2004年度地理A本試験解説

2004年度地理A本試験

 

第1問

いかにも地理A的な問題も見られるが(「セルバ」といったカタカナ言葉、問5の民族)、全体的には地理B的な傾向も強い。おもしろいなと思ったのは問6で、問題文をしっかり読んで、そこから考えを組み立て解くというパターンは、地理Bの問題としても高品質。いい問題やと思うよ。また問7も統計問題としては非常におもしろい。君はスムーズに解くことができたかな?

 

問1 J;「居留区」がキーワードとなる(過去に出題例あり。代表的なものは97A追第2問問5参照。ここでは「保留地」となっているが意味は同じ)。アメリカインディアンであり、Bが該当。「後の移住者」というのはイギリス系白人を中心とした当時の米国人。

K;「山岳地帯」であるので、アンデス山脈を考え、Cが該当。インディオによるインカ文明は、「後の移住者」スペイン人によって滅ぼされた。「農地改革」についてはとくに考慮する必要はない。

L;「短い夏季」であるので、北極海沿岸のイヌイットを示すAが該当。

 

問2 ①「熱帯雨林」とあるので、赤道直下のエが該当。ちなみに「セルバ」とはアマゾン流域の熱帯林のこと。

②「地衣」というのはツンドラ地帯のキーワード。通常は氷雪に覆われているが、夏季のみ氷が解け、露出した地表に蘚苔や地衣が生育する。アが該当。

④「タイガ」とは針葉樹の純林(樹種が一種類。例えば見渡す限りモミの木だったり)地帯のこと。こういった森林は冷帯地域にみられるので、カナダ中央部のイが該当。

残った③はウに該当。米国の中央平原で、プレーリーと呼ばれる「草原」が小麦畑など「穀倉」地帯となっている。

 

問3 カとは北米五大湖周辺。古い時期からの工業地域で、鉄鋼業や自動車工業などの重工業が発達するも、現在はやや斜陽化しており、人口も減少しているところが多い。

①五大湖の西岸付近にメサビ鉄山というものがある(これは中学でも学習するはず)。米国を代表する鉄山で、五大湖の水運を用いて、周辺の製鉄都市へと鉄鉱石が供給された。ただし現在はやや枯渇傾向にあり、鉄鉱産出量を減らしている。

②周辺が工業地域であるので「湖の水質汚染」は当然生じていると思われる。大都市も立地し人口も多いので「家庭からの排水」もあるだろうし、周辺は農業地帯でもあるので「農薬」なども流入するだろう。

③「気候が冷涼」は正しい。五大湖南岸に位置するシカゴは北海道の札幌と似た気候がみられ、五大湖も冬季は凍結する。「市場に近い」ことについてもシカゴやデトロイトという大都市が近接し、さらにメガロポリスを形成するニューヨークなどにも遠くはない。さらにこの地域はまさしく「酪農」地帯である。大陸氷河によって(五大湖は氷河の作用によって形成されたもの)肥沃な土壌が削られ、地力に乏しいため穀物栽培には適さず、牧場地として利用される割合が高い。そこで乳牛が飼育され、酪農が成立している。

酪農にとって、気候が冷涼なこと(牧草が軟らかく育ち、消化能力の低い牛に適した飼料となる)、市場に近いこと(生乳の生産を思い浮かべる。保存しにくいものなので、消費地までの距離が近いほうが有利)は、必要な条件。

④これが誤り。河川や運河によって大西洋とは結ばれているが、太平洋はどうだろう?北米大陸中央部を縦断するロッキー山脈を越えなくてはいけないのだが、標高は5000mに達するなど、さすがにここに「内陸水路」を用いて航路を開くことは不可能だろう。

 

問4 「氷河作用を受けた特徴のある海岸地形」とはフィヨルドのこと。氷河によって侵食されたU字谷が沈降し、深い入江になった地形で、典型的なものはノルウェー海岸にみられる。これ以外でもかつて大陸氷河に覆われていた高緯度地域の海岸においてはしばしば存在する。

このことより、最も高緯度であるDを選択する。「五大湖は氷河湖である」ことを考えれば、この付近も当然大陸氷河にかつて覆われていたということは想像できる。

 

問5 地理Aお得意の民族ジャンル。

これだけ知っておけば十分。

(1)かつてインカ帝国が栄えたアンデス山脈中央部を国土に含む国では先住民インディオ(黄色人種)の割合が高い。ペルー、ボリビアなど。

(2)大西洋に面するラプラタ川河口は天然の良港となっており、ヨーロッパから多くの人々がこの港へとやってきた。よってこの地域を国土に含む国は白人の割合が高い。ウルグアイ、アルゼンチンなど。

(3)(1)と(2)の中間の国では、インディオと白人の混血の割合が高い。チリ、パラグアイなど。

以上のことを参考に考える。Pに当てはまるのは(2)よりアルゼンチン。Rに当てはまるのは(1)よりボリビア。ゆえに①が正解。

ちなみに、ラテンアメリカで黒人が高い割合を占める国は限られている。それがジャマイカとハイチ。前者は旧イギリス領、後者は旧フランス領。ともにブラックアフリカとよばれる中南アフリカを支配した歴史があり、そこから多くの黒人が流入した。

 

問6 問題文にヒントがある。「標高が高く冷涼であるうえ乾燥が激しい」とある。とくに「乾燥」がキーワードとなりそうだ。乾燥とは降水量より蒸発作用の方がさかんな状態。このようなところにある湖はどうなるか。湖水が「煮詰まって」しまうのだから、塩水湖となる可能性が高い。それどころか、十分な水分の供給(河川などによる)がなければ干上がってしまうこともあるだろう。

このことを考え、③を正解とする。言われてみれば、この写真の四角い物体も「塩の塊」に見える。

①文章の意味がわからない。湖面を掘り下げたらどうすれば砂漠化対策になるのか。

②このような氷の家は、イヌイットの居住地域(つまり北極海沿岸など)で冬季になるとつくられるイグルーというもの(地理B受験者は名称を知る必要はない)。アンデス高原は問題文にもあるよう、高々「冷涼」な気候がみられるだけで、決してそこまで寒冷ではない。こんなところで氷で家が建てられるものか!?それにそもそも低緯度地域であり、明瞭な「冬」があるわけでもない。

④動物に「石灰石」を食べさせますか~?(笑)

 

問7 トウモロコシの生産は米国が世界第1位。よってYがトウモロコシ。

ここからは気候環境に基づいて考えていく。米とバレイショ(ジャガイモのことやで~わかるかな)の生育条件を比較してみよう。米は高温湿潤な気候環境を好み、熱帯あるいは温帯でも気温が高く子水量が多い地域でこそ栽培されうる。バレイショは、例えばヨーロッパではドイツやポーランドが主産地であることからわかるように、冷涼な気候条件の下で栽培される作物である。

これを意識すると、はたしてブラジルの生産量が多いXはいずれの作物になるだろうか。答えは米。ブラジルは高温湿潤な気候環境であるがゆえに米の生産が多く、例えばアルゼンチンのようなやや冷涼な国ではさほどでもない。

この問題はバレイショと米の判定が難しかったと思う。ブラジルをカギとして、統計を確認しておいてほしい。ブラジルは米をたくさん作っているものの、小麦については生産量が少ないため輸入に頼っている。

 

第2問

主に民族ジャンルからの出題でいかにも地理A的。ただし注目すべき問題としては、あからさまに前年度と同じネタから出題された問2、最近やたら登場しているユダヤネタの問3、ユーゴスラビア初出の問4など。また問7も質が高い良問。

 

問1 写真3枚もいらないよな~(笑)。当然スペイン。一応ポイントとして「米」には注目しておいて。ヨーロッパにおける米の栽培範囲は地中海沿岸のみに限定される。

あ、ところでスウェーデン、ハンガリー、ポーランドの位置ってわかるかな。白地図を用いて国名書き込んでマスターしておいてね。

 

問2 ④ソ連は1990年から91年にかけて15の国に分裂した。そのうちバルト3国(エストニア、ラトビア、リトアニア)を除く12カ国によってゆるやかな国家共同体であるCISが結成され現在に至っている。たしかにロシアは旧ソ連時代から中心的な存在として他の国をリードしてきたものの、さすがに言語や宗教までは支配できない。ウクライナもウクライナ民族が中心の国で、ウクライナ語を話し、ウクライナ正教が主に信仰されている。ウクライナ語はロシア語と同じくスラブ系の言語であり、ウクライナ正教もロシア正教と同じく東方正教会系の宗教であるが、それでも完全に同じものではない。

ちなみにこの選択肢④の内容と、03A本第2問問3選択肢②には強烈な類似性が感じられるのだがどうだろう?ネタとしては一緒だね。参考までに全文掲載。「社会主義時代にソ連の影響を受けたため、ロシア人以外のスラブ系民族の間にもロシア正教が広まった」。もちろん誤文。

 

問3 ア;「アジアを中心に世界各地」であるので華僑を考え「中国人」に該当。「表意文字」とは漢字のこと。そもそもセンター地理に出題される表意文字は漢字だけなので、知っておくといい。「集住地区」とは日本でも横浜などに見られるチャイナタウン。世界最大のものは米国のサンフランシスコ。

イ;「イギリス領」がキーワードとなる。インドに該当。この国も旧イギリス領であり、イギリス人の手によって労働力として移住させられたケースも多い。インド系住民の分布については、00B本第2問問7図4がわかりやすい。この図では「アフリカ東岸」は示されていないが、「南岸」の南アフリカ共和国、「南アメリカ北東部」のガイアナなどは表されている。

ウ;「長い間、国家を持たず」にいたのはユダヤ人。「アラブ人が多く居住していた地域」とはパレスチナ地方のことで、ここに戦後間もない時期にイスラエルが建国された。これにより多くのパレスチナ難民が生じ、彼らアラブ人と、強行な姿勢をとるユダヤ人との間には、21世紀の今もいさかいが絶えない。

 

問4 カ;カトリックとプロテスタントが対立しているのは北アイルランド。多数派アングロサクソン(イギリス)系プロテスタントが、少数派ケルト(アイルランド)系カトリックの権利を制限している。

キ;カシミール地方。「イスラム教」パキスタンと「ヒンドゥー教」インドによる領有権をめぐる対立。

以上より、正解は②となる。ただし本問についてはユーゴスラビアについての問題が、97年度以降初めて出題された点が興味深い。とりあえず解説しておこうか。

ユーゴスラビアとは南スラブの意味。バルカン半島西部に住む南スラブ系の民族が集まって成立した連邦国家だった。構成国は次の6つ。スロベニア、クロアチア、ボスニアヘルツェゴビナ、セルビア、モンテネグロ、マケドニア。90年代に入って分裂し、いくつかの国は独立する。スロベニア、クロアチア、マケドニアがまず独立し、さらにボスニアヘルツェゴビナも。しかしほぼ単一の宗教の信者から構成される他の国々とは異なり(注・それぞれの宗教については下に)この国はカトリック・イスラム教・東方正教が複雑に絡み合い、それぞれが勢力を争うことによって独立直後から内戦が勃発した。この内戦は、クロアチアがクロアチア系住民を、セルビアはセルビア系住民を、それぞれ国外から支援したために泥沼化し、終戦までに多くの人命が失われ、多くの都市が廃墟となった。

他の4つの国が独立したため、ユーゴスラビアは実質的にセルビアとモンテネグロの2つの国だけから構成される連邦国家となった。しかしたった2つで「ユーゴスラビア」というのも妙な話である。近年、正式に国名を「セルビア・モンテネグロ」に改めた。

(注)スロベニアとクロアチアがカトリック。マケドニアはマケドニア正教、セルビアはセルビア正教、モンテネグロはモンテネグロ正教で、それぞれ東方正教会。唯一複雑なのはボスニアヘルツェゴビナで、もともとの住民(モスレム人)はイスラム教だが、クロアチア人やセルビア人もそれぞれかなり流入しており、前者はカトリック、後者はセルビア正教(東方正教会)であるため、この国は3つの宗教勢力が絡み合うという対立の生じやすい構成を持っている。

 

問5 地理Bではまず出題されないが、地理Aではたまに出てくる時差計算。

写真の建造物はイスラム教の礼拝所であるモスク。ドーム状の屋根とそれを取り囲む複数の尖塔が特徴的。「正午など毎日5回」「中心的聖地の方角に向かって」礼拝が行われることもイスラム教特有のこと。この聖地とはサウジアラビアのメッカのこと。カーバ神殿が位置する。

時差については、東に行くほど早くなり西に行くほど遅くなることを頭に入れておこう。つまり東経135度であるように、世界の中でもかなり東の方向に位置する日本は、世界で最も早く太陽が昇る国の一つ(さすがに日本よりさらに東にあるニュージーランドよりは遅いが)。

では日本が正午の時、メッカのあるサウジアラビアの時刻を考えよう。世界地図を参照してみようか。第3問問5にある。日本とイギリス(世界標準時)の差が9時間というのは知っているだろう。日本は東経135度で、経度差15度で1時間の時差になるので(135÷15=9)より、日本の方がイギリスより9時間進んでいる。日本が正午ならば、イギリスは夜中の3時だ。

サウジアラビアの位置を確認。イギリス経度0度、日本東経135度ならば、おおよそ東経45度ぐらいだろうか。イギリスから日本までの約3分の1ぐらいの距離のところに位置している。このことから日本とサウジの経度差は90度ほどで、これは時差でいえば6時間に相当する。日本より6時間遅れているのだから、サウジはちょうど日の出の頃、つまり午前6時だろう。

 

問6 いかにも地理A的。中国北部とはモンゴルに接する付近。モンゴル民族が居住する内モンゴル自治区というところ。ここでは移動式のテント住居を示す①が正解。家畜を連れて広い範囲を移動する遊牧民に適した住居なのだ。ちなみにモンゴルではこのようなテント住居をゲルといい、内モンゴルではパオというが、もちろん同じもの。

②乾燥地域のものだろう。日干しレンガで作られているようだ。西アフリカ。

③アメリカインディアンのものだろう。北米大陸。

④風通しのいい高床式になっている。衛生的でもある。高温多湿な東南アジア。

 

問7 出生率は原則として人口増加率と比例。この4カ国では発展途上国のエジプトとフィリピンで人口率が高いと思われ、ゆえにこの2カ国が出生率の高い③か④に該当。先進国では一般的に人口増加率は低く、出生率も低い値であると思われ、日本とスウェーデンが①と②のいずれかに該当。

ここからは「女性の割合」に注目。スウェーデンは高福祉国として女性のはたらきやすい社会環境が整備されており、そのことからこの値の高い①がスウェーデンとみて妥当だろう。よって消去法で②が日本となる。

福祉国家スウェーデンにおける女性の社会進出の度合の高さについてはしばしば出題されており、古くは97B本第3問問2、最近では05B本第4問問5などが代表例。参照しておこう。

③と④については不問だが、参考までに。エジプトはイスラム教国であるので、女性の社会進出はさかんではない。ゆえに④が該当。フィリピンの状況はよくわからないが、実際日本にも多くの女性が出稼ぎに来ていることを思えば(まぁ、ぶっちゃけ夜の店が多いんだけどさ~・笑)、女性の割合がとくに低いとも思えないだろう。

ちなみに、フィリピンは極めて出生率が高いようだが、一般的にいってアジアの国でここまで出生率が高い国も珍しい。これは離婚と中絶を禁じるカトリック国であることが大きな理由の一つだろう。カトリック国は出生率が高い傾向にある。

 

第3問

あいまいな問題もあったりして結構難しかったりするんだが、それよりも問7のようなこれまでのセンター試験になかったような良問もあったりして驚かされる。

 

問1 「検問がなく」とあるがこれはかなり特殊なことだよ。国境を越える時にノーチェックだなんて普通では考えられない!

この「普通じゃない」状況が実現しているのはEU。人だけじゃなく、モノ・カネの移動も自由。すでに多くの国で共通通貨ユーロが使われ、将来的には政治的統合(つまり「ヨーロッパ国」だ!)まで目指しているのだから、この状況も当然か?

①米国とメキシコは経済協定NAFTAを調印している。たしかにモノの移動は自由になった。しかし決して人の移動は自由ではない。いや、むしろメキシコから米国への流入については厳格となっている。検問でチェックされまくるに決まっている(ま、違法入国も多いんだろうけどさ)。

②アルゼンチンとブラジルは普通の国境だけれども、もちろん普通に検問があると思う。

③インドとパキスタンなんてとくにカシミールについて争っている当事者同士だものね。こんな友好モードじゃなないよ。

 

問2 民族衣装に注目すればいいのかな。とくに帽子が決め手になるね。

ア;パキスタン。このような頭にフィットする形の帽子はイスラム国で好まれている。

イ;ミャンマー。菅笠(すげがさ)がよくみられるのは東南アジア。

ウ;ペルー。つばのある帽子はアンデス山脈の伝統的な衣装の一つ。

 

問3 へぇ~これおもしろいな。要するに、一番多いのはどこってことでしょ?

まさか日本から移民が多いとは思えないのでまず③を除去(豊かな日本から海外に移住する必要はない)。で、①②④が残るんだが、さあどこかなぁ~。

そもそもの人口規模で考えるならば人口2億人を超えるインドネシアからの移民の数が多そうだ。でもそういった人口の観点から考えると、中国やインドなんてもっと移民が多くてもよさそうなもんだが、どうなんだろう?だからここでは米国への移民は、人口ではなく、他のものをキーワードとして考えるべきなんじゃないかと気付く。さあ、それって何だ?おそらく「言語」なんだと思う。かつて米国の植民地であったので、公用語の一つとして英語が採用されている。もちろんそういった歴史もあって経済的な交流もさかんなのかもしれない。このことからフィリピンを選ぶ。さあ、どうだ!?

ただし、この問題は難しいよ、やっぱり。①と④でかなり迷うと思うよ。できなくても気にしなくて良し。いや、②とか、とくに③を選んで間違えた人に関しては、反省してくださいね(笑)。

ちなみに米国への移民ネタは05A追第3問問4でも登場。かなりのメジャーネタということだね(っていうか、本問の場合は「移民」ネタっていうより「フィリピン=米国植民地」っていうネタと言うべきか)。

 

問4 地理Bで出そうなタイプの問題。過去に同じネタが何回も出題されているので容易だろう。

①ドイツ。戦後復興期にトルコなどから出稼ぎ労働者を迎え入れたが、オイルショックの時代にはむしろ「余計な労働力」をして嫌われた。

②サウジアラビア。「1970年代の建設ブーム」はオイルショックによって裕福になった西アジア産油国のキーワード。しかし「労働力の約半数が外国人」ってすごいね。サウジは結構大きな国やで!

③シンガポール。「中継貿易」がキーワードになるのはシンガポールかホンコンぐらいでしょう。もちろんここではシンガポール。

④日本。移民法の改正によって、日系人に限り外国人の単純労働への就労が認められるようになった。もともと日系人の多いブラジルからの労働力の流入が顕著となっている。

 

問5 マイナーな国際機関は地理A特有の話題。地理Bではどうかな?

①アセアンは、東南アジア10カ国。ほとんどの国に派遣されているようだ。

②CISは旧ソ連からバルト3国を除いた12カ国。ウズベキスタンとキルギスに派遣されている(わかるかな?とくにウズベキスタンは綿花やアラル海の縮小、シルクロードなど特徴の多い国なので、ぜひとも場所も知っておいてほしいな)。

③G8は、米国、日本、ドイツ、フランス、イギリス、イタリア、カナダの先進7カ国と、なぜかロシア。ロシアってずうずうしいよね(笑)。

④ナフタは、カナダ、米国、メキシコ。

 

問6 貿易統計の問題。現在、わが国の輸出相手国1位は米国、輸入相手国1位は中国であり、④の文とは食い違う。

他の選択肢については問題ないでしょう。

 

問7 非常におもしろい統計問題。

日本は米についてはほぼ100%自給。キが「日本の自給率」。95となっているのは、ウルグアイラウンドという会議によって、わが国は米の最低輸入量を決められてしまい、国内消費量の5%を強制的に輸入しないといけないようになってしまった。これっておかしな話で、すでにおなかいっぱいになっているにもかかわらず、もう一杯ごはんをおかわりしろっていうようなもんだよ。もちろん満腹やねんから、残すに決まってるよね。この「5%」もそういう運命で、外国(もちろん主に米国だよ)から輸入された米は結局備蓄米とか海外への援助米とかに回されているらしいね。ま、妙なシステムだけれども、米の輸入について完全自由化を求める米国と、農家を保護するために自由化だけは阻止しようとする日本との、最低限の妥協点ともいえるわけだ。

カとクについても、米を中心に考えればいいのではないか。米国は世界最大の農産物輸出国であるが、米については輸出世界第1位ではないよね。それはタイであり、米国はもうちょっとランクが下がる。でも上で述べたウルグアイラウンドの経緯を考えてみよう。米国の建前は「貿易の自由化の促進」なわけだよ。でも本音は違うよね。日本にちょっとでもモノ(とくに米国が得意とし、日本が不得手とする農産物について)を買わせようって魂胆だよ。世界最大の赤字国米国から見れば黒字国日本はシャクな存在に違いない。米の最低輸入量受入についても米国主導で行われたことは明らかだよね。つまり、日本としてはやむを得ず5%輸入することになったんだが、いざフタを開けてみたら、日本へと積極的に米を売ろうと張り切って立候補したのは米国だけだったってことだよ。そりゃたしかに全体の輸出量からすればタイが1位なんだろうけど、タイからみれば米が十分足りている日本に向かって「無理矢理に押し売りする」理由なんかないんだから。以上、この点を意識し、米が10に過ぎないクが「世界の総輸出量に占めるアメリカ合衆国の割合」、47もあるカが「日本の総輸入量に占めるアメリカ合衆国の割合」に該当する。しかしこの統計っておもしろいよね。いかに日本が米国に農産物を依存しているかがわかるし、同時に米国にとって日本こそが非常に大きな「お得意さん」であるかがわかる。日本と米国をつなぐものって実はこういった「農産物」なんだね。