2003年度地理B本試験[第5問]解説

2003年地理B本試験[第5問]

オーソドックスな地域調査の問題。このジャンルからの出題は例年通りであり、良問といえる。また、内容もセンター過去問が十分に意識されており、受験生に十分配慮した手堅い問題がそろっている。作問者が上手だなという印象。

それにしてもこのような極めて良心的な大問をみるにつけ、第2問や第3問のような悪問のしょうもなさが際立ってしまうのだ。センター問題をしっかり研究し、その傾向を知り尽くした適切な人材が問題をつくれば、こういったスマートな問題ができるのである。

 

問1 組み合わせ問題。海流と水深がそれぞれ問われている。ここでは、海流を問う問題と水深を問う問題とが別個のものであるとして、それぞれに解説を加えていく。

まず最初に海流について。海流の名称についての問題は初出。過去問を見渡して、海流名を問うた問題は一つもない。それだけ特殊な問題ともいえるのだが、しかし内容を見ると「黒潮の流れ方」という平易なものが問われており、中学レベルの知識で確実に得点できる問題にすぎない。

つまり問題の意図としては「中学レベルの知識は確実にしておけよ」ということだと思う。日本近海の様子が問われている点や、日本海流ではなく黒潮という名称が使用されている点などからも、そのように判断できる。高校地理では日本地理はあまり重要視されない。また、黒潮という言い方も高校地理では一般的でなく、むしろ小学校や中学校の地理で学ぶ言い方。

問題自体も容易だろう。黒潮は太平洋岸を流れる暖流である。Aは日本海側に向かって進んでいる。Cは高緯度から低緯度方向に向かって流れており、これは寒流。以上より、Bが該当。ただし、黒潮の流れは毎年微妙に変化しているそうで、必ずしもCの矢印そのままの流れ方をしているわけでもない。「日本列島の太平洋岸を流れる暖流」として押さえておいてほしい。

さらに、s―s´の水深について。この方が難しい。とはいえこれもやはり中学までの知識が問われる部分だと思う。図を参照。白く描かれている部分は大陸の縁辺に広がる大陸だな。とりあえず浅いことだけは図から判断できるわけだが、問題はその具体的な深度である。これについては「大陸だなは深度200メートルまでの海底の浅い平坦な部分」ということを知っておかなければいけない。どうかな。これは特殊な知識かな。というわけで今ちょっと中学の問題集を開いてみたんだが、文英堂「これでわかる中学1~2年」では大陸だなについての簡単な説明がある。しかし学研「満点BON中学地理」にはない。もちろんこの学研の問題集もかなり出来がいい本なんだが。う~ん、何ともいえないなあ。むしろ理科で習うことなんだろうか。判定がどうしてもしにくい。

ただ、個人的な見解としてなんだが、大陸だなの深度が200メートルに満たないということは、一般常識とまではいえないが、小学校・中学校の範囲の学習で十分カバーするべき事項だと思う。そういう意味では、本問については、海底の地形に関する特殊な知識の有無が問われているわけではなく、君たちが中学校までの勉強をしっかり自分のものにできているかどうかが問われているといっていいだろう。どうだろうか。

ではここからは類題を挙げていこう。海底地形の問題としては、何といっても「海溝」「海嶺」に関する問題が多いのだが、それらはプレートテクトニクスによるプレートの移動によって形成されたやや特殊な地形であるので、ここではそれに関する類題は紹介しない。より一般的な海底地形として「大陸だな」「大陸斜面」「海洋底」を中心に話をすすめていく。

01B本第1問問1参照。東南アジアの海底地形が問われている。インドシナ半島(バンコクと書かれている半島)付近は大陸だながひろがっており水深はせいぜい200メートル程度。とくにマラッカ海峡(シンガポール付近の海峡)はその水深の浅さゆえにタンカーの座礁事故などがしばしば発生することで有名。

96本第2問図1参照。陸地(この場合は日本列島)に接するところの海域はなだらかで平坦な海底となっている。図のE部分は大陸だなといっていいだろう。Eの東側からいきなり斜面の角度が大きくなり、急に深くなっている。この部分を大陸斜面という。大陸斜面によって、水深は数千メートルの深度へと変化する。

94追第6問問1参照。Xで示された部分は海底の浅い範囲であり、大陸だなに該当。大陸斜面はその周囲にあり、大洋底はさらにその外側。

93追第1問図2および問7参照。まず図2から。地球表面の30%が陸地で、70%が海洋。海洋部分に注目してほしいのだが、水深0~200m程度までの部分が大陸だな。そこから急斜面が続き海底は一気に深くなる。この部分が大陸斜面。深度4000~6000mくらいで、海底の大部分を占めるのが海洋底。問7の答も大洋底となる。説明文はYが該当。Xは海の浅い部分で大陸だな、Zはプレートの狭まる境界である海溝。

とにかく水深200mまでの浅い部分を大陸だなということだけ知っておいてほしい。太陽光線が海底まで(わずかではあるが)届くため、海底部分の水温が高められ対流が起きる。この時、海底から海表面に向かって湧き昇る海水によって、海底に沈殿していた有機養分(生物の死がいなど)が水深の浅いところにまで持ち上げられる。そこは酸素にあふれ、さらに太陽光線によって光合成もさかんで、海底から有機養分がもたらされることにより、植物性プランクトン・動物性プランクトン・魚介類など生態系が豊かな海域となる。日本周辺で大陸だなが広く見られる海域は東シナ海であるが、それはまさに図1中の北西部一帯にみられる白い部分と一致している。水産資源豊富な漁場でもあり、主にアジなどが水揚げされている(このことに関する類題は02B本第5問問4の長崎)。

 

問2 海溝の位置を問う問題。海溝はセンター頻出のマストアイテム。

海溝とは水深が数千から1万メートルに達するような、海底の溝状の部分のこと。海底プレート同士がぶつかるプレートの「せばまる境界」と一致しており、太平洋の周囲に多い。過去の出題例としては、01B本第1問問1、96追第7問問2など。

海溝の位置を確認していこう。地図があれば参照してほしい。日本近海には千島列島や日本列島、小笠原諸島などに沿う形で、千島・アリューシャン海溝、日本海溝、伊豆小笠原海溝が南北に走る。さらに南に目を移せば、グアム島やサイパン島に沿うマリアナ海溝、フィリピンに沿うフィリピン海溝があり、南半球にはニュージーランドの北にトンガ海溝やケルマディック海溝が走る。

南米大陸の太平洋岸に沿うのがペルー・チリ海溝。中央アメリカやメキシコの沿岸にも中央アメリカ海溝が走る。米国太平洋岸には見られないものの、さらに目を北に移していくとカムチャッカ海溝がアラスカの南西岸を削り、そして太平洋を一周して千島・アリューシャン海溝に連続する。

このように海溝は、米国沿岸を除いた、環太平洋に分布する。太平洋を取り囲むように走っている。

太平洋以外には海溝はあまり見られないが、一応紹介しておく。大西洋海域の海溝としてはプエルトリコ海溝がある。プエルトリコは米国の自治領でもあるメキシコ湾に浮かぶ小さな島だが、この島の南岸に沿って海溝がみられる。ここもプレートの狭まる境界であり、位置的には大西洋海域に含まれるものの、実は環太平洋造山帯に沿う海溝の一つである。この周辺は火山も多い。

インド洋にはジャワ海溝がある。インドネシアのジャワ島やスマトラ島の南岸に沿う。他の海溝が全て環太平洋造山帯と関係あるのに対し、この海溝のみはアルプスヒマラヤ造山帯と関係が深い。<br>

以上のことをおおまかに白地図でまとめておくといいだろう。原則として、太平洋の周囲を取り囲むように海溝が走っている。太平洋以外では大西洋海域のプエルトリコ海溝(これも環太平洋火山帯に沿ってはいるのだが)とジャワ海溝(これは他とは異なり、アルプスヒマラヤ造山帯に沿っている)に見られる程度。

このことより、解答はハワイとなる。ハワイは太平洋のほぼ中央部に位置する島々で、この位置に海溝は存在しないと思われる。他の島名はいずれも海溝の名称と一致しており、これらについては海溝の近隣に位置する島々であるとみていいだろう。

何の知識もなければ解きにくい問題ではあるが、海溝はセンター地理頻出の話題であり、しかもその位置はしばしば出題されているのだから、本問についても過去問をしっかり研究した者ならば容易に答えられたであろう。

この問題でおもしろいなあと思うのは、地名は原則として出題されないセンター試験ではあるが、海溝の名前についてはわりと詳しい知識が要求されているということ。例えば、アリューシャン諸島やマリアナ諸島なんていう名前は知っておく必要はない。要は、その近くに海溝があるかどうかということが大事となるわけで、アリューシャン海溝やマリアナ海溝という名称については確実な知識が要求されている。来年度以降も海溝の名称と位置は必須アイテムとなるだろう。

海嶺については02A追第1問で出題。

ハワイについては01A追第1問で出題。

 

問3 地形図読図。選択肢4つで解答が1つというパターンって実は珍しい?

選択肢が少ないならば正解率は上がるし、それに問題1問分(つまり3点分)に過ぎないのだから、この問題を無視してもダメージは少ない。さらに「適当でないもの」を選ぶという誤文型の文章正誤問題なので、一つだけ怪しいものを発見すればそれで解答でき、手間と時間がかからないパターンとなっている。地形図問題を苦手とする生徒にとっては実に良心的な問題(笑)。

さらに、新旧2枚の地形図を比較するというパターンもありふれたものだし、非常に取っ付きやすかったのではないかな。

図を参照しながら各選択肢の正誤を判定していこう。

1;「墓地」の有無を問うている。センター試験において地図記号が問題を解くポイントになることは極めて稀。地図記号について何の知識もなくても、たいていの場合は、それで構わない。本選択肢についても、地図記号をたずねている時点で、正解の候補から外してしまっていいだろう(本問は誤文を指摘する問題であるので、選択肢1は正文とみなしてしまっていいだろう)。

具体的な検討に移る。「大浜」集落はどこにあるのだろうか。まずこれを見つけないといけないのだが、どうかな、スムーズに見つけられたかな。図の南部の方に「大浜」という地名が確認できる。

さてここからは1997年の図で「墓地」の地図記号を探してみる。「日当たりの良い斜面」ということで南向きの斜面を確認。石垣空港のやや北にある「43」という標高に注目すればここがやや盛り上がった丘のような地形であることがわかる。そこから大浜にかけての傾斜は南に向いており、ここが「日当たりのいい斜面」であることがわかる。

そしてここに「墓地」があるかどうか。地図記号についての知識は不要であると前述したが、実は墓地の地図記号の登場は本問が初めてではない。97B追第4問問3選択肢4参照。とはいえ、この問題で墓地の地図記号が出題されたからといって、それをしっかり覚えておけっていうのも辛いよね。「地図記号はセンター試験においては重要ではない。だから地形図問題で地図記号の有無を問うような選択肢があったら、それは解答の候補から除外する」と考えて、問題に当たったらいいんじゃないかな。かくいう僕も、この問題を解きながら、墓地という地図記号が話題とされた時点で本選択肢を消した。つまり自動的に正文であると判断した。地形図問題っていうのは、地形の大まかな様子を問うものであって(本年度ならば第1問問1問2が典型。断面図や風景写真のように地形全体の特徴を問う)、細かい地図記号なんていうケチなものはどうでもいいっていうことだよ。

2;21年の図参照。「人車鉄道」という鉄道がある。これを北にたどって行くと「八重山製糖所」というところがある。97年の図では、鉄道はみえない。

3;土地利用記号を問う選択肢。地図記号の出題は少ないと選択肢1の解説において述べたが、それに対して、土地利用記号の出題は大変多い。「水田」「畑」「果樹園」「広葉樹林」「針葉樹林」といった一般的なものだけでなく、「桑畑」「荒地」なども頻出であるので注意。かつて「しの地(笹が生い茂っているところ)」や「やし」などかなり特殊なものも問われたことがある。

選択肢の文章を検討していこう。「宮良川」を探す。そして「左岸」を確認する。左岸というのは、上流方向から下流に向かってみた場合の左側の岸ということで、本図においては川の東側の岸に当たる。

21年の図をみてみよう。宮良川左岸において標高40メートル以上の斜面には荒地の土地利用記号がみられる。図の下に「1921年の地形図中では、畑地は白抜きで示されている」とあるが、ここには明らかに荒地の記号がいくつも見られるし、荒地であると考えていいだろう。

97年の地形図参照。どの等高線が40メートルのものかはよくわからないが、とりあえず先ほど21年の地形図で見た範囲と重なる部分を調べてみよう。現在は「方位観測所」が設置されているようだが、その周囲は畑地の地図記号が広く見られる。このことから、選択肢3は正文とみていいだろう。<br>

4;「干潟」という言葉が登場している。干潟とは、潮の干満の差によって、陸になったり海になったりする平坦な地形のこと。砂や泥(粘土)など目の細かい土砂が堆積。満潮時には海水におおわれ、干潮時には水が引いて陸地となる。有明海や瀬戸内海の遠浅の海岸を考えたらいいだろう。潮干狩りに行ったことのある人も多いんじゃないかな。

センター試験の地形図で干潟が登場した回数はあまり多くないが、それでも出題歴が皆無というわけでもないので、いくつか紹介してみよう。いずれも古い問題ではあるが。

90追第4問地図イ参照。海岸部分にみられる点々と破線は干潟の範囲を表す。満潮時には海岸線が陸地の周囲にめぐらされた堤防のところまで達するが、干潮時には破線のところまで後退する。点々の部分は干潟となり、砂や泥など目の細かい土砂によっておおわれている。

このような感じで、地形図で干潟がどのように表されているかがわかったかな。本問の図2参照。21年の図ではわかりにくいので、97年の図をみてもいいのだが、海の部分にみられるのは「岩場」の記号であり、これは干潟を表すものではない。海岸からやや離れた海底に、岩石のごろごろした岩場が広がっているのだろう。

というわけで4が誤文。干潟について問われたケースがあまりないのでちょっと難しかったかもしれないが、それでも消去法で解くことはできるだろう。選択肢1・2・3については、正文であるという判定はそれほど難しくない。

 

問4 なかなかおもしろい問題。授業ではあまり取り上げない一般常識的な問題ではあるけれど、意外と正解率は低そうな感じがする。

サンゴ礁の形成される場所はどこか。暖かくて浅い海と考えておけばいいだろう。それから水が濁っておらずきれいなところという条件も加わる。

センターでもサンゴ礁は何回か出題されているのでそれらを参照しながらサンゴ礁のみられる場所について考えていこう。

98B本第4問参照。図1の地形図によって表されている島は与論島。問題文にもあるように、鹿児島県奄美諸島の一つであり、かなり温暖な地域に位置する。亜熱帯の気候である。

問2選択肢4参照。「主として石灰岩からなる島」である。与論島のように、熱帯・亜熱帯地域にあり、島の形がほぼ平坦な島は、サンゴ礁によってつくられたものであると考えていい。浅い海底に形成されたサンゴ礁。それがいつしか隆起し陸化して島となって海上に現れた。

92追第1問図4の三角島参照。これは典型的な隆起サンゴ礁による島であると考えられる。浅い海で成長したサンゴ礁が、次第に隆起し、平坦な陸地となった。島の周囲は「岩」を表す記号によって囲まれているが、これはサンゴ礁がここまで広がっているのだという範囲を示している。サンゴ礁は硬くて岩みたいなものだからね。このように、岩の記号がサンゴ礁を表すケースは多いのだ。

さらにサンゴに関する問題として、95追第2問問4がある。与論島や三角島のような平坦な島においては浅い海に広がるサンゴ礁が隆起して陸地となることを説明したが、今度はその逆。中央が深くへこんだ「礁湖」のできる理由に関する問題。図2において、最初の段階はB。ある島があると、その周辺の水深が浅い部分にまずサンゴ礁が発達する。そしてこの島が何らかの理由で沈降しはじめるとする。沈降するスピードよりも、サンゴ礁の成長するスピードが速いため、陸地はどんどん海の中に消えてしまうのに対し、サンゴ礁は海上に顔を出し続けている。Bの段階のサンゴ礁を裾礁という。これはいわば普通の状態。海岸の浅い部分にサンゴ礁が発達。Cの段階を堡礁という。海岸付近は深いため、サンゴ礁はあまり発達せず、海上には現れない。ただし島が沈降する以前よりサンゴ礁が発達していたところでは、サンゴ礁の分だけ水深が浅く、ここはさらにそこから上に伸びるようにサンゴ礁が育ち、海面にまで達する。そして最終段階がA。これを環礁という。島が完全に水没してしまったのだが、周りのサンゴ礁はさらに成長し、この部分だけが海上に顔を出している。かなり特殊な地形であるが、このように、もともとの島が沈降した場合のみみられる珍しいサンゴ礁の例。環礁によって囲まれた湖を礁湖という。サンゴ礁によって外界とほぼ切り離されることによって形成されている。

ちなみにこのAのような地形が、再び隆起するとどうなるだろか。島の周囲のみが小高い丘で囲まれ、中央部分がへこんだ低地であるという変わった地形となる。実は大東島というのがこのような地形なのだが、模試などでたまに取り上げられることもあるので、その時は注意してみよう。

では問題に戻る。答はQである。Qのやや左に「岩」の記号があるが、これはサンゴ礁の端を表しているのだろう。つまり海岸(点々がみられるので砂浜のようである)からこの岩場までサンゴ礁が連続していると考えていいだろう。遠浅の海岸になっており、この一帯に美しいサンゴ礁が広がっていると思われる。

Pは海岸から離れすぎているので該当しない。前述の堡礁ならばこの辺りにサンゴ礁が広がることになるのだが、本地形図の場合は深い海であるとみるのが自然だろう。Pの部分には、岩の記号(これが実質的にサンゴ礁を表す)はみられない。

Rも不適当。陸地に近いことから、水深が浅いという条件にはあてはまっているように思える。ただし、地形の様子からみて、河川によって運ばれてきた汚れた水がここにたまってしまうのではないかという懸念がある。濁った水ならば、サンゴ礁は生育できない。サンゴ礁は原則として、外海に面した海域に発達すると考えてほしい。

以上より、適当なのはQとなる。98B第4問図1や92追第1問図4三角島のサンゴ礁の位置(正確には沿岸の「岩」の記号の位置であるが)と照らし合わせても、これが正解であると考えられる。温暖な海域に浮かぶ島の沿岸、水深が浅く、外海に面するところにサンゴ礁は生育する。<br>

ではアとイについて。ちょっと悩むかもしれない。しかし赤潮について確実な知識を持っておけば、アが誤りとできるのではないか。高校地理ではあまり扱われないものの、中学までの社会科ならば赤潮についての学習は必須だろう。例えば「瀬戸内海の養殖業は赤潮によって大きな被害を受けている」のように。これくらいはみんなも知っているんじゃないかな。

例えばこんな話は聞いたことはないかな。味噌汁を水道管から流してはいけない、と。台所から流された味噌汁は下水を流れ、河川に入る。そしてやがて下流の湖や海へと注ぎ込むこととなる。味噌汁はもちろん多くの有機養分を含んでいる。だからこそ人体にとって栄養価の高いものとなるわけだが、このことだけ考えると、味噌汁が魚たちの栄養分となってメデタシメデタシという感じなんだが、それは大きな間違い。味噌汁の栄養分によってまず最初に恩恵を受けるものはプランクトンである。プランクトンの異常発生。それが何をもたらすのか。

生態系は微妙なバランスの上になりたっている。そこに生活廃水という特殊な要素が入ってくれば、その水域の生態系バランスが崩れる。

有機養分の過度な流入によりプランクトンが異常発生する。そしてこのプランクトンよって消費される水中の酸素の量も増加する。このことにより水中に含まれる酸素濃度が低くなり、多くの魚介類は呼吸困難となる。それが窒息による死をもたらし、屍を水面にさらすこととなる。またプランクトンの寿命は短いわけで、異常発生した分だけ死がいも増加し、それらが魚のえらに入り込み、これまた窒息死させることもあるのだそうだ。

このプランクトンの死がいの色は赤い。水面がプランクトンの死がいによっておおわれて赤く染まることを、人々は「赤潮」とよんでいる。

赤潮の被害の最も大きかったところとして滋賀県の琵琶湖が挙げられるのだが、ここは同時に行政の積極的な方策によって水質改善が図られ、赤潮被害が大きく減少した湖でもある。滋賀県が定めたものに「リン分を含んだ洗剤の使用禁止条例」がある。リンは有機養分をつくりだす代表的な化学物質で(リンの主に化学肥料の製造に用いられる。有機質と化合し、有機養分をつくりだすのだ)である。一般の洗剤に含まれていることが多い。滋賀県では、このような洗剤のリン分が琵琶湖の赤潮を誘発する主な原因の一つであると考え、リン分を含んだ洗剤の使用を禁じる条例を制定・施行したのだ。これにより、琵琶湖の赤潮被害はかつてに比べ多少ではあるが改善され、魚介類の豊かな生活環境が戻りつつあるようだ。

とくに琵琶湖ではこのようにリンが問題とされたが、前述のように、赤潮の被害をもたらすものはそれだけでなく、むしろ残飯などの生活廃水が原因である。集落の近くなど、家々から下水が流されてくるようなところでは、赤潮の危険性が大きい。

赤潮の被害の大きいのはどういうところかといえば、それは閉じた水域である。例えば広く外洋に向かって広がった海ならば、多少生活廃水が混入したとしてもそれが広い範囲に拡散してしまえば、その限定された水域内におけるプランクトンの異常発生の原因とはならない。また、たとえプランクトンが大量に発生し、それらが水中の酸素を消費してしまったとしても、開かれた水域ならば他から酸素を十分に含んだ水が入ってくるだろうし、魚介類の窒息という事態にはならない。

逆にいえば、閉じた水域での赤潮がいかに脅威であるか想像できるだろう。琵琶湖や瀬戸内海が赤潮被害のとくに大きな水域として登場してくる理由もわかるのではないか。琵琶湖など湖で赤潮が発生したならば、プランクトンによって酸素濃度が下げられてしまった場合、水の入れ替えが少ない分だけ元の状態に回復するのに時間がかかるだろう。瀬戸内海も、名前こそ「海」ではあるが、太平洋などの外海へと通じる海峡は狭く、実際には「湖」みたいなものである。ここに閉じ込められた海水は、外洋の新鮮な水とほとんど入れ替わることはないため、赤潮発生時の被害は深刻となる。

ちなみに、最も赤潮の餌食になりやすいものとして、ハマチなど養殖によって育てられる魚種がある。例えば、自由にいろいろなところを泳ぎまわっている魚ならば、最悪の場合は自分から海峡を突き破って外海に出るという手段もある。あるいは内海であっても多少は赤潮の被害が小さい(つまり酸素濃度が高いところ)ところがあるかもしれないので、そこに逃げ込んでやり過ごすという手もある。しかし、養殖魚はどうだろう。網などで区切られた限定されたスペースが彼らの生活空間である。そこから外へ逃げるわけにはいかない。とくに養殖場というのは集落からさほど離れていない陸地の近くに設けられることが多いのだが、それゆえ生活廃水の流入により有機養分過多となる可能性は大きい。プランクトンの異常繁殖、そして酸素減少、ついには窒息。逃げ場のない彼らはその運命を避けられない。

赤潮についての説明は以上のような感じだけどわかったかな。とりあえず味噌汁はこぼしたらダメってことだけでもわかったらいいや(笑・いや、笑いごとではないぞ!?)。味噌汁1杯流れ込んだだけで、元の健全な状態に戻るためには、かなりの量のクリーンな水が必要とされるのだ。

こんな感じで、問題の答はイとなる。アの「富栄養化による赤潮の発生」は閉じた水域でみられるものであり(例えば、Rのようなところならば、仮に河川の上流に集落があってそこから生活廃水が大量に流れ込んでくる場合には、もちろん赤潮被害が考えられる)、Qではあまり関係ないことだろう。ここは外海に面したオープンな海である。

ここは消去法で考えればいいと思うが、とりあえずイ「陸地の開発による土砂の流入」についても考えてみようか。陸地の開発とは具体的にどんなことか。この図を見る限り、例えば道路が走っているようだが、この建設時には土地が削られたり、あるいは他から運ばれてきた土砂が盛られたりなど、さまざまな工事がなされたことだろう。土砂の一部は海へとばらまかれ、多いに海水を濁らせたことだろう。サンゴ礁の生育には美しい水が絶対条件である。土砂が流入し濁った水の中では、サンゴを始めとする多くの動植物が死に絶えてしまうこともあるだろう。

(参考)赤潮についての出題は少ないのだが、一問だけ紹介しておこう。90本第1問問4選択肢1参照。「琵琶湖や霞ヶ浦は、生活廃水の流入によって、プランクトンなどの少ない貧栄養湖へと急速に変化している」という文において、下線部(「プランクトン~貧栄養湖」の部分に下線が引かれている)の正誤を問うものである。どうだろう?わかるかな。

ちなみに「貧栄養」というのは生活廃水などの流入が少なく、水中に含まれる有機養分の割合が少ない状態。このような状況ならばプランクトンの発生も少ない。その反対が「富栄養」。有機養分が豊かで、プランクトンが大量に発生する。このことは、水域の生態系を乱し、多くの魚介類に死をもたらすこととなる。赤潮である。

先にも説明したように、琵琶湖ではリン洗剤使用禁止条例などさまざまな対策によって、近年は赤潮の被害を防いできた。この事実だけから考えると、下線部分は正しいと思われる。とはいうものの、問題自体が古いこともあり(90年の問題)実は本選択肢は誤り。

最大のポイントは、下線部の直前にある「生活廃水の流入によって」という部分。下線部の正誤を問う問題なので、下線部以外の文章は確実に正しいといえる。つまり「生活廃水の流入によって」は誤りではないとして、文章全体を読んでいかないといけない。生活廃水が流れ込んでくる、例えば台所で出された残飯や味噌汁、そしてリン分を含んだ洗剤などが、琵琶湖や霞ヶ浦を汚す。このことは必ずや、湖水を富栄養の状態へと変化させる。プランクトンの異常発生、いわゆる赤潮を誘発する。下線部は「プランクトンなどの多い富栄養湖」と改めるべき。

この「富栄養」「貧栄養」という表現はしばしば模試などで出題されるキーワードなので、知っておくといいだろう。

 

問5 こういう問題が弱い人っているよね。素直に考えないとどうしようもない。地形図によって、例えば屋敷森といって家屋の周りを樹木によって囲んでいる様子は判別可能なのだが、石垣の有無については読み取ることはできない。

他の4つの選択肢はいずれも納得できることであるので、ここは確実に3を誤りとしてほしい。

類題は98B本第5問問3。この問題も素直な問題。普通に考えて、最も当たり前のものを答とする。

この98年の問題にしても、本問にしても、間違えた者の言い訳は決まっていて、「考えすぎた」というもの。でも本当にそうなのかな。本当に考えすぎているのならば、間違えるはずがない。適切な勉強をしている者ならば、センター試験の性格はわかっているはず。出題のパターンというものを知っているはずである。そもそもセンター試験でひねくれた、相手の裏をかく問題など出題されることはありえない。「ちょっとこの問題は簡単すぎるな」が第一段階、「ちょっとひねった問題っぽいから裏をかいてみよう」が第二段階、「いや、ちょっと待て。センター試験でそんなひねくれた問題が出るわけはない。素直にストレートに解いてみよう」が第三段階。先に挙げた「考えすぎた」ことを言い訳にする敗者は第二段階までしか考えが及ばないということ。しっかり正解にたどり着いた勝者は第三段階まで考えが及んでいるということ。どちらが深い考え方によって問題を解いているかは明らかだね。

最後におまけ。沖縄の石垣に囲まれた家屋についての出題は00A本第2問問4にある。台風などの激しい風を防ぐためこのような壁を設けるみたいだね。

 

問6 地域調査の定番ともいえる人口ピラミッド問題。このような問題を出題してくる辺りも、作問者の良心がうかがえて個人的にはかなり評価が高いのだが。

図表においては、かならず「実数」と「割合」の差異を意識しておかないといけない。同じような人口ピラミッド問題にしても、00B本第4問問5図4と、01B本第5問問6図4とではその意味合いが若干異なっている。

いずれも縦軸には年齢が示されており、それが5歳区切りになっている点も共通。ただし横軸が違っているのでここに注目してほしい。00年のものは単位が「人」であり、これは実数を示している。これに対し、01年のグラフにおいては横軸の単位は「%」であり百分率となっている。前者は絶対的な数値、後者は相対的な数値となっていることを理解しよう。これが問題を解く上で重要なカギになることすらある。

このことを意識しながら、本問の人口ピラミッドを観察する。

縦軸は5歳ごとに区切られた年齢であり、これは00年や01年に出題されたどの人口ピラミッドとも共通している。そして、横軸の目盛りの単位は「人」。実数であり、00年のパターンと同じ。<br>

ちょっと細かい目盛りまで確認しないといけないので実際には無理であるが、それぞれのグラフの数値を読み取って全て合計したとすれば、1980年の男性ならば1760人になるし、同じく女性なら1616人になっているはずである。

では選択肢を検討していこう。具体的な数値が登場しているが、全て概数。

1;両年次の0~4歳の人口を比較する。80年は、男児130人、女児120人で合計250人くらい。全体の人口が3600人くらい(1760人と1819人を加える)なので、割合は「250/3600」というところだろう。

同様に00年は、男児100人、女児90人で合計190人。全体の人口は3550人。よって割合は「190/3550」。

これより両者を比較。分母に変化はほとんどないが、分子が大きく減少している。割合も低下しているとみていいだろう。

2;10歳代後半ということは何歳の層に注目すればいいのか。15歳以上20歳未満ということで「15~19」について、それぞれのグラフで確認。

80年のグラフで男60人、女40人。00年のグラフで男40人、女25人。いずれも他の年代に比べて、少ない数値といえる。その理由としては何が考えられるのだろうか。石垣島で彼らが生まれた年代に何か事件があって、それで出生率が下がっているのかもしれない。

しかしここで注目してほしいのは、この2つのグラフの年代的な関係について。上のグラフの20年後が下のグラフなのだ。つまり、80年に15歳だった人は00年には35歳になっているということ。この両者を比べると、何かおもしろいことがわかるかもしれない。

というわけで、80年「15~19」歳に相当する、00年「35~39」歳を調べる。男120人、女120人である。この20年間で、男60人、女80人が増加したということである。

このことについてどう考えるだろう?もちろん何の縁もゆかりもない人が、石垣島周辺の豊かな環境と興味深い文化を求めて、新しく移住してくるのかもしれない。しかしそういう人はむしろ例外的で、原則として、離島のような「地方」に位置するところは、その経済レベルの低さゆえに人口流出地域となるのが通常である。仕事を求めて都会へ出ていくのだ。

この増加分は、帰ってきた人口と考える。実際、いずれのグラフにおいても「10~14」歳の年齢層はわりと多い。中学校までをW町で過ごし、それが修了したらW町の外の高校に通うため生まれた島を出る。そして(そのまま大都市へと出ていってしまう者もいるだろうが)再び島に帰ってきて、この地に腰を落ち着ける。15歳から19歳の層が周囲の年齢層に比べて飛び抜けて少ないのはそのような理由があるのだろう。おそらくW町には高校がないのではないか。

以上より、選択肢2についてはとくに誤ってもいないと考えていいだろう。「就職」にともなっているかどうかは不明だが(日本では10代で就職している者は少ない)、「進学」であることには疑問の余地はないようだ。とりあえず本選択肢は正文と思われる。

3;「20代前半」なので20~24歳の層に注目。80年のグラフより、男100人、女80人である。20年後の00年、この層の人々は何人になっているか。00年のグラフで、40~45歳に注目。男200人、女110人と、その数は大きく増加している。このことから、流入者の方が多かったと考えてみていいだろう。

この選択肢と全く同じパターンの出題が、00B本第5問問5選択肢4にある。00年のグラフも03年のグラフもともに実数を表すものであるので、グラフの目盛りをそのまま読み取って考えればいい。これがもしも割合(%など)で示されていたら、実数を求めるために計算しないといけないのだが。

4;「割合」を問うている。このグラフはあくまで実数を表すものなので、ちょっと注意が必要。

00年のグラフで、65歳以上の人を表す部分を確認してみよう。「60~64」と「65~69」の境界に線を引いたらよくわかるかな。その線の上の部分である。

これだけ見ると、女性の方が男性よりも数が多いようである。ただしこれは実数であり、割合ではないことに注意。人口全体に対する割合なので、それぞれ男性人口(1811人)、女性人口(1740人)で割ってあげないといけない。

とはいうものの、割合を求めてみても女性の方が高くなるのは確実。分子が大きく(65歳以上の人口の実数が多い)、分母が小さい(全体の人口では女性の方が少ない)のだから。以上より、4は正文。

というわけで、選択肢1と選択肢4については確実に正文であるといえる。数字に基づいて計算すればいいからだ。選択肢2で迷うけれど、何とかなるんじゃないかな。

本問は、時間こそかかるけれど、問題自体は容易な部類に含まれる。しかしその「時間がかかること」が辛いわけで、焦って早く解こうとせず、開き直ってじっくり時間をかけて問題を解いてやるっていう覚悟が必要になってくる。ここまでくると勝敗を分けるのはメンタルな要素というか精神力なんだろうね。

たびたび指摘しているけれど、この人口ピラミッドについては、横軸の各年齢層人口が、割合でなく、実数で表されていることがポイントになると思う。たしかに、各年次の男女の人口においてそれほど差がないので(1760人、1616人、1811人、1740人)、実数の差がほぼそのまま割合の違いになって表され、絶対的数値と相対的数値の性質の相違について意識しなくても問題自体は解けるのかもしれない。しかし、センター地理においては統計が重視され、その統計を読む際に最も重要なことが実数と割合の性質の違いである以上、ここでも同様に両者の差異について意識することが大事なんだと思う。

(ここでちょっと考えてほしいこと)問題自体からはちょっと離れるんだけど、ちょっと興味深い事実がこのグラフから読み取れるので検討してみよう。

それはこのW町というところの人口流動の様子。80年には男女計3376名だった人口が、00年には3551名に増えている。これってどういうことなんだろう。

石垣島の近隣にあるいくつかの島からなるW町なんて、その位置的条件からして、過疎の町だと思われるんだが。でも実際にはそんなことはない。出生率が高くて子供が多いから人口が増えているのか。でも80年と00年のデータを比べてみると、むしろ子供の数は減っているんだが。選択肢3でもみたように、増えているのは実は40代の層だったりする。いったいこれはどうしたことなんだろう。リゾート施設でもつくられて仕事が増えて、そのために人口が流入したのか。問題とは関係ないけれど、ちょっと疑問に感じる部分なのだ。

 

問7 日本の県名を用いた思考問題。上手い問題を作ったもんだなと思わず感心してしまう。<br>

日本の県名が登場したら、その県名がいったいどんな意図をもって出題されているのか、そのキャラクターを明確にしておかなくてはいけない。とくに本問の場合は「農作物の出荷」に関して「季節による出荷量の変化」についてたずねているのだから、各県の気候についてのキャラクターを明確にしておくべき。何となく「季節による」っていうのがポイントになりそう。選択肢で示されている3つの県について、季節による気候の変化を中心に考えていこう。

沖縄について。夏季はもちろん高温となるが、それより特徴としてとらえておきたいのが冬季の温暖な気候。低緯度地域であるので気温年較差が小さい。最暖月の平均気温は25℃を若干上回る程度であるが、最寒月の平均気温も約15℃とかなり温暖。年較差は10℃くらいに過ぎない。

愛知県について。本州に位置し、日本の一般的な気候がみられると考えられる。最暖月の平均気温は25℃くらい、最寒月の平均気温は5℃くらい。気温年較差は約20℃。

長野県について。本州中央部に位置し、気温年較差の大きい内陸性の気候となるだろう(ちなみに君たちは海に面していない県、つまり内陸県を全て挙げることができるだろうか。ちなみに47都道府県のうち8つが内陸県。わからない人は調べてみよう)。ただし長野県についてはその標高の高さも付け加えて考えなくてはいけないだろう。日本アルプスなどいくつもの急峻な山脈に囲まれた山岳県である。高原が多いので、標高が高い分だけ気温も低くなる。最暖月の平均気温は25℃近くに達するが、最寒月の平均気温は0℃に届かず氷点下である。冬季オリンピックが行われたくらいなのだから、とくに冬は冷える地域であると考えていいだろう。

以上のことを念頭において表を参照していこう。簡単なのがZの判定。冬季(12月~5月)の出荷はほとんどない。この時期とくに寒冷となって、キク類の栽培など行えないと思われる長野県が該当。

XとYについてはやや悩む。冬季の出荷は、Xが228900、Yが270800であまり変わらない。夏季の出荷が、X209200、Y5738で大きく異なる。これだけをとってみると、夏季の気温の差がポイントになってくるのではないかと考えられる。

しかし気をつけてほしい。沖縄県と愛知県の夏季の気温というのはさほど変わらないのだ。ほとんど同じ。いや、本州や九州で沖縄県より暑いところなんていくらでもある。例えば日本で最高気温を記録したのは東北地方の山形市である。内陸部に位置し、太平洋側から乾燥した熱風が吹き込んできた場合(これをフェーン現象という)極端に気温が上昇する。また、数年前のデータであるが、8月の平均気温を比べてみると、沖縄県より大阪府の方が実際に気温が高かったという事例がある。もちろん沖縄の夏は暑いというイメージを持ってくれていて構わないが、本州などの夏も同様に暑いのだ。そして北海道も暑い。そもそも日本で米の生産量が最も多いのは北海道なのだ。夏の気温が米の生育に十分なほど上昇するのである。北海道の夏については、やや涼しいというイメージはもっていて構わないが、決して寒いと考えてはいけない。冬季は北海道と沖縄の気温差は30度くらいあるが、夏季はせいぜい10度にみたない。

というわけで、やはりここは冬の気温に注目するべきだと思う。夏の気温は沖縄だろうが本州だろうがほぼ25℃で変わらない。それに対し、冬の気温は沖縄が15℃、本州の太平洋岸であっても5℃というように、差は比較的大きい。このこと決定的な手がかりとしてXとYを判定する。

ここからは推理力の問題であって、知識に頼れないだけ辛いと思うよ。できない人にはできないと思うし。まあ、それも仕方ないわな。センター試験というのは思考力の有無を問う試験でもあるので、決して誰にでもできるというわけでもないし。

それでもとりあえず考えるコツみたいなものはあるので、君たちにはそれをマスターしてほしい。

まず君たちは、地理とは統計学の側面も持っているということをはっきりと意識しておかないといけない。表やグラフが登場した場合は数量に注目し、それが絶対的な数量(実数)か相対的な数量(割合)であるかの判別をする。そして、それらを区別して混同しないようにしてから問題に取り掛かること。両者を使い分けながら、つまり実数で考えてわからなければ割合に直し、割合でわからなければ実数に直し、思考を進めていこう。

表1で示されているのは実数である。単位は1000本であり、何本のキク類が出荷されたのか、その実際の数が表されている。この実数を手がかりとして長野県の判定には成功したのだが、愛知県と沖縄県の判定は難しい。そこで、ここでは割合に直してから考えてみよう。

まずXの「228900」から。全国の出荷本数に対する割合を求めてみたいもんだが、残念ながらこの表ではそれが示されていない。そこでとりあえずX県の年間出荷額合計に対する割合を考えてみることにする。(228900÷438100=0.52)なので、52%。12月から5月の間の出荷は年間の52%。

同様に「209200」についても。(209200÷438100=0.48)で、こちらは48%。

つまりX県は季節による出荷本数の変化は少ないということ。冷涼な時季が52%で、暑い時季が48%であり、その差はほとんどない。

Y県について。冬季にあたる12月から5月の出荷は「270800」。年間の出荷が「276538」なので、(270800÷276538=0.98)という計算となる。この時季に年間の98%が集中している。

これに対し夏季の「5738」は、(5378÷276538=0.02)で、わずか2%。暑い季節の出荷はかなり少ない。

このことからどんなことが考えられるだろうか。なぜY県の出荷は冬季に集中しているのか。夏季になぜ少ない?冬に少ないのならば理由はわかる。寒くて栽培できないからだ。それなのにY県は夏に少ない。暑くなりすぎるから?いや、そんなことはない。夏の気温については、愛知県も沖縄県もほとんど同じようなもの。片方の地域だけ栽培に適さなくなるということはない。

ではどうして?う~ん、ここで答を言おうと思ったが、やっぱりやめることにするよ。ここからは自分で考えてほしい。僕の解説を読んで、それでわかったとしてもそれは君の力にはならない。それよりも、ここまで十分にヒントは示したのだから、最後の扉は君自身の手で開けてほしい。

最後にもう一つだけヒントを提示しておくけれど、それは金の問題。金っていうのは主に労働費と輸送費に分けられるんだが、日本国内で同じ農作物を栽培しているのだから労働費は関係ないだろう。つまり輸送費について考えろってこと。ここまでいえばもう答はわかったね。暑い時季には長野県みたいなところでもたくさんキク類が収穫されるのだから、わざわざY県のような遠くの県から運ばなくていいっていうことだよ。あれ、結局、答を言ってしまったな(笑)。

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