1999年度地理A本試験解説

1999年地理A本試験

(カテゴリー1)2・6

(カテゴリー2)1・3・5・8・13

(カテゴリー3)4・7・10・11・12・16・17

(カテゴリー4)9・14・15・18・19・20・21

 

第1問 地理A的な問題が続くので、地理B受験者には不要だろう。

問1 北アフリカの乾燥地域では日干しレンガを用いた家屋がみられる。暑い外気が入ってくるのを防ぐため、窓は小さく作られている。

問2 よくわからない。

問3 モンゴルの草原では移動式の住居を用いて遊牧生活を営む者が、現在では少数になってしまったが、存在する。テントのように骨組みに皮を張ったこの住居はゲルとよばれる。

問4 地力に乏しい熱帯雨林地域では植物を焼き払いその灰を肥料として耕作を行う。焼畑農業である。養分は数回の耕作によって消耗されるので、数年ごとに新しい場所へと移動を繰り返すこととなる。よって移動式農業ともよばれる。

主作物はキャッサバというイモの一種であり、水田耕作を伴うものではないので、選択肢1が誤り。

問5 写真だけではわかりにくいのだが、問6の表1を参考にするといい。この飲み物は茶である。茶の生産と輸出の多い国はどこだろう。頻出。

問6 これくらいは常識の範囲で解けるのでは。モンゴルで乳製品が多いことだけ知っておくといい。

問7 Cの国はイギリスであるが(問5の国を植民地にしていることから判断できる)、人口は6000万で日本の半分、面積は日本よりやや小さいので、人口密度は200~250人くらいであると想像できる。Xがイギリス。

モンゴルは人口密度のとくに低い国(2人/平方キロ)として重要であるが、ここはアフリカの発展途上国の乳児死亡率の高さに注目するべきだろう。アフリカは人口増加割合の高い大陸であり、出生率もきわめて高い。劣悪な衛生条件や危機的な食糧事情などにより乳児死亡率も高くなっている。

 

第2問 人口移動は地理Bでも頻出。この大問にはいくつか知識に偏ったものもあるが、さほど難しいものではなく、十分解答可能だろう。

問1 地理Bでも人口移動に関する問題はよく取り上げられるが、それらの多くは経済原則(「金のあるところに人は集まる」)に基づく移動についてのものであり、本問とはタイプが異なる。本問の場合はむしろ知識に偏った印象がある。ただしいずれも基礎的な事項であり、地理B受験者である君たちも知っておいてかまわないだろう。

aは中国南部から矢印が出ているが、この地域を華南という。フーチエン省やコワントン省など。人口過密にあえぐ貧困地域であった華南から多くの移民が海外に流出した歴史がある。東南アジアに移住した者が多いが、その一部は日本や、そして太平洋を越えて米国にまで達した。Qが該当。移住当初は農園などの労働力であったが、やがてその地で頭角を現し、今は経済的に富裕となる者もいる。東南アジアのほとんどの国々では、中国系住民によって経済の実権が握られている。

スペインやポルトガルから中央アメリカ・南アメリカへの矢印は、彼らの植民地支配と関係あるだろう。新大陸で豊かに産出される銀を求め、スペイン人はメキシコやペルーの文明を破壊し、植民地として支配した。多くのカトリック僧も渡り、多いに彼らの宗教的精神を普及していった。cはPに該当。混血も多い地域である。

消去法によってbがRになる。

問2 地理Bの問題としても十分通用するおもしろいものである。「金が人を動かす」の原則に基づいて考える。経済レベルの低い(1人当たりGNPの低い)地域から、高い方に向かって人口は移動するというセオリーがある。高い賃金の仕事を求めての移動である。

1;ドイツやフランスは現在でもヨーロッパの先進工業地域であり、この地に人口が集まるのは正しい。しかし「農業労働力」としての移動には疑問。外国からの出稼ぎ労働者は、より高い賃金を求めてこの国にやって来ているのだから、収益性の低い農業よりも、製品単価が高く高収入が見込める工業に従事することを望むのではないか。

2;オイルショックによって原油価格が高騰し、産油国は多いに潤った。この金に釣られて貧しい国から労働者が集まってくることは十分に想像できる。

3;これはよくわからない。このような特殊な状況もあるのかもしれない。ただここでも「経済レベルの低い地域から高い地域への移動」という原則には適合しているようだ。

4;東南アジアの工業化が進んだことによって、仕事が増えたということ。もちろん経済レベルも上昇している。

問3 まず総人口で見当をつける。ドイツ8千万、イギリス・フランス・イタリア6千万、スペイン4千万。このことより、1がドイツ、5がスペインとなる。

1のドイツで外国籍人口が大きく、5のスペインで小さい。経済レベルの高い(1人当たりGNPの高い)ドイツでは仕事が多く、高い賃金を求め外国から出稼ぎ労働者が殺到しているのではないか。そして低所得のスペインはその逆に少なくなっている。

イギリス・フランス・イタリアを1人当たりGNPの高い順に並べると、フランス>イギリス>イタリアの順。これより、2をイギリス、3をイタリア、4をフランスと考えてみよう。

これで矛盾がないか、さらに検証していこう。2のイギリスはアジア出身者が多いようだが、これは南アジアや東南アジアの広い範囲をこの国が植民地支配していたことと関係あるのだろう。4のフランスはアフリカが多い。フランスはアフリカに植民地をたくさん持っていた。位置的にも地中海をはさんだ対岸であり、アフリカ人にとってフランスは決して遠くない。3のイタリアは外国籍人口自体が少ないものの、それでもアフリカ出身者の割合の高さが際立つ。北アフリカのリビアは、イタリアが唯一所有していた植民地といってもいい。リビア(だけ)と関係が深い国イタリア。

問4 90年代初頭に旧ソ連が崩壊し、米ソの巨大な対立はなくなったものの、かえって小規模な内戦が頻発することになった。90年代は内戦の時代である。

ユーゴスラビア内戦やルワンダ内戦がその悲惨な例の代表だろう。チトー大統領の死後、求心力を失ったユーゴスラビア連邦の各構成国では独立の気運が高まる。旧ユーゴを構成していた6か国のうち、スロベニア、クロアチア、マケドニアは次々と分離し、独立を果たす。ボスニアヘルツェゴビナもそれに続くが、この国は複雑な民族構成を持ち、それがゆえに各勢力が対立し、内戦へと落ちていく。平和と民族融合の象徴オリンピックも開催された首都サラエボも戦火にまみれ壊滅し、多くの人命が失われる。数年後、焦土と化した国土をたずさえようやくボスニアヘルツェゴビナは独立を果たすが、その犠牲はあまりにも大きい。現在は、4か国の分離によりユーゴスラビアに残ったセルビアとモンテネグロは、国名をユーゴスラビアからセルビアモンテネグロに改名し、これによりユーゴスラビアという名前は歴史に埋葬されることとなった。

アフリカの小国ルワンダの2大主要民族はツチ族とフツ族。とはいえ外見上に何の区別もなく、その区分は形式的なものに過ぎない。同じ村落にツチ族とフツ族が住んでいることもあるし、民族の壁を越えた婚姻もみられた。しかしある時を境に、大統領の座をめぐる政治対立が国民全体を巻き込んだ大々的な民族対立に発展する。人々は武器を手にし、隣人、そして家族を殺戮した。逃げ惑う住民は隣国コンゴ民主(旧ザイール)などに流出し、難民キャンプで自国の平和回復を願った。

「内戦の時代;90年代」を意識しつつ選択肢を検討していこう。

1;内戦による難民が多い。

2;世界はそれほど平和なのだろうか。民族対立は根深いものである。

3;ルワンダ難民がコンゴ民主に流出した事例を考える。アフガン戦争の際にも多くの難民が隣国パキスタンに逃げた。遠くの先進国ではなく、近くの発展途上国の方が現実的ということか。国連による難民の保護や、先進国の難民受け入れ態勢はほとんど整っていない。

4;選択肢3とも重なるが、先進国が積極的に難民を保護する程には国際社会は成熟していない。

以上より、1と2で迷うが、内戦の悲惨さを考えれば1が正解とできるのではないか。戦争の無くならない世界。そしてそこで常に被害者となるのは一般市民であり、彼らには難民として隣国に一時的に逃げることしか自らの身を守る術はない。

問5 問1同様、移住の時期が古く、歴史的な内容を扱った問題ともいえる。地理B的ではない。

切手に国名・地域名が書かれている。アはメキシコ、イはハワイ、ウはブラジル。いずれも日本から移民を送り出した地域である。この移民は明治から昭和の初期になされた。現代の移民と違う点は農業移民という点。現地で農業に従事しながら、いつか大規模な農園を経営することを夢みて、困難に耐えた。高度に資本主義の発達した現代の社会においては、より高い賃金を求めて工業などに従事するのが普通。

X;日系人というのは日本人の祖先を持つ現地人という意味だが、それが4分の1を占めるというのはかなり高い割合。日系人が最も多いのはブラジルだが、さすがに4分の1ということはないだろう(ブラジルの人口が1.7億なので、4千万人が日系人!?ってことになる)。メキシコも同様に人口規模の大きな国であるので、これも除外。ハワイならば州全体の人口も少ないだろうし、その4分の1といってもさほどの人口にはならないはず。

Y;「海外で最大の日系人社会」からブラジル。

Z;消去法でメキシコ。「再移住」した「隣国」とは米国のことだろうか。

問6 ポイントは「留学」。より成熟した社会を持ち、科学技術の発達した先進国へと留学生は送られる。

3は全体の17.6%おもに留学目的で日本に滞在している。発展途上国だからこそ日本でさまざまなことを学ぼうということだろう。逆に1はわずか1・0%。総数が約90万人なので、留学生は9千人近くに達するようだが、それでも割合的には低いのだから、この国から日本へとやってくる目的として留学はマイナーなものに過ぎない。

留学目的での滞在者の割合が低い国(1・2・4)と高い国(3・5)が極端なので、わかりやすいと思う。3と5は1人当たりGNPが低い中国とフィリピンであろう。「経済レベルの低い国ほど留学生の割合が高い」。あるいは「経済レベルの低い国からは、留学目的以外で先進国にやってくる者は少ない」といった方が適切だろうか。

3と5でいずれが中国だろうか。これは国の規模や日本との関連性を考えればいいだろう。総入国者数の少ない5がフィリピンであろうから、3が中国となる。

余談であるが、フィリピンからは「興行活動」目的での入国・滞在が多いことも知っておくといいだろう。いわゆる夜の店でたくさんのフィリピン人女性が働いている。

 

第3問 傑作。センター試験史上最高の名作がここにある。味わって解いてみよう。

問1 大都市の数の変化ではあるが、実質的に大陸ごとの人口規模と人口増加割合についての問題と考えていい。

現在のデータ参照、といいたいところだが2000年がないので、便宜上1990年と2010年の平均くらいを考えてみようか。そしてその値を、各大陸ごとの人口規模と比較してみる。世界全体で56億として、アジア35億、アフリカ7億、ヨーロッパ(旧ソ連のヨーロッパに近い地域を含む)7億、南北アメリカ大陸7億(北アメリカ3億、中央・南アメリカ4億)である。1はアジア。圧倒的に人口が多いので大都市の数も多い。あとの3つは微妙か。3が少ないのでこれが北アメリカとも思えるが。

ここからは大陸別の人口増加割合を考えよう。人口が急増している地域では、大都市の数も目だって増えているとみていい。年人口増加率は、3%;アフリカ、2%;中南アメリカ・南アジア、1%;東アジア・北アメリカ・オセアニア、0%;ヨーロッパ・ロシア・日本。

2は都市の数があまり変わらない。人口の変化が少ないヨーロッパと思われる。3は急増している。人口爆発のアフリカだろう。残った4が北アメリカ。

問2 センター試験における都市というジャンルの典型的な問題。この問題をそのまま頭に叩き込むといい。具体的な都市名は全く登場していないが、まさにそれはセンター試験では不要なのだということ。

1;発展途上国の都市は狭く密集しており、概して交通事情は悪い。鉄道や道路など各種インフラの整備も遅れている。たとえば、発展途上国の大都市には信号機がない、あるいはあっても守らない、などという話を聞いたことがないだろうか。

2;これはよくわからない。地理でこのような法規に関する問題が話題となることは稀。

3;全くそんなことはない。集中は一段と激しい。過密問題は深刻である。しかしあふれた人口は都市周辺のスラムを拡大していく。

4;これもよくわからない。保留。

5;頻出ネタ。スラム(不良住宅地区)の形成される位置について。「先進国のスラムは都心近くに、発展途上国は都市周辺に形成」が大原則。都市の歴史が古い先進国においては、都心の建物が老朽化し、住民が捨てたその地域に、失業者や外国からの移民が住み着き、スラムとなる。発展途上国の大都市においては、仕事を求め多くの人口が流入するものの、彼らに十分な仕事はなく、都市周辺のスラムにやむを得ず滞在する。

インナーシティというのは都心のこと。発展途上国のスラムはインナーシティにはできないので、本選択肢は誤り。

以上より、1が正解、3と5は除外される。2と4のいずれかがもう一つの答だが、これについてはカンで選べばいいだろう。

2は誤り。たとえばイギリスの大ロンドン計画においては、ロンドン市街の外周を囲むようにグリーンベルト(緑地帯)が設けられ、自然環境が保たれた。ニュータウンはそのグリーンベルトのさらに外側に作られた。日本でも各種の法律や条令によって、開発は計画的に行われるようになった。

4が正解。たとえばイギリスのロンドン都心の再開発においては、スラム化が深刻であったドックランズ地区の荒廃が進む建物をつぶして、新しくオフィスビルや集合住宅がつくられた。ただしスラムに住んでいた貧しい人々は行き先をなくし、さらに他のスラムへと転居するしかない。

問3 問2とも関連しているが、発展途上国の大都市においてスラムが拡大するのは、極端な人口流入に見合うような、雇用が都市内部に存在しないから。都市に行けば仕事があるのだという幻想を抱いて、人々は農村から殺到するが、実際には十分な雇用はなく、職にあぶれた家族は都市周辺のスラムに住んで、仕事を探し続ける。

このことより2の「慢性的に労働者が不足している」を誤りとすればいいだろう。

付け足し;この問題で注目すべきところは「アフリカや南アメリカの発展途上国」とわざわざ断っているという点。つまり発展途上国でも「慢性的に労働者が不足している」地域があるということ。これは中国である。外国からの企業の進出が相次ぎ、仕事にあふれている。たとえばスラムの形成される都市として具体的に名称が挙がる都市としては、東南アジアのバンコク、インドのムンバイとカルカッタ、アフリカのラゴス、ラテンアメリカのメキシコシティやサンパウロなどで、中国の大都市は含まれない。中国では、地方から労働力が殺到し、そして彼らに十分な雇用を与える余裕をもつ都市があるということ。

問4 先進国のスラム化に関する問題。開発時期の古い都心部が荒廃し、そこがスラム化していく過程が表されている。

問題文にもあるように、ここはロサンゼルスの中心部のある地区である。60年から80年にかけての大きな変化としては、アの居住地域が減少し、イやウが増加しているということ。

説明文も参照してみよう。最初に住んでいたのはアであるが、それがイに代わり、さらに移民であるウが流入した。アは白人であろう。古い住民であるが、都心の老朽化とともに郊外に転出し、そこで広い一戸建ての家を構える。そこに流入し、スラムを形成するのがイやウである。ウについては「移民」と書かれているのでこれがメキシコからの移民つまりヒスパニックと考えていいだろう。黒人たちは生まれた時から米国人であり、移民ではない。

問5・問6 思考問題として完成している。またこの問題を通じ、具体的に都心の再開発について知ることができる。見事な問題。実は問5より問6について先に解いた方が考えやすいので、

問題文が長いのでこれをしっかり読むことから始める。キーワードは「ある大都市の都心部」。実際の都市名はないものの、都心の一般的な特徴としては地価の高さが挙げられる。土地を有効に活用し、集約的な利用がみられる(高層ビルや地下など)。狭い面積であっても多くの利益を得られるような、収益性の高い産業しか立地できない。

写真をみてみよう。これは再開発前のものであるらしい。せいぜい2階建てくらいの家屋が軒を連ね、開発時期の古さを思わせる。戦後の間もない時期に家々が建てられたと思われる。

表参照。まず「再開発」という言葉に注目。都心の土地の有効利用を図るため、より収益性の高い利用をめざし、高層ビルが建てられることが多い。このことから問6は選択肢1が正解であると考えられる。

他の選択肢についてもその誤りを指摘しておこう。2については、「多様」とはなっていない。再開発前は「専用住居」から「その他」まで、「c」を除く6タイプの利用がみられる。それに対し、再開発後は利用は4タイプのみ。

3について。工場の延べ床面積は233平方メートル。全体(18142平方メートル)の2%程度であり、これが大規模といえるだろうか。工場の存在は小さい。

4について。戸数の変化がないなら、たしかに1戸当たりの面積は3倍となるだろう。しかしここは再開発と同時に他から多くの人々が転居してきて、それにより戸数も大幅に増えたと考えられる。とにかく戸数についてのデータがない以上、確かなことはいえない。

ではここからは問5について考えていこう。写真1の部分が壊され、新たに高層ビルが建設されることをイメージしてみよう。

bがわかりやすい。再開発後に急増しているので、高層ビルに含まれる施設であることが想像できる。これはオフィスつまり「事務所」であろう。

aは以前は多かったものが再開発後には全く姿を消した。写真をみると瓦屋根をもった家屋がいくつもみられる。一階が商店で二階が住居であるような、商店街に多くみられるような家屋であると考えられる。aが「店舗併用住居」だろう。しかしこのようなつくりはいかにも古くさいものであり、現在はより集約的な土地利用を狙い高層ビルに建て替えられた。

残ったcが「屋内駐車場」。これはたとえば地下の駐車場のことではないか。以前はなかったものの、ビルの地下などに新たに駐車スペースが設けられたと思われる。

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