2004年度地理B本試験[第5問]解説

2004年地理B本試験[第5問]

近年定番の地域調査に関する大問。これまでにどの地域が取り上げられているか簡単に紹介しておこう。

04B本 長野県(松本盆地と諏訪湖)

04B追 福岡県(北九州と有明海)

03B本 鹿児島県(南西諸島)

03B追 新潟県(佐渡島)

02B本 北海道(釧路市)

02B追 栃木県?

01B本 山形県(山形市)

全体としては、島が取り上げられることが多く、また大都市圏はほとんど取り上げられることはない。この程度の傾向分析で、出題されそうな地域を推測することは不可能であるが、まあ、心に留め置いても損はないだろう。

問1は簡単だと思うが、意外に引っかかるかもしれない、要注意。問2は容易。問3は非常に正解率が低かった。君が間違えていたとしても諦めよう(笑)。問4は簡単。問5・問6は地形図問題であるが、苦手な人は間違えるかな。問7は過去問研究している者なら即答できる。以上より、せいぜい失点は1問のみに抑えたいが、地形図の出来不出来が運命を分けるかな?

 

問1  [評価] 一般常識のセンスで解くべき問題である。易問とは思うが、こういった問題をかえって苦手にしている者も多いはず。慣れが必要なのかもしれない。

[解法] 1;これにはとくに不審なところはないんだが。

2;ヒートアイランド現象とは都心部の気温が周辺部に比べ、上昇してしまうこと。さまざまな都市活動や緑地の不足などがその原因である。その様子を調べるのに「松本市中心部に観測点を1か所」だけ設ければ十分なのだろうか。周辺地域の気温や湿度なども観測し、比べなければいけないように思うのだが。

3;本問のような地域調査ネタの問題においてはしばしば「航空写真」がキーワードになる。さすがに航空写真からでは土地の所有者はわからないだろう。市役所かどこかに行って、事務的な書類を検索しなければいけないだろう。

4;「日常生活における住民の行動圏」という部分が引っかかる。これは具体的にどういうことなのだろうか。おそらく通勤圏や通学圏のことではないか。家庭の主婦なら毎日の買い物に出かける範囲など。

しかしこのことと人口ピラミッドがどう関係するのだろう。人口ピラミッドは「年齢階級別人口」を表すには便利である。しかし行動圏といった地域的な広がりを表せるものではなかろう。

[関連問題] 地域調査には定番の出題パターンである。

04B追第5問問2参照。「5万分の1地形図」で表現できる内容とは。

03B本第5問問5参照。同じく「地形図」について。

99B本第5問問6参照。GIS(地理情報システム)について。

98B本第4問問3参照。作物の名称がわからない場合の調査法。

[対策・今後の学習] 知識に頼ってとくわけでもないので、とくに問題文そのものを読み取る力が重要視される。過去問を解く際にもじっくり時間をかけて文章を読む姿勢が大切。難易度が低いからこそ、こういった問題は絶対に落とせない。ナメてかからないこと。

 

問2 [評価] 工業立地の問題は例年1問ぐらいずつは出題されている。しかも比較的解き易い問題が多く、確実に正解したいところ。本問も良問である。

[解法] 1;明らかに嘘とわかる選択肢(笑)。鉄鋼業の立地については非常によく出題されているが(詳しくは関連問題の項参照)、原則として臨海部に限られる。とくに原材料(石炭・鉄鉱)を海外からの輸入に完全に頼っている日本においては内陸部で鉄鋼業が栄えるとは思えない。また、そもそも鉄鋼業に電力は必要とされない。電力が必要となるのはアルミニウム工業であるが、それにしても原料のボーキサイトは日本で産出されないため、臨海部にしか工場は立地しない(とはいえ国内に残存するアルミニウム工場は一ヶ所しかないが。アルミニウムは国内でつくるのではなく、海外から輸入している)。

2;生糸とは絹の糸のことであるが、これに関する工業は現在の日本では完全に衰退した。かつては内陸部を中心に養蚕業がさかんな地域があり、周辺で栽培された桑を蚕の飼料とし、まゆから生糸をつくり、絹織物工業が成立していた。生糸は明治から昭和初期までの代表的な輸出品目でもあった。しかし今の日本では桑畑の面積は極端に減少し、蚕を飼う農家もほとんどなくなった。伝統工芸として絹織物工業が残っている地域(京都や栃木など)はあるが、もはや廃れてしまった工業と言っていいだろう。

4;これも1に続いてあからさまに間違いとわかる選択肢でしょ(笑)。そもそも石油化学工業に「海外市場に関する情報」が必要なものか?石油化学工業も鉄鋼業と同じ立地パターンをみせる工業である。つまり原材料(原油)をほぼ100%海外に依存しているため、輸入に適した臨海部にしか工場は存在しない。石油化学コンビナートといって製油所・発電所・製品工場(薬品やプラスティックなど)が一体化した規模の大きな施設となり、広大な工場用地が必要なこともあり、このような谷間の狭い土地に立地できるようなものでは、そもそもあり得ない。

以上より答は3。価格に対し製品重量が小さいIC部品などは九州など遠隔地においても工場が立地する。輸送コストがあまりかからないからである。

[関連問題] 工業立地に関する問題は多いので、ここではとりあえず省略(ゴメン!)。自分で探すか、他の問題の解説部分を参考にしてください。

[対策・今後の学習] ここで工業立地について整理しておこう。

鉄鋼・・・臨海立地。鉄鉱と石炭の輸入に適した港湾に製鉄業は成立する。

石油化学・・・臨海立地。原料である原油を輸入しやすい位置に成立。石油化学コンビナートを形成し、さまざまな関連した工業が成立するため、化学せんい工業も同様に臨海部に立地する傾向が強い。

アルミニウム・・・電力立地。安価で安定した電力が得られるという理由で、水力発電所付近に立地。

パルプ・紙・・・木材をパルプに加工する工業は原料立地、パルプを紙に加工する工業は用水立地。

セメント・・・原料立地。石灰石産出地の近く。

機械・・・労働力立地。労働集約型工業であり、この工業のためには労働力が必須。とくに交通の便が良く、広大な工場敷地が得られる内陸部に立地する傾向が強い。また周辺に関連工場(部品工場)が位置することも条件の一つ。

衣類・・・労働力立地。労働集約型工業であり、この工業のためには労働力が必要。とくに製品価格が安いので、近年は中国など経済レベルの低い地域へと工場が進出。

IC(集積回路)・・・臨空港・臨インターチェンジ立地。重量に比べ製品価格が高いので輸送コストがかからない。労働力や地価が安い九州や東北地方へと工場が進出。

以上、簡単に述べてみたが、さらに実際の出題例などを通じて、理解を徹底させてほしい。

 

問3 [評価] 今回最も正解率が低かった問題の一つ。とはいえ、確かに難問ではあるが決して悪問ではない。悪問とは第1問問1のようなマイナーなジャンルからの出題、しかも高度な知識(あるいは引っかけ的要素)を含んだ問題のことであり、そんなものは誰もできない。逆に本問の場合はあえて良問とさえ言い切れる。それはこの問題が今までのセンター試験の枠組みから外れたものではなく、いやそれどころか、はっきりと典型的なセンター問題としての傾向を持っているからである。いったいどこがセンター的なのか?キーワードは「中学地理」である。

[解法] 解法を説明する前になぜこの問題の正解率が低かったかを考えてみよう。まず北海道の支笏湖の判定は容易。他の2つが工業のさかんな関東や近畿に位置するのに比べ、この支笏湖は自然環境の豊かな地域に存在するため、当然湖水も汚れていないと考えられる。よってCОD(この言葉についての知識はもちろん必要ではない。問題文の中で「値が大きいほど汚れている」と示されている)の値が最も小さいウが該当すると考えられる。ここまではほとんどの者ができたと思う。

問題はここから。琵琶湖について「かつてはひどく汚れていたが、条例によって湖水に流入する有機リンを含んだ洗剤の使用を禁止したために、近年はきれいな状態に回復しつつある」という知識を持っている生徒も多いのではないか。これは有名な話であるし、有機リン流入による富栄養化、そしてそれに伴う赤潮の発生が、かつてほど深刻ではなくなったのも事実である。しかし、これをそのまま「琵琶湖は代表的な汚れている湖の例」として当てはめていいのだろうか。たしかに琵琶湖は決してきれいな湖ではなかっただろう。とはいえ、だからといって琵琶湖が霞ヶ浦と比べて汚れていると言っていいのだろうか。琵琶湖の汚れと霞ヶ浦は全く関係ないものである。

つまり、この段階でアを琵琶湖としてしまった君は「琵琶湖は汚れている」という断片的な知識に頼って問題に取り組んでしまったということになる。これは地理という科目の取り組みとして正しいものだろうか。地理とは「結果論的な知識」ではなく「理論的に判断される推理」によって解答を求める科目なのだ。ここではそんな小賢しい知識は優先すべきではない。

つまりここではより分析的な観察眼が重要となるのだ。霞ヶ浦の位置に注目する。「茨城県」とある。もっと具体的にはどこにあるのだろうか。その手がかり(というか答え)は第4問問7の図5にある。この図には2つの湖沼が描かれているが、そのうち面積が大きな方が霞ヶ浦である。さあ、ここで観察して推理してみよう。この霞ヶ浦はどんな湖なのか。

まず地形から。この地域は関東平野である。周辺にさほど高い地形は存在しないだろう。せいぜい標高数十メートル程度の台地ぐらいか。全体的な地形がそんな感じなのに、この湖だけ急に水深が深くなっていると考えられるだろうか。

さらに汚れている度合いについて。東京圏に位置し、工業用水だけでなく生活用水の流入も多いだろう。近畿地方の内陸部にあり、周囲を山で囲まれた琵琶湖に比べれば、利根川の中下流域に位置する霞ヶ浦ははるかに汚れていると推測できるわけだ。

以上の点より、汚れがひどく、水深の浅いウを霞ヶ浦と判定する。CОDの値がやや小さくなっているが、これはどうしたことだろう。よくわからないが周辺住民や企業、自治体の努力があったのだろうか。もっともそれでもかなり汚れていることには間違いないが。

残ったイを琵琶湖と判断する。内陸県である滋賀県中央部に位置する湖としてはこれぐらいの水深が適当だろう。前述のように浄化のための努力が行われているわりには、CОDの値が小さくなっていないがこれはどうしてだろう。まあ、本当のところはよくわからないが、行政の指導でリン分を含んだ洗剤の使用を止めたところで、実際のところは案外と成果が上がっていないのかもしれない

以上のことからわかるように、本問を解くために必要な知識というのは「北海道が自然豊かなところであること」「関東や近畿は人口も多く工業も発達しており、湖水は汚れる傾向にあるということ」「霞ヶ浦が関東平野に位置すること」「関東平野は平坦であり、さほど高い山もなく、全体として起伏が小さいこと」「滋賀県は近畿地方の内陸部にあり、周囲は山で囲まれていること」など挙げられる。これらを組み合わせながら粘り強く考えていかなくてはいけないが、じっくり丁寧に取り組んでいけば必ず正解に達することはできると思う。

リン洗剤に関する知識など全く必要とされていない。ここで本当に必要なのは中学レベルの基礎的な知識だけである。中学の勉強を軽んじている者こそ、本問で怪我をすることになるのだ。

[関連問題] 本問と最も比較対照し類似性を指摘できるのは02B本第5問問4だろう。日本の地名がいくつか提示され、その特徴が問われている。日本地誌についての知識が直接問われているパターンの例である。外国の地名が登場する場合は、地図と組み合わせて出題されるのが多いのに対し(03B本第3問などのように)、日本の場合はこのように地名がそのまま提示されるのみ。他には00B追第1問問4など。

対策としては、やはり日本地理についてはベタな勉強こそが必要ということになるだろう。高校地理では軽視される部分でもあるだけに、中学の問題集を取り出して、それを徹底演習することが君たちにとって必須な学習となるだろう。

CОDについては、96追第5問問2で一回取り上げられている。問題にもあるように、CODというのは化学的酸素要求量を示し、工業排水や生活廃水が流入することによって富栄養(注)化した湖にとって、元の状態に回復するまでに必要な酸素の量を表した指標。

(注)富栄養というのは、水中の有機養分が過剰となってしまう状態のことで、プランクトンの異常発生による酸素濃度の低下を招く。これにより魚介類など水中生物が死んでしまい、とくに瀬戸内海など外海から海水の入れ替えが少ない海域においては、養殖業に与える影響は深刻なものとなる。

ちなみに湖について問われた例はほとんどない。っていうか記憶にないぞ!?せいぜい00B追第2問問2選択肢1ぐらいかなあ。断層湖(東アフリカ地溝帯に沿う湖や、世界最深のシベリア・バイカル湖など)と氷河湖(フィンランドやカナダ。北米五大湖が代表的だが、日本には存在しない)。の違いなんかは模試ではよく出題される定番ネタなんだけどなあ。

[対策・今後の学習] とにかく中学の問題集をやりなさい。それしかない。センター地理においては高校地理の勉強は全く必要ないのだが、逆にいえば、中学地理の知識の質と量によって、得点が決まるということ。本当にヤバイから絶対に中学地理をやりなさい。こんなこと他の地理の先生は言わないけど奴らはアホだから気がついていないだけ。君たちは運良くスズキ先生に出会ったのだから、このチャンスを逃してはいけない。中学地理をやればセンター試験の得点は上がる。いや、逆の言い方をしよう。中学地理をやらなければセンター試験で絶対失敗する!

 

問4 [評価] これも中学の問題そのまんまとも言えるんやなぁ。まあそこまで難しくもないけど。とりあえず山形県と奈良県がどこにあるかさえわかれば解ける(え、それもわからない?そりゃキツイなあ・涙)。

[解法] 気温から考えてみようか。カとクは最高気温(最暖月平均気温)、最低気温(最寒月平均気温)ともに違いがなく、判別は難しい。それに対し、キだけは最も寒い1月の平均気温が約5℃で、他のグラフ(1月は約0℃である)と比べ、明らかに温暖である。このことから3つの都市のうち、最も南に位置すると考えられる奈良県の奈良市がキに該当することがわかる。

次いで降水量について検討してみよう。カは全体的に降水量が少ないようだが、夏季に雨が多く冬季に少ない日本で一般的に見られるパターン。それに対し、クは冬季に圧倒的に降水量が多く、これは日本海に面する地方特有のパターン。これにより、クを山形県のグラフと判定する。

[関連問題] 気候グラフに関する問題は非常に多いので、ここでは日本の気候が話題とされている問題だけを取り上げてみよう。

まず02B本第5問問1。図1のCで北海道釧路市の気候グラフが取り上げられている。北海道の東部太平洋岸に位置する都市であり、その特徴がはっきりと現れている。

気候がグラフではなく表で取り上げられたものとして01B本第5問問3がある。山に囲まれた山形市と海に近い千葉市の気候が対照的な形で取り上げられている。

04B追第1問問6で日本海側の河川の流量が問われている。ここでは春に雪解けによって流量が急増することが最大のポイントなのだが、それでも冬季降水量が多いことも重要なキーワードの一つとなっている。

旧課程ではあるが、96追第1問問1では東京のハイサーグラフが取り上げられている。

[今後の対策] さほど難易度が高い問題でもないので、とくに対策は要らないかもしれないが、グラフを丹念に読み取ることだけは常に意識しておいてほしい。本問のグラフにしても、全体のおおまかな形からとらえるのではなく、気温については暑い時期は何℃ぐらいか、寒い時期は何℃ぐらいか、それぞれ注意深く観察し、降水量についても同様。

これ以外には日本の地名が取り上げられていることもあり、都道府県の位置を確認しておくことはもちろんだが、やはり中学地理を勉強し直すことが必要となるだろう。

 

問5 [評価] いかにもセンター試験といった感じの地形図問題。河岸段丘の地形図であるが、地形そのものの特性が問われているわけではなく、あくまで図から読み取れる範囲で、地形の高低・凹凸、土地利用記号などが中心に問われているだけである。

また今回の地形図問題は本問と次の問6だけであり(第4問問3は地形図問題というほどのものでもないだろう)、計6点分ということになるのだが、これもほぼ例年通りといえるだろう。地形図問題に過剰な苦手意識がある者は、100点中の6点分なのだから間違えたとしてもたいしたことはないと開き直ってしまうといい。

[解法] 実は僕はこの問題をセンター翌日の新聞を見ながらやったのだが、新聞紙上の縮小された見にくい図であってもこの問題は解くことができた。ある程度慣れてくると、図を見なくても選択肢の文章を読むだけでもある程度は答の見当が付いてしまうものなのだ。

というわけで、実際に図を見ることなく、まず選択肢を読んでそのニュアンスから答を推測してしまおう。

1;木や竹があるからといって洪水の流れを抑制できるものなのだろうかとい疑問が根本的なものとしてあるのだが、それよりも洪水の際に川から水があふれ出るような低地が竹林となることってそもそもあるのだろうか。この辺りも大きな疑問なのである。竹林って何となく山の斜面ってイメージない?タケノコ狩りに川のそばに下りていくだろうか。むしろ山に登っていくはずでは。竹は根を地下に縦横無尽に張り巡らせるという特性があり、例えば土砂崩れなどを防ぐには絶好のものなのだが、洪水がどうのこうのといったことには無関係なのではないかな。

2;わざわざ「川からの距離が遠く水の便が悪いので」って理由をことわっているのが怪しいなあ(おっと、良い子のみんなはこんな先入観バリバリの解き方はしたらダメだよ。これはあくまで朝刊に載った細かい地図を見ながらスズキ先生が解いた解き方なのです)。っていうかそもそも集落がある時点である程度水田はあるってことなんじゃないかな。食料も確保できないのに誰も住もうとは考えないでしょ。

3;水力発電?ダムがこの中にあるのか?日本の場合は水力発電するとしたらほとんどの場合ダムを造るでしょ。それにダムを造るとすればもっと傾斜が急な上流地域のはず。こんな河川沿いの平野にダムをつくったら、周辺が水浸しになってしまう。ダムの規模のわりにダム湖だけが大きくなりすぎてアンバランス。ダムそのものの高さもないため、有効な発電もできないだろう。

4;このような工夫はしばしばみられる。堤防をがっちり造ってしまえば、かえってそれが決壊した時に巨大な被害が周辺地域に及ぶことがある。少しすき間を設けておいて、そこからすこしずつ河川水をはみ出させることによって、洪水自体のパワーを小さくしようとする試みは一般的である。

僕は選択肢の文章をこれだけ確認しただけで、いきなり4を答にしてしまった。これが一番正解っぽいから。でももちろん君たちはこれだけで答を決めてはいけない。さらに地形図を検討していこう。

1;「波田」の集落を探す。とりあえず「竹林」を探してみよう。さあ、あるだろうか。ちょっと見当たらないようだ。「洪水の流れを抑制する」も何も、そもそも竹林自体がないのなら、この選択肢は誤りとするしかない。

2;「上波田」を探す。さらに「水田」の土地利用記号を探してみよう。この集落周辺の広い範囲にわたって水田が分布することがわかる。ここは河川からやや離れた台地状の地形に位置し、本来は水利の便は悪いはずなのだが、何とか住民が工夫しているのだろうか、しっかり水田は存在する。

3;「穴沢」の地名を探す。図の上方にあってわかりにくいが見つかっただろうか。ここには谷があり、そこを小さな川が流れているようだ。非常にわかりにくいが。はたしてこんなところで「水力発電」が行われているのだろうか。少なくとも「発電所」の地図記号はないようだ。またダムが造られていればそこにダム湖が存在するわけだが、そのような水面もこの付近には見られない。

4;堤防を表す地図記号はないので、直線と短いケバケバ線の組合せで示される「斜面の印」に注意しながら(正確には「土の斜面」だが)、それらしい地形を探す。梓川の両岸に注目。最もわかり易いのは図の北東部、「669」という数字と川の流れの間にあるあたかもムカデのような(表現が悪いが)線だろう。直線が真ん中にあって、その両サイドに短いケバケバ線が無数に並んでいる。直線の部分が最も高く、ケバケバ線の方向に斜面となっている様子を想像してほしい。堤防状に盛り上がった地形である。

同様に、堤防らしき施設は「花見」と河川との間にもあるし、天神原との間にもある。こちらの堤防は先ほどのものとはやや形式が異なり、片方が斜面、そして堤防の上が道路となっており、もう片側は垂直の壁となっているようだ。かなりしっかりと造られている。

さて、ここで河川両岸の堤防を観察していこう。完全に堤防によって囲まれているわけではなく、ところどころ切れ切れになっている。ここがまさに選択肢の文章にあるような「洪水の被害を軽減するために、堤防を不連続にした場所」と思われる。河川が増水した場合には、この不連続の箇所から少しずつ水があふれ、堤防が一気に決壊するような事態を避ける備えとしているのだ。

3に補足。ちなみに「穴沢」の「穴」の文字の右手に見られる地図記号は「堰」である。ダムというわけではないが、多少段差を設けて、上流から流れ落ちてくる岩石や土砂などをせき止めるために設けられている。

[関連問題] 河岸段丘が地形図に登場した例としては、97B追第4問図2がある。ただしここでも地形図の等高線から土地の起伏の様子を読み取れば十分に解ける問題となっているので、例えば河岸段丘の成因(土地の段階的な隆起)が問われてはいない。

各選択肢について。

1;ニュアンスが似たものとして99A追第2問問6がある。津波対策として実施されていないものとして「林を集落の周囲に何重にも育成する」というものがあるのだが、問題自体は地形図にそのように樹木に囲まれた集落など存在しないので簡単なのだが、そもそもそんなことで津波が防げるのかどうかが疑問。仮に樹木に囲まれていたとしても、巨大な波の勢いは止められないのではないか。

また土地利用記号として「竹林」が問われているが、これについては過去に出題例はない。ただし土地利用記号そのものは非常によく問われるので、過去問の中から自分で探してほしい。

2;選択肢1の「竹林」に続き、ここでも「水田」といった土地利用記号が問題となっている。地図記号(学校や工場など)はほとんど出題されないし、出題されたとしても解答のポイントになることは稀であるのに対し、この土地利用記号は問題を解くカギとなることが非常に多い。

3;ダムが地形図に登場しているものとして97B追第4問図2bがある。この図は北側が上流側なのだが、ダムによってせき止められた上流側が、等高線に沿って湖となっている。このようなダムとダム湖の関係を目で覚えておくといいだろう。

4;土の斜面の記号から堤防を読み取る問題も非常に多い。

[対策・今後の学習] 興味深い問題である。センター試験の地形図問題としての明確な特徴が表れている。

この図に描かれている地形は「河岸段丘」というものなのだが、これが普通の(私大などの)地形図問題ならば、この地形の成因や小地形としての特徴などが問われることが多いはず。それに対し、センター試験の地形図問題では、そういった暗記系の知識が問題となることはほとんどなく、本問のようにその場で地形図を見ながら検討していけば十分に答えられるものが一般的である。

そういう意味でもセンター試験の地形図問題の対策としては、ひたすら過去問を解くことによってそのクセに習熟していくことが大事になる。

 

問6 [評価] 地形図問題の定番、断面図問題。こういった問題は時間こそかかるが確実に正解できるものである。失点してはいけない。

しかし実は意外に正解率は低かったようだ。本番の緊張からか、それとも安易に取り組んでしまったからか。いずれにせよ、確実に得点できるこのような問題での失点は痛すぎる。要注意!

[解法] こういった断面図問題はまず両端の標高を測定し、そこから候補をしぼっていくのだが、本問の場合は、いずれの選択肢においても両端のAとBの標高は同じであり、これを手がかりにすることはできない。また川の流れの位置も重要なポイントになるはずなのだが、これもどの図においてもその位置が同じであり(これらの断面図において、河川だと思われる標高の最も低い場所の位置は、4つともみな同じ)、やはり手がかりにはできない。

よって等高線の様子から斜面や平坦な地形を読み取って、それをヒントにしながら解いて行こう。

ではAからスタートし、Bへとゆっくり直線をたどって移動しよう。まず最初に急斜面があるようだ。等高線が密となっている。何本あるだろう?5本程度だろうか。つまりスタート直後に標高差50m(この地形図の縮尺は1/25000であることが問題文に示されている。等高線間隔は10mごとである)の急斜面を下ることがわかる。このことを選択肢の図でみてみると、あれ、全部の図で50m下ってることは共通してるぞ!こりゃ手がかりになりませんなぁ(涙)。

ではさらに進んで行こう。ここで等高線の疎な部分、つまりやや平坦なところに出る。緩やかな斜面が果樹園として利用されているようだ。1~4いずれの図にもこの付近にほぼ平坦な地形が描かれているが、ただしその広さが異なる。1と3ではこの部分の面積は小さく、2と4は大きい。さあ、どうだろう?さすがに2や4のような広い平坦面というわけではないように思える。これらを除去。

さらに等高線が密となっている部分を通り過ぎる。ここも等高線が5本ぐらいあるだろうか。おっと、それよりも「花見」の集落に見える「683」の標高点の数字が大きなヒントになるではないか。つまり斜面を駆け下りた平坦面(実際には緩やかな斜面だと思うが)の標高は680mぐらいであり、この具体的な数値がわかれば、それだけで解答が一発可能ということ。さあ、ここで1と3を比べてみよう。1の2つ目の平坦面は、縦軸に書かれている標高から推測するに、670~680mぐらいか。それに対し、3では700を越えており、これは明らかに不適切であろう。以上より答は1となる。

ついでなんでさらに進めて見ていこう。花見の集落が位置する平坦面をさらに南下すると堤防にぶち当たる。ただし、この堤防については断面図では無視されているようだ。いずれの図にもそのような出っ張りはない。さらに進むと、川の流れにぶつかるが、これについては4つの図ともに共通した位置に川底のようなくぼみが存在する。

さらに進む。また堤防を越えているが、これは断面図ではなぜか無視。そして「天神原」の「原」という字のすぐ上の部分で等高線を1本越えている。ここで標高が10m上昇。さらに南下。松本電鉄と交差する付近の標高は、すぐ脇の「694」の数字が手がかりとなる。1の断面図を見ると、標高690m辺りに広い平坦地が広がっている。

さらに、「田村堂」という文字の辺りで等高線を数本登り、ここの平坦面の標高が「740」m、そして最後に斜面を駆け上りB地点へと達し、こちらでは標高は約820mほどに達しているようだ。

以上、全体を見通しても断面図1に不適当な点はない。自信を持って1を正解とする。

[関連問題] 断面図判定の問題は地形図問題の中でも最もメジャーなものといえるので、出題例も多い。

本問に雰囲気が似ているのは、01B追第3問問1。等高線の疎密などから、どこの断面図かを判定する。こちらの問題では縦軸に明確な標高が示されていない点が難しいが、河川の位置(最も低い谷の部分)を大きなヒントにできることが本問とは異なる。

97B追第4問問5参照。同じく断面図。こちらは土地利用記号がヒントとして示されている点が親切。また、斜面の印によって示されている盛土の部分についても、この断面図においてはコブのような形状で表されており、この点が本問と異なっている。

02B追第5問問2参照。堤防の盛り上がっている様子がはっきりと断面図で確認できる。

断面図というわけではないが、98B追第4問問1(土地の起伏)や97B本第4問問2(視界)などの形で、地形図を立体的にとらえることが求められることもある。

単なる断面図ならば最近は大陸の断面図というものも、02B本第3問問1、04B追第4問問1などで出題されており、やはり小さな地形だろうと大きな地形だろうと「立体視」が重要なことは変わらないのだ。

[対策・今後の学習] センター地理の地形図問題は「立体視」が大事であることを常に意識しておこう。本問のように、等高線で判定するものだけでなく、斜面の印や土地利用記号もみな土地の高低を考えるためには重要なカギとなることが多い。

 

問7 [評価] センター地理の重要なキーワードの一つ「高潮」に関する問題。漫然と選択肢の文章を読んでいても正解には届かない。センター過去問を研究し、そこで高潮が重要な言葉であることを頭にインプットしてから本問に取り組む。そうすれば自ずと「高潮」という言葉が浮かび上がり、これが急所と分かるはずだ。

[解法] 地震と高潮は全く関係ない。秒殺で2を誤りとする。

[関連問題] 高潮については98B本第5問問2参照。この図で示された低地においては、高潮の危険性が大きい。

また高潮と津波との混乱を狙った問題もしばしば見受けられ、というか本問こそその典型例とも言えるのだが、「海底地震や海底火山の爆発による振動によって生じる津波」と「低気圧の上昇気流や風によって海面が持ち上げられることによって生じる高潮」のキャラクターを常に明確にしておくべき。地震の成因を理解しているかどうかがポイントとなるものとして03B追第1問問4がある。

[対策・今後の学習] 「高潮」という言葉がキーワードとなっている。「センター地理は日本語が大事」なのだ。君たちの中にやみくもにカタカナの地理用語を覚えようとする者がいる。「アウトストラーダデルソーレ」「フォガラ」「ファゼンダ」などなど。安心してほしい、そんなものはセンター試験では出題されないから。君たちが確実にその意味を知っておくのは日本語の言葉。とくに、もちろん言うまでもないが、これまでにセンター地理で出題された範囲のもののみ。「高潮」はセンター地理を研究している受験生にとっては常識中の常識ワードなのだ。

鈴木たつじん公式サイト

センター試験・地理Bの学習のために、いろいろなアドバイスをしていきます。

検索

モバイルサイト