2001年度地理A追試験解説

2001年地理A追試験

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第1問 ハワイ地誌。知識問題もあるが、問1・問6・問7などは地理Bで出題されてもおかしくない。

問1 標高の変化による気温差、そして風による降水。

等高線が500mごとに描かれているので、Bは3500~4000mくらいの高度である。100mごとに気温は0.55℃ずつ低下する。Bは海面に比べかなり気温が低いことが想像される。これよりウがBに該当。アやイに比べ気温が全体的に20℃くらい低い。気温が低い分だけ、空気中に含まれる水蒸気量が少なくなり、降水量も小さくなる。

高温であるアとイは標高の低いAかC。降水量に大きな違いがある。アはとくに多い。イは(高温であり、空気中に含まれる水蒸気量が多いにもかかわらず)少雨である。

風によって雨がもたらされる様子を考えてほしい。「地形性降雨」である。山に風が当たる場合、風上斜面側は多雨となり、風下斜面側は少雨となる。水分を含んだ空気が山地斜面に沿って持ち上げられ雲を結ぶが、水分を使い果たした空気は風下斜面側を吹き降ろし、より乾いた気候の原因となる。

このことから、多雨のアが風上斜面(ハワイは北東貿易風帯である。問題文参照)のC、少雨のイが風下斜面のA。

問2 4は先住民であろう。ハワイ系住民である。ハワイの人口の1/4は日系人である。サトウキビ農園の経営などを目指して、多くの日本人が移民したという歴史がある。このことより2が日系人に該当。1と3は不明。

問3 カリフォルニア州、フロリダ州という地名が登場しているが、99B本第2問問5でも問われている重要な州であるので知っておくべきだろう。

カリフォルニア州は太平洋岸。地中海性気候がみられ、それに対応した農業が行われる。灌漑によって野菜や米が栽培されているところもあるが、耐乾性の樹木栽培に特徴がある。

フロリダ州は米国南東部、キューバに向かって突き出した半島から成る州。亜熱帯・熱帯の気候を利用した農業。

オレンジのカがフロリダ州、ブドウのキがカリフォルニア州。ハワイは小さな州なので、栽培面積自体が小さい。

問4 地理A特有の問題。難しいが、じっくり考えれば何とかなりそうだ。

ハワイは米国の州であり、米国企業や行政機関なども多いだろう。ビジネス目的が多いDが米国。逆に日本はほとんどが観光目的でE。

観光目的で行くとすれば1人で行くということはないだろう。ハワイへ一人旅なんていうことはないのでは。Fが日本と考える。3人以上も多いがこれは団体の観光客であろう。Gが米国。ビジネス目的ならば1人でやって来てもおかしくない。

問5 これは一般常識だろう。

問6 おもしろい問題。

1;標高が高ければ酸素の濃度は低くなる。

2;山頂付近は気温が低い分だけ大気中の水蒸気量が少ないので、雲は生じにくい。

3;専門的・学術的な天体観測が行われていると思われるので、観光客が訪れるようなところではないだろう。しかも問1のウのグラフを参照すればわかるように、標高4000m程度ならば月間平均気温は0℃より高く、氷河は存在しないだろう(過去にはあったかもしれないが)。

4;天体観測にそもそも電力が必要なのだろうか。望遠鏡を動かす程度の電力は必要かもしれないが、それでもさほどの量ではないだろう。

問7 注目すべき問題。アイスランドは02B本で、マダガスカルは02A追で、それぞれ2年連続の出題となっている。センター試験は過去問を参考にして作られていることがわかる。

アイスランドは大西洋に浮かぶ溶岩の島。海洋プレートの広がる境界である海嶺(海底に走る2列の海底山脈)の上に位置。噴火は激しくないが火山が無数に存在し、温泉が多く、地熱発電もさかん。Xが該当。

ジャマイカはカリブ海に浮かぶ島。とくにボーキサイトの産出で知られる。Zが該当。

残ったYがマダガスカル。アフリカの南西に浮かぶ巨大な島。安定陸塊であり、大陸から切り離されてから数億年の歴史が流れたので、動植物が独自の進化を遂げた貴重な生態系を持つ。

 

第2問 タイ人がリード文に登場してくるにも関わらず、タイに関する問題は皆無。ウィラポンは必要なのか?っていうかいらんやろ(笑)

問1 日本海側で多い。

問2 じっくり考えればできる問題。焦らないように。

問3 これも問2と同様。時間をかけて確実に解く。

1;牛肉の68年を参照。西日本で大きく、東日本で小さい。

2;豚肉について。68年は島根県などに小さめの円がある。しかし98年は地域による差がほとんどなくなった。

3;牛肉について。68年は東北地方などで小さな円。しかし98年にはそれらもやや大きくなって較差は縮小した。

4;98年について。牛肉は大きな円と小さな円の大きさの違いは数倍程度ある。しかし豚肉はどの都道府県も平均化されている。

問4 店舗が東京や大阪に集中し、とくにこの周辺では人口当たりの店舗数も多い。

問5 新潟県南部と静岡県中部を結ぶ線。これに沿って巨大な地溝帯が縦断し、日本列島を東西に分けている。これがフォッサマグナ(大地溝帯)。

フォッサマグナという言葉が登場したのはセンター史上初。今後出題されるかどうかはわからないが、地理Aのしかも追試験での出題だけにあまり重視しないでいいだろう。

問6 難しい。マイナーな知識を利用した問題。

1;よくわからないのだが、とりあえずこういった話は聞いたことがない。そもそも中国系住民とインド系住民は都市に住んでいるわけで、地域として独立するのはたいへんだと思う。独立するとしたら、シンガポールのように、都市国家として分離して独立するしかないだろう。

2;これもよくわからない。少なくとも差別や迫害をしているはずはないので、保護を目的とした法律はあるかもしれない。

3;オーストラリアはかつての白豪政策を改め、多文化主義へと転換した。これにより先住民アボリジニーは迫害される立場から、保護され文化を尊重される存在に変わった。復権運動も行われているかもしれない。

4;クルド人についてはしばしば出題されている。これは正しい。

5;これは明らかな誤り。ヒスパニックとはスペイン語使用者という意味であり、そもそもポルトガルとは関係ない。今や米国内において黒人を上回っているのではないかともいわれているヒスパニックであるが、彼らのほとんどは20世紀になって近隣国・地域から移住してきた者ばかりである。メキシコ国境沿いの州にはメキシコからの移民、フロリダ半島にはカリブ海地域からの移民、ニューヨークには米国自治領プエルトリコからの移民が、それぞれ多い。

 

第3問 国際関係は地理Aが得意とするジャンル。ただし地理B的な問題も多い。

問1 1;たしかに石炭に含まれている硫黄分が酸性雨を引き起こす要因の一つであることに間違いはない。ただしさすがに石炭を全面使用禁止にするほどの荒療治は行われていない。日本のような先進国については、脱硫装置も普及し、工場から排出される硫黄酸化物も最小限に抑えられている。ただし法律の規制がゆるい中国などでは、工場から硫黄酸化物が空中にまき散らされている。

2;「持続可能な開発」は地球サミットで提唱された。地理A特有のキーワード。

3;「人口に応じて」ならば中国やインドの負担がとくに大きくなってしまう。日本や欧米の先進国がより多くの金を出すべきだろう。

4;抑制しないといけないのは先進国の方。とくに大量消費の米国は無駄遣いの国でもある。

問2 国際的な条約などに関する問題。地理Bではここまで細かいものは出題されないだろうが、考えれば解ける問題ではある。

世界の国のほとんど全てが加盟しているのが「世界遺産」。国連の機関ユネスコが管轄するものであり、世界のほとんどの国が国連に加盟している以上、世界遺産条約にもほとんどの国が加盟していると考えるのが当然だろう。

熱帯の国が空白となっているAは「熱帯林」ではないだろうから「温室効果ガス」。日本やオーストラリア、そして欧米の先進国が加盟しているが、工業が発達しているだけに二酸化炭素の排出量が多いのだろう。今後はその排出を抑える取り組みが必要となる。

残ったCが「熱帯林」。輸出国である熱帯・亜熱帯の国々と、輸入国である日本や米国、ヨーロッパの国々が加盟。

問3 1;「中東の産油国」とはサウジアラビアやクウェート、イランのこと。「中東以外のすべての産油国」には、OPEC加盟国のベネズエラや、原油生産世界2位の米国などがある。比べてみよう。

2;東ヨーロッパの国はルーマニア、ポーランド、チェコスロバキア。西ヨーロッパのフランスやイギリスと比較してみよう。

3;先進工業国で人口が多いのは米国。少ないどころか最大である!

4;図中で先進国といえるのは、フランス・日本・イギリス・オーストラリア・カナダ・米国。それ以外は、韓国がNIES(新興工業経済地域。発展途上国と先進国の中間)である以外は、発展途上国。

以上のように問題自体は簡単に解けると思う。ただ、この図はたいへんおもしろいのでじっくり観察してみよう。

「人口1人当たり二酸化炭素排出量」について。世界最大の無駄遣い国である米国やそれに隣接するカナダの値が高い。全体的に先進国で高く、発展途上国で低いという傾向があるが、日本は先進国でありながら比較的低い数値に留まっており、省エネルギーの意識の高い国といえる。フランスも低いが、この国の場合は、原子力発電に頼る割合が高いことが影響しているのだろう。原子力発電は二酸化炭素を排出しない。燃焼ではなく、核融合・核分裂によって熱を得ているのだ。それに対し、サウジやクウェートでは高い値となっているが、産油国であるだけに原油を豊富に消費しているのだろう。中国は二酸化炭素排出量世界2位(世界1位は米国)なのだが、人口が莫大なため、人口当たりの排出量は低く抑えられている。

「国内総生産1ドル当たり二酸化炭素排出量」について。中国は国内総生産のわりに二酸化炭素排出量が多いようだ。燃焼効率の悪い石炭を主なエネルギー源にしている点、工場施設が老朽化している点、環境への意識が低く公害(工場からの排気ガスなど)を予防する法律が整えられていない点などがその要因である。やはりここでも日本の値はかなり低く、まさに環境先進国といえる。

さらに追加事項として、この図から1人当たり国内総生産の高低を読み取ることができる。二酸化炭素排出量をa、人口をb、国内総生産をcとする。横軸(x軸)は(a/b)の値を表している。縦軸(y軸)は(a/c)となる。原点とある国の点を結んだ直線の式は y={(a/c)/(a/b)}x となる。ゆえに y=(b/c)x である。直線の傾きは(b/c)となるが、これはつまり1人当たり国内総生産の逆数である。直線の傾きは、その国の1人当たり国内総生産の高低に、反比例しているのだ。原点と中国を結んだ直線の傾きは急であるが、これは中国の1人当たり国内総生産の低さを表している。緩やかな傾きの日本は、経済レベルが高い。

国内総生産(GDP)とは国民総生産(GNP)と同義。よって1人当たり国内総生産と1人当たり国民総生産の意味も同じとなる。

問4 木材の貿易に関する問題は非常に出題例が多い。過去問の中から探して研究してみよう。

日本と同様に丸太を輸出していないYが韓国とみなす。森林率も高いようだが、日本と同じような風土だからだろう。

木材の主要な輸出国としてはマレーシアを押さえておくべき。よって丸太の輸出がとくに多いZがマレーシア。残ったXがタイ。

問5 難問。何とか消去法によって3を正解として導いてほしい。

1;マングローブ林はさらに失われていく。2;長江のダムは建設中。4;シベリアに都市を建設するということ自体が不自然ではないか。

あいまいな問題ではあるが、選択肢2だけは確実に除去すること。長江のダムはポイント!降水量が豊かな地域を流れる長江は流量が大きい河川であり、下流の三角州はしばしば水害の被害に見舞われた。この被害を和らげ、さらに発電などに利用することを目的として、現在中流の山間部ウーハン付近に巨大なダムが建設中である。完成すれば世界最大となるばかりでなく、地域の電力をこのダムによる発電だけでまかなえるといわれるなど、その規模は想像を絶する。それだけに将来的な環境への影響がとくに大きくなるのではないかと懸念されている。

問6 有機養分にあふれた生活排水が湖沼や内海など、閉鎖された水域に注ぎ込まれた場合、そこでプランクトンが異常発生し水域内の生態系を破壊する。プランクトンの色をとって「赤潮」とよばれる現象である。1が誤りである理由は「遠洋漁業」にある。遠洋漁業の行われる外海には生活排水は届きにくく、仮に届いたとしても有機養分は周辺に拡散し、特定の海域でのプランクトン異常発生を促すものにはならない。

問7 火力発電は石炭・石油・天然ガスなどの化石燃料を消費する。これらは地球温暖化の原因となる二酸化炭素を発生させるなど、クリーンなエネルギーではない(ただし、二酸化炭素や硫黄の排出が少ない天然ガスのことを「クリーンエネルギー」ということはある。もちろん完全にクリーンなわけではないのだが)。