2003年度地理A追試験解説

2003年地理A追試験

 

第1問

ほとんどセンター試験では出題されたことのなかったイタリアと韓国が取り上げられていることにまずビックリ。実はこの年以降イタリアに関する問題って増えていたりするんだが、まさにこれは伏線だったのか。全体的には良問がそろうが、問2が難しい。

 

問1 都市Aはイタリア半島に位置する。イタリア半島の典型的な気候グラフとしてローマのものが前年度の02B本第5問問1で問われているので、これを直接参考にすればいい。概して温暖で、しかし夏季は中緯度高圧帯の影響によって少雨となり乾燥する。いわゆる地中海性気候というもので、両半球の緯度35~40度付近、大陸西岸には例外なく登場するものとして、君たちの頭にはインプットされているだろう。④が該当。

Bはソウルなのかな?ちょっと場所がズレているような気もするが。それともインチョン?まぁいいや。都市名は問われていないし。日本に近接する地域の都市として、日本の気候グラフと近いものを探せばいいのではないか。②が該当。季節風の影響によって、夏は多雨、冬は少雨となる。最寒月平均気温-5℃、最暖月平均気温25℃というのはほぼ札幌と同じ。05年には同じく朝鮮半島のピョンヤンの気候グラフも出題されたので比べてみるといいだろう(っていうかほとんど同じような気候だから、それだけ確認しておいて)。

ソルトレークシティは①。「ソルトレーク」つまり塩湖が見られるのは乾燥地域特有の事象。降水量より蒸発量が多いので湖水が「煮詰まってしまう」のだ。ソルトレークシティはロッキー山中に位置するモルモン教の聖地で宗教都市。冬季オリンピックが開かれたことで有名だね。同じくロッキー山中の都市デンバーの気候グラフは99年に出題。比べてみよう。

ニューヨークは③。気温的には日本と近いものの(同緯度なので当たり前っていえば当たり前なんだが)、アジアのように季節風の影響が強いところではないので、降水量に季節的な変化はない。米国東海岸の都市の気候が問われた例は過去にないが、ニューヨークそのものの出題はかなり多く、本問で登場したことも極めて妥当。ま、センター試験のレギュラーってことですわ(笑)。

 

問2 これは難しいと思う。イタリアが新期造山帯であることは容易に想像つくと思うが(火山も存在しているのだ)、朝鮮半島は難しいね。日本が新期造山帯だから、朝鮮半島も同じだと誤解してもやむを得ないな~。

正解は③。ま、できなくてもしゃあないでしょ?

 

問3 複雑な入江になっている。これはリアス式海岸。山地が沈降し、河川が削ったV字型の谷に海水が入り込んで、深い入江となっている。平地が少ないので大都市が立地しにくいという欠点はあるが、水深が十分であるため天然の良港とはなりやすい。日本では三陸海岸(注1)、志摩半島(注2)、若狭湾(注3)など。世界ではスペイン北西岸リアス地方や、この図でも示された朝鮮半島南西部など。

以上より①が正解。②はフィヨルドの説明。③は海岸段丘、④は砂州・砂嘴(さし)・沿岸州と思われる。とくに①と②の違い(ともに沈降海岸だが、河川が削ったV字谷と氷河が削ったU字谷との違いがある)に注意。

(注1)岩手県から宮城県にかけての太平洋岸。湾奥に水圧が集中するため津波の被害が大きくなることがリアス式海岸の特徴だが、ここは地震多発地帯である日本海溝に面しており、とくに津波災害の多いところとして有名。

(注2)三重県。たしかに津波には弱いリアス式海岸だが、台風などの風雨な高波は避けることができ、波の穏やかな入江を利用し、この志摩半島では真珠貝の養殖がさかん。「パルケ・エスパーニャ」というスペインの雰囲気を模したテーマパークがあるが、それもこの付近の風景がスペインのリアス地方と似ているからだそうだ。

(注3)福井県。平地が少ないため、農業にも適さず、工場用地にもなりにくい。このような「陸の孤島」であるために原子力発電所が多く誘致されたのも(莫大な補助金が受け取れる)当然なのかもしれない。

 

問4 ①運河の街ベネチア。アが該当。沿岸州(浅い海に砂がたまって島になった陸地)の上に集落が開かれ、数万人規模の都市となっている。道路は存在せず、無数に引かれた運河をゴンドラに乗って人々は移動する。観光都市というか、街全体が一つの観光地みたいなもの。

②カトリックの総本山は聖ピエトロ寺院だが、この寺院だけが独立した国となっており、それがバチカン市国。ローマ市内の一区画を占めている。東京において皇居だけが独立した国となっているようなイメージでとらえればいい。イが該当。

④これは火山灰の下に埋もれてしまったポンペイ遺跡だろうか。そうなると背後の山はベズビオ山だな。これはナポリでウが該当。ナポリと鹿児島って姉妹都市らしいね。火山つながり。

③これはよくわからないが、消去法でエなんでしょう。

 

問5 イタリアのポイントというのは、北部と南部で全く状況が異なっているということ。北部というのはヨーロッパ大陸部に含まれるアルプス山麓の地域。ここにはポー川という川も流れ、平原が広がっている。南部というのは新期造山帯からなるイタリア半島全域と周辺の島々。険しい地形が連続し、自然環境は厳しい。

気候・・・(北部)日本と同様に温暖で湿潤な気候。フランスとの国境に近いトリノという都市で冬季オリンピックが開かれるのだが、長野のイメージ、つまり中部日本と似通った気候環境を考えていい。(南部)夏季乾燥する地中海性気候。中緯度高圧帯の影響が強まる夏季に少雨となる。全体的な降水量も少ない。

農業・・・(北部)ポー川沿いの沖積平野は豊かな農業地帯。比較的土地生産性も高く、ヨーロッパの他の地域と変わらない混合農業が行われる他、水稲も栽培されている。(南部)厳しい環境であり、土地生産性は低い。また大土地所有制も残存し、一部の地主が土地を独占し、それを土地を持たない小作人に貸すという前近代的な農業がみられ、合理化されていないために労働生産性も低い。湿潤な冬季には小麦栽培も行われているが、この地域を特徴づける農業形態はやはり果樹栽培。飲料の代わりとなるブドウや、耐乾性の強いオリーブなど、樹木農業がみられる。地中海式農業である。

工業・・・(北部)工業先進地域。アルプス山麓のトリノは豊富な水力に恵まれ、また自動車工業もさかん。北部の中心都市ミラノは人口100万を超え、ファッションなど都市型工業が栄える。(南部)ローマやナポリなど人口規模の大きい都市がありながら、とくにこれといった工業はない。唯一、半島南端に臨海型の製鉄所が建設されたぐらい。

以上のことを頭に入れて、イタリア北部と南部を判定しよう。

①がイタリア北部。「自動車」「衣類」などがキーワード。「工業の三角地帯」とあるが、これはトリノとミラノとジェノバ(港湾都市。鉄鋼や造船など)のこと。「平野部」とはもちろんポー川に沿った平原のことで、農業がさかんなことも書かれている。

④がイタリア南部。「工業化は遅れており」「農業の生産性も低い」。「一部の地域を除いて」というのは半島南端の製鉄所のことだろう。「冬小麦」「乾燥に強い果樹」はこの地域で行われる地中海式農業のキーワード。ちなみに「放牧」されている家畜は主にヤギ。

さらに朝鮮半島南部と北部について。こちらは明瞭だろう。南部は韓国、北部は北朝鮮。この2つの国について全くイメージができないって人はいないよね?韓国は今や先進国並に工業が発達した国、片や北朝鮮は国民の大部分が食糧危機にあえぐ貧困国。

②が韓国。韓国の高度経済成長は80年代であるが、その兆しは60年代から見られた。「政府主導の農村開発運動」というのはセマウル(新農村)運動という農業の合理化へのはたらきかけ。これにより農業に人手をかけずとも多くの農作物が収穫できるようになったので、余った労働力は農村から都市へと移動し、そこで商工業にたずさわることによって80年代に頂点を迎えるこの国の高度経済成長を支えた。「造船」「重化学工業」などはもちろん韓国のキーワードの一つ。さらに「ハイテク」については、あまりこの国特有のキーワードというわけではないものの、05B本第2問問4において「半導体産業」という言葉で再び登場している。ところで「都市・農村間の経済格差」なんてどこの国にもあるでしょ。

③が北朝鮮。たしかに地域の大半が「山岳地帯」であるような。しかし「地下資源」って豊富なのかぁ?「重化学工業」ったって軍需産業でしょ。ミサイルとか原爆とか!「自然災害の多発」だけが経済に影響を与えているとは思わないけどね(苦笑)。

 

問6 ありがちな問題。

「牛乳・乳製品」「肉類」が多いのが西洋の特徴。Qがイタリア。

PとRが日本か韓国。雰囲気としてはより「魚介類」が多いRが日本っぽいんだけどね~。でもPも結構多いか。

ここでも「牛乳・乳製品」「肉類」の多いRを、より食卓が西洋化している(と思われる)日本と考える。どうかな?そういうイメージでしょ?

最後に残ったPが韓国。キムチの国だけに「野菜」が多いことにも納得。

 

問7

それぞれの国の人口規模は知っておこう。韓国4500万人、オーストラリア1500万人、イタリア6000万人。

①韓国。人口の4分の1が一つの都市(首都ソウル)に集中しているのがすごい。「急速な経済発展に伴う人口流入」というのはこの国の80年代の姿。

②メガロポリスとあるので米国のことだろう。首都ワシントンや人口最大都市ニューヨークが列状に連なる。

③オーストラリア。人口小国でありながら、300万都市が2つもあるという極端さ。シドニー、メルボルンともに港湾都市であり、植民地支配の過程でイギリスによって開かれた。しかしこれ以外に100万都市も3つあるんだね~。全人口は少ないのに。ま、国土が乾燥地域ばかりだから、沿岸の都市以外に住む場所がないってこともあるんだろうね。

④イタリア。6000万人の国で人口最大都市が首都ローマの300万人。たしかに「一極集中」ではないわなあ。

 

第2問

最近わりと珍しいあからさまな米国に関する問題。地理Bの問題としてもいい線いってる。ただし、それと解きやすい問題かどうかは別の話。問1は「人口」に気を取られすぎると間違う。工業とか産業の移動に変換して考えないといけない。問3もキーワードを探すことができるか。問4の写真判定もちょっと見誤りやすい。問5は解答センスが問われる。問6は難問だからしょうがないけどね。

 

問1 「古いアメリカ」と「新しいアメリカ」。米国北東部ニューイングランド地方は「古いアメリカ」であり、この国の歴史はここから始まった。一方、サンベルトと呼ばれる北緯37度以南の地域と、太平洋岸は「新しいアメリカ」。近年発展が目覚しく、ハイテク産業などこの地で成立する工業もまた新しい。このことを意識すれば、「古いアメリカ」ニューイングランドから遠ざかるように米国の中心も移動するはず。ゆえにエが正解。この矢印の行き先はカリフォルニア。まさにサンベルトでもあり、太平洋岸でもあり、典型的な若いアメリカがここにある。もちろん人口流入も顕著とみていいんじゃないかな。

 

問2 カは白人ばっかりだね~。これは「古いアメリカ」と思っていいんじゃない?Aが該当。

キはとりわけ黒人の割合が高いようだ。これはいわゆる南部というところ。Cが該当。綿花プランテーションの労働力としてかつてこの地域へとアフリカ大陸から多くの黒人が運ばれてきた。

おっと、ここで一応確認しておこう。米国で「南部」と言った場合には、この国の南側半分の地域全体を表すのではなく、むしろ東南部限定。Yのテキサス州は含まれず(この州は「西部」である。どうかな、テキサスってカウボーイとか多そうでいかにも西部劇の舞台って感じがしない?)、Cを含み、これより大西洋岸に向かって5つの州のことを南部というのが一般的。Zのフロリダ州は南部には含まれない。要するに「南部=綿花プランテーションが開かれたところ=だから黒人が多い」っていう風にインプットしておいてくれ!

最後はアジア系の割合が3つの中では最も高いクだけれども、これはそのものずばり太平洋岸に位置し、距離的にアジアに近いBと考えていいでしょう。

「多民族国家アメリカ」「移民国家アメリカ」っていうネタは最近非常によく出題されている。今まさに米国はそういう国になってるんだろうね。

 

問3

キーワード一発で解ける。「国営企業」は社会主義国で、資本主義国である米国には適さない言葉。ゆえに①が正解。

 

問4

サは家畜とカウボーイ。これはYのテキサス州。この州にはダラス・カウボーイズっていうアメフトのチームもあるし、イメージ通りだと思うんだが。テキサスについては「綿花」「牛」「原油」の生産が全米1位であることをベタベタに知っておいてもいいかもしれない。綿花は近年ではかつての綿花地帯(つまり南部)からテキサスなど西方の灌漑農業地域へと主生産地が移動しているのだ(03B本第2問問5参照)。原油の産出はメキシコ湾沿岸なのでもちろんテキサス。そしてさらにカウボーイのイメージまで付け加えれば、この州は完璧(ついでにブッシュ大統領もここ出身だよ~)。

シは樹木がみられる。米国で果樹といえばブドウかオレンジだと思う。ただしブドウは地中海性気候と相性がいいので、この気候がみられる大陸西岸のカリフォルニア州限定ということで、本問とは関係ない。ということで、これはオレンジとみていいんじゃないかな。Zのフロリダ州のオレンジ園。温暖で湿潤(夏にはハリケーンだってやってくる!)な亜熱帯性の気候。

スは見渡す限りの畑が広がっている。小麦畑と考えたらいいのでは。米国で小麦地帯といえば、中央部の西経100度の経線に沿った地域。ここは年降水量500mm程度で小麦の栽培に適しているだけでなく、東部の湿潤気候と西部の乾燥気候の境界部に当たり、こういった地域では土壌は肥沃となる(注)。Xが該当。この州を中心とした地域は春小麦地帯であり、ホイットルセー農業区分では「商業的穀物農業」地域に区分されている。

(注)この肥沃な土壌はプレーリー土というもので腐植が豊富。年降水量500mmぐらいの半乾燥地域ならば樹木が生育できないが、草ならば十分に育つことができる。その草が枯れて腐ると腐植になり、さほど降水量が多いわけでもないので、雨によって流されることもなく、その場に積み重なっていく。このようにして半乾燥地域には肥沃な土壌が形成されやすいのだ。プレーリー土に類する土壌として、ウクライナのチェルノーゼムやアルゼンチンのパンパ土がある。いずれも湿潤地域と乾燥地域の境界に分布し、草原地帯となっているが、同時に肥沃など土壌を利用し小麦地帯ともなっている。

また、プレーリー土、チェルノーゼム、パンパ土をまとめて黒色土という場合もある。黒とは豊かに堆積した腐植の色。

 

問5 解答センスを必要とした文章正誤問題。文のニュアンスを読み取って正解を導いてくれ。その際になるのは「反対語」。対になる語を持つ言葉に注意するのだ。

①「有料」っていうのが気になる。反対語は「無料」。さあ、米国の高速道路は有料なのか、無料なのか。さらに「混雑や渋滞などの問題」が生じているのか、否か。そりゃ、いかに広大な土地をもつ米国とはいえ、とくに都心なんかに言ったりしたら、ある程度は渋滞しているとは思うよ。でも、他の国に比べたらどうなんだろう?「高速道路が有料で、混雑や渋滞が激しい」っていうのはむしろ日本を表すキーワードなんじゃないかな。米国はもっとおおらかな感じがするし、「無料」かもしれないし、それに日本よりは確実に「渋滞」しないよね(ってか日本がひどすぎる!?)。

②「大規模」っていうのはいかにもアメリカ的。それに「自動車」の反対語で「鉄道」とかあるけれども、例えば日本だったら電車に乗って買い物に出かけるって普通の風景だけれども、米国ではどうかなあ。「自動車」って米国社会を表すキーワードとしては実に適切な感じはするわけだ。

③「複数の自動車を保有する家庭が一般的」とある。まぁ、米国ならこんなこともあるかな。でも「外国で製造」「輸入に大部分を依存」っていうのはどうだ?たしかに米国は世界最大の自動車輸入国である(統計確認してね)。でも自動車生産だって世界1位だ。それだけたくさん自動車造っているのに、それでも外国から輸入した自動車ばかりってことはまず考えられないんじゃない?さぁ、どうだ?君はどう思う?

④これが悩むんだよね~。「鉄道による貨物輸送は姿を消してしまった」とある。これってどうなんだろう?先にも述べたように、米国は自動車社会で人々は自動車に乗っていろんなところに出かけるのだから、旅客も鉄道を使わない、貨物も同じく鉄道を使わない、なんていったら米国内から鉄道そのものが消えてしまうってことにならないか?さすがにこんな極端な状況は生じていないとは思うんだが。それに「長距離の旅客輸送」ってあるけれど、これこそ鉄道なんて使わないんじゃない?米国のような日本の何十倍もあるような広大な国土を移動するわけだから、長距離は航空機を使うでしょ、当然。

以上より、②が正解になる。どうかな、できたかな。問題を解くセンスが必要な気がするんだよね。

ちなみに選択肢④についてだけれども、これは過去問にも登場していないネタながら、比較的メジャーな統計に基づいた問題なので重要。鉄道輸送に関する統計で「日本は旅客輸送が主、貨物輸送はほとんどない。米国は貨物輸送が主、旅客輸送はほとんどない」ということを確認しておこう。

 

問6 これは現代社会的な問題なんてしょうがないかも。

いわゆる京都議定書によって定められた二酸化炭素排出削減条約に関する問題と考えていいだろう。日本やヨーロッパ、ロシアなどはこれに同意し、それぞれ決められた分だけ(国によって違うが平均すれば5%程度)将来的に二酸化炭素排出の削減に乗り出すこととなった。しかし、この世界的な流れにあえて反対しているのが米国。産業発展を優先し、あくまで二酸化炭素排出についてはとくに制限や規定を設けないという姿勢を強行している。

こういった社会状況を反映すれば、米国が選択肢③にあるようなことをしているわけがないことが想像できるだろう。この国は地球温暖化については無視の姿勢を貫こうとしているのだ。まったくムチャクチャな話だと思う。そもそも米国が世界最大の二酸化炭素排出国であるのに。

ちなみに、①国立公園はたいがいどの国にもあるでしょう。②はワシントン条約。地理Aで過去に出題例あり。

 

問7 一見難しいのかなって思うけれど、実はシンプルな問題。

まず最初に。いずれも「人口1000人当たりの値」というように相対値が表されているので、あっ問えば絶対値のようにその国の人口規模を想像することによって解けるということはない。このことは頭に入れておく。

①日本。全体的に値は高め。

②スウェーデン。とくに携帯電話の普及率が高い。スウェーデンやフィンランドはもともと無線通信の技術が発達していた国々であり、その技術が携帯電話に生かされている。また人口密度も低く、雪害などによる補修費用を考えると、電話線を敷設することはコスト的に採算がとれない。また国土が平坦で(バルト楯状地というやや凹凸のある平原)、携帯電話用のアンテナを一つ立てるだけで広い範囲が電波の届く範囲となり、こちらの方がコスト的に安い。以上のような理由から、スウェーデンは世界で最も携帯電話の普及率が高い国の一つとなっている。

③人口当たりのインターネットホストの数が多い。コンピュータそしてインターネットといえばやはり米国だろう。これが正解。そもそもウィンドウズのマイクロソフトもマッキントッシュのアップルも米国の会社。

④発展途上国であり(他の国にくらべ1人当たりGNIが低い)技術もさほど普及していないだろう。ブラジル。

 

第3問

おっと、3問続けて地誌問題ですか!?かなりビックリなんですケド。問題自体もいかにも地理A的なものがいくつかあって、実は難しいですぞ。

 

問1 東南アジアの国々については旧宗主国と宗教がマスト。この問題も、その旧宗主国と宗教が問われている。

①マニラを首都とするフィリピンは、かつてスペインに支配されていた歴史があり、カトリックが主。

②ニューデリー=インド=旧イギリス領。東京・広島=日本=どこの植民地にもならなかった。ジャカルタ=インドネシア=オランダ。バンコク=タイ=どこの植民地にもならなかった。テヘラン=イラン=イギリス。ソウル・プサン=韓国=日本。北京=中国=どこの植民地にもならなかった(ホンコンなど一部に植民地化された地域はあるが)。

③東京やソウルではオリンピックも開催されている(これは知ってるね)。

④メコン川は国際河川であり、中国に水源を発し、ミャンマー・ラオスの国境、ラオス国内、ラオス・タイの国境、カンボジア国内を通過し、ベトナムから海に注ぐ。つまりこれら6カ国を流域に含んでいる。

そもそも首都名がわからなければいけないし、メコン川についてもちょっと細かいことが聞かれている。若干知識が必要になっている部分はいかにも地理A的か。

 

問2 経済レベル(1人当たりGNI)も高く、日本の工場も進出するなど工業もさかんになっているAのタイとDのマレーシアについては、東南アジアのリーダー的存在の国々であろうし、まさか最近になってやっとアセアンに加盟したなんてことはなかろう。社会主義国ベトナムと、内戦によって国土が荒廃したカンボジア。

 

問3 マレーシアはかつて天然ゴムのモノカルチャー国であったが、現在はプランテーションは油ヤシに転換され、また東南アジアを代表する工業国として機械類の生産と輸出もさかんである。しかし「魚介類と米」についてはこの国を象徴するキーワードではなく、それゆえに③が誤りである。

 

問4 これは問題なくエビでしょう。暑いところで養殖されるものであるし、またマングローブ林がこの養殖池をつくるために伐採されているという環境問題も深刻である。②③④は寒い海域のもので東南アジアはふさわしくない(っていうか③はそもそも養殖なんてされないか)。⑤は回遊魚で広い範囲を泳ぐことによって成長。養殖は無理かな。

 

問5 外国人登録者数に注目しよう。日本国内における外国人数でフィリピン人は、韓国・朝鮮人、中国人、ブラジル人に次ぐ多さ。97A追第2問図1参照。ゆえに③が正解。

フィリピン人の多い理由は、彼らが興行ビザによって入国してくるから。99A本第2問問6参照。

他はわかりにくいが、順に考えてみよう。「外国に住む日本人」の数が多いのはQとS。日本人がアジアの国へと出国する理由はやはり商業や工場進出などビジネス的な目的が主だろう。日本と経済的な関係がとくに深い国として、経済レベルの高いシンガポールやタイがQとSいずれかに該当すると考えられる。ここでさらに「日本国内における外国人」の数に注目してみよう。Sが極端に少ない。これはどうしてか。おそらくS国の人口そのものが少ないため、日本国内に住むこの国の人も少なくなっているのではないか。ゆえに「人口小国」シンガポールがSに該当し、Qはタイ。

残ったRはベトナム。まだまだ経済レベルも低く、日本とのつながりもうすい。社会主義国であり、この国が本格的な発展をするのは、まだ将来の話である。

 

問6 ア;仏教。パゴタがいくつかみられる。イ;イスラム教。ドーム状の屋根とそれを囲む複数の尖塔はモスクの特徴。ウ;西洋的な建築であるのでキリスト教だろう。

 

問7 日本が含まれているので米で問題ないと思う。米は熱帯や熱帯に近い温帯で栽培されるもの。トウモロコシはもう少し冷涼な地域。さらに魚と豚に関してであるが、豚についてはイスラム教で避けられる家畜であり、インドネシアやマレーシアでこれを食することはありえない(注)。ゆえに①が該当。かなり内陸部まで範囲が示されているので、魚はどうかな?とは思うんだが、湖や川もあるので魚を食べていないとは言い切れないよね。

(注)イスラム教が豚を忌み嫌う理由にはいくつか説がある。まず豚が雑食で多くの飼料を必要とする点。本来なら人間が食べるはずの農産物まで豚に与えられることになり、これでは人間が飢えてしまう。草を食み、放牧しておけば勝手に育ってくれるヒツジなどとは異なる。さらに衛生面。豚肉は他の肉に比べ、腐敗しやすく、病原菌や寄生虫も繁殖しやすい。暑く、そして農産物の得にくい西アジア地域には本来適さないものであり、この地域の宗教であるイスラム教の教義に「豚を避ける」ことが付け加えられたのも当然だろう。そういう意味では湿潤であり、豊かな農業生産を誇るマレーシアやインドネシアでは別に豚を食べたっていいとは思うんだが、ま、彼らは妙に義理堅いということで(笑)。そもそもイスラム教が伝わったのは1000年以上前のことだし、1000年以上豚を食べてないんだから、今さら食べろって言われてもね~?