これが誤文であることに気付くかな。「灌漑は塩害を助長する」ものなのだ。灌漑は適切になされてこそ意味があるもの。そもそもが土地に負担がかかるものであるので、単に灌漑を無造作に行うだけでは絶対に逆効果なのだ。灌漑と塩害の関係はセンター必須!

 

問6 [講評] この問題もいいなぁ。地理B受験者もぜひ解いてほしい問題だよね。ネタそのものよりも、文章ニュアンスでしっかり誤りを指摘するテクニックを鍛える意味がある。そしてそれより、やっぱり君たちがこれから生きていく中でこうした「食の安全性」は非常に重要なわけだ。こうした意識を養っておこうよ。

[解法] これ、実は正解は1なんだよね。どうだろう?文章のニュアンスを観察してほしい。1では「禁止」っていう強い言い方でしょ?2では「取り組みが行われている」、3では「取り組みが強化されている」、4では「問題となった」。どうだろう?はっきりと強い口調で「断言」しているのは1だけなんだわ。「断言口調に誤りあり」ということは、現代文の試験なんかでは常識なんでしょ?センター地理にしたって、こうした文章読解問題は現代文的なノリで解くことが必要であり、そうした観点から1が誤りであることがわかる。2にしても「取り組みが行われている」だけで、それは徹底したものではないかもしれないし、3にしても「取り組みが強化された」けれどそれは完全ではないかもしれないし、4にしても「問題となった」かもしれないけれど、すでに人々はそれを忘れているかもしれない。要するにあいまいなのだ。

というわけで解法はここまで。でもここからさらに深く考えてみようよ。遺伝子組み換え作物は、病害虫に強いとか、生育期間の短縮などが期待され、非常に生産性が高い。でも人間に与える影響にはまだはっきりとしない点も多く、我々の口に「直接」入る部分についてはほとんど規制されている。しかし家畜の飼料などにはどんどん使われており、つまり「間接的」には我々の体内に入ってくるということ。これってどうなんだろう?家畜の飼料であるトウモロコシや大豆の多く(っていうかほとんど)を米国からの輸入に頼っている日本としては、その米国で食の安全基準が緩いことは、実は大問題であったりするわけだ。米国は生産性と合理性をひたすら追求し、安く手軽な農産物を大量に生産する(そう、「栽培」ではなく、あたかも工業製品のように「生産」するのだ)。そんな米国に、間接的とはいえ、多くの食料を依存している日本。これでいいんだろうか?

ちょっと気になる? さすがに米国もヤバいと思っているのか知れないけれど、遺伝子組み換えによる農産物の生産は今後抑えられるという予測もある。しかし、これまた米国のことだから、隠れてそういったヤバいものを作り続けるに決まっているんだよね。BSEの時の肉牛がそうだったじゃない?

ただ、だからといってこの遺伝子組み換え農作物はあながち全否定されるものでもない。要は人間の口に入らなければいいだけなんで、例えば、バイオマスの原料としてはこれほど適しているものはない!現に米国では開き直ったかのように遺伝子組み換え技術によるトウモロコシの栽培が増加しているのだが、これらは主にバイオエタノールに加工され、燃料として利用されるようだ。どうだろう?これはなかなかいいアイディアなんじゃない?バイオマスで生じる問題の一つに食料供給の問題があって、本来人間が食するべき農作物がアルコールに転化することによって、食料不足が生じるのではないかという懸念。しかし、このように食料用は食料用、燃料用は燃料用(もちろんこちらは遺伝子組み換え)と作り分けることによって、そのような不利益は生じないってことになるよね。実は遺伝子組み換え技術は世界の未来を担っているのかもしれない。そういうことだ。

 

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