2004年度地理B追試験[第1問]解説

2004年度地理B追試験[第1問]

本試験に比べて非常にオーソドックスかつツボを押さえた大問となっている。また第1問問1は難しいという傾向があるだが、この04年追試についてはそれは当てはまらず、その点も受験生に優しい作りとなっている。

問1は容易、問2は過去問の研究が必要、問3は難、問4はややあいまいだができない問題ではない。問5は都市名を尋ねる問題に苦手意識があると辛いかな。問6と問7は確実に解けなければ話にならない。以上、決して簡単な問題がそろっているわけではないので、2問ロスなら御の字だろう。

 

問1[評価] しょっぱなの問題には難問が多いのだが、これは簡単。時間をかけてじっくり取り組めば必ず解ける。まあ、最初の問題でじっくり時間をかけられるかどうかっていう精神的なキツさはあるけどね。

[解法] 各選択肢の文章を読むと、一つどうにもつじつまが合わない箇所があることに気づく。それは3。「流域面積の大きな河川ほど、流域の侵食速度が大きい傾向にある」という部分。流域の侵食速度とはそもそも地形の傾斜によって左右されるものではないか。急流ならば、地形は激しく削られるだろうし、緩やかな流れならばそんなことはなかろう。そもそも流域面積と関係があるものとは思えない。実際に図で確認してみよう。アフリカ中央部の河川があるが、これはかなり流域が広い方だと思う。しかし侵食速度は極めて小さい。これだけ見ても流域面積と侵食速度に何の関係もないことがわかる。このアフリカ中部の川は勾配が緩やかで、あまり地形が削られることはないのだろう。

ちなみに「流域」というのは河川の集水域のことで、雨が降って集められる範囲。本流から支流が伝わっている範囲ともいえるだろう。例えば世界最大の流域面積を持つのはアマゾン川だが、ここは巨大な山脈が大陸の西岸に沿って縦断しており、これより東に降った水はみなアマゾン川へと流れ込んでくる。大陸の広い範囲がこの川の流域となるのだ。

検討の必要はないが、それぞれの選択肢についても解説を加えておく。

1;「安定陸塊」という言葉が登場している。センター地理ではこういった大地形のジャンルは軽視される傾向にあり、本問においてもとくに問題を解くカギにはなっていない。次の段落で一応細かな解説を加えているが、面倒な人は読まないこと。

安定陸塊というのは6億年以上前の先カンブリア代に造陸運動を受けた大地のこと。「安定」しているため地震なども起きず、地盤も極めて硬い。このため河川が侵食しようとしても深くまでは削り取ることができないのだろう、選択肢1の文章で指摘しているように、安定陸塊の上においては河川の侵食速度は抑えられる傾向にある。ただしちょっと引っかかる点があって、実は図を参照すると、安定陸塊であっても意外と侵食速度が速いところがあったりするのだ。アフリカやシベリアの河川はたしかに侵食速度が遅く、これこそ安定陸塊上の河川の特徴なのだが、米国のミシシッピ川や中国の黄河などはそんなことはない。これは大地の硬さよりも、その上に乗っている土壌が軟弱であることに理由があるのであって、ミシシッピ川ではプレーリー土、黄河では黄土(レス)の存在が重要となっている。

2;亜寒帯という言い方は一般的ではない。いわゆる冷帯のことで、わが国ならば北海道の気候。ただしここでは「亜寒帯、何となく寒いところって感じがするなあ」っていうイメージだけもてれば解けないことはなかったんじゃないかな。寒い地域、つまりシベリアの河川などはたしかに侵食速度が小さくなっている。

4;「チベット」「ヒマラヤ」というのはどこだろうか。これは南アジアの北部の険しい山脈・高原のことなのだが、そもそもこれがわからなければこの選択肢の正誤は判定できない。そうはいってもこれぐらい知っていて当然かも。中学レベルの知識ともいえるし、前年度にも取り上げられている。

図を参照すれば明らかなように、チベットやヒマラヤに水源を持つ南アジアの河川は侵食速度が大きい。

以上見てきたように、選択肢1・2は実はあいまいだし、4も固有名詞が登場しているために、あまりいい選択肢になっていない。いかにも、って感じがするのはやっぱり3なんだよな~。

[関連問題] 直接的な関連問題はないが、センター試験にはこのように何の知識も必要とせず考えるだけで解ける問題があることを知っておくべきだろう。

[対策・今後の学習] 「知識がなければ解けない」と勘違いしている者がいる。そりゃ、問題は日本語で書かれているので、日本語に関する知識とかは必要だろうけど(笑)、地理の高度な知識が求められる問題なんてそもそも一問もないし、せいぜい中学レベルの知識しか求められないし、いや、その中学レベルの知識すら必要としないものだってある。その典型例が本問。じっくり腰を据えて取り組んでみてください。必ず解ける。

 

問2 [評価] カンポセラードという固有名詞がキーワードとなる点がキツいなあ(涙)。追試だから仕方ないのか。あるいは捨て問とするべきなのか。でも意外にみんな解けてるんじゃない?難易度はさほど高くないかも。

[解法] 流域Aはブラジル付近。ブラジル高原には疎らな林に草原といった荒地が広がっているのだが、これを「カンポセラード」という。よって2が正解。これが最も一般的な解き方じゃないかな。

あるいはそれを知らない人は「大豆」「トウモロコシ」といった農産物で解くこともできたと思う。大豆の生産統計は1位米国2位ブラジル3位アルゼンチン4位中国、トウモロコシは1位米国2位中国3位ブラジル。このことから選択肢2がブラジルか中国に該当することは推測できると思う。つまり流域AかC。ただしCの中国で「カンポセラード」なんていうカタカナの名前は登場しないだろう。よってブラジルを流れるAを正解として導く。

ちなみに他の選択肢については解答の必要はないが一応ポイントだけ記しておこう。

1;オーストラリアのマーレー川でDに該当。乾燥大陸オーストラリアを流れる外来河川の代表例。この大陸は、東岸を縦断するグレートディバイディング山脈を境に降水量が大きく変化し、東側では湿潤、西側では乾燥気候が卓越する。山脈西麓から流れ出すマーレー川ももちろん水量が足りず、しばしば渇水する河川なのだが、実はこの流域はオーストラリア最大の小麦地帯(このような新大陸における大規模な小麦農業のことを「企業的穀物農業」という)になっている。というのも水量豊富な山脈東麓の河川(スノーウィー川という川がある)にダムをつくり、そこから導水トンネルを掘って、山脈の反対側のマーレー川へと水を流し込んでいるのだ。「スノーウィーマウンテンズ計画」と呼ばれるこのたいへんスケールの大きなプロジェクトによって、オーストラリアは世界有数の小麦生産国・輸出国へと成長したのだ。

2;ロシア平原を流れるヨーロッパ最長河川ボルガ。カスピ海に注ぐBの川。マイナーな河川であるので、とくに知っておく必要はないだろう。選択肢の文章中、「緩勾配」はまさにロシアの大平原を流れる河川であることを示し、「5か年計画」は社会主義体制のもとソ連で実施された国家的大プロジェクトのこと。水力発電は本来なら急流にダムを建設することによってなされるのだが、このボルガ川は例外的に流れの緩やかなところでも発電が行われている。水量があまりに豊富なので、わずかな段差をつくるだけでも発電用のタービンを回すことが可能となっており、このような方式を低落差式発電とよぶ。

ちなみにカスピ海のような外海に出口を持たない湖を内陸湖といい、そのような湖に注ぐ河川を内陸河川という。ボルガ川はその例。

4;黄河である。華北地方(中国)のCが該当。「流入土砂が多く」が最大のキーワード。黄土高原には黄土が積もっているが、これが黄河の流れに削られ下流に運ばれていく。華北平原にもたらされ豊かな農業地帯を形成する基礎ともなっているのだが、ダムに土砂がたまってしまうという弊害もある。

[関連問題] 1;マーレー川は3回登場。98B本第1問問2選択肢4参照。世界の企業的穀物農業に関する問題。Sはマーレー川流域の一部であるが、ここは山脈東麓からの導水トンネルによって灌漑が進んでいるのであり、もちろん掘りぬき井戸とは関係ない。

これ以外には、00B追第1問問7、03B本第1問問7で外れ選択肢として取り上げられている。

2;これは河川名はサンフランシスコ川というのだが、もちろんマイナーな名称なのでどうでもいい。ここではカンポセラードに関する問題をチェックしておこう。98B本第1問問7参照。カンポセラードという名称は登場していないものの、この写真で表されている半乾燥の草原こそカンポセラード。地力の低い酸性土壌であるラトソルが広がる荒地であったが、近年は日本の協力などにより、豊かな農業地帯へと変容しつつある。

3;ボルガ川は03B本第1問問7で名前だけ登場。

4;黄河も何回か登場しているが、とくに注目したいのは03B本第1問問7。ここで示されている文章の内容はまさに本問の選択肢4の文章と重なっている。同じ話題が(本試と追試の違いはあるが)2年連続して出題。

このことからわかるように、03B本第1問問7を元ネタとしていることが明らか。やはり過去問の研究は大事なのだ。

[対策・今後の学習] 河川の出題例は多い。過去問を研究し、そこで登場した河川はチェックしておくこと。本問の場合は過去に出題例のないサンフランシスコ川が問われているわけだが、他の3つは一応出題されたことがあるのだから、消去法で解答に達することもできたと思う。

 

問3 [評価] ホイットルセー農業区分はセンター試験必須アイテム。04年度では本試験で取り上げられなかったのでやや不審に思っていたが、こちらで出題されていた。しかも直接的に農業区分の名称を問うという形で。

ただしちょっとひっかかるのは問題自体は定番であるのだが、難易度は高いということ。メキシコ湾岸の確かに園芸農業がみられる地域の典型例の一つなのだが、オランダや米国メガロポリスなどに比べるとかなりマイナー。このように特殊な例が出題されたことは、今後の学習の指針として心に留めておかなければいけない。

[解法] ホイットルセー農業区分に関する問題である。センター必須項目であり、必ず各農業形態についてはその特徴やつくられているものを知っておかなくてはならない。

(注)ホイットルセー農業区分は厳密には企業的牧畜などの牧業も含むので、「農牧業区分」としなくてはいけない。ただし一般的な習慣として、ホイットルセー農牧業区分というとわずらわしいので、農業区分としてしまうことが多い。だから単に「農業」と書かれてはいても、実際には牧業も含めて、広い意味の範囲を持つ言葉なのだと、この場合は解釈しておいてほしい。

候補として挙げられている4つの農業区分について、その特徴を簡単に。

園芸農業・・・穀物を作らない農業。

企業的穀物農業・・・新大陸における小麦農業。

地中海式農業・・・地中海性気候で行われる農業。

酪農・・・乳牛を飼育する農業。

さあ、どれが該当するだろう。

まず地中海式農業を外していいだろう。地中海性気候というのは大陸西岸の緯度35度付近に必ず現れる気候パターンで、北米大陸なら太平洋岸カリフォルニア州が典型的。少なくとも大陸西岸ではないP川河口付近でこの気候がみられるはずはない。

さらに酪農も消える。乳牛を飼育しているのだが、これは乳製品の保存など考慮して、冷涼な地域でのみみられる農業形態(正確には牧業といった方がいいのかな)。米国においては北東部のニューイングランド地方から五大湖周辺の地域おいて主に営まれる。

企業的穀物農業については、小麦農業地帯を考える。米国中央の西経100度の経線は年降水量500ミリの等値線と一致しているのだが、この500ミリという降水量は小麦の栽培と実に相性がいい。米国中央部の北部においては春小麦、中部においては冬小麦、それぞれ栽培パターンの異なる小麦が栽培されている企業的穀物農業地帯である。このことからP川河口付近の温暖で降水量が多いと思われる地域が、この農業区分に含まれるとは思えない。

以上より消去法的に1を正解としていいだろう。しかしここで頭の固い(つまり暗記に頼った勉強法をしている諸君)は疑問に思ってしまう。「園芸農業って野菜や花を作る農業のことで、オランダなどでみられる形態だろ?こんなところで野菜を栽培しているのか?」と。しかしこれは園芸農業を的確には理解できていない。何度でも言おう。頭を柔らかくして聞いてほしい。園芸農業とは「穀物を作らない農業」のことなのだ。つまりどういうことか。野菜や花など換金性の高い作物の栽培を優先し、あまり金にならない穀物の栽培など行わないということ。逆に言えば、金になるものなら何でも作るということ。肉だろうが、乳製品だろうが(実際、オランダは肉や乳製品の世界的な輸出国である)。

このことを念頭におけば理解が容易。P川河口すなわちメキシコ湾沿岸地域は緯度から考えても温暖と思われ、サトウキビやオレンジなど亜熱帯性作物の栽培がさかんなのではないかと想像できる。これらは何のために栽培されているのか、もちろん米国大西洋岸などの大都市の消費者に出荷するため、つまり「売るため」なのである。金を稼ぐことがまず念頭にある農業形態ということで、この地域の亜熱帯性の農業をあえて園芸農業と言い切ることができるのだ。

[関連問題] 米国の農業区分については03B本第2問問5にそのものずばりの問題がある。とくにここでは混合農業と、企業的穀物農業、プランテーション農業地域が重要となっている。

これ以外にも米国農業はヘビーローテーション。主なものを紹介しておこう。03A追第2問問4参照。小麦地帯の写真が最重要だが、フロリダ半島の果樹栽培もポイントとなっている。

01B追第3問問6参照。ドットマップで農作物の分布が示される。小麦=企業的穀物、トウモロコシ=混合農業とおおまかにとらえておけばいい。

99B本第4問問5選択肢4参照。グレートプレーンズは主に穀物などの栽培が行われており、決して酪農地域ではない。

98B本第1問問2選択肢1参照。図1で米国における企業的穀物農業地域すなわち小麦地帯を確認しておこう。ほぼ西経100度の経線に沿う辺りに、この農業地域は縦に並んでいる。北側の地域では春小麦が、中央の地域では冬小麦が、栽培されている。

さらに園芸農業に関する問題もリストアップしよう。

03B本第1問問5参照。ライン川河口つまりオランダの低地における農業形態について問われており、「畑作や花卉栽培」に当たる部分がまさしく園芸農業に該当している。土地が少ない人口過密国であり、価格の安い穀物を作るのは得策ではない。収益性の高い野菜や花卉、肉類などを出荷し(ちなみに冷涼な国なので果実の栽培にはそもそも適していない)、フランスなどから小麦を輸入するという形になっている。オランダの穀物自給率は約30%に過ぎず、わが国と同じ水準(ただし日本の場合は主穀である米の自給率は100%。オランダは彼らの主な食糧である小麦の自給率がこの程度なのである。どれくらい思い切った農業政策が行われているかが想像できよう)。

01A本第2問問4参照。ウルグアイという国の農業区分の様子に関する問題。とくに園芸農業に注目してほしいのだが、これが高地価の地域において成立するということがわかればPが該当することが明らか。

[対策・今後の学習] やはりホイットルセー農業区分は大事なのだ。全て書き出し、その特徴を理解しておくこと。主に栽培されている作物(あるいは飼育されている家畜)や、できれば世界のどの地域で見られるのかということまでチェックできておけば完璧だろう。

 

問4 [評価] 一風変わった問題。写真さえしっかり判別できればさほど難しい問題ではないのだが。扇状地が取り上げられているのだが、特殊な知識が問われているわけではない。

[解法] いま僕の手元にはセンター試験の現物があるわけでなく、そのコピーを見ながらこの解説を作っているんだが、そのことを差し引いて考えてもわかりにくい写真だと思う。僕はある程度の見当をつけてこれらの写真を眺めているから大体はわかるのだが、君たちがこれをパッとみて果たして確実に理解できるのだろうか。ちょっと難しい気もするが。

先に選択肢を見てしまおう。「扇央」「扇頂」「扇端」などの言葉から図2で表されているのが扇状地であることがわかる。ちょっとわかりにくいけれど、たしかにそんな感じもするなあ。扇状地というのは、川が山地から平野に流れ出るところにできる堆積地形で、ここで川のスピードが落ちることによって土砂がより下流へと押し流されることなく、この部分にたまってしまうのだ。

このことを頭に入れてさらに図2を眺める。流路の向きからもわかるように、図の北側が上流方向で南側が下流方向。北端からfへと河川が通じているようだが、これは山地を流れている段階だろう。そしてここから河川の流れがはっきりと見えなくなり、この部分がまさに扇状地なのだろう。扇状地においては目の粗い土砂が堆積するので、河川水は地下へと染みてしまうのだ。図の南端を横断する河川は流路が蛇行しているが、これは勾配の少ない平地を流れる川の特徴。この部分は平野となっているのだろう。

さあ、ここで図2が立体に見えてきたら大成功なんだが、どうかな。北の方は山、そして扇状地の開始部分であるfから緩やかな斜面が始まり、ここに土砂が堆積している。そして南にやってくるとほぼ平坦な地形で、河川も蛇行している。fは扇状地の開始する地点であり最も標高が高い。よって「扇頂」。gの部分は扇状地が終了し、ここから平坦になる部分。扇状地の末端ということで「扇端」とよばれる。

立体視ができればさらに断面図を想像してほしい。山地から流下する河川が、平地との境に土砂を堆積させ、それが緩やかな斜面となっている。土砂の粒は堆積が始まったばかりの上流部でとくに粗く、下流に行くに従ってだんだんと細かくなっていく。つまり扇頂付近には礫(小石)などが主に見られ、扇端の辺り一帯ではそれよりは目の細かい土砂が分布しているということ。

このことをふまえて写真1をながめてみる。これまた印刷が悪いのだが、どうだろう?f付近には小石が散らばっているのだ。Tがこれに該当するとみて間違いないだろう。写りのよくない写真ではあるが、何となくゴツゴツした石ころが一面に転がっているような感じがする。

それに対し、Uは扇端。いや、扇端から平野方向を眺めた写真といった方がいいかな。一面に低平な地形が広がり、水量豊かな大河が緩やかに流れているようだ。はるか奥には樹木が茂っているようにも見える。

[関連問題] 小地形として扇状地が扱われた例をみてみよう。

94本第2問問1問2参照。井田川が運ぶ堆積物によって形成された扇状地。Xよりさらに上流、標高250~300m付近の地点が扇頂だろうか。河川の勾配がこの辺りから緩やかになっている。そのまま扇状地の緩斜面となっているのだが、この部分では井田川が水無し川となっている(ちょうどX付近から河川の流れが点線になる)。この扇状地は途中で湖に突入してしまっているので、扇端に当たる部分がないが、強引にもっとも標高が低い上中村など湖畔の集落を扇端に沿うものと解釈してしまっていい。問2が興味深く、扇状地なのでXもYも目の粗い土砂が堆積し、水はけがいい点は変わらないのだが、どちらかといえば上流側に位置するXの方により粗い土砂(というか礫)が目立つ。

97B本第4問B参照。M川が水無し川となっているのがわかるだろうか。河川水が伏流しているため、表面に水が見えないのだ。山地と緩やかな斜面の境が扇頂で、「大山町」の高速道路をはさんだ北側だろうか。平坦になって河川が緩やかに流れている辺りが扇端で、「宮川」「内谷川」付近。

00B本第3問問1参照。図アの北西端に小さな扇状地が確認できる。

00A本第2問問1問2参照。地理Aらしく扇状地の地形的特徴を尋ねる若干知識問題的な側面がある。問1は面積を計算によって求める問題。問2は「扇端=湧水帯」ということがポイントとなっている。

[対策・今後の学習] 扇状地はポピュラーな地形であり、知っていて当然だと思う。中学校でも勉強するし、過去問でも何回か出題されている。本問はそれよりも写真の読み取りの難しさの方がポイントとなるかもしれない。扇状地における扇頂と扇端の特徴を確実に理解し、それを解答に結び付けてほしい。

 

問5 [評価] 都市に関する問題。04年度は本試追試ともに都市名が多く登場してきたのだが、これをどう解釈したらいいのだろう。今後どんどん都市名が登場してくるぞという予告編なのか、それとも04年だけ特殊な例外となり、翌年からはまたいつもの調子に戻っていくのか。

とはいえ、奇妙な都市名が出題されているわけではなく、あくまでこれまでにセンター試験で取り上げられた範囲についてしっかり確認しておけば十分に対応可能だったと思う。本問についても、ソウルが問われているわけだが、ソウルが韓国の都市だということを知らない者はいないだろう。ソウルという都市についての問題というより、韓国という国についての問題だと考えるべき。

[解法] 選択肢参照。コルカタ(カルカッタ)、ソウル、ブダペスト、ロンドンが挙げられている。それにしてもコルカタとかブダペストとか、またずいぶんとマイナーな都市を持ってきたもんだ(涙)。

本問は消去法によって解くことは難しいので、ここは力技でソウルを直接当てに行こう。しかしこの都市について君たちは特別何かを知っているということはないだろうし、センター過去問にもほとんど登場していないのだから、解きようがない。開き直って、「ソウル」ではなく「韓国」について問われているのだと考え、韓国の特徴を挙げながら解くしかない。

韓国最大の特徴とは何か。それは「80年代急成長」。日本の高度経済成長が東京オリンピック(64年)に象徴される60年代だったのに対し、韓国は80年代に高度経済成長の時期を迎え、これは88年のソウルオリンピックの時期と一致している。基本的にはこのネタ一発で韓国を当てたらいい。

4つの選択肢に目を通し、さあ、どれが韓国について説明したものだろう。1はちょっとわからん。双子都市といわれても何のことやら不明。2はさすがに違うんじゃないか。「かつて世界的な港湾」とあるが、ソウルが急成長した時期も80年代だろうし、それまでは小さな都市に過ぎなかったはずだ。

3はどうか。かなりネガティブな書き方がされているが、これは発展途上国の整備されていない都市の説明ではないか。韓国は1人当たりGNIは約10000$/人に達する中進国(NIES。新興工業経済地域)であり、ここまではひどくないだろう。

4については「1960年代以降の工業化」とある。これはかなり怪しくないか。もちろん韓国の急成長は80年代であるが、拡大解釈すれば「60年代以降」という部分と矛盾しているとも思えない。これを韓国つまりソウルの記述とみなしていいだろう。「住宅地の整備が進み」「高層アパート群が出現した」などの部分も、いかにも近年成長を続ける韓国らしくはないか。

[関連問題] このような形式の問題は本試験の方にもあった。04B本第4問問2参照。やはり4つの都市名が挙げられ、しかもそのうちのいくつかはマイナーなもの、特定の都市についての記述を指摘する問題。センター試験においては珍しい出題パターンなのだが、今後はこれがスタンダードになるのか。

ぞれぞれの都市について取り上げられた例を探っていこう。

コルカタ;かつてはカルカッタの名称で知られていた国。現在では現地での呼び名を尊重して、わが国でもコルカタという名前が用いられるようになった。

99B追第5問問2選択肢3参照。発展途上国であるインドの大都市の一つの例として取り上げられている。貧しい農村から多くの人口が流入するが、都市には彼らを受け入れるだけの経済力がなく、結局彼らは都市周辺のスラムの拡大に一役買うだけの存在に成り下がるのみ。

99B追第1問問2図3ではバングラデシュに隣接するという位置が示されているが、とくに問題とは関係ないか。

ソウル;「隣人」韓国であるが、不思議なくらいセンター試験ではお目にかかることが少ない。どうしたことなのだろうか。もちろん政治的に日本と微妙な問題を抱える国ではあるが、それでも中国よりははるかにマシだと思う。それに地理なのだから別に社会的な状況を問うわけでもなく、自然地理の面からでもどんどんネタとして取り上げていい国だと思うのだが。

選択肢の文章にもあるように、近年人口が急増した都市であり、韓国総人口4500万人のうち、1/4に当たる1000万人が集中する。韓国におけるソウルの重要性は、日本における東京の重要性をしのぐといっていいだろう。そのわりには位置的に北朝鮮にほぼ隣接した場所にあり、有事の際にはどうなるんだろう?っていう心配までしてしまうのだ(涙)。

とくにソウルが出題された例は過去問にはない。韓国に関するものは、98B本第4問問4選択肢4、97B本第1問問1、97B本第3問問1など。

[対策・今後の学習] おそらく来年度センター試験の最大の注目は都市の扱いだろう。都市に関する問題がどれくらい出題されるのか、どの程度マイナーな都市名まで出題されるのか。とはいうものの、どうなるか予想がつかないのだから、やみくもに勉強してもしかたない。やはりこれまでのセンター試験の傾向をかんがみて、中学レベルの社会科の勉強を確実にして、さらにセンター過去問から都市名を拾ってチェックしていこう。

 

問6 [評価] 河川流量に関する問題であり、この形式はしばしば見受けられる。また日本に関する問題でもあり、これもセンター試験の一般的パターン。取り組みやすい良問。

[解法] まず最初に日本の地域ごとの降水パターンを整理していこう。わが国における平均降水量は約1500ミリ。東京など多くの地点では、冬に少雨、夏に多雨、そして年間で1500ミリという降水量となる。

これに対し、年間降水量が1000ミリ程度の地域が3ヶ所。まず北海道。ここは冷涼であるため(最も寒い1月の平均気温は0℃を下回る)大気中に含まれる水蒸気量が少なく、それゆえに降水量も少なくなる。梅雨の見られない地方でもある。さらに長野県などの中央高地。ここもやや冷涼な気候であり、さらに山岳によって海から隔てられ湿った空気が達しにくいため、降水量は少なめとなる。そして瀬戸内海沿岸地方。中国山地によって日本海と、四国山地によって太平洋と、それぞれ隔てられた内海であり、冬季の北西季節風や夏季の南東季節風がこの地域にまで湿った空気を運び込まない。例えば岡山県などは「晴れの国」などとも呼ばれているが、これは晴れの日が多いこと、つまり雨が少ないことを物語っており、香川県の讃岐平野にはため池も多い(満濃池などは有名)。雨が少ないことによりダムの貯水量が減少し、水不足となるのも決まってこの地域である。

逆に降水量の多い地域としては、沖縄など南西諸島がある。気温が高いため大気中の水蒸気量が多く、雲ができやすい大気の状態となっている。梅雨や台風の影響もとくに大きく受ける地域であり、年間降水は2000ミリに達する。同じく年間降水量が約2000ミリとなる地域には日本海沿岸がある。ここはもちろん冬季の降水つまり降雪が多いから。大陸からの北西季節風が日本海上空で湿り気を帯び、日本列島という山脈に当たる。高度が上がり、低温となった空気は雲を結び、雪をもたらす。

また同じく季節風による降水の顕著な地域としては紀伊半島南部がある。ここは夏季の南東季節風によるもの。湿った風が紀伊山地にぶつかる風上斜面に当たり、夏の間はうっそうとした雲に包まれた幻想の世界ともなっている。わが国で最も雨が多い都市は和歌山県境に近い三重県尾鷲市であり、この北方にそびえる大台ケ原山は年間7000ミリの日本最多降水量を記録したことがある。

以上のことを考慮して、ア~ウのグラフと図4の河川を対照させていこう。最も容易に判定できるものは高梁川だろう。降水量の少ない瀬戸内地方を流れており、流量も少ないと推定できる。イが該当。

残る2つの河川はそれぞれ降水量のとくに多い地域を流れており(神通川は日本海沿岸、熊野川は紀伊半島南部)、流量だけでは判別不可。よってここでは季節ごとの流量変化に注目してみよう。

アとウを比較してみる。ウは6月と9月に流量が多いが、6月は梅雨、9月は台風や秋の長雨の影響によるものと思われる。一方、アは4月と9月に流量がとくに多い。9月は台風や秋の長雨の時期であるが、4月はどうしてだろう。これがこの問題の最大のポイント!

この春の河川増水を「雪解け」と結びつけることができるかどうかが問題を解くカギとなるのだ。これに気付けばアが日本海側の豪雪地帯の神通川で、残ったウが熊野川であることが容易に想像がつく。「春に増水している場合は、雪の多い地域を流れている川である」という原則を意識しておこう。

(やや発展)ちなみに今回の問題では無視してしまったが、本来は河川流量に関しては「流域面積」も重要なキーワードとなるはずなのだ。流域とは、ある河川に流れ込んでくる水の集まってくる範囲。集水域とも言う。この範囲が広ければ河川流量は全体的に大きくなるし、狭ければ水量も小さい。よって河川流量の大小を測る場合には、その流域面積も考慮することが必要となるのだ。

ただし、本問の場合はその必要はない。図4を見れば明らかなように、熊野川、神通川、高梁川の3つともに河川の長さはほぼ共通で、支流まで含めた流域面積にもほとんど差はないようだ。イのグラフで表される高梁川の流量の少なさは、純粋に、この地域の降水量の少なさに起因したものであると考えるのが適当。

[関連問題] まずは河川流量に関する問題を挙げていこう。

99B追第1問問1参照。降水量と河川流量がグラフで表されている。寒冷で河川が凍結する地域の河川はとくに春(あるいは初夏といった方がいいかもしれないが)の河川流量が多くなることをチェックしておきたい。

03B本第1問問6参照。河川流量が示されている。この問題についても同様に、春(初夏)に流量が大きくなる河川を確認しておこう。もちろん寒冷地の河川。

日本海側の積雪に関する問題について。

00B追第2問問6選択肢4参照。冬季、大陸から寒気が吹き出してくるわけだが、これが日本海上空を通過中に水蒸気を蓄え、日本列島にぶつかることによって、北陸地方の豪雪の原因となることが書かれてある。「日本海の海水温が比較的高く」というのは対馬海流(暖流)の影響などによるもので、このためまるで湯気のように水蒸気が空気中へと発散されることとなる。また「寒気が日本海を渡る距離も長い」というのは、日本海が決して小さい海域でないことを示している。風は大陸通過中にはもちろん水分をほとんど含んでいない。しかしそれが日本海上空を比較的長い時間通過することにより、十分すぎるほどの湿気を帯びることとなるのだ。

注目すべき問題として01B追第1問問2がある。ここでは日本海沿岸の都市としてウラジオストクの気候グラフが取り上げられているが、わかるだろうか。これも季節風の風向を考えればいい。日本の日本海沿岸は、冬季の季節風の風上斜面に当たるため降雪量が多いのに対し、大陸の日本海沿岸ではむしろ雪の量は少ない。

大陸から吹き出し、日本海を通過することによって湿潤となった空気は日本の日本海側に多くの積雪をもたらすが、ウラジオストクを通過する段階では大陸内部からそのまま吹き出して来た風であるため水分を含んでおらず、これによりむしろ降水の少ない気候の原因となる。これとは反対に、夏季の季節風については、ウラジオストクは風上斜面側となり、十分な降水が見られる。

[対策・今後の学習] さほど難しい問題でもないのでとくに対策は必要ではないだろう。ただしもしこの問題を間違えた者がいたならば、それなりの学習は必要。日本海側で冬季の降水が多く、紀伊半島南部でとくに夏季の降水が多い。そして瀬戸内海地方はやや降水が少ないという、日本地理における常識的センスを養うためにも中学地理の学習が必要となってくるだろう。やはりいつでもセンター地理の基本となるのは中学レベルの地理に習熟することなのだ。

 

問7 [評価] 新課程初の三角グラフを用いた問題。旧課程時代でもほとんど用いられなかったグラフなので、戸惑った者も多かったと思う。この三角グラフの読み取りが重要となる問題。

[解法] とにかく最も重要なのは三角グラフの読み取りだろう。これができないことには正解におぼつかない。

補助線を引きながら読み取っていくのが大事。まずXの数値を判定する。この三角形の底辺に沿ってエンピツを1本置いてみよう。そしてそれを底辺(Zと書かれた辺)に平行となるように上下に移動させてみる。どうかな?できたかな?この線がXを読み取る補助線の役割を果たす。

このエンピツを「2000」の点の上にまで移動させる。つまり点「2000」を通り、辺Zに対して平行となる直線が補助線として引かれたと考えられる。

この線を用いて、Xの値を読み取ってみよう。「8」となるはずである。

さらに同様の手順を繰り返す。今度はXと書かれた辺に沿ってエンピツを置いてみよう。そしてそれを平行移動しながら、「2000」の点と重なるところまで動かす。ここでYの値を読めば「62」ぐらいであろうか。

さらに辺Yにエンピツを置き、これを平行移動させる。「2000」の点まで動かし、Zの数値を読み取る。「30」である。

以上より、2000年におけるX:Y:Zの割合は、8%:62%:30%となる。このように3つの数値を合計すると100になる組合せを表すことも、三角グラフの大きな特徴の一つである。

さあ、読み方は分かっただろうか。これを利用して考えていこう。

1970年の数値を読み取る。X:Y:Z=21%:78%:1%

1980年の数値を読み取る。X:Y:Z=15%:70%:15%

1990年の数値を読み取る。X:Y:Z=12%:65%:23%

2000年の数値を読み取る。X:Y:Z=8%:62%:30%

まずXについて。1970年の段階ではそれなりの割合を占めていたが、現在はせいぜい1割程度に落ち込んでしまった。これは水力発電。日本は1950年代に電源開発として大規模なダムの建設が進んだが、これ以降は環境への影響なども考慮され、新たに巨大ダムが建設されることはない。このため、水力発電に依存する割合は低下する一方である。

Yについて。過去も現在もわが国の主要発電源である。火力発電。日本はとくに石油に依存する国なのだ。

Zについて。1970年の段階ではほぼ0%。つまり最も新しい電源として開発されてきたものなのだ。原子力発電で、現在は総発電量の30%を占めている。「燃焼」ではなく「核分裂・核融合」によって熱を得るため、二酸化炭素を発散せず、地球にやさしいクリーンな発電方式として重要であるが、一方、一旦事故が起これば周辺地域だけでなく国境を越えた地球全体の災厄として放射能汚染の危険性もあり、より慎重な運用が必要となっている。

[関連問題] 三角グラフの問題は新課程では初出。旧課程時代でも、92本第3問問4で取り上げられた程度。これもやはり合計すると100になる数値の組合せ(第1次産業人口割合、第2次産業人口割合、第3次産業人口割合)であることに注意。

発電に類する問題として1次エネルギー種類別消費割合に関するものが01A本第3問問7で登場。ここではフランスが原子力発電にいかに依存している国であるかが解答のポイントとなっている。

[対策・今後の学習] とりあえず三角グラフの読み方には習熟しておくこと。慣れるまではとんでもない読み違えをしたりするので、とにかく「合計すると100になる」ことだけは常に意識しておく。あとは練習あるのみかな。

また日本の発電については、「火力:原子力:水力=6:3:1」という比率を知っておくと便利かもしれない。