2003年度地理B本試験[第2問]解説

2003年地理B本試験[第2問]

ちょっと珍しいパターンじゃないかな?こんな特定の地域だけ取り出して、さらに特定の分野だけ聞く(ここでは一次産品)なんてパターンはあまりなかったような。

この大問は各小問ごとに見ていくと、良問のグループと悪問のグループとにはっきりと分けられる。これはどうしたことなのだろうか。大問全体を一人の人間が作っているのではなくて、複数の者で分担しているんだろうね。問題の出来不出来の差がちょっと激しい。

まず良問から。問1は簡単なので僕は好き(笑)。問2も僕好み。簡単なところがいい。問3は「南米大陸は大土地所有制」というテーマをもとに問題を作っている点がいい。選択肢のつくり方も上手で、適切な勉強した者ならば確実に得点できる。問5もありがちではあるけれど、農作物の名称をはっきりとさせ、ホイットルセー農業区分を考慮した問題となっている点などが高評価。これも必ず正解してほしい。

では悪問。問4はよくわからん。出題意図が見えない。問題自体の難度はさほどでもないので何とか解答は可能だが。それでも選択肢が5つあるというのはいかがなものか。問6は選択肢が4つだけなので一見するとまともな問題なのだが、内容が厳しい。メキシコに関する確実な理解が求められているのだが、どうだろう。この国は人口も多く(世界11位)、世界最大の経済協力グループNAFTAの一員でもあるなど、重要性の高い国でもあり、このくらいのことは問われて当然か。問7は貿易統計問題としてはこれはいくら何でもイジワルすぎる(涙)。エクアドルやコロンビアなんて登場国がマイナーすぎる。カナダとチリはメジャーではあるが、それでも貿易品目3位や4位にあたるものなんてわかるはずがない。

以上より、問1問2問3問5はマストで正解するとして、問4問6問7をいかにクリアするか。ここを1問ロスで乗り切ってほしい。第1問や(とくに)第3問に難問がそろっているので、第2問で失点を抑えないと全体としては厳しい。

 

問1 オーソドックスな設問。ここでは明確な数値として「農業就業人口率」に注目しよう。<br>

第1次産業というものを知っているだろうか。農業・林業・水産業などのことである。わずかではあるが、狩猟や採集によって生活を成り立たせている人々もいるので、それらも第1次産業に含めて考える。01B追第2問問4参照。「全就業人口に対する産業別就業者の割合」を示す表がある。「農林水産業・狩猟」という項目に注目してほしい。ここで表されている「11.0」「24.2」「0.3」「1.8」などの数値こそが、農林水産業・狩猟に従事する人々の割合であり、まさに「第1次産業人口割合」なのだ。

問題に戻るが、ここでは「農業就業人口率」と書かれており厳密には第1次産業人口率とは異なる。ただし、第1次産業のほとんどは農業に限られる。林業従事者はどの国も少ないし、水産業は日本では比較的多いものの世界的にみればこれもやはり従事者は少ない。狩猟・採集者に至っては無視できる程度しか存在しないだろう。このことより、大まかにみて「農業就業人口=第1次産業人口」と考えていい。

第1次産業人口割合について最も重要な点は「先進国で低く、発展途上国で高い」ということ。このことを大原則として考えながら、さらに細かいところまで理解していこう。<br>

では表を参照してみよう。1と2で農業就業人口率が高い。3は低めで4はかなり低い。農業のキーワードとして重要なものに「家族による零細経営的農業」というものと「企業的農業」というものがある。前者はアジアやアフリカなど伝統的農業が営まれている地域における農業形態で、家族を単位として規模の小さな農業が行われている。後者はとくに新大陸(南北アメリカやオセアニア)の農業形態であり、巨大な資本を投下して大規模な農業が行われている。機械の導入が積極的になされ、徹底的な省力化が進む。農業従事者の数は少なくてすむ。

このことから推測するに、1と2はアジアとアフリカに該当するだろう。企業的農業に比べ家族経営的な農業は機械ではなく労働力に頼る割合が高く、農民の数も多くなるはずである。

よって3と4は北アメリカと南アメリカ。ここからはさらに具体的に考えていこう。主な国の第1次産業人口割合は知っておくべき。とくに先進国については数値が直接出題されることも多く、具体的に知っておくことが必須。<br>

こんな感じで頭に入れておこう。2%イギリス、3%米国、4%フランス、5%オーストラリア、6%日本、7%イタリア。<br>

これらに関する類題を挙げておく。イギリスは01B追第2問問4に登場。米国とオーストラリアは、96B本第7問問4に登場。同じく米国とそして日本は、92本第3問問4に登場。

米国やオーストラリアは世界的な農業国でありながら、第1次産業人口割合は低い。高度に機械化がされているからだ。この数値が最も低い国の一つとしてイギリスが挙げられるが、とくに合理化された農業が行われており、今や小麦輸出国に成長している。これに対し、日本は先進国としては第1次産業人口割合が高い(もちろん世界全体からみればかなり低い方であるが)。家族を中心とした農業が今だに主であり、まだまだ生産性は低いのだ。イタリアも先進国としては極めて低い農業生産性にあえぐ国であり、第1次産業割合が高い。現在でも半島の南部では大土地所有制が残り、経済レベルも低い貧困地域となっている。EUからの農業補助金も多く受け取っている。イタリアは小麦輸入国でもある(つまり自給できないのだ)。

話を元に戻そう。米国は世界最大の農業国であると同時に、世界で最も農業が合理的に行われている国でもある。このことから、農業就業人口率が低い(9.1%)の選択肢4を北アメリカとする。米国の3%に比べると、9.1%でもかなり高い印象を受けるが、この統計には(北アメリカとはいいつつ)中央アメリカのメキシコなどの国々も含まれているので、それらを含めて平均化したらこのくらいの数値になるのだろう。

(おまけ)本問の場合は「農業就業人口率」から十分に解答が導き出せるので「耕地1ha当たり穀物生産量」については考慮の必要はないと思われる。ちなみに同様に1ha当たりの穀物生産量が提示された問題としては01B第4問問3もあるのだが、この問題にしても農業就業人口が最大のポイントとなって解答にたどり着くことが可能なので、あまり重要視されていない。

(さらにおまけ)問題では求められていないのでどうでもいいんだが、気になる人のために北アメリカ以外の答を。3が南アメリカであることはすでに述べた。企業的な農業が主体であるため、アジアやアフリカのような伝統的農業地域に比べて、農業就業人口割合が低い(それでも先進国に比べれば、十分に高いのだが)。1と2の判定であるが、ここからは1ha当たり穀物生産量から考えていかないといけない。アジアもアフリカも主に自給的な農業が行われているわけだが、とくに穀物はその傾向が強く、自分たちの胃袋を満たすため(だけに)生産が行われている。ここで考えなくてはいけないのが人口との関係。人口が多ければ穀物の生産も多くなくてはいけないし、人口密度が高ければ1ha当たりの穀物生産量も高くなくてはいけない。このことを手がかりとすれば、表中の1がアフリカ、2がアジアであると推測できる。アジアは人口も多く、人口密度も高い。アジアではこのように土地生産性の高い農業が行われているのだが、その農業形態を集約的ともいう。「アジアの農業=集約的」ということは非常に重要。アフリカの農業はアジアに比べて粗放的といえる。

 

問2 農産物統計。オーソドックスな問題で、なおかつ難易度も低い。いい問題だね(笑)。<br>

米の生産統計は01B本第1問問6で、小麦の生産統計は00B追第3問問6で、それぞれ出題されている。トウモロコシの統計は初出。統計ではないが、米と小麦とトウモロコシのセットでの出題は、01B追第3問問6など。米とトウモロコシのセットは00B本第5問問3など。いずれも米が温暖な地域で栽培されていることがポイントとなっている。<br>

ただし本問については過去問で類似の問題を探すまでもなく、容易に解けると思うので、わざわざ類題を参照する必要もない。

アジアで生産が多いものを米と考えていいだろう。米は温暖で湿潤な気候が必要なので、ヨーロッパのような冷涼であまり降水量の多くない地域での栽培は少ない。アが米。

逆にヨーロッパでさかんに栽培されているイは何だろうか。これは小麦だろう。小麦は、この3種類の穀物の中ではもっとも冷涼な気候に適応するものである。決して温暖とはいえないヨーロッパにおいて、米とトウモロコシの生産が少なく、小麦の生産される割合が大きいのは納得できるところだろう。<br>

残ったウをトウモロコシと考える。北米大陸では米や小麦よりも多く栽培されているようであるが、トウモロコシの生産1位が米国であることを考えると(ちなみに米と小麦の生産1位は中国)矛盾はない。

ちなみにトウモロコシの生産2位は中国、3位はブラジル。南アメリカでもウの割合が高く、まさにブラジルなどでさかんにトウモロコシが栽培されていることが想像できるのだが、逆にアジアにおいてはウの割合はそれほど高くなく、中国のトウモロコシ生産の多さはこのグラフにあまり反映されていないようだ。しかしこれも無理のないこと。アジアは人口が多い分、全穀物の生産量も他の大陸に比べてかなり多いと思われる。本図は全体を100%として、各穀物の生産に関しては「絶対量」ではなく「割合」が示されているのだから、この図だけをみて、アジアのトウモロコシの生産が他の大陸に比べ少ないとは言い切れない。

(おまけ)小麦・米・トウモロコシを世界3大穀物という。いずれも生産量が6億トンを超え、きわめて重要性の高い穀物となっている。ただし、本図をみてもわかるように「その他の穀物」の生産も少なくはない。3大穀物に次いで重要なものに大麦があるが、これは耐寒性・耐乾性にすぐれた作物であり、ロシアやカナダなどでは主穀として生産されている地域もある。また小麦と大麦の中間的な栽培条件を持つ作物にライ麦があるが、これは北ヨーロッパ平原(ドイツやポーランド)などでさかんに栽培されている。アジアでは、ひえやあわなどの雑穀、そしてこうりゃんが栽培されており、中国の北部寒冷地域や内陸部乾燥地域の人々の重要な食糧となっている。

問3 良問。この問題あたりが平均点取れた者とそうでない者との分かれ目になるんじゃないかな。柔軟で応用力のある考え方ができるかどうか。興味深い問題である。

南米の農業の特徴がつかめているかどうかがポイントとなる。問1でも述べたが、まず「企業的」農業である点が重要。資本家が巨大な農園をつくり、農業労働者を雇って農作物をつくらせている。<br>

さらに「大土地所有制」。日本でも戦前まではみられた制度であるが、現在でもこれが残存している地域は非常に限られている。フィリピン、インド、イタリア南部、そして南米大陸だけである。一部の地主が農地を独占している。これらの地域には自作農(土地を持つ農民)は少なく、ほとんどが小作農(土地を持たず、地主から土地を借りて農業を行う)や農業労働者である。

とくに南米大陸における農業のあり方について考えてみよう。「企業的」な「大土地所有制」である。つまり南米には企業的な農園が多く、そこで豊かな地主が労働者を雇ったり貧しい農民に土地を貸したりすることで、農業が成立しているといえる。それに対し、フィリピン・インド・イタリア南部では、家族中心の零細経営的な農家が多く、彼らは豊かな地主から土地を借りることによって何とか農業を営んでいる。両者の雰囲気の違いだけでも想像してみよう。

つまり正解は4である。この選択肢が誤文。アルゼンチンは南米の国である。企業的な農園が多く、その多くが富裕な地主が経営するものであり、小作人や農業労働者がその下で働いている。「小規模農場が大半を占め」てはいない。

この選択肢なんかうまくできてるなぁと関心してしまう。たしかにアルゼンチンの大農園のことはエスタンシアとよばれているそうだ。しかし、このことはセンター試験では何ら重要ではない。どうでもいいことなのだ。本問においてもエスタンシアという名称はポイントとなっていない。

それなのにこういう者がいる。「アルゼンチン=エスタンシア」というように盲目的に暗記している。この選択肢を見た瞬間「アルゼンチンでは~エスタンシア」という文字が目に入ったため、それだけでこの下線部を正文とみなしてしまうのだ。本当のポイントは後半の「小規模農場」という箇所なのに、エスタンシアという言葉にとらわれて、この用語の正否だけで判断しようとする。

意地悪といえば意地悪なんだが、こういうところにセンター試験の特徴が現れていると思わないか。細かい地理用語、とくに意味のよくわからないカタカナ言葉なんてどうでもいい。もっと広い視野を持った一般的な地理的原理原則を問うてくるのだ、ということ。君たちの中で、一生懸命になってカタカナ言葉とか地名とかそういったものを、例えばしょうもないゴロ合わせなんかで覚えようとしている者がいるかもしれないけれど、そんなことをしたら勉強がつまらなくなるからやめてくれ。他の科目だったらそういった丸暗記も大事かもしれないよ。でも地理っていうのはもともと覚える量は少ないからそんな詰め込み型の学習をする必要はないし、それにそういったわけのわからん方法で覚えたことっていうのは結局テストで点につながらない。「アルゼンチン=エスタンシア」って覚えた人間は間違えるっていうことだよ。<br>

他の選択肢についても解説していこう。

1;これは選択肢4と関連しているともいえる。米国もアルゼンチンも新大陸の国であり、ともに企業的な農業に特徴がある。大規模な農場が主体であり、小規模な家族農場は衰退の危機にある。

2;この選択肢はおもしろいな~。類題は94本第3問問4選択肢1。「プランテーションは民営から国営となる」ということ。とはいうもののこれはむしろ例外的なもので、国鉄がJRになったり、電電公社がNTTになったり、国営のものが民営になるというのが実は一般的なパターン。国営企業ならばそこで働いている人は公務員なわけで、悪い言い方かもしれないが彼らには失職の可能性がほとんどないから営業的な努力はしないよね。でもそれでは、企業としての発展は望めず停滞してしまい、国内経済に悪い影響を与えかねない(現に国鉄が莫大な赤字をかかえていたのは有名な話)。民営化し、利益優先の積極的な経営方針で企業として成長していってほしい(NTTって儲かっているよね)。試験では中国がしばしば出題されるのだが、かつてはほとんどが国営企業だけであったが、現在では郷鎮企業とよばれる民間企業や、外国企業の勢いが著しい。

このように「国営から民営」の流れが大原則として、それでもあえて例外を挙げるとすれば、このプランテーションがあるのだ。プランテーションとはそもそも欧米の資本家(大金持ち)が、熱帯亜熱帯地域で商品作物の栽培を目的としてつくられた大農園のこと。その多くは当時の植民地につくられたが(例;フランスがアルジェリアやセネガルにつくった)、米国がキューバにつくったように例外もある(キューバは旧スペイン植民地であり、米国とは位置的に近いだけ)。とにかく、プランテーションとは、もともと個人がつくったものであり、起源は民営であることを意識する。ただし、植民地はいずれ独立し、宗主国の手を離れる。農園を経営していた資本家は本国に帰り、プランテーションだけが後に残される。せっかくのプランテーションをつぶしてしまってはもったいない。とくに独立を果たしたばかりの旧植民地は経済的な基盤も弱い。プランテーションを国営とし、そこでつくられた商品作物を重要な輸出品として役立てようと考えたのだ。セネガルのラッカセイやコートジボアールのカカオなどは現在でもこれらの国の経済を支える重要な産物である。

このことを考えるに、選択肢2の文章にとくにおかしな点はないようである。民営(この場合は「企業」という言葉が使われているが、資本家による経営であることには変わらない)のプランテーションがやがて国営となっていく。とくにキューバという国は革命によって社会主義国になった国である。革命以前、位置的な近さもあって、米国資本家がこの国に多くのプランテーションを建設した。キューバの温暖な気候、水はけのよい土壌(石灰岩質なのだ)がとくにサトウキビの栽培に適していたのだ。しかし、キューバも一人前の独立国である。当然、米国に対する反感は高まる。この反米感情を背景に革命が起こり、米国の敵対国であるソ連と親交を深め、社会主義国としてキューバは米国と決裂した。国内のプランテーションは米国資本家の手を離れたため、次々と国営化され、ここで生産されるサトウキビは現在でもキューバ最大の輸出品となっている。反米感情の塊のような国キューバにおいて、その経済を支えているのは米国の置き土産ともいえるサトウキビプランテーションであることは何とも皮肉な話であるが、そもそもキューバに絶対的な反米感情を根付かせた原因もこのプランテーションにあるのもまた事実なのだ。

3;類題は99B追第2問問5。ほぼそのまま出題されている。

 

問4 しかし何で選択肢が5つもあるのだ(怒)。ちょっとおかしいんじゃないか~?

問題自体も極めて難しい。選択肢が4つどころか、3つだったとしても正解率は低くなる。

とりあえず問題に注目。センター試験では地名は問題とはならないので、本問についても「カラジャス」「マラカイボ」などの細かい地名は誤っていないと考える。

となると、まず4は正解とみていいだろう。石油輸出国機構(オペック)に加盟する国は全て知っておかないといけない。そしてそれらのほとんどが原油モノカルチャー国(原油の生産と輸出に国内経済が依存している)であることも知っておくべき。ベネズエラはオペックである。よって「原油は、同国最大の輸出品目となっている」と考えて不自然ではないだろう。前述のように「マラカイボ」という地名が誤っている可能性は極めて低い。

選択肢5も統計に関する問題といえる。原油に関する統計を確認しておこう。原油産出世界2位は米国であり、さらに輸入1位も米国である。米国は世界的な原油産出国でありながら、世界最大の原油輸入国でもあるのだ。いかに大量の原油を消費しているかが想像できよう。このことより選択肢5は正文であると思っていいのではないか。パイプラインは原油を運ぶ巨大な管のことで、原油をタンカーで運ぶ日本ではほとんどみられないが、陸地を原油輸送することがしばしばある米国やヨーロッパにおいては一般的な施設である。「オパイプラインで運ばれる」という箇所も誤りではないだろう。パイプラインについては「」で出題。

というわけで何とか4と5は消したものの、1と2と3とで迷う。どうしたらいいもんだろうか。

ここからはある程度カンに頼るというか、君たちの推理能力に期待するしかないのだが、とりあえず選択肢3に注目してほしい。アンデス山中に銅鉱山はあるのだろうか。仮にあったとして、そこで掘り出された銅鉱を大西洋側に面する港から積み出すのだろうか。

まず南米大陸における主な銅鉱産出国を考える。世界最大の産出量を誇るチリが頭に浮かぶだろう。チリの国土は太平洋岸に沿って細長く広がり、チリで産出された銅は大西洋ではなく太平洋に向かって積み出されるだろう。また、アンデス山脈の位置にも注目してみよう。この山脈は南米大陸の西端、太平洋沿いに走っている。ここに銅山があったとして、そこで産出された銅鉱は果たして大西洋側へと運ばれるのだろうか。むしろ距離的に近い太平洋岸の港に運ばれ、そこから他の大陸などへど輸出されるのではないか。

以上のようなことより、南米の銅鉱と大西洋はどうしても結びつかない。このことから選択肢3を誤りとしていいだろう。

選択肢1と2についてはとくに検討の必要もないだろう。ブラジルのカラジャスという鉄山はアマゾン川流域にあり、世界最大規模のものといわれているので、名前くらいは知っておいてもいいかな。

 

問5 農業区分の問題。ホイットルセー農業区分に忠実な問題といえる。

農業に関する説明文で最重要となるのは農産物の名称。カ~クの文それぞれから農産物名を取り出してみよう。

カ;「トウモロコシ」「大豆」「豚」「肉牛」

キ;「綿花」「大豆」「トウモロコシ」

ク;「小麦」

キでは「家畜」、クでは「飼料作物」という言葉もみられるが、具体的ではないのでここではカットして考える。

まずカについて。この農業形態は何だろうか。トウモロコシと大豆はそれぞれ飼料作物として重要である。それを栽培し、豚など家畜飼育と有機的に結びつけている。飼料作物と家畜飼育を結びつけた農業形態を「混合農業」という。

米国では五大湖南岸の地域で混合農業がみられる。よってカはAに該当。この地域の農業について問う問題はセンター試験頻出。

01B追第3問問6参照。農作物の生産量を分布をドットマップを用いて表している。4がトウモロコシ。五大湖南岸に沿う一帯でとくにドットが密集している。これがコーンベルト。トウモロコシだけでなく、大豆も栽培され、ともに豚の飼料とされている。

99B本第2問問5参照。五大湖の南岸に接するイリノイ州は、アイオワ州と並びコーンベルトの代表的な州。トウモロコシ・大豆・豚などの生産が多い。

関連事項として01B本第3問問7選択肢3参照。ここで述べられているのはヨーロッパにおける混合農業。ドイツやポーランドがホイットルセー農業区分における混合農業地域に分類され、そこではライ麦やジャガイモを栽培し豚などを飼育する混合農業がみられる。トウモロコシや大豆を栽培する米国の混合農業地域に比べ、やや冷涼で、さらに地力にも乏しいのである。

キについて。西経100度の経線に沿う米国中央部。年間降水量約500ミリと、やや少雨であるが、これは小麦栽培に適している。Bが該当。おおよそカンザス州に当たる。

B地域はホイットルセー農業区分では「企業的穀物農業」地域に区分される。新大陸(北米・南米・オーストラリア)における大規模な小麦栽培のこと。とくにこのB地域では冬小麦(あるいは秋まき小麦ともいう)が栽培され、その収穫時期は初夏である。

B地域からさらに北方、米国からカナダにかけての大平原地帯も同じく企業的穀物農業地帯であるが、こちらは春小麦(春まき小麦)が栽培されている。州の名称でいうと、米国のノースダコタ州・サウスダコタ州、カナダのマニトバ州など。寒冷な地域であり冬季は凍結してしまうので農業不可。ただし、内陸部ということもあって、夏季には小麦栽培が十分出来る程度には高温となる。春に種をまいて、夏の終わり(8月から10月くらい。ちょうど日本の稲刈りの時季と同じ)に収穫するというパターン。

冬小麦と春小麦の収穫時期の違いを表した小麦カレンダーによる問題は、90追第3問問3、93追第2問問5、96追第7問問4(この問題のみ難しいが)などにある。

01B追第3問問6選択肢3が類題。小麦の分布が表されている。五大湖の南岸でもドットが多いがこれは無視していい。西経100度におおよそ沿った地域で、カナダから米国にかけての部分と、03B本第2問問5図2B地域に該当する部分にとくにドットが多く分布。前者が春小麦地帯、後者が冬小麦地帯、そしてともに企業的穀物農業地帯である。

同じく類題として98本B第1問問2がある。ここではそのものズバリ企業的穀物農業について聞かれているので、直接的な参考になる。米国中央部は冬小麦地帯、その北側のカナダとの国境にまたがる地域(Pで表されている)は春小麦地帯。プレーリー土(コーンベルトから小麦地帯にかけて、米国中央部に広がる黒色度。肥沃)が分布し、小麦の栽培が大規模に行われている。

クについて。米国南部である。ここはホイットルセー農業区分によるとプランテーション農業地域に分類される(98B本第1問図1参照。米国南部にはeと書かれたプランテーション農業地域がある)が、むしろ綿花地帯あるいはコットンベルトというニックネームでおなじみだろう。この程度は中学でも問われるレベル。ただし高校レベルならばもう一段階深くまで突っ込んでみよう。

米国南部は温暖な気候と豊かな降水量に恵まれている。白人の資本家が大規模な農園を経営し、そこでアフリカから連れてきた黒人奴隷を労働力とすることで、とくに綿花の栽培が中心に行われていた。

ただし、奴隷解放により黒人労働力を自由に利用することができなくなったことや、綿花だけを長期にわたって栽培し続けていたことによって地力がやせてしまったことなどの理由により、現在ではさまざまな作物の生産される多角経営農業地帯に転換している。一部には現在でも綿花栽培のさかんなところも残されてはいるが、大豆やトウモロコシなどを輪作する農園が増加している。よってC地域が該当。

(おまけ)ということは米国における綿花栽培は衰退してしまったのか。いや、そんなことはない。米国は中国やインドに次ぐ世界的な綿花生産国の位置にある。ではどこで栽培している?その前に綿花の生育条件について考えてみよう。原則として「温暖湿潤」な気候が必要。ただし想像してみればわかるのだが、綿の花が雨によってつぶれてしまったらまずい。つまり降水は十分に必要なのだが、だからといって結実する収穫期に雨が降っては実に不都合なのだ。

ではどうしたらいいのだろう。非常にデリケートな生育条件をもつ綿花だけに、その栽培にはそれなりの工夫をしなければいけない。雨の多いところで栽培して、収穫期だけ雨を防ぐというやり方にはちょっと無理がある。屋根でも取り付けるか?でも湿気は防ぎようがない。発想の転換。つまり乾燥地域で栽培して、生育時のみさかんに水を与えればいいのだ。これは実にうまいやり方だと思う。

実際に世界の綿花の多くはこのやり方で栽培されている。雨の少ない乾燥地域でありながら、そのすぐ近くを水量豊かな大河が流れている場合はそこから農業用水を灌漑することによって綿花栽培が成立しているのだ。中国の黄河流域は世界最大の綿花産地。パキスタンのインダス川周辺でも栽培がさかん。ウズベキスタンはとくに綿花モノカルチャーの国として知られているが、アムダリア川からの過剰な取水によって下流のアラル海が縮小してしまっているのは深刻な環境問題。エジプトのナイル川沿岸は高級綿の栽培がみられる。

米国においても綿花の主栽培地域は西部の灌漑農業地域に移動した。綿花生産1位はテキサス州、2位はカリフォルニア州。とくにカリフォルニア州の綿花については99B追第1問問4選択肢2で出題。ここでは「野菜や果物」と書かれているが、実際には綿花の生産もさかん。

 

問6 やや難しい。しかし、問3同様、この問題が解けたかどうかで、君のセンター地理への理解が試される。

まず国名から押さえていこう。Pはメキシコ、Qはペルー、Rはブラジル、Sはアルゼンチン。02B本第1問でもこのように地図上の位置を用いて国をたずねるパターンがあった。白地図を用意してそこに国名を書き込んだりして、国の名前と位置を確認することが大事。

各選択肢について検討していく。

1;P国の人口最大都市はどこだろうか。メキシコシティである。02B本第4問問6選択肢2参照。これは誤文であり、正しくは「首都メキシコシティへの人口流入が著しい」とする。多くの発展途上国(メキシコも近年工業化が進むものの、まだ発展途上国である)では、特定の大都市にのみ産業や商業が集中する傾向が強く、そういった都市への人口流入も著しい。メキシコの場合は首都メキシコシティがそのような都市に該当する。

メキシコシティについては、大気汚染がとくに激しい街としてインプットしておこう。標高が高く大気が薄い。人口規模が大きいため、自動車台数も多い。排気ガスそのものも多いが、酸素が少ないことによる不完全燃焼によってさらに大気が汚される。また、メキシコシティはかつて湖だったところを干拓あるいは埋め立てたりして陸化した跡に建設された都市であり、盆地の中に街が広がっている。空気はこの盆地の中にとどまろうとし、外気との入れ替えがない。大気汚染はさらに深刻になるばかりである。晴れの日が多く太陽光線がきついこともあって、ロサンゼルスと並ぶ世界で最も光化学スモッグの発生する都市としても悪名高い。

このことを意識すれば、選択肢中の「大気汚染が深刻化している」の部分が正解であることがわかる。ただしこの文章においてはポイントは他の部分にある。「郊外地域で産出される原油」がカギとなるのだ。

メキシコはOPECには未加盟だが、世界を代表する原油輸出国の一つであることは間違いない。近年でこそ、米国系の機会組立工業が国境を越え進出してきたため、電器機械類の輸出がこの国最大の産業となっているが、かつては原油こそがメキシコ最大の輸出品目であった。96追第7問問6参照。表1の3がメキシコに該当するが、1990年の段階ででは原油の輸出が1位となっている。

ではメキシコの油田はどこに位置しているのか。選択肢1の文章が示すようにメキシコシティの郊外に立地しているのか。北米の油田の位置に関する類題として、02B本第2問問5を参照してみよう。ここでは▲が「石油精製」工業の立地している都市を表す。米国は世界最大の原油輸入国であると同時に、世界2位の原油産出国でもある。大規模な油田の近くで石油精製工業が発達しているケースが多い。米国最大の油田地帯として重要なのは、テキサス州からルイジアナ州(テキサス州の東となりに隣接する靴のような形の州)にかけてのメキシコ湾岸地帯。遠浅の海岸には海底そして海岸沿いの陸地に多くの油田が分布しているのである。

このことからメキシコの油田も同様にメキシコ湾沿岸にあると想像してほしい。浅い海に開発された海底油田が多いのだ。

ここで話をメキシコシティに戻そう。このメキシコの首都である都市はいったいどんなところに位置しているのか。先にも述べたように高原上であり、しかも空気の薄さが問題となるほどの標高の高さである。距離的に考えて、メキシコ湾岸の油田地帯と近いと考えられるだろうか。標高数千メートルの高原と、海岸付近の油田。少なくとも「郊外」という言い方は不適当だろう。

メキシコシティは大気汚染の深刻な都市である。工業化もそれなりに進んでいるかもしれない。しかし、郊外で原油が産出されるという点が決定的に誤りとなっている。以上より1が誤文(つまり正解)となる。

よって2・3・4の文章は自動的に正文となる。これらの選択肢はとくに検討の必要はないが、参考までに解説を加えておく。

2;ペルーの首都リマについての説明。リマは、ペルー周辺の国々の首都(コロンビア・ラパス、エクアドル・キト、ボリビア・ラパス)とは異なり、高山都市ではない。どちらかというと海岸に沿った地域にあり、気候も海からの影響を強く受ける。リマの気候グラフについては99本第4問問2選択肢2を参照。沿岸を強力な寒流であるペルー海流が流れているため、地表付近の空気が冷やされ、上昇気流が発生しにくい大気の状態となっている。雲が生じず、降水量が少ない気候となる。

リマはこのグラフから判別できるように完全な砂漠気候なのだが、南米大陸太平洋岸低緯度地域に乾燥地域がみられるというネタ自体はセンター試験では頻出なので要注意。

3;ブラジルの人口最大都市はサンパウロ。ブラジル高原南部に位置する。テラローシャとよばれる肥沃な土壌が分布し、コーヒーの栽培に適している。サンパウロが出題された例は今までなかったような気がするが。

4;アルゼンチンの首都ブエノスアイレス。ここもセンター初登場。まあ、外れ選択肢でもあるし、今後出題される可能性はないだろうね。

それにしても、各国の人口最大都市を覚えておけというのだろうか。ちょっと難しいところ。そこまで知らないといけないのか。とりあえずほとんどの場合、首都と人口最大都市が一致することは知っておいてもいいだろう。とくにヨーロッパは、スイスだけが例外なのであるが(人口の少ないベルンが首都)、それ以外の国は全て人口最大都市が首都となっている。

それとは反対のパターンで、面積の広い国ではむしろ首都=人口最大都市というのは例外的なこと。面積1位ロシアの首都だけは人口最大都市であるモスクワであるが、面積2位カナダ(首都はオタワ)、3位中国(ペキン)、4位米国(ワシントン)、5位ブラジル(ブラジリア)、6位オーストラリア(キャンベラ)、7位インド(デリー)はいずれも人口は国内最大規模ではない。

本問においても、メキシコ・ペルー・アルゼンチンでは首都の人口が大きいが、ブラジルにおいては首都と人口最大都市が一致していない。まあ、とはいうものの、そのこと自体が問題を解くカギになっていたわけではないので、別に気にするほどのことでもないのかもしれない。

こんな感じで、国内人口最大都市についてはとくに知る必要はないとは思う。ただし一つだけちょっと気になる都市があって、それがトルコのイスタンブールなんだが、その話をちょっとだけしてもいいかな。イスタンブールはヨーロッパとアジアを分ける海峡に面するトルコ最大の都市。センター試験でもしばしば登場してくるメジャーな街である。ただし、ここは首都ではない。トルコの首都は内陸高原上の都市アンカラで、ここの人口規模は小さい。トルコは人口最大都市と首都が一致しない国の代表例であり、巨大な人口をかかえながらも首都ではない都市としてイスタンブールを知っておいてもいいだろう。

 

問7 一見したところ単なる統計問題なのだが。しかしその内容が問題。こりゃ難しい(涙)。今までこんな特殊な事例をたずねる統計問題があっただろうか!?

エクアドルとコロンビアはかなりマイナーな国でもあり、これらを中心に考えていかない方がベターだろう。ここではカナダとチリに注目。しかし、問われているのはカナダの貿易品目第4位とチリの第3位。これはキツイな~(涙)。ちなみにカナダとチリの貿易統計については、96追第7問問6が類題。ただし旧課程の問題でもあり、また、この表をみてカナダとチリの貿易品目を覚えておけというのも大変だと思うので、本問の解説においては無視する。

とりあえず選択肢をみながら候補をしぼっていこう。選択肢で示されている品目は3種類。魚介類・原油・木材。どれについて考えていくのがわかりやすいかな。

まず魚介類。南米大陸で魚介類といえば、真っ先にペルーの名前が挙がってくるだろう。01B第4問問6参照。新課程では珍しい水産業に関する問題なのだが、これはおおいに参考になる。ペルーは世界2位の水産物生産国。主たる魚種はアンチョビー。この国で魚が獲れる理由としては、沿岸を流れる寒流の存在が最も大きい。南極海から赤道に向けて大きく北上してくる巨大な寒流、ペルー海流である。表面を冷たい水が流れているので、密度の大きなその冷水は深海にもぐろうとする。反対に深海からは相対的に密度の小さな暖かい水が上がってこようとするため、海中はかくはんされ、垂直方向に対流が生じる。そのはたらきによって海底付近に沈殿していた魚の死がいなどの有機塩類が海表面へと持ち上げられ、豊かな漁場が形成されることとなる。<br>

ペルーに限らず、南米大陸太平洋岸の国々はこのペルー海流の恩恵を受ける可能性があるわけで、チリやエクアドルについてもかなりの水産国であることが想像できる。よって、魚介類についてはチリの重要な輸出品の一つであるXが該当すると考える。ちなみにエクアドルにおいてはX(つまり魚介類)が最大の輸出品目となっている。つじつまは合う。

ポイントとしては、ペルーで魚がたくさん獲れることについて、その事実だけを丸覚えするのではなく、システムとしてその理由を理解することが重要であるということ。「ペルー=魚」では思考が発展しない。ペルーで魚が獲れる理由を海流のはたらきに結び付けて、その海流に面する国ならばどこでも魚が獲れる可能性があることを理解しないといけない。そしてもちろん、エクアドルとチリの位置も(少なくともこれらの国々が太平洋に面していることを)知っておかなければ話にならないわけで、白地図を用いて国の位置を確認しておくという作業がここでも大事になってくる。

次に注目するのはカナダと木材の関係。カナダの貿易については類題として01A本第1問問6があるが、ここでは自動車の輸出にのみ焦点が当てられているので、本問を解くうえでは参考にならない。木材の貿易については、97B追第2問問7がある。日本が世界のどの国から木材を輸出しているかが示されている。ここで登場しているのは、米国・カナダ・マレーシア・インドネシア。ただしこのうち、インドネシアからは原木ではなく加工材としての合板の輸入が多いので、日本の木材輸入先としては除外して考える。ただしいずれにせよ、カナダが日本にとって重要な木材輸入国であることには間違いはなく、同時にカナダにとって木材は大きな輸出品目であることが想像できる。

以上より、Zを「木材」を考えていいだろう。カナダは紙類の輸出も多く、この原料が木材であることを考えても妥当な解答である。

よって残ったYが原油。それにしてもコロンビアで原油なんていうイメージないよね。僕もこの国に関してはコーヒー豆モノカルチャーの国だと解釈していたし、私大の問題でも「コロンビア=コーヒー豆」っていう出題のされ方しかしないよ。とはいうものの、実際のところ、コロンビアの輸出品目1位は麻薬でしょ。これはもう常識だね。まあ、センター試験でそんな違法のものを出題できるわけはないが(笑)。