2003年度地理B本試験[第4問]解説

2003年地理本試験[第4問]

第4問 難易度が極めて高かった今回の試験の中では最もとっつきやすかったのではないかな。とくに第1問問1が地形図問題なだけに、実際の試験では第4問から取り掛かるのがベターな選択だったように思う。

ネタとしては中国がメインの素材として使用されている。中国は地誌が00B追第3問で登場したが、本試験では久しぶりかな。いつ以来だろう。とはいうものの、元来メジャーな国でもあり、さまざまな場面でさまざまなパターンで出題されてきた国であることは間違いない。そういう意味では君たちのとまどいも少なかったはずだ。

問1はきわめて容易。問2から問4も容易。問5は「フーチエン」「コワントン」という省名を知らないといけないので、ちょっとキツイかも。問6は統計問題であるので確実にクリア。問7も中国さえわかればいいので簡単。以上より、できれば全問正解、悪くてもミスは1問のみに抑えること。

 

問1 絶対数と割合の問題。類題は多いが、その代表例として00B追第3問問3を参照してほしい。ここでは「総消費量」と「1人当たりの消費量」が示されている。「総消費量」は実数であり、絶対的な数量。それに対し「1人当たりの消費量」は「総消費量÷人口」という計算によって求められる割合であり、相対的な数量。

このように絶対的な数量と、相対的な数量とが同時に示されている場合、この2つの数の関係を考え、計算によって何かが求められないかを考えることが大事となる。

ここでは、「総消費量÷人口=1人当たり消費量」なのだから、「総消費量÷1人当たり消費量=人口」という式が成り立つことを考えなくてはいけない。人口が求められれば、それぞれの国を判定することは容易だろう。

選択肢の国も、インド・タイ・中国・ロシアである。世界の人口ベスト10はマストアイテムなのだから、君たちは中国とインドとロシアの人口規模はわかるはず。人口ベスト10の圏外にあるタイは少なくともそれらよりは人口は少ないのだから、迷うことはないだろう。それぞれ実際に人口を計算してみて、それを4つの国に当てはめてみる。

では、03年の問題に戻ろう。ここでは表ではなくグラフとして数値が与えられているが、その内容は00年の問題と変わらないことが分かるだろうか。点々のグラフは「中国系住民の人数」ということで「絶対的な数量」。つまりこれは実数である。単位も「万人」となっている。

では黒く塗りつぶされたグラフはどうか。「中国系住民の割合」である。では何に対する割合?これは問題文を参照する。「各国人口に対する割合」となっている。つまり「中国系住民の人口÷その国の総人口」を表しているということになる(単位は「%」なので、×100をしないといけないが)。

人口を計算してみよう。

A・B・Cを比較。具体的に計算するまでもないだろう。その大小は、A国が最大、それに次ぐのがB国。C国の人口は少ないことが想像できる。

候補とされている国々をチェック。インドネシア・シンガポール・マレーシアである。インドネシアの人口は必須。約2億人である。人口規模世界第4位の国であり、これは知っておかなくてはいけない。

シンガポールについては、サイズの極端に小さい特殊な国とインプットしておけば十分だろう。97B本第2問問6の表において、シンガポールの人口は約300万人であることが示されていることにも注目。また01B追第2問問4においては、シンガポールの第1次産業人口の少なさが話題とされており、やはりここでも特殊な人口構成を持った国であることがわかる。商業に特化した国であり、農業などはほとんど行われていない。00B本第1問問3においても、シンガポールの人口の少なさが問題を解くカギとなっている。人口規模の小さいシンガポールは、パソコン保有台数は人口規模の大きい米国や日本などに比べ低い数値になっている。

マレーシアの人口については知らなくてもいいだろう(97B本第2問問6の表で約2000万人であることが示されているが)。シンガポールより多くの人口を持つことが想像できればいい。

以上より、人口規模は「インドネシア>マレーシア>シンガポール」という大小関係となる。

よって、Aはインドネシア。実数が800万人、割合が5%程度なので、全体の人口は2億人近くとなる。

Bはマレーシア。実数が500万人弱、割合が20%弱なので、おおよそ2000万人ほどの人口と計算される。

Cはシンガポール。実数が200万人、割合は50%を超える。人口は300万人くらいだろう。

 

問2 シンガポールとマレーシアの民族に関する問題は頻出である。ここでは参考問題として97B本第2問問6を挙げておく。

シンガポールの人口は約300万人程度であるが、そのうち75%が中国系住民である。それ以外にはマレー系やインド系など。公用語は中国語、マレー語、タミル語(インド南部の言葉)に加え、国家の統合をはかるため英語も採用されている。

マレーシアの人口は約2000万人。民族構成は、マレー系:中国系:インド系が「6:3:1」の割合。マレー語のみが公用語とされ、多数派であるにもかかわらず経済的には低い地位におかれているマレー人を優遇する政策をとっている。

以上より、選択肢3と選択肢4は誤りであるとみなされる。選択肢3は「ヒンディー語」を除外し「マレー語・タミル語」を付け加える。選択肢4は「経済的実権を握る中国人」を「経済的にめぐまれないマレー人」に置き換える。

ここまでで、正解は1と2にしぼられる。ここからの判定は容易だろう。イギリスに果たして中国系移民が多いのか。イギリス国内の外国人数については、99A本第2問問3で問われている。総人口6000万人の内、外国籍人口は200万人。同じEU諸国である隣国のアイルランド人が最も多く、80万人。アジアからの流入も多いが(25%なので、50万人くらい)これは旧植民地であるインドやパキスタンなどからの出稼ぎ労働者。インド系住民がさまざまな国にみられる様子は、00B本第2問問7図4参照。円の大きさがインド系住民の数を示す(このような図を「円積図」という)のだが、イギリスに住むインド系住民の人口は100万人近くに達するようだ(前述の「50万人」というデータと相違しているが、このくらいは誤差として許してほしい)。

以上のことより、イギリスの外国人労働者としてはアイルランド人がとくに多く、アジアからの流入も大きいが、その大半はインド出身者であることがわかる。選択肢1は誤りであるとみていいだろう。

よって選択肢2が残り、これが正文。オーストラリアの人種民族政策については97B本第2問問4などで出題されているが、とくに特別な知識は必要ないだろう。本問についても消去法で解くべき。

参考問題として99A本第2問問1図1のaの矢印を参照してみよう。中国の南部(華南という)から米国の太平洋岸に向かって矢印が伸びている。これに該当する文は「主に鉱山・農園労働者としての移動であったが、現在では、彼らの子孫は商業・金融分野で活躍している」である。20世紀初期までに華南地方から多くの人々が海外に移動していった。東南アジア・日本・米国などの太平洋岸地域に。彼らは「華僑」とよばれ、移住当初こそ貧しい経済状況の中で苦しい生活を送っていたものの、強い連帯感を保持し、多くの華僑たちが支えあうことによって次第に頭角を現し、幾多の困難を乗り越えた末にその地域の経済的実権を握るほどの富裕層へと転化していった。移住先の国で国籍を取得し、完全に現地人化した彼らの子孫はやがて自分たちのことを「華人」と名乗るようになった。華僑の僑には「一時的な移動者」という意味があるのだ。僑の字を取り去って、この地に根を下ろし現地人として子孫の代まで永住するのだという彼らの意思が表れている。

 

問3 なかなかおもしろい問題。ちょっと悩んだりするけれど、でも落ち着いて考えれば正解にたどり着けると思うよ。

1;これはよくわからないのだが。しかし、例えばシンガポールとマレーシアの関係など想像すればどうだろう。それぞれの国の何百万もの中国系住民たちが交流せずに暮らしていると考えられるだろうか。中国系住民はそれぞれの国において経済的な実権を握っている。都市に居住し、商業活動の中心をなす。「金は国境を越える」という定理を考察してみよう。世界を動かすのは金である。人々は金を求め、つまり利潤を追求し、さまざまな経済活動を行う。商売の対象は海外へも広がる。金に国境は関係ない。世界中の国々と貿易し、いくつもの国をまたにかける企業も数多い。それなのに、中国系住民の経済活動だけが「その人々が住む国内に限られる」なんてことがあるだろうか。

2;一人っ子政策は、あくまで「政策」であって、中国政府の支配下にあってこそ成立するものだと思う。それが果たして海外にまで効力を持つものだろうか。一人っ子政策の適用の範囲については00B追第3問問2選択肢2などで問われている。この時は「漢民族にのみ適用」というパターンであったが、本問は「国外の中国系住民には適用されない」という論旨であり、やや異なる。よってこれについてはもう想像するしかないのである。とはいえ、まさか国境を越えて政策が施行されるというのもおかしな話である。本選択肢は容易に否定されるのではないか。

おっと、ここでちょっと休憩。選択肢1と選択肢2の対照がおもしろい。1は投資などの経済活動についての話題、2は政策という政治についての話題。前者は国境を越え世界に広がるが、後者の影響はその国内に限られる。こういうのって当たり前なんだけど、こうやって改めて文章の形で目の前に提示されるととてもおもしろいと思う。世界を動かすのは政治家ではなくて企業家なんだなっていう感じがするし、おそらくそれは事実なんだろうね。「金は国境を越え、政治は国境を越えない」ということ。世界を動かすとしたら、空論をかざす政治家になるよりも、ひたすら利潤を追求するビジネスマンになるべきなのだろう。

3;マレーシアの状況を考えてみようか。国民の6割が先住民であるマレー系なわけだが、彼らは経済的には恵まれない。農村で農業にたずさわることが多く、低所得である。国民の3割に当たる中国系住民がこの国の経済の中心。都市に居住し、商業などに従事する。「農村=マレー系(貧しい)、都市=中国系(豊か)」という公式を頭に突っ込んでおくべきだろう。

このことから、現在でも中国系住民は主に都市居住者であると考えるべきだと思う。もちろん郊外に居を移した者も多少はいるだろうが、ほとんどは都市の活気の中に身をおき、商工業や飲食業などで生計をたてていると考えてほしい。

米国のチャイナタウンを想像してみてもいい。都市の内部にいくつもの外国人地区が形成されているが、その一つとして中国からの移民たちも中国人地区に集中して住み、それはチャイナタウンとよばれている。「人種のサラダボウル」ニューヨークのチャイナタウン、サンフランシスコの世界最大のチャイナタウンなどが有名。中国系住民の経営する商店や飲食店が軒を連ね、その都市の経済活動の一翼を担っている。

日本においても、もちろんこの傾向はある。横浜・神戸・長崎のチャイナタウンが有名であるが、それぞれ街のど真ん中に位置しているではないか。

以上、消去法により4が正解。移住者は当初は「華僑」とよばれたが、現地人化する課程で「華人」とよばれるようになった。「現地人化する」というのは現地の国籍を取得するという意味であるが、同時に現地の文化や習慣を受け入れその社会に同化するという意味も持つ。

 

問4 これは素直に考えよう。

まずアメリカインディアン。関連問題は97A追第2問問5と97B本第2問問3選択肢1。かつては東部の降水量が豊かな森林地帯に分布していたインディアンたち。白人の侵略とともに土地を追われ、迫害され、荒涼たる西部の枯れ果てた大地に押し込められた。

黒人(アフリカ系住民)の分布については99B本第2問問6で出題されている。米国の東南部メキシコ湾岸の地域のことを「南部」という(一般的に南部といった場合、テキサス州以西のメキシコに隣接する州は含まないので注意。米国南北戦争の際に、南軍に加担した州のことを総称して南部というのだ)。ここで割合が高い選択肢2が黒人の割合を示したものと考えていいだろう。アフリカから奴隷が運ばれて農業労働者として利用された綿花地帯と一致する(03B本第2問問5でも言及されているように、現在では綿花だけでなく、大豆やトウモロコシも栽培する多角経営農業地帯に変化しているが)。

現在では奴隷は存在せず、黒人にも自由が与えられたものの、この地域にとどまる者が多いため、米国南部諸州の黒人人口割合は高いものとなっている。

やや発展的事項として、五大湖沿岸など北部でも黒人人口割合がやや高くなっていることにも注目してみよう。米国独立当初は奴隷として運び込まれてきた黒人であったが、19世紀の米国南北戦争の結果により奴隷解放がなされ、彼らは自由を手に入れた。南部の地に落ち着いた生活を続ける者も多かったが、同時に、より高い賃金を目指して他の地域に転出する者もいた。19世紀後半から20世紀前半は自動車産業が急成長した時期と重なる。北米五大湖に接するデトロイトなど、北部の町で急速に工業化が進み、多くの工場が建設されていく中で、より多くの労働者が求められるようになった。もちろん自動車工業なのだから、南部の地で細々と農業に従事するよりもはるかに高い賃金を得ることができる。自由を手にした黒人たちは、職業選択の自由によって北部へと移住し、工場労働者となったのだ。

以上より、黒人の人口分布は、「南部」が中心と押さえておけばいいが、一応「北部の都市」にも多いことを知っておいてもいいだろう。

次いでヒスパニック。ヒスパニックとは「スペイン語使用者」という意味で、彼らの特徴としては英語を覚えようとしないこと。中国などアジアからの移民、そしてイタリアや東欧などヨーロッパからの移民などは、彼らの伝統文化を尊重する一方で、米国の英語社会に速やかになじみ、英語も流暢に使えるよう修練するのだが(日本人も米国に行ったら英語を使おうとするよね)、ヒスパニックはそうではない。米国内のスペイン語人口は比較的多く、スペイン語だけしか知らないとしても生活にはそれほど困らないのだ。とくに都市内部のスペイン系住民地区などではむしろスペイン語しか通用しないくらいであり、そんな彼らが英語を覚えようとしないのはむしろ当然なのだろう。とはいえ、米国はあくまで英語社会。公用語も英語のみ。それを使用しない人口がふくれ上がれば、さまざまな点において不都合が生じてしまう。ヒスパニックの拡大を抑えることが、米国社会の大きな課題となっている。

ヒスパニックは大きく3種類にわけられる。最大の勢力はメキシコ系住民。メキシコ国境を越え米国に流入するため、メキシコ国境沿いの州での人口割合が高い。キューバからの移民も多い。政治的に対立するキューバではあるが、位置的な近さもあって、不法に流入し、そのまま米国に亡命する者も多い。やはり位置的に近いフロリダ半島にキューバ系住民が多い。さらにプエルトリコ系。メキシコ湾に浮かぶプエルトリコ島は米国の自治州であり、その支配を受けているところであるが、英語は使用されず、ここの公用語はスペイン語。貧しいプエルトリコを脱し、人々は米国内で職を探そうとする。とくに都市内部にプエルトリコ人地区が形成されているニューヨークなどに流入する人口が多い。

以上のことを頭に入れて図を参照すると、4がヒスパニックに該当することがわかる。テキサス州からカリフォルニア州にかけてのメキシコ国境に接する州で大きな値を示している。キューバからの亡命者が多いとみられるフロリダ州も黒く塗られている。また、ニューヨークの割合も高い(ただしここは2や3の図でも黒く描かれているので、あまり参考にはならないが)。

中国系住民は太平洋沿岸地域に多い。人口過密な華南を離れ、東南アジアや日本、そして米国太平洋岸へとさかんに移住していった。よって3が該当。先の問題でも述べたように、カリフォルニア州サンフランシスコには世界最大のチャイナタウンがある。北部や東部でも一部に割合の高い州があるが、これはシカゴやニューヨークといった大都市内部のチャイナタウンに住む中国系住民を表す。

問題の外見上のスタイルは99B第2問問6に似ているものの、スマートさにおいてはずいぶん差があるなあと思う。03年の問題の選択肢はよりバリエーションに富んでいて、経済的な指標(1人当たり所得)、自然地理的な指標(農地面積)、歴史・文化的な指標(黒人人口)など、着眼点が実におもしろい。それに対し03年の問題は、単に「太平洋岸に中国系住民が多い」というひねりも何もない退屈なトピックのみが出題の対象。両問は似ているが、その質には大きな差があるね。

最後におまけであるが、本問の図が「階級区分図」であることも確認しておこう。階級を示すモノサシが示され(図の下の方に「大←→小」と書かれた4つの四角があるね)、それぞれ割合の高低によって色分けされている。階級区分図は相対的な数量(割合・率)を表すものであるが、本問でも民族割合の高低を示すために利用されており、この使い方は正しい。

 

問5 何とも微妙な問題。できたかな?

中国の省の名称についての知識が若干必要となっている。過去の出題例の中から、中国の省(米国の州に該当する行政区分)を問う問題を探してみよう。00B追第3問問1参照。Aの省はどうでもいいので、BとCに注目。

Bの省を説明した文はアである。ここはスーチョワン省というところ。中国内陸部は人口流出地域であるが、その代表的な省としてスーチョワン省がある。長江の上流にあたるスーチョワン盆地は古くから米と小麦の二期作がなされ、多くの人口をかかえる農業地域として栄えてきた。しかし近年は、沿岸部の発展に取り残されるかたちで衰退が激しく、国内で最も貧しい地域となってしまった。省内総生産も少なく、さらにもともと人口が多い地域なので、一人当たり省内総生産(省内総生産を人口で割る)も最低レベルである。人々は高賃金を求め、省外に出稼ぎに出る。

Cの省はコワントン省。説明文はイ。ここと、東隣りの省であるフーチエン省、そして南方に浮かぶ島からなるハイナン省を合わせて「華南」という。山地が海に迫った地形であり、耕地に恵まれない。食料に比べ人口が過密であるので、かつては海外へと多くの移民を送り出した地域であった。東南アジアや日本、そして米国太平洋岸に移住していった彼らは華僑と呼ばれた。しかし、入り江が多く、港湾に適する地形が多いことから、1980年代には貿易や商工業で発展していくことになる。コワントン省に3ヶ所、フーチエン省に1ヶ所、ハイナン省に1ヶ所、それぞれ経済特区が置かれ、外国企業がさかんにこの地に進出するようになった。またスーチョワン盆地など国内の貧しい地域からも出稼ぎ労働者などが殺到し、この地域の工業化の基礎となっている。華南は、現在最も成長の著しい地域として世界の注目を浴びている。

中国の省でその名称が重要となってくるのは、ここで述べたスーチョワン・コワントン・フーチエンの3つだと思う。これらの位置と特徴をしっかり押さえることが必須。

では問題の選択肢を検討していこう。

1;「1968年の出身地は特定の地域に集中している」そうだが、確かに上位5つの省だけで全体の90%以上を占め、「それ以外」がわずか8.5%。

それに対し、98年は「その他」が30.9%になるなど、さまざまな地域からの移民の割合が高くなっていると考えられる。「集中の度合いがさらに強まっている」とはいえないだろう。

2;ここでポイントになるのは「華南」という地域名。非常に重要な地域であり、そこに属する省名は知っておいた方がいいだろう。華南に属する省として重要なのは「コワントン省」と「フーチエン省」。これ以外にコワントン省から分離した「ハイナン省」もある。また、ホンコンとマカオも省から独立した存在ではあるが、立地的にはコワントン省に隣接しており、これらも華南のカテゴリーに含めていいだろう。

(参考)ホンコンは1997年にイギリスから、マカオは1999年にポルトガルから、中国に返還された。ともに植民地時代は本国イギリスやポルトガルと同様に自由主義経済によって商業が発達していた地域であり、中国返還後も経済体制はそのままの形で保持された。中国本国の社会主義経済とは反するものであるが、貿易港として重要な点や外国との交流もさかんであることなどから今さら社会主義に転換するわけにもいかない。中国としても、(理想の社会主義国家の完成を目指すという)建前よりも、(ホンコンやマカオの経済的発展を利用するという)本音を優先させたということだろう。こんなところにも「政治より経済」が重要視される現在の国際社会の様子がうかがえておもしろい。以上のような経緯によって、ホンコンとマカオはそれぞれ「特別行政区」として、植民地時代と比べ経済的な変化は最小限に抑えられる格好となった。ちなみに、中国本土は社会主義経済(計画経済)でありながら、ホンコンとマカオだけは資本主義経済(自由経済)であるといういびつな経済構造については「一国二制度」というキーワードで知っておいてほしい。「」参照。ここでは統一ドイツについて「一国二制度」という言葉が用いられているが、もちろんこれは誤り。こんな強引なシステムで乗り切っているのは世界広しといえども中国だけ!

選択肢2に戻ろう。68年のデータ参照。この中で華南の省はフーチエンとコワントンのみ(ちなみにハイナン省はこの時まだコワントン省の一部であり、独立した省ではない)。この2つの省からの移民を合計すると11500人、割合にすると全体の49.2%。

しかし、この49.2という数字が何とも微妙なのだ(涙)。選択肢の文には「半数を占めた」ってあるよね。しかしこの2つの省の出身者はわずかではあるが50%に達していないのだ。この微妙さをどう考えればいい!?わからんのでとりあえず保留にしておくよ。

では文章の後半部分も検討していこう。「人数が減少し、割合も低下している」とある。人数は絶対的な数値であり、割合とは相対的な数値。問1の解説でも触れたが、地理ではこの2種類の数値の性質の違いを意識した問題は非常に多く出題されている。実数は増えたけれども割合は低下しているケース、実数は減ったけれども割合は上昇しているケース、ともに十分考えられることなので、表やグラフにおいて実数と割合が示されている場合にはその区別をしっかりしておかなければいけない。<br>

フーチエンに注目。68年は6200人で26.5%、98年が23600人で10.2%。さあ、どうだろう?相対的な数値(割合)としては低下しているけれど、絶対的な数値(実数)としては増加しているではないか。コワントンに関するデータが98年では表中で示されていないのでこちらについては何ともいえないが、少なくともフーチエンに関しては「人数が減少し、割合も低下している」とはいえない。

というわけで本選択肢は後半部分が完全に誤りなので、解答の候補からは除外する。先ほど保留しておいた「半数を占めた」についてはどうでもいいってことだね。

3;東北地方に属する州はどこだろうか。よくわからない。保留。

4;表中の省や都市は全て臨海部なのだろうか。確実にわかっているのは、フーチエンとコワントン。これらは華南地域でしかも経済特区という外国企業がさかんに進出している港湾都市を含む省であるので、間違いなく臨海部。ただしそれ以外がかなりあいまい。

以上より、1と2が確実に誤文であるので、あとは3と4でカンに頼って答を導くしかない。

ここからは理屈で解いてみようか。

選択肢3について。選択肢2を検討しながら、華南地方の出身者数の割合は68年にくらべ98年では低下していることはすでに確認した。ということは逆の見方をすれば、華南以外の地域の割合は相対的に上昇しているということになる。選択肢3において「東北地方」と書かれているが、ここは華南とは位置的にみて正反対の地域だろう。華南というのは文字通り中国の最南部のことであるし、東北地方とは距離的にかなり遠いと推測される。華南の割合が低下した分、東北地方の割合が上がっていると考えて、矛盾はないだろう。

選択肢4について。68年というのはまだ中国が改革開放政策をとっていない時期である。まだ外国企業の国内への進出もなされていない。それに対し、98年はむしろ中国こそが世界最大の経済成長地域となっており、状況は一変している。このことをふまえながら、表を参照していこう。中国がまだまだ開放政策をとっておらず外国との交流の薄かった時期である68年の上位6位までは、フーチエン・コワントン・チヤンスー・チョーチヤン・シャントン・ホーペイ。著しい発展を続ける98年は、シャンハイ・ヘイロンチヤン・リヤオニン・フーチエン・ペキン・チーリン。2つの年代で、フーチエン以外は全て入れ替わっており、合計11個の地域の名称が表中に挙げられていることとなる。この11個の地域全てが果たして海に面しているかどうかっていうことなんだよなぁ、ポイントは。どう思うかな?ここから先は君たちの判断に任せるが、例えば同じ冊子に含まれている地理Aの問題で中国の簡単な図(残念ながら省や市ごとに区切られたものではないが)が第2問問2図1にあるが、それを参照しながら大まかに考えてみてもいい。あるいは00B追第3問問1の図をがんばって思い出すか(そりゃ無理かな?)。いずれにせよ、何となくでいいから、中国において海に面している部分はそんなに多くはないわけで、まさかこの11の地域全てが臨海部に位置しているとはちょっと考えられないのではないかと推理してほしい。ここまでくるとカンなんだけれどね。

というわけで最後はどうしもカンに頼らざるを得ないような気がする。とはいえ、選択肢1と2は確実に消すことはできるし(フーチエンとコワントンの名称はマスト)、残りの選択肢についても3はおそらく正文であると断定できると思う。よって難易度はさほど高くなかったのではないかな。

ちなみに、僕がこの問題を解いた決め手というのは「ペキン」。ペキンというのはシャンハイとは違って、実はやや内陸部に位置する都市なのだ。00B追第3問問1図1でいうならば、Aと書いてある省のすぐ右下にある狭いエリアがシャンハイ。ペキンはA省から2つ分だけ北に行った省の内側にある狭いエリアの一つで、より内陸部にある方。同じく問4選択肢2でもペキンの位置が話題とされており、図4でその位置を確認しておくといい。

こんな感じで、一応、過去問でペキンの位置に関するネタが出題されているともいえるのだが、それだからといって、ペキンの位置を知っておけっていうのはちょっと辛いと思う。やっぱり本問については、ある程度カンに頼らざるを得ない部分が出てくる。

 

問6 貿易統計の問題。本年はなぜか第2問問7や第3問問5でも貿易統計が問われているが、それらはいわば重箱の隅をつついたような特殊な問題。それに比べて本問は貿易の根本原理にかなったスマートな問題となっており、出来はかなりいい。他の2問の出来の悪さとは雲泥の差。

君たちにぜひ知っておいてほしい貿易の大原則がある。「最大の貿易相手国は隣国である」ということ。この公式をまず頭に叩き込め。

具体的な例を挙げておく。米国の最大の貿易相手国はカナダである。カナダは米国でメキシコは米国。ドイツはフランスで、フランスはドイツ、スペインはフランス。ニュージーランドはオーストラリアだが、オーストラリアはむしろ日本や米国が多い。これはニュージーランドがかなり規模の小さな国なので貿易額が大きくはならないと考えれば納得。日本や米国だって太平洋をはさんだ「隣国」といえるし。

でもこれはよく考えたら当たり前のことだね。君たちだって授業で消しゴムを忘れたりしたら、まず隣の人から借りようとするよね。それと同じことで、わざわざ遠くの国から輸入するなんていう面倒なことはしないで、できれば近くの国から物を運んできた方が便利がいい。

もちろんこの公式には多くの例外はあるけれど(例;アフリカの国々は旧宗主国との貿易がさかん。社会主義国キューバはロシアにとくに輸出が多い。東南アジアの国々は日本の企業が進出しているため、日本からの輸入が多い)、一般論として、ごく当たり前のことだとして理解しておいてほしい。

例えば中国とホンコンの貿易の様子を想像してみよう。行政的には同一の国なのだが(もちろんホンコンは中国の一部)、経済的には独立していると考えられる(社会主義経済の中国に対して、資本主義経済のホンコン)ので、産業や貿易の統計においてはこのように中国とホンコンを別個の存在として表すことが多い。

図を参照。中央に描かれているホンコンからはEに向かって太い矢印が通じている。ホンコンにとっては、選択肢の3ヶ国の中ではEが最大の貿易相手となる(輸出は599、輸入は387)。韓国、中国、日本の中で、ホンコンと最も密接な関係を持つ国はどこだろうか。先にも述べたように、中国は社会主義である。ホンコン・韓国・日本の資本主義とは異なる。しかしソ連が崩壊した現代社会においては社会主義は形だけのものとなり、社会主義国だから資本主義の国々とは貿易しないという時代は過ぎ去った。今や、社会主義と資本主義の枠を超えて、いずれの国においても積極的な貿易がなされているのだ。

このことから考えて、中国とホンコンの間でとくに貿易額が大きいことが想像できるのではないか。中国で生産したものを一旦ホンコンに持ち込んでそこから世界に向けて輸出する。あるいは反対に、世界からの物資がホンコンに届き、それをさらに中国本土に持ち込む。このような貿易パターンが考えられると思う。Eは中国である。位置的な近さと貿易額の大小が比例している典型的な例。

というわけで、ホンコンと中国の間には「近い国との貿易がさかん」という公式が成立しているので理解が容易。しかし困ったことに、実は日本と韓国の間については全くこの公式が通用しないのだ!日本や韓国のような世界有数の貿易国において、まず隣国との貿易を優先しないのは極めて珍しい例である。前述したように北米やヨーロッパの先進工業国においては、貿易相手第1位はほとんど隣国。それなのに、日本と韓国の間にはそのパターンがあてはまらない。いったいこれはどうしたことだろう。

日本の貿易相手国についてそのままの形で出題されたものとして02A本第3問問6があるので参照してみよう。日本の輸出相手国1位が米国、2位が中国である。韓国はなんと台湾やドイツを下回り5位となっている。このように日本の貿易相手国については、1位2位を米国と中国が占めており、韓国の割合はさほど高いものではない。また各自で統計資料集を確認しておいてほしいのだが、韓国においても貿易相手1位は米国であり、日本はそれに次ぐ地位に過ぎない。

それにしても、これってものすごくおかしくない?僕はめちゃめちゃ疑問。何でこうなってしまったのだろうか。それなりの工業水準や経済レベルを持つ国同士は協力して、一つの経済圏をつくっていくべきだと思うんだが(ヨーロッパのEUや、北米のNAFTAがこれに当たる)、日本と韓国の間はそうなっていない。日本と韓国とでお互いに足りないものを補い合い、国際的な分業体制を整えていけば、ヨーロッパや米国に対抗できる重要な工業地域となりえるだろうし、EUやNAFTAのような関税を撤廃した自由貿易協定を結べば、両国はともに発展し、いずれ欧米をしのぐ一大経済圏が成立するのではないか。

しかも、このようなことをいうと韓国は気を悪くするかもしれないが、両国は旧宗主国と旧植民地の関係にあるではないか。アフリカの国々の多くは現在でもかつての宗主国との経済的なつながりが強く、貿易もさかんに行われている。とくに日本と韓国の関係は、イタリアとリビア、フランスとアルジェリアの関係にもなぞらえることができる。いずれも、位置的に近い、旧宗主国と旧植民地の組み合わせである。リビアやアルジェリアの最大の貿易相手国がそれぞれイタリアとフランスであるのは極めて妥当なことだと思うのだが、日本と韓国の関係はそうではない。

以上のようなことを意識しながら表をながめてみよう。日本は世界第3位の貿易額を誇る経済大国である。とくに貿易黒字の額は世界最大である。Fを日本と考える。D・E・ホンコン、いずれの国・地域に対しても貿易額が大きい。とくに日本と中国の間の矢印が太いが、これは日本からみて中国は貿易相手国第2位ということと合致している。ちなみに日本と中国の関係をみてみると、日本からの輸出が「201」、中国からの輸出が「297」であり、日本からみて輸入超つまり貿易赤字となってしまっているのである。先にも述べたが日本は世界最大の貿易黒字国。しかし、中国に対しては輸入が輸出を上回り、赤字となってしまっている。これはおかしくないか?どういうことなんだろう?でもよく考えてみるとこれは納得なのだ。現在も我々の生活の中には中国製の製品があふれている。衣類の多くや、100円ショップで売っているような軽工業品のほとんどは中国製である。このことからいかに日本が中国からいろいろなものを輸入しているかが想像できる。日本の企業が中国に工場を移し、そこで安価な労働力(中国は一人当たりGNPが低い、つまり経済レベルが低いので、賃金水準も低いのだ)を雇って、さまざまな製品を組立てさせているということだ。日本は貿易黒字ではあるが、中国に対しては貿易赤字である、ということは普段の生活の中に中国製品があふれかえっているという事実を結び付けておけば、連想可能なことであり、知識として知っておいてもいいだろう。

残ったDが韓国となる。先にも述べたように韓国の貿易相手第1位は米国であり、そのことだけでも統計で確認しておこう。

以上のような手順で問題を解くことはできる。つまり、ホンコンと中国のつながりを考え、さらに日本の主要貿易相手は米国と中国であり、韓国との貿易額はそれほど大きくないことを知っておけば、解答にたどり着く。

一件落着したところで話を元に戻すが、日本と韓国の関係ってどうしてこういう風になってしまったのだろう。韓国の反日感情はそこまで酷いものなのだろうか。今でこそ、日韓ワールドカップの影響からか、日本と韓国の距離って以前に比べて近づいたような気もするんだがどうなんかな。いや、その日韓ワールドカップも「韓日」といわないといけないんだったかな。こういうところに神経質にならざるを得ないっていうところにも両国の関係の微妙さが現れていて、何となくイヤだけどね。韓国のタレントにしても、昨年くらいからひんぱんに日本のテレビに出るようになったけれど、ほんの数年前ならこんなことは考えられなかったからね。急速に日本と韓国の距離が縮まった印象はあるけれど、それならそれで、ではなぜ今まではそんなに大きな溝が両国の間にあったのかが気になって仕方ない。日本国内にも在日韓国人の方はたくさんいるわけで、日本人から見て、韓国は特別な国ではなく、普通の隣人として普通に付き合える間柄にはなっていると思う。そういった親近感が、政治や経済の面においても現れてくるといいな、とは思う。

 

問7 こういった問題というのは複雑に考えず、シンプルにやっつけてしまうのが一番。もっとも動きの際立っているものを選べばまず間違いない。例えば、98B追第1問問8参照。問題文を見るまでもなく、最も妙な動きを示している2を解答(つまり、日本に該当する)と断定してしまっていい。センター試験なんてそんなもんだよ。下手に考え込むと、逆にドツボにはまるぞ!?

というわけで最も特徴的な動きをしている1を正解とする。おそらくこの解法が最もベター。

しかしいくらなんでもこんな当て勘に頼るやり方はヒドいと思うので、もう少ししっかり考えてみましょうか。

中国のキーワードは「急成長の時期は現在」。21世紀を迎えた現代世界において最も経済成長率が高いのが中国。この図では99年までしか表されていないが、80年代から比べてみて大きな伸びを示している1こそ中国にふさわしいのではないか。例えば、99B本第3問問4を参照してほしい。これも95年までしか示されていないが、現在最も高い伸びを示しているaを中国と判定していいだろう。

2・3・4については判定の必要はないが、「韓国=80年代」というセオリーからこの時期に値の大きな3が韓国、近年工業化が進みやはり値が大きくなっている2がタイ。フィリピンはまだまだ開発が進まず、値も小さい。4が該当。

なお、ここまでの解説ではあえて「対外直接投資」という言葉には触れなかった。とくにこの言葉を意識しなくても十分に解答が可能だからだ。しかし一応説明しておこうか。これは具体的に「工場を建設すること」であると考える。例えば日本国内に対する諸外国からの対外直接投資額(日本からみれば「対内直接投資」である)はきわめて小さいものとなる。だって日本に工場つくってもしょうがないでしょ?逆に日本から海外に工場は多く進出しているわけで、日本にとってこの対外直接投資の額は大きくなる。このことについては01B本第2問問3で取り上げられているので参照してみるといい。「対外」が大きく「対内」が小さいのが日本。

で、このことと関連させて参照してほしいのが、02B本第2問問3。日本企業の海外現地法人数(ようするに外国に進出している日本企業ってことだね)の多い国は、米国、中国、そしてタイの順。本問でもタイへの直接投資額が中国に次ぐものになっているが、近年とくに重要性が高まってきた国としてタイを知っておくべき。港湾や道路などのインフラが整っているわりには賃金水準は低く(1人当たりGNIは約2000$/人)、日本から製造業の工場が進出しやすい状況となっているのだ。

 

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