2005年度地理B追試験[第4問]解説

2005年地理B追試験[第4問]

 

問1 [講評]いずれもセンター過去問で何回も取り上げられた事柄であり、難問ではない。もっとも、「砂漠化」という環境問題は世界中の乾燥地域で発生していることであり、サヘル地帯特有のケースではないことは知っておいてほしい。

[解法]ア;「砂漠化」だけでもわかるかもしれないが、やはりここは「過放牧」が決定的なポイントとなる。Bが該当。サヘル地帯である。

イ;「ハイテク汚染」がポイント。発展途上地域に存在するBやCに対し、ハイテクという言葉が最も似つかわしいのは先進国米国にあるAと思われる。ここはカリフォルニア州シリコンバレー。

ウ;アラル海の縮小。綿花栽培のために過度に取水することにより流入河川の流量が減少し、湖の面積が縮小したことは有名だろうが、それがこの中央アジアの事例であることも知っておかなくてはいけない。ウズベキスタンのCが該当。

 

問2 [講評]これは簡単だと思うのだが。オセアニアが具体的にどのような気候環境化にあるかをイメージする。

[解法]まずbが容易。もちろん「熱帯林」。アフリカと南アメリカには熱帯気候の地域が多いのだから。同じく熱帯気候が広く分布しているのはアジアかオセアニアか。オセアニアとは主にオーストラリアのことだが、ここは「乾燥大陸」といわれるほど、乾燥帯の分布地域が広く(つまり樹木があまり生育しない)熱帯はわずか。それに対し、アジアは東南アジアに代表されるように広く熱帯気候に覆われている。このことからaには「アジア」を選択する。

 

問3 [講評]オーソドックスな問題である。原油産出国としてのイギリスのイメージ、工業国としての韓国のイメージ、人口大国インドのイメージ、それぞれを持つことができれば簡単かな。

[解法]カ;1次エネルギー自給率が100を超えている。つまり輸出国であるということ。北海油田を有し、ヨーロッパを代表する原油産出国であるイギリスが該当する。

ク;1人当たり二酸化炭素の排出量が極めて小さい値となっている。二酸化炭素は石油や石炭などの燃焼によって大量に発生することを考えればこの国はさほど工業の発達していない国なのであろう。また「1人当たり」の値が少ないことを考えれば、分母である人口の規模がとくに大きな国なのかもしれない。このことからこれをインドと判定する。

消去法でキが韓国。日本と同様にエネルギー資源には恵まれない国であり、1次エネルギー自給率が低いことは納得。工業が発達した国であるので、1人当たり二酸化炭素の排出量は大きい。

 

問4 [講評]統計と説明文とを結びつけることができるか。数字と文章との関連付けはセンター地理の大きなテーマでもある。

[解法]自動車工業など機械工業は、労働集約型工業の一種であり、製品価格に占める労働コストの割合が高いために、できるだけ低賃金労働力の存在する国へと立地移動を起こしやすい。このことを考えてみても「先進諸国への生産活動の集中が進んでいる」ということに矛盾を感じないか。

具体的な例としてはスペインがある。現在自動車生産上位を占める国であるが、経済レベルは決して高くなく、1人当たりGNIはせいぜい15000$/人である。EU圏内で自由貿易が実現しているため、自動車先進国であるドイツやフランスからスペインへと自動車工場が次々と進出しているのだ。

 

問5 [講評]こういった国際化に関する問題は地理Aの定番であり、やや知識が問われるところでもある。地理Bの問題としては難問かもしれないが、注意深く解いてほしい。

[解法]いきなり都市名しか記されていないが、これがどの国のものかわかるだろうか。シンガポールはそのままシンガポールなので簡単。バンコクはわかるかな?これはタイの首都なんだが、これさえわかれば何とかなる。ホーチミンなんて知らないよね?

それではわかりやすいところから解いていこう。

シに「フランス統治時代」という言葉がある。東南アジアでフランスの植民地支配を受けていた国は、ベトナム・ラオス・カンボジアであり、シンガポール(旧イギリス領)やタイ(独立を維持)は含まれない。このことからホーチミンがこれに該当すると考えていいだろう。ちなみにホーチミンはベトナム南部の都市で、首都ではないが人口は多い。

さらにスの「中継貿易」に注目。シンガポールは都市国家であるが、世界最大規模の港湾都市として発展してきた。貿易額はGNIを上回るほどに大きい。このことからこれをシンガポールとする。

消去法によりサがバンコクとなる。タイには日系企業の進出も多く(統計で確認しておくといい。センター試験でも過去に出題例あり)、仏教国でもある。

東南アジア11カ国については、旧宗主国と主に信仰されている宗教を必ず知っておくこと。

フィリピン(スペイン・米国、カトリック)、ベトナム・ラオス・カンボジア(フランス、仏教)、ミャンマー(イギリス、仏教)、マレーシア・ブルネイ(イギリス、イスラム教)、シンガポール(イギリス、仏教・道教など)、インドネシア(オランダ、イスラム教)、東ティモール(ポルトガル、カトリック)。

 

問6 [講評]これも問5と同様に、東南アジアの宗教がポイントとなっている。

[解法]フィリピンは主にキリスト教が信仰されている国。それなのに「一部」のキリスト教徒というのはおかしいだろう。ちなみにこれは南部のイスラム教徒で、文章にもあるように政府軍との間に武力衝突もみられる。

 

問7 [講評]都市に関する問題はセンター頻出であるが、本問は若干ニュアンスが異なるようだ。意外と難しいぞ!?ちなみに都市名は過去に登場例があるものばかり。ヨハネスバーグが難しいかもしれないが、アパルトヘイトがキーワードとなっていることからわかるように南アフリカ共和国の都市である。

[解法]消去法で考えてみよう。

まず④が消える。ロンドンのような先進国において不良住宅地区(スラム)は都心部に形成されるのだが、つまり「大規模な再開発事業」が行われたのは都心部である。では果たして、グリーンベルトは都心部に作られたものなのだろうか。それは違う。グリーンベルトはロンドン近郊のニュータウンに関連するキーワードであり、ロンドン市内を囲むようにグリーンベルトが設けられ(乱開発を防ぐなどの理由)その外側にいくつものニュータウンが建設された。グリーンベルトは都心ではない。

さらに③も消える。発展途上国のスラムは都市周辺に形成される。農村などから出稼ぎ者など労働力が都市へと押し寄せるものの、都市内に十分な雇用がないため、都市からはみ出してスラムへと居を定めるしかない。このことを考えながら選択肢③を読むと、矛盾点がある。つまり「不良住宅地区が中心業務地区に変わった」わけだが、不良住宅地区は都市周辺に形成されているのだから、「都市周辺が中心業務地区に変わった」ということになる。さあ、どうだろう?「周辺」が「中心」というのはちょっとおかしいのではないか?

同じく発展途上国の大都市について説明した②についても考えてみよう。こちらは都市周辺に国際的な先端産業地区が形成されたということになっている。どうだろうか?たしかにメキシコは米国との自由貿易(NAFTA)によって国境沿いに電気機械組立工業が発達している。しかし発展途上国でもあり、ハイテク産業がさかんということはないのではないか。

ゆえに消去法で①が正解となる。コミュニティ活動の具体的な内容はわからないが、都心の再開発によって観光業もさかんになってきていると考えておかしくはないだろう。やはりニューヨークは観光客にとって魅力ある都市であることは間違いない。