2004年度地理B本試驗[第3問]解説

2004年地理B本試験[第3問]

地誌問題。5つの大問のうち1つは地誌となるパターンはここ数年のはっきりとした傾向。また、インド洋(01年度地理B本試)、北海(02年度地理B本試)、太平洋(03年度地理B追試)のように、特定の海域とそれに面する国々を取り上げた地誌問題もかなり目立ち、地中海沿岸をテーマとした本大問もそのパターンに当てはまったものといえよう。

問題の傾向としてはやや難しく、カタカナの地形用語(問1)、民族・宗教(問3)、都市(問5)などの出題は特殊なものと言える。この手の問題に慣れていない者は思わぬ大量失点をくらってしまったかもしれない。全体としては2~3問のロスで乗り切ってほしい。

 

問1 [評価] リアス式海岸やカルスト地形など小地形に関する問題のように見えるが、実際はもっと違ったところに解答のポイントがあり、それさえ気付けば地形に関する知識がなくても簡単に解ける。ただ、結局はそのポイントに気付くかどうかなのだ。言われてみれば当たり前のこと。でも注意深く読まなければ、このポイントを読み過ごしてしまい、「正統派の小地形問題」として取り組むこととなり、苦労した末に間違える。選択肢の文章を読み取る国語力が必要なんだよなあ。

[解法] 評価のところにも書いたが、問題自体はすごくシンプル。一般常識と言える。でもそれに気付くか気付かないかで大きく運命は変わってしまうわけだ。とにかく文章をしっかり読んで、不審な点はないか探せ!

というわけでわかったかな?どこか引っかかるところはなかった?ポイントはずばりここ、「サンゴ礁に囲まれた」という部分だよ。どうかな、おかしいのに気がつく?

サンゴ礁が形成されるのは原則として熱帯気候。赤道周辺の低緯度地域に多い。日本の南西諸島や小笠原諸島などには温帯にもかかわらずサンゴ礁が形成されているところがあるが、これは暖流の日本海流が流れているため、海水温が比較的高いからだ。つまりサンゴ礁のできる条件は「水温の高い海域」ということになる。

さてウで示されたギリシア周辺の海域はどうか。多島海であるのは間違いない。しかしサンゴ礁についてはおおいに疑問。そもそもこの付近は温帯である(地中海沿岸であるので地中海性気候がみられるのだが、それは温帯に属する)。しかも大陸に挟まれた狭い海域であり、どくに暖流が発達しているとは思えない。とてもじゃないが、サンゴ礁など形成されることはなかろう。よってこの選択肢を誤りとする。

ちなみにサンゴ礁のみられる海域の代表例としては、日本の南西諸島や小笠原諸島の他には、オーストラリア大陸北西岸(グレートバリアリーフ)、太平洋中央部の島々(キリバスなど)、インド南部の島々(モルディブなど)、北米大陸南東部の島々(バハマなど)がある。単に低緯度であるだけでなく、黒潮やメキシコ湾流、東オーストラリア海流など暖流の影響がはっきりしているものも多い。

他の選択肢についてはとくに考慮の必要はない。一応参考までに簡単な解説を。

山地が沈むことによって形成されたノコギリ状の複雑な海岸線がリアス式海岸の特徴。日本の三陸海岸(岩手県から宮城県にかけての太平洋側)で典型的にみられる地形だが、世界的に最も有名なのがアで示されているスペイン北西部。そもそも「リアス」とはここの地方名に由来しているのだ。

石灰岩の溶食地形のことをカルスト地形と言うが、このカルストというのも地名。旧ユーゴスラビアの構成国であったスロベニア、イはここのカルスト地方を示している。ドリーネとよばれるくぼ地がみられ、地下には鍾乳洞が神秘的な光景を演出している。

ナイル川の河口には巨大な三角州が形成されており、それがエに該当。図からわかるように円弧状の三角州となっている。ただし近年はこの三角州が波などによって削られ、土地を失う農民も続出している。アスワンハイダムの建設によって、上流から流されてくる土砂がせき止められ、三角州の成長が止まったため、あとは海によって侵食されるだけなのだ。見事な円弧を描いていたこの砂の堆積地形も、やがてやせ細って無くなってしまうのかもしれない。

[関連問題] ギリシアは全くセンターで出題されたことがない国。80年代に早くもすでにEU(当時EC)の一員であったことぐらいが大事かな。ただし04年にはアテネオリンピックも開催されることであるし、ちょっと注意が必要かも。1人当たりGNPや主な輸出品などはチェックしておいた方がいいかもしれない。

「多島海」については00B本第2問問4選択肢3参照。こちらではインドネシアが取り上げられている。アルプス・ヒマラヤ造山帯と環太平洋造山帯が接するところであり、島が無数にみられるだけでなく、とくに形状も複雑なものが多い。2つの造山帯がぶつかることによって地形に巨大な圧力がかけられたのだろう。ギリシアの多島海は、インドネシアのように複数の造山帯が衝突してものではないが、新期造山帯の作用によって生じている点は共通している。

「サンゴ礁」についての問題も多い。98B本第4問の地形図で取り上げられた大東島は隆起サンゴ礁であるし、03B本第5問問4でもサンゴ礁に囲まれた海岸付近が出題されている。このように日本の南方海上には豊かなサンゴ礁が発達しているが、これは日本海流という強い暖流の影響が大きい。

インド洋の低緯度海域にもサンゴ礁は発達する。00B本第2問問4選択肢2モルジブ諸島は海面上昇によって消滅してしまう危険性が指摘されているが、これはサンゴ礁による島であり標高が低いことが要因である。

またオーストラリア北東岸は、東オーストラリア海流(もちろん暖流)の影響もあり、世界的なサンゴ礁の見られる海域となっている。そもそも名称も「サンゴ海」なのだ!これについては、99B追第4問問7で写真が挙げられている。

01B追第3問問4ではサンゴ礁が外れ選択肢として使用されている。

「リアス式海岸」について。02B本第1問問2参照。鋸(のこぎり)状の海岸線。山地が沈降したものであるので、その断面は河川によって削られたV字谷となっている。99A追第2問参照。ここでは大問として大きくリアス式海岸がある地形が取り上げられている。問1では日本の三陸海岸における産業の様子を思い浮かべれば解けるだろうし、問2は複雑な海岸線が見られない地域を指摘する。問3・問4は地形図を読み取る問題であり、問5・問6は津波の危険性が問題のテーマとされている。リアス式海岸は入り江になっており風雨は防げるために港湾として利用されることは多いものの、津波に対しては、そのエネルギーが湾奥の一点に集中しやすい形となっていることにより、極めて危険なのだ。

「カルスト地形」について。カルスト地形とは石灰岩の溶食地形であり、表面にはドリーネなどの凹地、地下には鍾乳洞などが形成される。日本では山口県の秋吉台や福岡県の平尾台などが典型的。また広い意味では、サンゴ礁もカルスト地形の一つであり、やはりここにも凹地や鍾乳洞が見られる。

石灰岩(石灰石)をテーマとした問題はセンター過去問では非常に多く見られるので、ここでは直接カルスト地形に関する問題として04B追第5問問6を紹介しておこう。選択肢1の地形図がカルスト地形の典型的なもの。多くの小さな凹地が見られる。

「三角州」について。浅い海底が河川の運んできた土砂によって埋められ、陸化してしまったところを三角州という。この土砂は目の細かい泥や粘土であり、水はけは大変悪い。水田として利用しやすいというメリットはあるが、洪水の被害などを受けやすいというデメリットもある。

三角州が取り上げられた問題はほとんどない。あえて言えば98B本第5問問2ぐらいかな。三角州というわけではないが、海岸付近の低地が地形図として取り上げられている。実際には埋立地だろう。地盤沈下の危険性が高く、高潮の被害も受けやすい。ただし、斜面ではないので土石流災害などは関係ない。

旧課程でもいくつか取り上げられた例はあるものの、いずれも三角州がそのまま出題されるケースは稀。04B追第5問問7、90追第4問問2は干拓地が出題されているので、一応参考にしてほしい。

[対策・今後の学習] 小地形はなかなか手強く、徹底的に勉強するとなるとかなりの量になる。ただしセンター試験でさほど問われる分野でもないので、思い切って切り捨ててしまうのも一つの手だと思われる。とくに今回の問題を見ても明らかなように、「温帯の海にサンゴ礁はない」というむしろ一般常識的な知識によって解く問題も散見される。そもそもセンター試験ではカタカナ言葉は重視されていないのだから、「リアス」や「カルスト」に過敏になる必要もないと思う。過去問の研究を通じ、そこで得られた知識だけで勝負すれば十分なのではないかと思う。地図帳や参考書を開いて、見当外れの勉強をするよりも、センター過去問集を唯一の研究材料とし、その範囲で知識を固めていくべきだろう。

 

問2 [評価] 地図上で示された地域における事項を問うという形式であるため問1や問5と似ている印象を受けるが、難易度は大きく異なる。それは、リビアというメジャーな国が問われているからである。そういった意味でセンター問題として適切で、十分に解答は可能だ。ぜひとも正解が欲しい。

[解法] Cはリビアである。リビアは非常に大事な国であり、それはこの国がOPECに加盟しているからこそ。つまり原油輸出国なのだ。このことを手がかりとすれば、選択肢2が自ずと正解として導かれてくる。

他の選択肢については考慮する必要はない。過去の出題の中に関連する問題も少なく、この問題自体、リビアだけわかればそれでいいという出題意図があるのだろう。以下に一応説明しておくが、ややこしくなるだけなので読み飛ばしてもらって構わない(というかむしろその方が好ましい)。

1はトルコの高原地帯。アナトリア高原の地下で発見されたカッパドキアの遺跡についての説明で、D地域に該当。

3の「果樹農業」とはもちろん地中海沿岸で行われている農業の特徴なのだが、とくにここではスペインのバレンシア地方のオレンジを思い浮かべてほしい。A地域に該当。「砂漠化の危機」というのはよくわからないが、とりわけこのバレンシア地方に特有のものという意味ではなく、灌漑が行われている地域ならばどこでもこの危険性はあるという程度にとらえておいたら十分だろう。

灌漑とは乾燥地域において農作物に水を与えることであるが、この水が過剰に与えられてしまうと、地中の塩分を地上へと持ち上げてしまい塩害を発生させる危険性を生じる。灌漑によって与える水の量はきちんと調節することが必要。詳しい理屈は省略するが、「不適切な灌漑によって塩害が発生する」というセオリーは知っておこう。

4;リンがキーワード。モロッコで多く産する鉱産資源である。化学肥料の原料となる。

化学肥料には3種類、窒素系・カリウム系・リン系がある。モロッコは豊かなリン鉱資源を生かして(選択肢の文中には開発が進んでいないように書かれているが、実際にはモロッコはせかいを代表するリン産出国である)、化学肥料工業なども発達している。

[関連問題] 同様のパターンの問題としては02B本第1問問1がある。地誌問題において、図で4つの地域が示される中で特定の一ヶ所に関する記述を当てさせる問題。ただ、その問題と本問が異なるのは、02年B本第1問問1ならば、

1;トルコそのものは近年非常に出題率が高い国であるが、アナトリア高原が問われたことは新課程導入以降はない。旧課程時代には95本第7問問1選択肢3で取り上げられているが、これにしてもハンガリーのプスタと混同させるものであり、アナトリアよりプスタに関する知識が重視されたものである。ちなみに同じ大問にはイスタンブールについて問うもの(問2)や貿易統計に関するもの(問3)などがあり、トルコの特徴を押さえるには便利。

3;スペインのバレンシア地方はヨーロッパでは珍しくオレンジがさかんに栽培される地域であるが、このことについては00B追第5問問2において栽培限界が問われるという形で出題されている。また本問に続く問7においてオレンジの生産統計も出題されている。ただしこの地域で灌漑が行われている、あるいは塩害の被害が発生しているというネタについては出題されたことはない。灌漑も塩害もこの地域特有のものというよりも、乾燥地域ならばどこでも当てはまるキーワードとして問題文に利用されているだけなのだろう。

4;初登場モロッコ!センター試験というのは意外なマイナー国が数年連続して出題されるというジンクスがあるが、モロッコもそうなるのか。ちゅうわけで関連問題は過去にはございません。

[対策・今後の学習] 本問題については、とにかくリビアだけ確実に仕留めたらそれで任務完了!

というわけでリビアが含まれるOPECの加盟国が必須となる。インドネシア・イラン・イラク・クウェート・サウジアラビア・アラブ首長国連邦・カタール・リビア・アルジェリア・ナイジェリア・ベネズエラ。11カ国だけなのだからわざわざゴロ合わせにするまでもないだろう(そもそも地理でゴロ合わせを利用することを僕は勧めない。ゴロ合わせは「理解する」ことよりも「暗記する」ことを優先する学習方法であるし、これにより君たちの理解して学習しようとする意識が薄れてしまうことを恐れる)。世界白地図を用意しこれらの国を着色して、目でその位置を確認しておくことも大事。

これ以外には、一応、先にも述べたのでモロッコを整理しておこうか。過去に出題例はないものの、センター試験ではいきなりこういうマイナー国が一躍ヘビーローテーションに踊り出てくることがしばしばあるのだ(これまでには、バングラデシュ、セネガル、アイスランドなど数知れず)。選択肢4にもあるように、リン鉱石の世界的な産出国。これは化学肥料の原料となるので(化学肥料には、窒素系とカリウム系とリン酸系がある)、意外に重要なモロッコの輸出品目となっている。輸出といえばタコが有名。寒流であるカナリア海流に面するためモロッコはこの地域を代表する漁業国。ヨーロッパに住むモロッコ系住民も魚屋を営む者が多いのだそうだ。わが国との関係性においてはやはりこのタコを押さえておくべきだろう。日本から見てタコの最大輸入相手国はこのモロッコなのだ。ヨーロッパでは「悪魔」として嫌われているタコだからこそ、はるか東洋の国へとさかんに輸出されるようになったのではないかと個人的には考えている。実は近年漁業不振と水産資源保護の観点からモロッコ近海におけるタコの漁獲が減少し、これが大阪のタコ焼き業界に大きなダメージを与えているという嘘のような本当の話!

これ以外には、主要都市カサブランカが地中海性気候の見られる代表的な都市であること、国土の南部に沿うアトラス山脈がアフリカ大陸唯一の新期造山帯であることなど、チェックしておくといいだろう。

 

問3 [評価] 今回唯一の民族宗教ネタ。例年1問ぐらいは民族や宗教に関する問題は出題されているが、このように両者を組み合わせたものは意外に出題されていない。さらにここでは言語まで取り上げられており、さすがにこれは辛かったのではないか。

[解法] ヨーロッパにおける民族と宗教の関係については、北部にはプロテスタント教徒のゲルマン民族(ドイツなど)が、南部にはカトリック教徒のラテン民族(スペインなど)が、東部には東方正教(ギリシア正教)徒のスラブ民族(ロシアなど)が、それぞれ居住していることさえ知っておけばいいだろう。このことから1を正解とし、2を不正解とする。

3については、ペルシアがイランであることを知り、さらにイランが地中海に面する国ではないことがわかれば、解答可能。

4も、ユダヤ人から構成される国がイスラエルであること、彼らの使用言語がヘブライ語であること(あるいはヘブライ語を知らなくとも可。ユダヤとアラブが対立する民族であり、少なくともユダヤ人がアラビア語を使用していないことが類推できれば十分)を知っておけば解答できる。

(発展) 上で「スラブ=東方正教」と決め付けたが、もちろん必ずしもそうではない。スラブ民族の中にはポーランドのように熱心なカトリック国も存在する。ただしスラブ国家の中で、プロテスタント教徒が多数を占める国家は存在しないので、選択肢2ははっきりと誤りだと判定することができる。

[関連問題] 非常に地理A的な問題だと思う。とくに「言語」というジャンルは地理Bではまずお目にかからない。

ヨーロッパの民族が直接出題されたのは、98A追第1問問5。北部にゲルマン、南部にラテン、東部にスラブという分布がはっきりしている。

この民族と宗教との関係が出題されたものとして、97A本第2問問4がある。スラブ・東方正教会、ラテン・カトリック、ゲルマン・プロテスタントの関係。

また同じく97A本第2問であるが、問4ではヘブライ語についても取り上げられているので注目しておこう。ヘブライ語はイスラエルの言語で、ユダヤ人によって使用されている。

ペルシアについては直接的な出題はない。とりあえず02B追第3問問5を参照してみよう。イラン系というのがすなわちペルシア人のこと。

[対策・今後の学習] この問題は民族と宗教そして言語までが話題とされており、それぞれ浅い知識で解けるものの、広い範囲の知識が要求されていることは確かである。この1問を解くためにこれだけの勉強をしなくてはならないとすれば、それはあまりに効率的ではない。僕は君たちにあえて提案したいのだが、思い切って民族や宗教に関する問題は捨て問としてしまえばいいのではないか。民族・宗教ネタは覚えればおしまいのところであるが、逆にいえば、覚えなくては得点にならない。理系の君たちは覚えるのが嫌いだからこそ社会という科目が嫌いで、とくに日本史や世界史が嫌だからこそ、多少は覚える量が少ない地理へと流れ込んできたはずだ。覚えることを重視するような勉強を君たちに強制したくないし、それは地理の本質ではない。

 

問4 [評価] ドイツ国内のトルコ人についてはメジャーなネタであるものの、地理Aでは出題例があるが、地理Bでは微妙なところ。そういった意味で本問については地理Bというより地理A的な雰囲気が強い。

[解法] Xについてはトルコで問題ないだろう。ドイツ国内での人数がとくに多い。戦後復興期に不足する労働力を補充するために、ドイツ政府は外国からの労働者の受入を積極的に進め、とくにトルコがその対象となった。

YとZに関しては、イタリアとポルトガルの位置関係から考えればいいのではないか。Yはドイツへと多くの労働者を送り出しているようだが、位置的に考えて遠隔地のポルトガルよりも、近いイタリアの可能性が高いと思われる。残ったZがポルトガル。

ちなみに、それぞれの国に占める外国人の数を比べてみると、ドイツが最も多いようで、それに僅差でフランスが続く。この2カ国はともに1人当たりGNIが約25000$/人に達し、賃金水準が高いため外国から労働者が多く流入する。それに対し、スペインの経済レベルは約15000$/人であり、こちらはさほど賃金がいいわけではない。外国人の数がドイツ・フランスに比べ圧倒的に少ないのはこのせい。ここでポルトガル人の心理状況を考えてみよう。自国で働いてもせいぜい10000$/人。だから出稼ぎに行きたいのだが、スペインでは15000$しかもらえないので、ポルトガルよりマシだが、それでもちょっと物足りない。フランスまで行って働けば25000$稼げるのだから、そこまで行こう。ただしドイツはちょっと遠すぎるし、そもそも言葉が全然違うわけで(ポルトガル・スペイン・フランスはラテン系、ドイツはゲルマン系)、ちょっと敬遠したいな。そんな感じじゃないかな。

[関連問題] そのまんま同じネタを使った問題として99A本第2問問3がある。結局、ドイツ国内のトルコ人がポイントになっているわけだ。

[対策・今後の学習] 見れば見るほど地理A的な問題なんだよなあ。一見した時からそう思ったんだが、とくに解法を書きながらそう思ってしまった。たしかに「ドイツ国内にはトルコ人が多く、フランス国内にはポルトガル人が多い」っていうのはかなりメジャーなネタなんだが、つまるところこれさえ知っていれば解けた、逆にこれを知らなくては解けない問題でもあったわけで、この知識偏重の具体がやはり地理A的なんだなぁ。今後の対策としては、地理Bにおいてもこのようなかなり地理A的な問題が出題される可能性があるので、地理Aの過去問についてもそれなりに真剣に解いておくことが必要となる。ちょっとめんどいけどね(涙)。

 

問5 [評価] 何だ、これは!?今回最も衝撃を覚えた問題の一つ。正直キツイなあとは思ったよ。でもこれが意外に正解率が高かったりするからまたわけのわからないところ。実は簡単な問題なのかな。これぐらいは常識?

[解法] 選択肢3に注目。都市クは「運河や水路網が発達」というところからベネチアということが推測できるだろう。浅い海に砂が堆積し陸地となったところ(これを沿岸州という)に建物が建ち並び、一つの都市となったものがベネチア。道路がなく運河を通る船(ゴンドラ)に交通手段が依存している極めて特殊な町であり、もちろん商工業など発達しているわけではなく、観光地として重要なだけ。砂の堆積物という不安定な土地の上に町が乗っているため、将来的には完全に水没してしまうのではないかという懸念の声もある。

さらに下線部に注目。「国際的な観光都市」は間違いないと思う。問題は「宗教都市」というところ。イタリアの宗教都市としては何といってもローマ市内に位置するバチカン市国の存在が重要。それを差し置いてベネチアが宗教都市ということはないだろう。しかも「性格を強めている」というのも意味不明。新興宗教の中心地なのか!?というわけでこの選択肢を誤りとする。

他の選択肢については考慮の必要はないが一応解説を。

1;ジブラルタル。イベリア半島の南端に位置する港湾都市であるが、スペインではなくイギリスの領地となっている。海峡に面する交通都市、海軍基地がある軍事都市として重要。

2;マルセイユ。「フランス最大の港湾都市」で、とくにアルジェリアなど「アフリカからの移民」を多く迎え入れた。アルジェリアやリビアなど産油国からの距離も近く原油輸入に便利であるため、「石油精製業や化学工業」など石油関係の工業が発達している。サッカー選手のジダンが生まれた町でもあるが、彼の両親はアルジェリアからの移民。マルセイユの特徴が表れている。

4;これは消去法でチュニスとなる。

[関連問題] 実はベネチアについては前年度に出題例がある。03A追第1問問4参照。「運河とゴンドラ」という風景がベネチア(というか地図上アの都市)。同じ問題ではローマ(バチカン)も取り上げられており、「カトリックの総本山」として紹介されている。本問はこの問題をそのまま出題し直しただけのものともいえ、大変興味深い。

ジブラルタルについてはジブラルタル海峡が95本第7問問2選択肢1で登場。「地中海から大西洋への出口にあたり、軍事上重要な位置を占め、北岸にイギリスの、南岸にスペインの海軍基地がある」と説明されている。北岸のイギリス軍基地があるのがジブラルタルという都市であり、南岸のスペイン領はセウタという都市(もちろん知っておく必要はない)。

マルセイユに関しては98B追第1問問6図1参照。フランス南部にある■がマルセイユの位置を表す。地中海に面する港湾都市であり、古くから貿易港として栄えたが、このように石油化学コンビナートなどもつくられている。

チュニスそしてチュニジア自体センター試験には全く登場していない。本問についても完全なチョイ役でわざわざどうのこうのいうこともないだろう。

[対策・今後の学習] 関連問題で挙げてあるように、前年の問題にヒントがある。とりあえず地理Aだろうが追試だろうが、とにかく問題には目を通しておいて、さらに分析・研究までしておくべきだろう。

また都市については本来どうでもいいと思うのだが、宗教都市だけはちょっと怪しいのでチェックしておいた方がいいかもしれない。重要と思われるものを以下に挙げておく。

エルサレム・・・イスラエルの首都。ユダヤ教・キリスト教・イスラム教の聖地であり、市内はそれぞれの宗教の勢力範囲に分かれ、テロなど過激な事件も多い。

メッカ・・・サウジアラビア。イスラム教の聖地。一生に一回は巡礼で訪れることとされているカーバ神殿がある。またイスラム教徒は一日に5回この方向を向いて祈りを捧げる。

メディナ・・・サウジアラビア。イスラム教の聖地。

バチカン・・・カトリックの総本山。ローマ市内にあるサンピエトロ寺院の敷地がそのまま一つの国(バチカン市国)となっている。

バラナシ(ベナレス)・・・インド。ヒンドゥー教の聖地。そばを流れるガンジス川には沐浴するヒンドゥー教徒の姿が多数見られる。

ラサ・・・中国南西部チベット高原。チベット仏教の総本山。標高は3000mを超える高原都市。00B本第5問問1参照。

ソルトレークシティ・・・キリスト教の一派であるモルモン教の総本山。米国のロッキー山中の都市であり、02年には冬季オリンピックも開催された。

 

問6 [評価] 非常におもしろい問題。思考問題ともなっており、これができたかどうかがこの試験全体の勝敗を分けるポイントともなったような気がする。つまり本問を論理的に解くことができた者は試験全体の得点も満足できるレベルに達したと思うし、そうでなかった者は思うように得点が伸びなかったはず。センター試験で高得点が取れるか否かのリトマス試験紙的な問題と言っても過言ではない。

[解法] まずGの国がイスラエルであることがわからなければ話にならないが、この点はクリアできているだろうか。イスラエル自体はセンターで比較的よく登場してくる国であるし(とくに最近)、場所と国名ぐらいは一致させておいて然るべき。

イスラエルは米国とのつながりが深い。イスラエルの歴史は浅く、戦後になって世界中からユダヤ人たちがこの地へと集まり、そこで新しく建国された国である。現在でも世界中にユダヤ人は散らばっているのだが、とくに米国のユダヤ人には銀行家など富裕な者が多く、経済的な実権を握るとともに、米国の社会や政治についても大きな影響を与える存在となっている。このことから、アメリカ合衆国に大きく貿易構造が依存するサがGのイスラエルと判定する。

さらにLとMであるが、ここに「ダイヤモンド」が大きな割合を占めていることに注目。ダイヤモンドのキャラクターを持つ国は何と言ってもベルギーである。旧植民地コンゴ民主はダイヤモンド鉱石の代表的な産出国であり、そこから原石を輸入し、国内で加工、世界中に送り出すという「ダイヤモンド帝国」がベルギーなのだ。このことからLの国は、貿易相手としてベルギーが重要な地位を占めていると想像できる。よって、サがLとなり、これがイスラエルの正解となる。

(別解法)逆の解法としてエジプトから考えていって、消去法的に解答を求めるというパターンもある。これならGの国がイスラエルであるとわかる必要はない。

エジプトは「ナイルの賜物」と呼ばれるほどナイル川に依存した国であるが、この巨大な外来河川の沿岸では灌漑(農作物に水をあたえること)によって各種農作物が栽培されており、ナツメヤシや小麦、米といった自給作物の他、綿花の栽培もみられる。エジプト綿は長繊維であるため高級品とされていることを知っている人もいるだろう。このことから輸出品目に「繊維品」「綿花」の割合が高いMがエジプトであることが推測できる。

さらに前述のようにLとサがコンビであることが明らか(ダイヤモンドとベルギーの関係)なので、自ずとMについてはシが組み合わせられることとなる。

[関連問題] なぜか最近センター頻出のイスラエル。01B本第2問問7選択肢1ではパレスチナ問題が取り上げられ、イスラエル建国の歴史(パレスチナ人を追い出しユダヤ人が建てた国がイスラエル)が話題とされている。また01B本第4問問6では、米国とイスラエルの経済的・政治的関係の深さがポイント(米国内で少数派に過ぎないユダヤ人は、社会的地位は低いものの、大富豪が多いため経済的な実権を握り、政治的な影響力も強い)となっている。今回も同じ大問の問3選択肢4で登場している。民族・宗教に特徴がある国なので地理Aでも取り上げられており、97A本第2問問4など。

エジプトも有名な国なのだが、さほど出題される国ではない。とくに新課程になってからはほとんど取り上げられていない。ただし「特定の国が連続して出題される」傾向のあるセンター地理だけに、05年度以降ちょっと気になる国ではある。

95本第7問問1参照。選択肢2がエジプトのナイル川沿岸(イ)の説明になっているのだが、この国は全面的に砂漠(植生なし)気候なので、サバナ(疎林と長草草原)気候はもちろん誤り。

同じく問3参照。エジプトの貿易統計が登場。原油も産するものの、やはりこの国の貿易品目として特徴的なのはナイル川沿岸で栽培がさかんな綿花だろう。さらにアスワンハイダムによって得られる電力を利用して精製されたアルミニウムも重要。

97B本第5問問4参照。乾燥地域における伝統的な灌漑農業をオアシス農業というのだが、外来河川ナイル川に依存するエジプトの農業がまさにこの典型的な例。選択肢1が正解なのだが、乾燥地域であり本来水は少ないのだが、オアシス(この場合は外来河川)の存在によって水が豊富に得られる場合には食料となる自給作物の他に商品作物の栽培もさかんに行われていたりする。エジプトの綿花生産を思い浮かべる。

03A本第1問問4参照。カはアスワンハイダムの位置を示している。ナイル川本流に建設された巨大ダムであるが、問題にもあるように、水没するはずだったが巨額の費用を投じて移転させることに成功した遺跡(アブシンベル神殿)もある。この多額の費用によってユネスコ(国連教育科学文化機関)の財政が大きく圧迫されるという事態も生じたのだが。

98B本第5問問7選択肢1参照。「ナイル川下流の乾燥地域」とはもちろんエジプトのことを指しているのだが、灌漑はむしろ塩害を助長するものであるので、この選択肢は誤り。乾燥農法とは乾燥地域における天水(雨水)に頼った農業のことで、雨が降りそうな時に地面に水を掘り、雨水がたまったらそれが蒸発する前に上から土をかけて地中に閉じ込めてしまうことによって、水分を確保する農業形式。古めかしく、生産性も上がらない農業形態ではあるが、自然との調和に優れ、環境への負担も少ない。それに対し、灌漑は人工的に水分を農地へと供給するやり方なので、どうしても塩害といった環境問題に結びつくことも多くなるのだ。

また国名を登場させることなく白地図上の位置を用いて問うてくる問題も最近はとくに多く、注意が必要。地図帳とにらめっこする必要はないが、白地図を利用して、過去問に登場してきた国の位置だけでも確認しておくといいだろう。

[対策・今後の学習] もちろん過去問の研究を通じ、近年出題率赤丸上昇中イスラエルについてはきちんと整理しておくことが必要なのだが、そのこと以前の問題として、やはり国の位置と名前は一致させておかないと話にならない。白地図を用意し、国名を書き込んでいく。もちろん最終的に知っておくべき国は限られているのだが、とりあえず面倒なんで全部の国名を書き込んでしまえ!せいぜい190個あまりしかないんだからそんなに面倒な作業ではないはず(たったの190だよ。英単語に比べればどれくらい少ないことか・笑)。国名を調べたければ、地球儀あるいは中学で使った地図帳を調べればいいし、それも持っていないなら近くの100円ショップでも行って、世界地図っていうやつを買ってきてください。それで十分だし。わざわざ高校で使うような小難しい地図帳使ってもわかりにくいだけだからね。

 

問7 [評価] 単なる統計問題ではあるが、オリーブの統計は初出なので、意外に引っかかった人もいるかもしれない。センター試験らしい良問。

[解法] ブドウの生産は1位イタリア・2位フランス・3位米国・4位スペイン。ブドウは栽培限界が有名で、フランス北部のパリ盆地付近まで栽培が可能なものである。よってイタリアやスペインなど地中海沿岸地域の他に、フランス国内の広い範囲でもさかんに栽培されているのだ。

これに対しオリーブの栽培限界のラインはほぼ地中海北岸に沿っており、その生産も沿岸地域に限られる。1位イタリア・2位スペインはまさに地中海に沿った長い海岸線を有する国である。これに対し、フランスはオリーブの生産量が少なく、統計でもランキング外である。フランスももちろん地中海沿岸まで国土を広げているのだが、イタリアやスペインに比べればその範囲は狭く、ゆえにオリーブの栽培可能な地域も限定されてしまう。コートダジュールという海岸保養地やマルセイユという港湾都市での名物料理にはオリーブが用いられているのだが、これはフランス全体からみればかなり特殊な例といわざるを得ない。

このことから、イタリア・スペイン・フランスの数値が高いQがブドウ、イタリア・スペインが高いPがオリーブ。消去法でRがオレンジ。

[関連問題] ブドウ・オリーブ・オレンジの栽培限界は00B追第5問問2で登場しているので、これがおおいに参考になる。パリ盆地を通過するブドウの栽培限界線からフランスでもブドウの生産量が多いことが類推され、これとは反対にフランス国内のオリーブ栽培地域はきわめて狭く、それほど栽培されていないであろうことがわかる。またかんきつ類(みかんやオレンジなど)はヨーロッパではほとんど栽培されず、スペインやイタリア、ギリシアの一部で見られる程度であることもよくわかる。

ブドウの生産統計は旧課程時代にそのものずばりの形で出題されたことがあり、それが94追第3問問4。また同じく94追第3問では問1が興味深く、オリーブやブドウの生産地域が図によって表されている。オリーブがフランスでほとんど生産されていない点を確認しておくといいだろう。

またブドウと気候(地中海性気候。夏季乾燥型の気候である)との結びつきを重視した問題として95追第4問問3がある。いずれも緯度35度大陸西岸という特徴があり(Xは大陸西岸に見えないかもしれないが、巨大な山脈がこの大陸の東部を縦断していることから考えると、Xは山脈の西側、つまり大陸の西側としての要素を持っているということになる)、地中海性気候がみられる地域である。米国太平洋岸カリフォルニア州(Z)、チリ中部サンチアゴ付近(Y)、オーストラリア南部(X)など。極端に乾燥する夏季には飲料水が足りなくなるので、果汁の得られるブドウを栽培することによって人々の喉をうるおすのだ。いずれも保存飲料としてワインの生産が伝統的にさかんな地域でもある。

またチリのブドウについては03B本第2問問7で登場している。問題を解くカギではないが、チリの欄に「果実」とあるが、これはもちろんブドウのこと。

オリーブについてもブドウと並んで取り上げられた00B追第5問問2・94追第3問問3問1問4をまずチェックしておくこと。さらに97B追第5問問4問5に注目。オリーブのおもしろいのはその生産がほぼ地中海沿岸に集中しており、ヨーロッパでの生産量が圧倒的に多いこと。オリーブの栽培地域について問うことは、地中海沿岸について問うこととイコールになるのだ。この問4問5もそういった傾向を持っている。地中海沿岸地域の地形・土壌・植生に関する問題(問4)、地中海沿岸の気候に関する問題(問5)など。

オレンジは前述の00B追第5問問2の栽培北限線ぐらいしか出題がない。

[対策・今後の学習] ブドウの生産については、1位イタリア・2位フランス・3位米国・4位スペインまでは必須で押さえておいて、他には地中海性気候のみられるチリや南アフリカ共和国(南西端のケープタウンは典型的な夏季乾燥気候の地域であり、ブドウ栽培ワイン醸造ともにさかん)も知っておく。

オリーブについては1位イタリア2位スペインでフランスがランク外であることが重要、オレンジについてはブラジルや米国での生産が多く、ヨーロッパではスペインで輸出1位もスペインであることまで知っておいたら十分だろう。

今回出題されたものだけでなく、果実に関する出題は少なくないので、さまざまな統計に目を通しておくべきだろう。バナナはしばしば出題されているので当然チェックしておくとして、パイナップルなんてヤマを張っておくといいんじゃない?

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