2004年度地理B本試験[第1問]解説

2004年地理B本試験[第1問]

03B本の第2問と作成者が同じでしょ?問題がしょうもなさすぎるよ(笑)。受験生が死ぬ気で勉強しているんやから、問題作る側もそれなりの覚悟ってものが必要だと思う。でもこいつはどうしようもないなぁ。あ、でも去年の問題よりはずいぶんマシになってるよ。そういった意味では奴もちょっとは努力したってこと?でも努力してこの程度の問題しか作れないんなら、それはそれでこいつに能力がないってことだよ。勘弁してくれよって思うよなぁ、マジで。

 

問1 [評価] センター試験の問題としてはどうかなあと思う。緯線や経線は私大や模試ではしばしば問われるものであるが、センター試験では軽視される部分。緯線については旧課程までさかのぼっても赤道しか出題されたことはないし、経線についても直接出題されたことはない。この第1問を作った人間はセンター試験の研究が甘い、というか全然していないと思う。しょうもない。命懸けでテストを受けている受験生をなめている。

[解法] センター試験の問題としては不適当であるし、君たちも知っておくべきものではない。ただし解答は不可能ではないのだ。なぜなら答が書いてあるから。地理Aの第3問問5にある図2を参照してみよう。赤道の位置はわかるだろう(赤道は過去に何回も問われたことがあるので、知っておかなければいけない)。さらに東京の緯度がほぼ北緯35°であるというのは常識の範囲で知っていることなのではないかと思う(あるいは秋田県を通過する北緯40°でもいい。中学地理で問題とされるところなので意外にこちらを知っている人も多いかも)。

このことからおおまかに見当をつけて南緯40度を正解とする。選択肢がバラバラなので微妙さに惑うことはないだろう。

[関連問題] 緯線経線に関する問題を挙げていこう。

まずは緯線から。とはいえほとんど赤道のみに限定されているのだが。

99B本第4問問1選択肢1。図1においてどこを赤道が通過しているのかわからなければ解答できない。

00B本第2問問1。赤道上に占める特定部分の長さを求める問題。赤道一周(つまり360°)が40000キロであることを利用するのだが、それ以前に図1中のどの線が赤道に当たるのか知らないと話にならない。

03A本第1問問1。アフリカ大陸における赤道の位置。降水量の問題のおまけっていう感じもするが。

これ以外にも気候グラフの問題などで、北半球と南半球の差異(季節の違い)がポイントとなる問題の場合には、まず赤道がどこを通過しているか判断し、そこから北半球・南半球に区別して考えていかなければならないものも多い。このような解き方をする問題は多い(というかほとんど全ての気候グラフ問題が当てはまるといっていいだろう)ので、具体的な話は省略。

経線について。97B本第5問問1。アフリカ大陸における東経20~30度付近での南北幅。イギリスを0度が通過していることを考えれば何とか推測可能だとは思うがどうだろう。

さらに経線と緯線の意味を考える問題も出題されている。01B追第5問問2。経度とは南中時刻、緯度とは南中高度に関係あるのだということを理解しておかないと解けない。

[対策・今後の学習] 緯線経線の出題は少ないが、赤道だけは例外で、むしろ頻出。とにかく赤道が各大陸のどの部分を通過しているのか徹底的にチェックしておくこと。

これとは別に、これから模試などを解く際にも、同じ冊子のどこかに何かのヒントが隠されていることがあるかもしれないのだから、隅から隅まで探して何かヒントになるものを見つけようとする習慣をつけておくといいかもしれない(時間がなかったら無理だけどね)。

 

問2 [評価] 最悪。しょうもない問題にも程がある。全くいい加減にしてほしいもんだ。この第1問を作った奴はどうせ前回(03B本)の第3問を作った奴と同じなんだろうが、1年間で全く進歩がないことが明らか。浪人時代に一生懸命勉強して自分の学力を大きくアップさせた君たちの方がすごいよ。

まず図法の問題という点がアウト。センターでほとんど出題されない部分。さらに難易度が高いのもアウト。正解率は25%を切っている。4択問題で25%を下回るっていうのは、つまり考えれば考えるほど間違うってことだよ。適当に丸付けた方がいいってことやん。アホらしいね。

[解法] この問題は解く必要なし。

[関連問題] 新課程以降図法の問題はこの問題を除けば3つのみ。1つは地理A、1つは地理AB共通問題、1つは地理B。

99B本第5問問3参照。地理Aとの共通問題。正距方位図法は図の中心から任意の点までの距離と方向が正しい。

98B本第3問問5参照。メルカトル図法において大圏コースは曲方向にふくらんだ曲線によって示される。

何百問もある中で出題がこれだけなのだから、図法なんていう面倒なジャンルは無視してしまうのが一番。4問のうち、2つが地理Aがらみ、1つは98年本試という異常に平均点が高かった回のものであり、後で得点調整がかけられたのだから、べつにこの問題ができてもできなくとも関係ない。そして04年のものは悪問。これはもう出題ジャンルとして成立すらしていないでしょ。

[対策・今後の学習] 不要。

 

問3 [評価] またアホな問題。簡単なのが救いだけどね。確かに海流はよく出題されるのだけれど、それにしても出題パターンに工夫がないなあ。

[解法] 海流の流れは原則として「北半球で時計回り、南半球で反時計周り」。例えば日本のような北半球大陸東岸では黒潮(日本海流)のような低緯度方向から高緯度方向へと進路をとる海流が卓越し、カリフォルニアのような北半球大陸西岸では反対に高緯度から低緯度に流れる海流(カリフォルニア海流)が卓越する。

これを南半球について考えてみよう。図1では太平洋について当てはめてみるとわかりやすい。まずオーストラリア東部海域。ここは大陸東岸(あるいは大洋の西部ともいえるが)であり「南半球の海流は反時計まわり」の原則に照らし合わせれば、ここには低緯度方向から高緯度方向に南流(南に向かって流れるという意味)する海流が存在することが推測できる。このように「低緯度→高緯度」という流れは、暖かい水を冷たい海域に運ぶという役割があり「暖流」と呼ばれる。陸地に例えれば寒いところに暖かい風が吹いてくるようなものであり、この海域は緯度の割には暖かいと思われる。名称は東オーストラリア海流である(そのまんまの名前!)。

さらに「南半球は反時計まわり」を突き詰めていく。この海流はさらに南に進むと南極大陸にぶち当たるのだが、ここで進路を左へと曲げる。つまり、北から南へと流れていたのが、西から東への流れへと変化するのだ。この緯度帯において卓越する偏西風の風向を考えれば納得できる動きだろう。海流は惑星風(貿易風や偏西風)によって生じるものなのだ(惑星風の生じるシステムについてはここでは省略。話すと長くなるからね。でももちろん理由を説明することはできるので、また機会があれば勉強しましょう)。

さらにこの流れが南アメリカ大陸にぶつかる。行き場所をなくし、南極付近を流れていたために十分に冷やされたこの海水は、一気に南アメリカ大陸西岸に沿って北上する。これがペルー海流で、この影響により太平洋南東部では赤道付近の海水温ですらあまり高くならない。

このペルー海流は、低緯度付近では貿易風の影響により、進路を東の方向にとる。やがて東南アジアにぶつかったこの流れは左に曲がり、東オーストラリア海流へとつながっていく。これで太平洋南部を海流が一周したことになる。

さあ、このことを頭に入れておけば解答は容易だろう。もちろん寒流が流れているのはウの海域。ここをペルー海流が北上し、冷たい海水によって周囲の気候などにも影響を与えているが、そのことについては問7のチリに関する記述において説明している。

イは東オーストラリア海流が流れている海域でこちらは暖流。アやエについても暖流が流れている部分で、アではモザンビーク海流が、エではブラジル海流が、それぞれ低緯度方向から暖かい水を高緯度方向の冷たい海域に運んでいる。上の文章の中で、南半球においては大陸の東岸を暖流が流れるシステムを説明したが、このモザンビーク海流もブラジル海流もやはり大陸東岸を流れるものであり、この点で東オーストラリア海流と共通している。

[関連問題] 海流に関する問題はしばしば出題されているので、主な流れ方などまとめておくべきだろう。

03B本第5問問1参照。日本海流の流れ方が問われている。

03B追第1問問3参照。海域ごとの海流の様子。

またペルー海流による漁獲についての関連問題は本大問問7に挙げてあるので参考にしてほしい。

海流ではないが、同じく海に関するネタとして海嶺や海溝がある。

03B追第1問問1参照。

02A追第1問問3参照。インド洋西部海嶺について。

03B本第5問問2参照。海溝の場所。

01B本第1問問1参照。海溝の場所。

[対策・今後の学習] まあ、作問者の資質や問題のセンスは置いといて(笑)、とりあえず海に関する問題は頻出なので各自でまとめておかないといけない。海溝や海嶺についてはまたそれが取り上げられた問題の解説であれこれ説明しているんで、ここでは海流に関してだけ。

まず基本事項から。寒流と暖流を区別する。冷たい水を暖かい海域に運ぶものが寒流で、暖かい水を冷たい海域に運ぶものが暖流。寒流は湧昇流を生じるため漁獲資源が豊富になり、暖流はその作用がないのであまり魚がいない。寒流は高度の低いところの空気を冷やすため大気が安定し、雲が生じにくく乾燥気候の原因となる。暖流はその反対で、空気中にさかんに水蒸気を発するために、湿潤な気候をもたらす。

寒流の代表例は、カリフォルニア海流・ペルー海流・カナリア海流・ベンゲラ海流など。暖流の代表例は、日本海流・東オーストラリア海流・メキシコ湾流・ブラジル海流など。

第2のポイントとして、両半球における海流の流れ方を確認。「北半球は時計回り、南半球は反時計回り」が大原則。これは貿易風や偏西風の風向によって海水が一定の方向に流されるという理屈を考えれば理解が容易。太平洋北半分の海域では日本海流とカリフォルニア海流によって、太平洋南半分の海域では東オーストラリア海流とペルー海流によって、大西洋北半分の海域ではメキシコ湾流とカナリア海流によって、大西洋南半分の海域ではブラジル海流とベンゲラ海流によって、大きな海水の流れが形成されていることを確認。

このことを手がかりとすれば、大陸東岸(つまり大洋西部)で暖流が卓越し、大陸西岸(大洋東部)で寒流が卓越することが容易にイメージできる。本問図1においても、ア・イ・エは大陸東岸であり、これが寒流である可能性は低い。ウのみが大陸西岸であり、これが寒流と考えるのは極めて自然。

 

問4 [評価] またしてもしょうもない問題。こんな問題必要なのか!?

まずハイサーグラフである点。新課程導入以降ハイサーグラフの出題はこれ以外では1つのみ。それは03年なのだが、それにしても第2問という史上最悪の大問の中で取り上げられたもの。つまりセンター試験とはどんな試験なのかということを全然わかっていない作問者が気まぐれに出題しただけのことなのである。まともな作問者ならば、こんなしょうもないグラフは使用しない。

さらに3つの地点の選び方のセンス。結局知識で解くだけじゃないのか?気候グラフ問題っていうのは、暑いとか寒いとか、雨が降るとか降らないとか、そういった気候の成因を考えながら解かせる問題が大半であるのに、本問の何たる知性の無さよ。

[解法] こんな問題解説したくないよなぁ。でもしゃあないなあ、簡単に済ませるか。

まずハイサーグラフの見方から。1~12までの点はそれぞれ月を表す。X座標がその月の降水量を表し、Y座標が月平均気温を示す。カのグラフを見てみようか。1月は気温25℃、降水量20ミリという感じ。ちょっとめんどくさいけどこれを表にしてみようか。

10

11

12

気温

22

20

18

13

11

13

18

20

降水

20

20

20

20

20

20

20

15

10

20

20

20

ざっとこんな感じかな。南半球であるので1月が夏となり、この時期の気温が高い。日本においては最暖月平均気温が25℃を上回り、最寒月平均気温が5℃程度なので、カの都市はやや夏の気温が抑えられている以外はほぼ日本と同様の気温と見られる。しかし降水量は全体として少なく、むしろ乾燥気候というべきものかもしれない。

キの都市については、気温の面からすれば、夏の気温はカと変わらないものの、冬はかなり温暖である。カより低緯度に位置するのだろうか、それともカが大陸性気候だとすればこちらは海洋の影響が強い気候なのかもしれない。降水量としては、最多降水月が160ミリ、最少月が50ミリということで、全体としては1000ミリを超えるだろうか。わが国と同様に湿潤な気候であるといえる。

クの都市は特徴的。気温変化はキとほぼ同じで10℃から25℃の間に完全に収まっているものの、月ごとの降水分布が興味深い。暑い1月(つまり夏)に月の降水が10ミリ程度しかなく、寒い6月には100ミリにも達する。完全な夏季乾燥型の気候であり、地中海性気候区であると判定できる。

さあ、ここから図1を見ながら判定していこう。

最も分かりやすいのがAのケープタウン。ここは過去にも何回か問われたことがあるのだが、地中海性気候が典型的に見られるところ。大陸西岸緯度35度に位置し、夏季(南半球なので1月を中心とした時期)に南下する中緯度高圧帯に覆われ、乾季となる。よってクが該当。

BとCについて。Bはオーストラリア太平洋岸中南部の都市シドニー。ここは暖流に面し、比較的降水が多く、まさに日本と似たような気候が見られる。このことからキが該当。

Cについては乾燥気候であることを意識する。アルゼンチン南部パタゴニア地方に位置するCであるが、ここは恒常風の風下斜面に当たり、年間を通じて降水が少ない。偏西風の影響を一年中受け続けているのだが、太平洋から運ばれる湿潤な空気がアンデス山脈によってさえぎられ、この地には乾燥した風が吹き降ろすのみなのだ。時にはフェーン現象も生じるという。このことから全体的に降水量が少ないカのグラフがCに該当すると考える。

(別解)BCの判定については、緯度による気温差を利用することもできなくはない。より低緯度に位置する(破線dより赤道側にある)Bの方が比較的気温が高く、高緯度のCで低温と考えられる。よってカをC、キをBとする。

ただし実はこの方法はあまり適切ではない。局地的な限定された範囲ならば確実に「低緯度で高温、高緯度で低温」と比較しやすいのだが、このような海を隔てた非常に離れた場所同士ならば他の要因がプラスされて、必ずしもこのセオリーが通用しない場合もある。例えば、低緯度の北海道の方が高緯度のイギリスより寒冷だったりするわけだ。これには風の影響(日本は季節風、ヨーロッパは偏西風)などが加わっている。というわけで、BCについてこのように気温で解く者があったとすれば、それはむしろ不確実な解法であり、こじつけに過ぎないという面もある。でも、結果論として正解だからそれでいいか!?

[関連問題] 新過程導入以降にハイサーグラフが登場したのは先にも述べたように03B本第3問問1のみ。ただしこれは大問そのものがしょうもない(つまり作問者のレベルが低い)のであまり参考にならないだろう。

A地点ケープタウンが出題された例は多く、98A本第2問問2問3など。また、地中海性気候が見られる地点は話題になりやすく(ケッペンの気候区分は原則として出題されないのにも関わらず)、03B追第1問問2サンフランシスコ、02B本第5問問1ローマ、02A本第1問問4アデレード、99B追第4問問2パースなどがその例。

また具体的な都市ではないが、地中海地域全般の気候としてこの気候区が出題されたものとして、97B追第5問問5がある。旧課程では、95追第4問問2で地中海性気候が取り上げられ、ここではサンフランシスコ、アデレード、サンチアゴが登場している。

Bについては、かつてオーストラリアの各都市の気候が問われたことがある。02A本第1問問4、99B追第4問問2参照。しかしシドニーの気候は、グラフでは表されているものの、出題の対象となっているわけでもなく、ちょっと参考にはしにくいか。そもそも気候にとくに特徴のある都市というわけでもない。

Cを含むパタゴニア地方については初出。どうなんだろうね~。特殊な地域でもあり、センター試験で取り上げるのにふさわしい場所とも思えないのだが。

[対策・今後の学習] いや、もう本当にしょうもない気候判定問題なんで対策とかしたくないなぁ(涙)。緯度による気温の高低、内陸部と沿岸部の気温年較差の違い、雨季乾季の生じるシステムなどから解いていくのが、センター試験の気候判定問題であり、そういった原理・原則論から攻めていくことが醍醐味のはずなんだが。残念ながら本問にはそういった楽しみは薄く、単に機械的に知識で解いていくだけの傾向が強い。おもしろくはないよ。

 

問5 [評価] これもちょっとなぁ(涙)。少なくともセンター的な問題ではないし、センターをまともに研究している人間ならこんな問題は持ってこない。

[解法] 大地形(地体構造)に関する問題。大地形自体出題率は低いのでさほど重要視しなくていいと思う。またこのジャンルを系統的に勉強したら時間がいくらあっても足りないし、気候や工業などと比べてさほど論理的でもなく、おもしろみも少ない。過去問で出題された範囲を中心にポイントだけまとめていくのがいい。

とはいえ今回の出題は過去にもなかったような特殊なことが問われていたりする。かなりやっかいなのだが、開き直って無視してしまってもいいので、以下の文章が難解だと感じたら、読み飛ばしてほしい。

1;アフリカ大陸はほぼ全体的に「安定陸塊」。古大陸ゴンドワナランドの一部分でテーブル状(卓状)の大地である。ただし一部分に形成時代の違う地形もあって、南東部の低い丘陵(南アフリカ共和国のドラケンズバーグ山脈)は古生代に造山運動を受けた「古期造山帯」であるし、北西部に位置する地中海沿岸に沿う高峻な山脈(アトラス山脈)は新生代の「新期造山帯」であり、アルプス山脈などの仲間である。

以上のことから文中の「新期造山帯」を「古期造山帯」に改め、古期造山帯で「地震・火山活動が活発」なわけはないのでこの部分を削除する。

2;オーストラリア大陸もアフリカ大陸と同様に古大陸ゴンドワナランドの一部分である卓状地である。つまり形成時代はたいへん古く(6億年以上前の先カンブリア代)「安定陸塊」に分類される。ただしここも一部分これ以外の時代に形成された地形があり、それが大陸東岸を縦断する「古期造山帯」のグレートディバイディング山脈。石炭の産地として我々日本人にはおなじみである。新期造山帯に属する地形はこの大陸にはない。

よって文中の「新期造山帯」以降の部分を全削除し、「古期造山帯の山脈が連なる」と改める。

4;まさかニュージーランドを「安定陸塊」とするなんてナンセンスもいいところ。こんな選択肢のつくり方、私大の問題でもありえない。この島々は日本と同じく新期造山帯によるもの。環太平洋造山帯に属する弧状列島(弓なりの形をした島々)で、やはり日本と同様に火山や地震もみられる。

以上より3が正解となる。南アメリカ大陸の主要部分はアフリカやオーストラリアと同様にゴンドワナランドの一部の卓状地で、地質時代による区分では安定陸塊に属している。ただし西岸に沿うアンデス山脈だけは地質時代が異なり、数千年前に造山運動を受けて形成された新期造山帯。日本やニュージーランドなどど同じく環太平洋造山帯に属する地形である。

[関連問題] 大地形(地体構造)については年に1問ぐらい問われているが、とくに重要ではない。一応、安定陸塊・古期造山帯・新期造山帯について問題にされた例を紹介しておこう。

03B追第1問問1。オーストラリア大陸の東岸に沿う山脈は古期造山帯であって、地震の震源とはならない。一方、北米や南米の太平洋岸の山脈は新期造山帯。こちらは変動帯として地震活動も活発。

03B追第3問問3。ヨーロッパにおける古期造山帯と新期造山帯の分布。北部が古期、南部が新期。またウラル山脈が古期造山帯であることも知らなくてはいけない(これは中学レベルだろう)。

03A追第1問問2。イタリアと韓国の地体構造について問われている。かなり特殊な問題とは思うが、地理Aのしかも追試だから仕方ないのか。

01B追第1問問1選択肢1。ごちゃごちゃ書かれてはいるが、要するにロシアには安定陸塊・古期造山帯・新期造山帯すべてみられるということ。

00B本第2問問4。オーストラリアとアフリカはゴンドワナランドである。この問題は本問とは異なり、2つの大陸の大ざっぱな地形が問われているに過ぎない。このレベルがセンター試験における通常の大地形に関する問題のレベル。

00B本第3問問5。オーストラリアは安定陸塊なので平坦な地形、ニュージーランドは新期造山帯なので起伏の大きい地形。

00B追第2問問2。図で描かれた範囲に新期造山帯はないので「地熱発電」が誤り。

98B追第4問問1選択肢1。ニュージーランドが新期造山帯の環太平洋造山帯に属することが述べられている。

全体的にみればこの大地形というテーマはさほど重要視されていないことがわかるだろう。それでもちょっと気になる人は、環太平洋造山帯とアルプスヒマラヤ造山帯から成る新期造山帯だけ押さえておいてほしいなあ。

[対策・今後の学習]とくにいらないと思う。頻出はオーストラリアの古期造山帯なのでこれだけは確認しておき、ついでにニュージーランドが新期造山帯であることだけ知っておいたらいい。それだけでも本問において選択肢2と4はカットできたはずだし、それで十分だろう。

 

問6 [評価] 意味不明。

[解法] 解く必要なし。

[関連問題] 01A追第1問問5で捕鯨問題が取り上げられているが、本問と直接関係するものでもないだろう。

[今後の対策] 不要。

 

問7 [評価] この問題だけまともっていうか、むしろおもしろい問題に仕上がっているんだよなあ、不思議なことに。第1問の中でこれだけ作成者が違うのかな。

前年度も出題されたチリの漁獲ネタが含まれている点、オーストラリアと南アフリカについては日本との関係性から判断できる点が高評価。つまり「過去問の研究」と「思考」が重視されているということなのだ。

[解法] ポイントはペルー海流が漁獲に与える影響。これは世界最大の還流の一つであるが、それゆえに世界最大の漁場の一つを形成している。還流においては、海水面近くを冷たい海水が流れている。冷たいということは、収縮しているため密度が高く、つまり「重いものが上にある」という非常に不安定な状態がつくられることとなる。このため、海中においては、重い上方の水が下へともぐり、相対的に軽い海底の水が海水面方向へと持ち上げられるという「対流」現象が生じているというわけだ。寒流の下では、海水は攪拌(かくはん。混ぜること)されている。

この際重要なのは、海底から海面への流れ。「湧昇流」というのだが、これによって海底に堆積した生物の死がいなどの有機塩類が海面付近へと持ち上げられるのだ。この有機塩類を多く含む海水を流れは、海水面近くで酸素を多く含んだ海水や太陽光線と交わり、栄養分豊かな海域がそこに形成される。植物性プランクトンや動物性ブランクトンが発生し、それが餌となることによって、漁獲資源も豊富となる。

この「ペルー海流の生じる湧昇流」によって世界的な水産国となっている国の例としてまず挙げられるのがペルー。世界第2位の漁獲高を誇る国である。しかしここで考えてほしいのだが、ペルーで魚が取れるのならば、ペルーと同じような条件の国、つまりペルー海流に面する南米大陸太平洋岸の国なら、やはり漁獲量が大きくなるのではないか、と。このことからペルーに隣接するチリやエクアドルでも漁獲が豊かであることを想像し、実際にその通りであることも統計で確認しておいてほしい。

以上より、表1において漁獲量最大のXをチリとする。

YとZについては勘に頼らなくてはいけないが、それでも簡単だろう。漁獲はともに多くはない。しかし輸出が大きく異なっていて、とくに日本向け魚介類輸出額に極端な開きがある。とくに「魚介類輸出額」に占める「日本向け魚介類輸出額」の割合は、Yがせいぜい10%程度であるのに対し、Zは半分近くにも達するなど、極端な開きがある。日本と距離が近く、貿易など経済的な面でのつながりがより強いと思われるオーストラリアをZとし、遠隔地でもありあまり関係ない南アフリカ共和国をYとする。深く考えることはないだろう。

ちなみに、YはZに比べ漁獲は多いが輸出額は小さく、Zはその反対であるため、国としての規模はYの方が大きいのではないかと推測できる。つまり人口が多くて、それだけ国内消費量も大きくなるということ。人口4000万人の南アフリカ共和国と人口1500万人のオーストラリアの差がこんなところにも出ているとみるのは、ちょっと強引だろうか?まぁ、そもそも日本人以外の人々はそんなに魚自体食べないんだけどね(笑)。

[関連問題] チリは特徴的な国である。まず気候から見ていこう。日本やベトナムのような縦長の国は「非等温線国家」とも呼ばれ、国内に複数の気候帯が存在する。わが国ならば北海道で冷帯、それ以外で温帯。ベトナムは北部で温帯、南部で熱帯。

これと同様にチリも典型的な非等温線国家としていくつかの気候帯が分布する。最北部で乾燥帯。これは中緯度高圧帯や沿岸を流れる寒流などの影響による。中央部で温帯の地中海性気候。大陸西岸緯度35度付近には常に夏季乾燥型のこの気候がみられることを想像してほしい。首都サンチアゴ付近はこの気候条件によってブドウ(そしてワイン)の産地として有名。そして最南部では寒帯に属するツンドラ気候区まで見られる。ここは夏季のみ気温が若干0℃を上回り、その時期だけコケなどが地面を覆いつくす。もちろん非農業地帯。

このようにキャラクターのはっきりした国でありながら、実はチリに関して出題された例はさほど多くはなく、04A本第1問問4、03B本第2問問3、98B本第1問問6、96本第7問問4、95追第4問問2などで、選択肢の一つとして使われる程度。

さらにペルー海流の漁獲ネタについても紹介しておこう。

03B追第1問問3。太平洋南西部では寒流とそれがつくりだす湧昇流によって漁獲が多いことが示されている。

03B本第2問問7参照。エクアドルの漁獲量の多さが問題を解くポイントの一つとなっている。

オーストラリアと南アフリカ共和国についてもしばしば出題されているが、漁獲に関するネタは今回だけなので、省略。

[対策・今後の学習] 統計問題ではあるので、もちろん統計資料を用いて、それぞれの数値を確認しておくことは大事。ただし統計資料の種類によっては、「漁獲量」はともかく「魚介類輸出額」や「日本向け魚介類輸出額」などは掲載されていない場合もあるので、その辺りはアバウトに。