2004年度地理B本試験[第4問]解説

2004年地理B本試験[第4問]

「都市」をテーマとした大問という点にビックリ仰天!これは新しいぞ!

とはいえ全体的な難易度はさほど高くないので、せいぜい1問ロスぐらいで乗り切ってほしい。注目は第2問。都市名に関する知識があからさまに問われている。

 

問1 [評価] 「第4問問1は容易」というパターンは今回も踏襲されている。第1問問1に難問が多いため、むしろ第4問から実際のテストでも取り掛かっていくべきだろう。

[解法] とくに都市名に関する知識は不要だが、これぐらいは知っていて当然ともいえる。またいずれもセンター試験ではしばしば登場する都市名であるので、過去問をしっかり研究している者にとってはおなじみのものばかり。アは米国大西洋岸の都市ニューヨーク、イは中国華北地方に位置する首都ペキン、ウはトルコの人口最大都市イスタンプール。

最も特徴的なのはC。ドーム状の屋根と複数の尖塔(これをミナレットという)からなる建物がいくつかみられるが、これはモスクというイスラム寺院。米国・中国・トルコのうちイスラム教徒が多数を占めるのはトルコのみであり、Cをイスタンブールと判定する。

さらにA。中央に瓦屋根をもつ大きな建造物があり、これは東洋のものであろう。中国のペキンと特定する。

残ったBについては、中央の公園よりも手前に林立する高層ビル群が目印となるだろう。ニューヨークの「摩天楼」である。

ちなみにイスタンブールとニューヨークは「国内人口最大都市ではあるが、首都ではない」都市であり、ペキンは「首都ではあるが、国内人口最大都市ではない」都市である。

[関連問題] 都市についての知識は不要であるが、ニューヨーク・ペキン・イスタンブールの3都市はメジャーなものであり、知っておいてもいいと思う。過去問から出題例を探してみよう。

イスタンブールは本年を合わせ4年連続出題。01B本第4問問4参照。ここでは千歳・アンカレジの組み合わせが「海峡に面した交通の結節点という共通性がみられる」例ではないことが問題を解くポイントとなっているが、この海峡に面するもの同士の姉妹都市こそ、下関・イスタンブールのコンビなのだ。イスタンブールの名前が直接登場しているわけではないが、隠れキャラとして重要な役割を担っている。

02B本第1問問6参照。問題自体はノルウェーの風景を答えるものであるが、ここで外れ選択肢としてイスタンブールの風景が登場している。4である。本問の写真Cと比較してみよう。きわめて似た風景といえる。

03B追第4問問3参照。「図1中のQ国では、首都がこの国における人口最大都市にはなっていない」とあるが、Q国とはトルコのことである。人口最大都市は沿岸部のイスタンブールであるが、首都は高原上の小都市アンカラである。

旧課程時代には95本第7問問2で登場。アジアとヨーロッパを隔てる海峡には日本の協力による橋がかけられているのだそうだ。

ペキンについては、98B本第3問問2選択肢4参照。本問写真Aの右手の建物は故宮博物館というものなのだろう。ただし98B本はあまりの平均点の高さに得点調整がかかったといういわくつきの回であるし、さらにこの問題もこれ以外に同様のパターンが過去問に見出せないという特殊な形式のものである。ここで取り上げられたからといってペキンが重要ということにもならないような気はする。

さらに関連問題というわけでもないだろうが、97B追第3問問1選択肢1でも、日本の平城京や平安京は中国の都市を参考につくられたという歴史的事実が取り上げられている。これはペキンという特定の都市についてのネタというわけでもないかな。

00B追第3問問4選択肢2参照。ペキン(テンチンも)が登場。ただし、同じ大問の問1でシャンハイが大きくクローズアップされているのに比べればたいしたことはないとも言えるが。

03B本第4問問5参照。ペキンが表中に登場しているが、その位置が重要となっている。ペキンはやや内陸部に位置し、港湾都市ではない。

03B追第4問問3参照。アの文章はペキンの説明。やはりこの都市も「人口最大ではないが、首都である」典型的な例なのだ。

03年に2発出題されていることを考えると04年に登場したことについては順当な結果だといえるだろう。ペキンオリンピックも08年に控え、ここしばらくは徹底マークが必要なポイントとなってきそうだ。華北平原に位置し、大河川(黄河)や海には接していないという立地条件、さらにその人口規模(シャンハイには負けるものの、700万人を超える巨大都市であることには間違いはない)などは最低限押さえておくべきだろう。さらに、降水量がやや少ないために米作は不可能で、料理も麺や饅頭(中華まん)が中心であること、中国の大都市なので比較的雇用が多く、地方から人口が流入してもスラムは原則として形成されていないことなども、知っておくといい。

ニューヨークもペキン同様98B本第3問問2で取り上げられている。選択肢2の図がニューヨークの観光都市図に該当するのだが、これだけ見てもいかに高層の建物が多いかがうかがえよう。本問の写真Bの中央に横たわる巨大な緑地はセントラルパークと呼ばれるニューヨーク市民憩いの地だが(映画「ホームアローン2」では主人公はこの公園に迷い込むことになる)、これは98年の方でも描かれている。選択肢2の図の北西端に道路が丸みを帯びている部分があるのだが、わかるだろうか。これがセントラルパークの南側の一部を示している。

98B追第3問問4参照。選択肢2でニューヨーク市が取り上げられている。ただしこれはニューヨーク市特有の問題というわけではなく、一般的な都市の特徴を問うたもの。

高層ビルが林立する風景が問題として使用されている例としては02B本第3問問5選択肢2。これはシンガポールの風景である。シンガポールは選択肢の4カ国(他はインドネシア・ネパール・モンゴル)の中では最も経済レベルが高く、「先進国」と言っても差し支えないぐらいである(実際には発展途上国と先進国の間の「NIES」に分類されているが。ただし経済レベルは1人当たりGNIが約25000$/人であるように、かなり高い)。よってこの国を象徴する光景も、2の切手にあるように「林立する高層ビル」となるのである。実はシンガポールは98B本第3問問2にも登場している。この地図にも表されているマーライオンは、よく見ると、02年の方の切手にも小さく書かれているのだがわかるかな?この問題の他の3都市(ペキン・ニューヨーク・パリ)のセンター試験における登場回数が極めて多いことを考えると、シンガポールも当然マークしておくべき都市となる。

[対策・今後の学習] センター試験では原則として都市についての知識は求められないのだが、04年度には異様に都市名が多く取り上げられ驚かされた。ただし、だからといってさほど神経質にならなくてもいいだろう。本問に代表されるように、そのほとんどが過去に取り上げられたものばかりであり、別に地図帳や参考書を広げて都市名のチェックをする必要もない。やはりここでも過去問の研究が重要ということ。

さらにポイントをもう一つ。「評価」の部分では第4問から取りかかるといいと言っておいたが、若干訂正。「第4問・第5問のうちで地形図問題でない方から取りかかる」とする。どうしても地形図問題は時間がかかるため、これから取りかかることはどうしても精神的な圧迫感を生じる。問題の冊子を軽く眺めてみて、地形図があればそれは後回しにすべきなので、第4問・第5問についても、もしそれが地形図を扱った大問であったならむしろラストに回すべきだろう。

 

問2 [評価] 都市に関する問題というのは本大問問1にみられるように地図上の位置と組み合わせられていたりすることが多いのだが、本問は単に言葉として都市の名称が挙げられているだけであり、これ以外に手がかりが与えられていない。これは手ごわいぞ!?

[解法] 無理に解く必要がある問題とも思えない。こういった例外的な問題に神経を取られて、本来解くべき問題を落としてしまうこともある。だからできなかったとしても気にしないこと。

1;「首都の外港」がキーワードでテンチン。外港とは内陸部に位置する都市に対し、港湾としての機能を補う都市のことで、近隣の沿岸部に位置している。ここで述べられているペキンとテンチンの関係が典型的だが、マンチェスター(綿工業)とリバプール(綿花の輸入港)、サンパウロ(コーヒー豆の集散地)とサントス(コーヒー豆の輸出港)などが有名。また、これ以外にも南米の高山都市にもこれと同様の関係の都市があり、エクアドルの高山都市キトへと運び込まれる物資あるいはここから運び出される物資の多くは、低地の港湾都市グアヤキルを経由する。

2;「特別行政区」がキーワードでホンコン。中国は社会主義国であるが、90年代になって返還されたホンコン(とマカオ)は特別行政区として現在でも資本主義経済が維持されている。中国本土の社会主義と、特別行政区ホンコン・マカオの資本主義が並立しているという特殊な状況を「一国ニ制度」ということも知っておくといいだろう。

3;「最大の商工業都市」でシャンハイ。伝統的に商業が発達しているのはもちろんだが、近年は日本が技術・資本協力した巨大製鉄所の建設や、輸出加工区の設置による外国企業の工場進出などにより、国内最大の工業都市としても発展している。

4;「経済特区」がキーワードでシェンチェン。華南コワントン省の都市で、ホンコンに隣接している。経済特区に指定され、ホンコンはじめ諸外国の企業が安価な労働力などを求め、工業を多数進出させた。経済特区の中では最も発展しているので、中学地理などでも名称が出てくるほど有名な都市ではある。

[関連問題] 本問を見た時に真っ先に思い出したのは、99B本第2問問5。米国地誌ではあるが、州名に関する知識が求められている。カリフォルニアやフロリダはともかくとして、イリノイを知っておけというのはずいぶん無理があるなぁ(涙)。

03B本第4問問5の方がより直接的に関連する問題かもしれない。ここでは中国の省の名前をある程度知っておかないと得点できない。

さらに本問に登場している4つの都市について過去の出題例を探っていこう。

シャンハイはもちろん頻出。長江河口付近に位置する世界最大級の大都市で、港湾都市として発展。かつてはヨーロッパ諸国の租界(イギリス租界、フランス租界など。都市内において外国勢力が占領してしまった地区と考えておけばいいだろう)が置かれる都市であったが、その国際性は今も失われておらず、中国最大の商業都市であるだけでなく、外国企業の進出も際立ち、工業都市としても最重要である。

98B追第3問問5選択肢1参照。世界の成長センターである中国沿岸部を代表する都市の一つであるシャンハイであるが、当然労働者の流入も多い。ただしこの国は所詮は発展途上国であり(1人当たりGNIは1000$/人に満たない)海外から出稼ぎ労働者がやってくるはずがない。例えば4000$/人のマレーシアからこの国へと働きにやってくるアホがいるか?本国で働けば4000$、しかし中国で働けば1000$。わざわざ賃金の安い国で働くこともないだろう。よってこの都市へと入ってくる労働者の出身地は国内の貧しい地域、つまり内陸の農村となる。さて、地方の中国人と都市の中国人、民族紛争は発生するか否か!?というのがこの問題を解くカギとなっている。

どうでもいいけどF1グランプリって普通は開催する国名がつけられるものだけど(鈴鹿で開かれるのは日本グランプリ)、シャンハイのサーキットで開催されるのは中国グランプリではなく、シャンハイグランプリ。これだけ考えてみても、シャンハイの重要性がうかがえるというものだろう。

テンチンは00B追第3問問4選択肢2で名前だけ登場。これだけしかないのにチェックしておけっていう方が無理だなあ(涙)。

ホンコンは有名な都市でもあるが具体的に取り上げら得るケースは意外に少なく、98B本第3問問4選択肢4がある程度。03B本第4問問6でもホンコンを中心とした貿易問題が取り上げれているが、とくにホンコンについて問われた問題というわけでもなかろう(それでも中国とのつながりは大きなポイントとなっているが)。

これ以外では、ホンコンの名称こそ直接登場していないものの、この都市に関する最大のキーワードである「一国二制度」が使用された問題として99A追第3問問1がある。ホンコンは中国の特別行政区とされ、資本主義経済が施行されている。中国の他の地域は社会主義なので、この国は一つの政府のもとに異なる経済体制が共存しているということになる。これは非常に珍しい(というか世界中探しても中国だけ)方式であるため、「一国二制度」は中国特有のキーワードとなるのだ。

シェンチェンについては初出なので、マークのしようがないか。経済特区には5つの都市・地域が指定されているが、その最大のものシェンチェンだけでも知っておこう。人口は何倍にも拡大し、その多くは内陸部からの出稼ぎ労働者によって占められている。

[対策・今後の学習] 何度もいうようだが、都市名の扱いがやっかいなのだ。04年度は追試でも都市名が非常によく問われているのだが、だからといってむやみやたらに都市名を覚えていってもしょうがない。とにかくセンター試験に登場した都市名だけ確実にチェックしていこう。

問3 [評価] 第4問に地形図が登場することは稀なので、パッと見た瞬間ちょっとビックリ。ただし地形図問題というほど厳密な観察が必要な問題でもなく、実際に正解率も高かったようだ。時間をかければ解ける問題の典型例。

[解法] 1;河川の流れる方向を示す矢印が書かれているので、下流方向を判定するのは容易。Mと書かれた丸が多い地域の建物密集度が最も高いように見えるが、これはこの図の範囲においてはむしろ上流側。

2;右岸というのは下流に向かって右側のこと。確かに川の右岸に当たる、図の左下に鉄道の駅が見られる。ただしここから放射状に道路が発しているだろうか。オフィス街の有無はともかくとして、少なくともそのような形状の街路形態は見られないのだが。

3;旧市街とはどこだろうか。とりあえず城跡を探してみようか。その周辺が旧市街であると考えるのは自然だろう。図の左上の方にあり、ここは確かに川の左岸。博物館なども集中しており、観光地として重要と思われる。また街路形態にも注目してみよう。城跡の北西部、この図の最も左上の部分には複雑に曲がりくねった細い路地が集中している。少なくとも近代的な都市計画に基づいて建設された街区ではないだろう。まさに古くから人々が住み、自然発生的に街路が形成されていった旧市街地と見て間違いないのではないか。よって3が正解。

4;海には面していないものの、河川が船舶交通の要として重要であると思われ、港湾施設が見受けられる。図2の右の方に、河川の本流から掘り込んだ人工的な「入り江」のようなものがいくつかあり、まさにこれは河港であろう。日本ではあまり見かけない施設であるが、西ヨーロッパなどでは一般的なもの。

[関連問題] ニュアンスとしては98B追第3問問1問2などに似ているような。地形図問題ではないものの、地形図問題的な要素も多い。

[対策・今後の学習] 本問のように知識を必要とせず、時間をかけて考えれば解ける問題があるということを体で覚えておくべきだろう。模試などでもしっかり60分(あるいはそれ以上。つまり全部やり終わらなくてもかまわないということ)かけてゆっくりと問題を解くようにする。

 

問4 [評価] 数字を使った問題でおもしろい。センター地理B的であるといえる。またスペインを問うているところも興味深い。インドネシアや日本、そしてナイジェリアはいずれも人口大国であり、人口を話題とするならば当然こちらが問われなくてはいけない。とくにナイジェリアなど人口爆発というキャラクターもはっきりした国であり、私大の問題などでは必ずや主役級の扱いである。これに対し、スペインなんて所詮は「人口」ジャンルにおいてはとくに個性のないマイナーな国だよねぇ。そんな国をサラッと持ってくる辺りがいかにもセンター的だなあと思う。

つまりこの問題って、例えばナイジェリアやスペインといった国についての地誌問題ではなく、人口という数字を用いて考える問題として仕上がっているわけで、この辺りのオシャレ(?)さがまさにセンター試験ってわけなのだ(わかる?わからんでもいいけど・笑)。

[解法] 「割合」と「実数」の区別は君たちの中で明確になっているか。本問の表1においては「都市人口率」というのは割合(都市人口を全体の人口で割って求めた数値)であり、都市人口というのは実数である。前者は単位が「%」などで表されることが多く、実際の量の大小とは関係ないこともある。後者の単位は「人」など実際に数えられるもので、こちらはまさに実際の数量そのものを表す。本体の規模に左右されるものが実数であるので、逆にいえば本体の規模に差がある場合は実数にこそその違いが明確に現れるということ。統計に、割合と実数の両方が示されていたら、まず実数に注目し、本体の規模と結びつけて考えることが大事。

よって本問も実数である「都市人口」に注目しよう。で、ここからは異常に簡単なのだ(笑)。っていうかここにまず注目できた人間はすでに正解を手にしているのと同じ。この4カ国の人口を考えてみてよ。インドネシア2.0億人、日本1.25億人、ナイジェリア1.1億人、スペイン0.4億人。で、スペインを当てるわけだ。人口が4000万人しかいない国で、都市人口が9944万人だったり、8345万人だったり、4697万人だったりするわけないでしょ?当然答えは3067万人の2しかないわけだよ。おわかり?

(おまけ) というわけでここからはどうでもいいけど、せっかくだからいろいろなことを書き述べていきます。興味ある人は読んでね。

まず都市人口率についての説明。都市人口というのは「人口密度の高い地域に住んでいる人口」のことで、つまりどれだけの人口が集中的に特定の地域に住んでいるかの指標なのだが、これだとちょっとわかりにくい。ここは簡単に「都市に住んでいる人口」と考え、農村に住んでいる「農村人口」の反対語だと思っておいたらいいのではないだろうか。人口は都市に住む都市人口と農村に住む農村人口に分けられ、その合計は100%となる、というように。

一般的にみて、都市機能が発達している先進国においてこの値は高く、80%以上の国が多い。わが国は先進国としてはやや低めで75%程度。逆にいえば農村人口が25%もいるわけで、これは温暖で湿潤な気候環境にあり「豊かな農村」が形成されているアジアだからこそ、農村での生活者も(先進国にしては)多くなっていると言えるだろう。逆に冷涼なイギリスや北欧の国々は都市人口割合が90%を上回るが、これは都市以外の地域に住むことがなかなか難しいという自然環境がその要因と思われる。

発展途上国においては全体として都市人口割合は低いと見ていい。とくに都市人口割合が低い、つまり農村人口割合が高いのは、湿潤アジア。先にも述べたように、温暖かつ湿潤な気候であるため「豊かな農村」が形成され、そこで農業を営みながら暮らす者が多数を占めるのだ。例えば、タイの都市人口割合の低さ(約20%)と第1次産業人口割合の高さ(約60%)はしばしば試験でも問われている。湿潤アジアの風土や人々の暮らしを想像してみよう。

[関連問題] 解法の中で述べた「実数」と「割合」の違いについて、その重要さが実感できる問題として、00B本第1問問3がある。人口規模の小さいシンガポールにおいては、パソコンの保有台数も当然少なくなる。

都市人口割合についてはほとんど出題例はなく、登場していたとしても本問のように問題を解くカギとはなっていない場合ばかりである。例えば99B追第5問問4参照。都市人口割合が取り上げられているものの、図を見て、選択肢の文を読めばそれだけで解ける問題。何の知識も必要とされていない。

[対策・今後の学習] 主な国の人口については必ずチェックしておくこと。本問のように直接出題される場合もあるし、そうでなくてもそれぞれの国の規模的なイメージを固める際に役に立つ。また数字を使ってものを考えることは理系のみんなにとって将来的に非常に意味のあることだと思う。

まず人口ベスト10はマスト。ついでに12位まで知っておこう。1位中国(13億)・2位インド(10億)・3位米国(2.8億)・4位インドネシア(2.0億)・5位ブラジル(1.7億)・6位パキスタン(1.4億)・7位ロシア(1.4億)・8位バングラデシュ(1.3億)・9位日本(1.25億)・10位ナイジェリア(1.1億)・11位メキシコ(1.0億)・12位ドイツ(0.8億)。

さらに西ヨーロッパ主要国の人口も重要。ドイツ(8000万)・イギリス(6000万)・フランス(6000万)・イタリア(6000万)・スペイン(4000万)・オランダ(1500万)・それ以外(1000万未満)。

さらに世界の国々で重要なものとして、タイ(6000万)・韓国(4500万)・カナダ(3000万)・オーストラリア(1500万)。

おまけで人口小国を知っておくといい。シンガポール・ノルウェー・ニュージーランドはいずれも人口が少なく、500万人に満たない。

 

問5 [評価] やや難しかったかもしれない。感覚的に解けた人も多いだろうが、だからといって論理的に説明できるかといえばそうでもないと思う。

[解法] まず簡単なものから消していこう。明らかに消えるのは2だろうか。いくらなんでも全く農地が見られなくなった市というのはありえない。

また3も消し易い。日本のニュータウンのキーワードは「職住分離」。あくまで都心への通勤者が住むベッドタウンである。このことから「職住近接」という言葉を消す。

また、ベッドタウンが建設された「都市周辺」とはすなわち郊外のことであり、このような地域においては乱開発を避けるためにある程度の土地利用の制限がかけられている。かつては住宅と工場などが混在することもあった。しかしこれでは豊かな住環境を求めて都心から移り住んで来た者にとってあまりに不合理である。住宅地区と工場地区を分けたりして、住民の権利を損なわないような配慮は当然されるべきである。

さらにここから1を消していこう。これは都市構造の同心円モデルというものを考えることによって説明がつく。

まずその同心円モデルについて簡単な説明を。都市圏は5重円によって地域分化される。中央の小さな最初の円の内側をa、最初の円と2番目の円の間をb、2番目と3番目の間をc、3番目と4番目の間をd、一番外側の5番目の円と4番目の間をeとする。

aとbが都心部(既成市街地)に当たり、とくにaを中心市街地、bを周辺市街地とする。中心市街地には高度に都市機能が集中し、中心業務地区(CBD)が形成されることとなる。高層ビルが林立する官庁街やオフィス街など。周辺市街地は早くから都市として発展してきたエリアであるが、中心市街地ほど再開発も進まずやや建造物が古い印象もある。昔ながらの商店街や、あるいは中小規模の工場なども見られる。いわゆる下町と考えてみたらいいだろう。またこの周辺市街地は、都心から郊外へと移り変わっていく場所でもあるので「漸移地帯」という言われ方をする場合もある。

cdeは郊外にあたり、都心部への通勤者が居住するため、昼間人口割合が低い。cは一般住宅地。比較的早い段階から住宅地として発展してきた。dは高級住宅地。広い宅地面積が確保しやすいため、富裕層が移り住む。住環境もいい、いわゆる「山の手」。eは新興住宅地。都市圏の外縁部に沿い、もっとも最近になって開発が進められているところ。通勤手段の発達と共に山地を開いて建設されたようなニュータウンがいくつも見られ、人口増加率は極めて高い(もっとも、もともとほとんど人が住んでいなかったのだから、人口増加「率」が高いのは当たり前)。

以上のような都市モデルを想像すれば、選択肢1の文章は簡単に除去することができる。都心部の様子(上ではabとして説明)を想像する。CBDは既成市街地の中心部に形成されるものである。必ずしもそれは市街地全体ではない。「CBDの面的広がりは、市街地の範囲と一致している」という記述とは明らかに矛盾があるではないか。周辺市街地にまでCBDが広がっているわけはない。あくまで「中心」業務地区なのだ。

以上より4を正解としていいだろう。都市圏は通勤圏と一致すると考えるのが一般的だが、都心部に学校があったり、商業施設があったりする場合には、通勤圏、買い物圏などど同意となる。

[関連問題] 3;職住近接が実現されたイギリスのニュータウンに関する問題は98B追第3問問2。新課程ではこれだけだが旧課程時代はしばしば出題されるなどメジャーなネタではある。

また住宅地と工業団地が隣接するなど無秩序な乱開発のことをスプロール現象というが、この言葉自体が問われたのが02B追第2問問4。「住宅や工場などが農地の中に無秩序に混在する」と説明されている。

4;都市圏の定義に関する問題は多数。典型的なものとして02B追第2問問6がある。

[対策・今後の学習] センター試験において、都市構造や都市問題が出題されることは多い。過去問が豊富なだけに、それらを研究することによってある程度の出題パターンをつかんでおくことが大事だろう。本問についても、誤文を3つ指摘しないといけないので難しいのだが、過去問から「都市圏」の定義を確実に固めておいた者にとっては、4をそのまま正文として解答できたかもしれない。センター試験のセオリーを読解しよう。

 

問6 [評価] 図表の読み取りが重要であるという点において典型的なセンター問題。知識よりも(ここで問われているのは簡単な知識に過ぎない)、読解力(この場合はグラフの解釈について)こそが問われているということ。

[解法] 人口増加に関する公式を挙げておく。

人口増加率=自然増加率+社会増加率

自然増加率=出生率-死亡率

社会増加率=転入率-死亡率

ここまではいいだろうか。このことだけは最低限のこととして次に進もう。

わが国の人口は全体とすれば、約1億2500万人でほとんど変化がない。人口増加割合は0%である。ただし、郊外のニュータウンでは人口増加が著しく、逆に農村では過疎化が深刻になっているなど、地域によって人口増加・減少の様子に大きな差がある。これらは主に転入や転出によって生じる人口増加率の差異であることがわかるだろうか。日本の地域ごとの人口増加については、原則として社会増加をメインとして考えること。このセオリーを必ず意識する。

ではここで問題を参照しよう。図3において左の図は「出生率」「死亡率」からわかるように自然増加に関する図となっている。一方、右側のものは「転入率」「転出率」から社会増加の図。P・Q・Rという日本の都市について話題とされているので、ここでは右の社会増加を表す図を中心に考えていくことにする。

Pについて。転入率は65‰、転出率は60‰。転入率の方が高い数値を示しているために社会増加はプラスとなっているとみていい。このことからこの地域はキの「人口増加が著しい」都市とみていいだろう。

それに対し、QとRであるが、それぞれ転入率35‰・転出率40‰、転入率30‰・転出率45‰と、ともに社会増加率はマイナスとなっており、やはりPとは一線を画している。ただしこの2つの都市については社会増加率から読み取れる差異は明確ではなく、これらの判別については自然増加率を表す図を見ながら考えていこう。

図3の左側の図参照。Qについては出生率が死亡率を上回り、それでもまだ状態はさほど悪くないようである。一方、Rは出生率が大きく死亡率を下回っており、町の将来は暗い。転出人口の多さによって、老人が取り残され老年人口割合が上昇し、それゆえに出生率が下がり死亡率が上がったのだろう。社会増加もマイナス、自然増加もマイナスなのだから、全体のしての人口もかなり減少しているのではないか。

このことからPQとカ・クを判定する。「人口は伸び悩む」カがQ、「人口減少が続く」クがPと考えていいだろう。

(別解)上記の人口の公式を使ってそれぞれの都市の人口増減の様子を計算によって求める。

人口増加率=自然増加率+社会増加率

つまり 人口増加率=出生率-死亡率+転入率-転出率

P;12-4+65-60=13(‰)

Q;8-6+35-40=-3(‰)

R;4-12+30-45=-23(‰)

上の数値をそれぞれ「人口増加が著しい」「人口は伸び悩んでいる」「人口減少が続いている」と対応させる。

[関連問題] 日本国内におけるいくつかの特徴的な都市における人口動態に関する問題としては、97B追第3問問3がある。ここでは奈良市が「宅地化が急速に進んでおり、人口増加が著しい」都市と考えていい。大阪の郊外に位置し、都心への通勤者が多く住む都市である。

また形式としては02B本第5問問6に類似。この問題で挙げられている大阪市・釧路市・宝塚市は、とくに本問のP・Q・Rと重なるものではないが(あえていえば宝塚とPが一致しているともいえるが)、それぞれキャラクターがはっきりとした都市が挙げられているという点において共通点がある。

[対策・今後の学習] 問題そのものは難しくないと思うんだよなぁ。この問題の出来不出来を決めたのは図の読み方だと思う。図を冷静に分析し、読解する。時間をかけていいぞ、軽率に見誤ることだけは避けよ。

 

問7 [評価] おもしろい問題やなぁ(感激)。さっすがセンター試験、出題パターンも凝ってますな、って感じ。ネタ自体はシンプルなんだが、それをこういったちょっとパズルみたいな図で問うて来た辺りに作問者のセンスを感じるね。その意気に感じて、確実に得点しようじゃないか。よく考えたら簡単だぞ!

[解法] 老年人口と人口増加の関係がわかるだろうか。問6でも取り上げたように、人口の転入率が高い地域において人口増加率も高い数値を示す。転入する人口とは主に若い世代(「若者が移動する」というセオリーを知っておくべきだろう)なので、同時に出生率も上がり、幼年人口率も高くなる。そうなると、当然相対的に老人の占める割合は低くなるので、65歳以上の老年人口率は明確に低下することとなる。それに対し、人口減少地域については、若年層が流出していくわけで、こちらは相対的に老人の割合が高まっていく。つまり本問は「老年人口率」の高低を問うものありながら、実は「人口増加割合」の高低を問う問題となっているのである。このことに気づけば簡単に解ける。

日本国内における人口動態については、4つの地域に分けてキャラクターを整理しておくのが重要。「郊外」「地方中枢都市」「都心」「地方」である。「郊外」とは東京や大阪などの大都市圏の周辺部のことで、人口増加率は極大。大都市圏の内側の地域を「都心」といい、ここは地価が高いことなどもあり、やや人口は減少ぎみ。非大都市圏においては全体的に人口は減少しているとみていいが、例外として「地方中枢都市」では人口増加率が高い。札幌・仙台・広島・福岡などはそれぞれの地方の首都的存在なのだ。しかし、もちろんそれらを除いたほとんどの地方では人口増加率が大きくマイナスとなっている。

以上より、人口増加割合の高低については 郊外>地方中枢都市>都心>地方 となり、幼年人口割合もそれと同じ順位。逆に老年人口割合は 地方>都心>地方中枢都市>郊外 となることは容易に理解できよう。

このことを考えながら問題に取り組もう。まずZを考えてみる。斜線は東京区部であるが、この中心部が「都心」に該当する。地価が高いためアパートなどの賃料も高く若年層が流出するのに対し、昔からの土地や家を持つ高齢者たちはそのまま住み続ける。相対的に老年人口割合は高くなるだろう。サ・シ・スのうち、都心部分の値が高くなっているものを探し、サが該当すると考える。老年人口が「18%以上」の部分と、図5における東京特別区部の都心部が一致している。

それに対し、Yの地域は「郊外」に位置し、こちらは人口増加割合が高いと考える。そのため幼年人口割合が高く、老年人口割合は相対的に低くなるので、シを選択。東京への通勤者が多く住むエリア。

そして東京特別区部から遠く離れたサについては、3つの地域の中では「地方」の性格を最も有していると考え、スが該当。人口流出地域であり、それゆえ老年人口割合が高い。参考までに記しておくと、東京の都市圏(都心と日常的なつながりを持った範囲。つまり通勤者の居住範囲)は半径50キロの円とほぼ一致すると考えられている。図5の下のメジャーからもわかるように、Xの地域は東京大都市圏からはちょっと外れているようだ。

[関連問題] 老年人口率と人口増加率の関係については、01B本第5問問がわかりやすい。2が人口増加割合で、3が老年人口率なのだが、ほぼ例外なく、2で高いところは3では低く、2で低いところは3では高くなっているのがおもしろい。数少ない例外は兵庫県だけだが、これはどうしてだと思う?ヒントは95年という統計年次。

[対策・今後の学習] 問題形式は珍しいが、出題されていることはごくありきたりの頻出事項。センター過去問に習熟すれば、十分に対応できる程度の問題である。