2002年度地理B本試験解説

2002年地理B本試験

平均点はやや高め。とはいえ難問もいくつかありそう簡単に満点が取れるわけではないのは例年通り。

 

第1問 北ヨーロッパ地誌。前年度の東南アジア地誌に続いて特定地域の地誌が冒頭の第1問目をかざるというパターン。アイスランドというマイナーな国の登場におどろかされる。ただしアイスランドは01A追で出題されている。前年度のマイナーな問題が再び取り上げられるという傾向は確実に存在する。

 

問1 地形を中心とした事項に関する問題。01B本、01B追ともに第1問問1はこのような出題だった。ただし01年はともに正誤問題(本試験が「正」問題、追試験が「誤」問題だったが)だったのに比較すればこのような4対4の組み合わせ問題の方が容易かもしれない。

1;「プレート境界」は最大のキーワード。この地域においては大西洋の中央を走る海嶺と一致する「プレートの広がる境界」を意識すること。新しくプレートが形成されるところで、地下のマントルでつくられた地殻が地表に現れる際に一旦盛り上がるので、プレートの境界に沿って巨大な山脈が見られることとなる。「火山」だけ知っておいてもいいかもしれない。火山はアイスランドのキーワード。ヨーロッパは火山の分布がほとんど見られない地域。よって図1の範囲ではアイスランドのみが「火山」に該当する。

2;大陸氷床はキーワードにはならない。なぜならこの地域全体が氷河期には大陸氷床におおわれていたからである。よってここでは「針葉樹」がポイントにはなるんだが。スウェーデンやフィンランドが森林国であるということがわかればいけるんちゃうかな?スウェーデンやフィンランドは国土面積に占める森林面積の割合が高い国の代表例。ヨーロッパ大陸は、地中海沿岸はもともと乾燥の度合いがやや激しいために森林は少ない。中部ヨーロッパは農地として開発されてしまったため、自然林はほとんど残っていない。スウェーデンやフィンランドのような冷帯地域に集中的に森林が見られる。

ちなみに大陸氷河の範囲は01B本第3問問4において「最終氷期に氷河(氷床)に覆われたことがある地域」として示されているので参照するといいだろう。「最終氷期」というのは「最も最近の氷河期」という意味で現在より1~2万年前のことである。日本は縄文時代。でもまた近い未来に氷河期がくるかもしれないわけで、そうなると「最終氷期」って言い方はちょっと不適当になるけどね。<br>

 

3;00年B追第2問問2選択肢3に「ノルウェーでは、急傾斜で流下する」とある。「急斜面」はノルウェーのキーワードとなる。「急峻な山地が海岸に接する」とはまさに沈降海岸フィヨルドのこと。氷河の削った谷が沈降し、海水が浸入したため、平野部分が少なく急峻な地形となる。「沖合いを流れる暖流」とは北大西洋海流。「不凍港」に関する出題は00B追第2問問3で直接出題された。01B追第1問問1選択肢3も類題と言える。

4;現在も大陸氷河におおわれている地域となるとその範囲はかなり限られる。南極大陸と、グリーンランド内陸部である。A地域はグリーンランドの沿岸部であり、ここがはたして大陸氷河におおわれているかというとやや疑問であるが、他のB~Dにはその可能性はないので、Aが大陸氷河地域と考えていいだろう。ちなみに海岸部に居住するのは北米大陸の寒冷な地域に分布するイヌイット。彼らは実はアジア系人種モンゴロイドなのである。このことについては01B本第3問問2選択肢1でも述べられているように、氷河期で海面が後退していた時期にアジアから北米にモンゴロイドの移動があったのだ。アメリカインディアンやインディオもモンゴロイド。

本問の難易度自体は高くないだろう。しょっぱなの問題に難問奇問が多いというパターンはここでは当てはまらないようだ。

 

問2 フィヨルドという言葉は知っているね。でもその言葉自体ではなく、その形状が問題となっている。かつて旧課程の時代にケスタ地形についてその構造を示した断面図が問われたことがあり、近年ではモレーンという氷河による堆積地形について図によって出題されたことがある。個人的な見解なんだが、このような特殊な地形についてはとくに勉強の必要はないと思う。出たとしても今回のように1問だけであるし、そのために莫大なエネルギーを注ぐとしたらアホらしい。過去の出題例にしても、ケスタは旧課程時代の出題だし、モレーンは地学でも登場する言葉(だから地学履修者にとってのサービス問題と考えておけばいいだろう)、フィヨルドは中学でも扱うキーワードでもあるし、特別難しい用語でもないと思う。

というわけで、小地形についてしっかり勉強している者が少ないだけに、この問題は正解率も低く、難問に分類されると思う。でもそれでいいんじゃないかな?普通に適切な勉強していたらこんな小地形に関する知識なんて身につかないし、もしこれを楽勝で知っていたとしたらそれはやっぱり勉強法がやや適切ではないってことになると思うで。

では問題について。

まず図2の判定。フィヨルドについては最低でも「複雑な海岸線」という知識は持ってるよね。だから複雑な入り江になっていないカは消える。キとクの判定。ここで縮尺に注目するといいんじゃないかな。横に「150キロ」を示すものさしがあるね。クは長さ100キロにもなる深い入り江がある。かなり特殊な地形だ。それに対し、キはそれぼどでもない。このキはリアス式海岸である。日本でも見られる地形である。それに対し、極端に深い入り江になっているクはフィヨルド。氷河の流れに沿って大きく土地が削られてしまった部分であり、日本には見られない。そもそもこんな激しい地形が日本にあったらフィヨルドはもっと僕らにとって身近なものになるよね。緯度の高い地域にのみ見られる特殊な地形、それがフィヨルドである。

断面図であるがここでは「U字谷」ということを意識しておけば解答できただろう。氷河によって削られた谷は、氷河という固体によって削られたのだから、その断面はU字型となる。それに対し、普通の河川によって削られた谷は、河川水という液体によって削られるので、その断面はV字型となる。「氷河はU字谷、河川はV字谷」ということは重要である。

 

問3 意外に正解率が高かった地形図問題。それほど難しくないかな?

地形の立体視がポイントになる。

1;「谷」とは何か?「尾根」の反対である。折り紙の谷折りと山折りを想像してほしい。尾根は周りより高い地形であり、見晴らしのいい山道になったりする。逆に谷は周りより低い地形であり、川が流れていたりすることが多い。

Pはどうか?Pを「1000m」の等高線が取り囲んでいる。さらにその外側には「1543」や「1193」の数字が見られ、これらは山頂だと思われる。これらのことから考えるに(立体視してみるに)P点は標高1000mより低いのではないか。さらにここを川が通過しているようだ(実線で表されている)。Pは谷の中にあると考えていいだろう。しかもこの谷は北の方向に向いている。選択肢1は正文である。

2;凹地とはへこんだ地形のこと。水がたまれば湖になるような地形。この選択肢はちょっと判別が難しい。パス。後回し。

3;湖面標高を比較する。湖の周囲の等高線から判別したらいいだろう。まず等高線間隔であるが、それぞれの等高線は標高何mごとに描かれているのか?Pの周囲の1000mの等高線とPの南にある1193mの山頂が手がかりとなる。5本ごとに引かれている太い等高線は100mごとってことがわかるよね。つまり細い線1本の間隔は20mごととなるのだ。と言うわけでRの湖面標高の判定なんだが、これも1000mの等高線がヒントになっている。ここから数えていって、4本目の等高線を上ったところに湖がある。この湖のさらに上に太い等高線があるのだから、湖面は1080mから1100mの間に位置していると推測される。

Sについて。湖のやや北に書かれている「1000」や西側の「702」なんていうのが手がかりになるかな。Sの湖面標高はせいぜい710m程度であると判断できるわけだ。

4;TとUの間の長さは2cmよりは大きいね。3cmくらいかな。地形図上にかけられた格子状のマス目の一片は2cmくらいだと思われる(心配な人は計ってみるといい。鉛筆に1cmごとに傷をつけて長さを計れるようにしておく。それを試験会場に持ち込めばいい)。この地形図の縮尺は問題文に書いてあるように1/50000である。地形図上での3cmは、実際の1.5キロに相当する。

以上より、答えは2となる。正直言ってQの部分は等高線が入り組んでいてよくわからない(凹地ではなく単なる斜面のような気がする。そもそも凹地だったら湖や池になっているだろうしね)。だから最終的には「何となく」で解くしかないんやけどね。でもこの問題は正解率も高かったようやし、「何となく」で解答できたらそれでいいんやろね。

 

問4 白夜の問題。00B追で北ヨーロッパがテーマとされた時にも話題とされたネタである。

これの説明って図とか使って、さらに時間をかけないとできないんで、ちょっと後回し。現在製作中なんで気長に待ってちょ。ちゅうわけでごめんやで(涙)。

 

問5 ごく普通の地誌問題。国別の特徴を尋ねている。普通すぎてセンターらしくない!?来年からもこの形式での出題が予想される。要チェック!

まず図1参照。ア・イ・ウ、3つの国の名称は分かるかな?

センター試験ではこのように地図を用いて国が問われることがあるので、白地図に国名を書き込むなどして国の名称と位置をマスターしておかないといけない。とくに今回はアイスランドやデンマークと言った比較的マイナーな国が話題とされているわけで、しっかり対策しておかなくてはいけない。

この3つの国の中で最も重要度が高いのはノルウェーだろう。99B で「水力発電」がキーワードとして挙げられている。またこの国の最大の特徴は世界的な産油国であり原油輸出国であるということだ(統計で確認)。このことからタがノルウェーに該当すると考えていいだろう。「北海の資源」とはまさに原油のことであるし、「水力発電」の割合の高さにも言及されている。

次はアイスランドか。実は01A追第1問でも取り上げられている。このようなマイナーな国というのは何年か連続して出題されるケースが多い。バングラデシュ、ケニア、セネガル、ネパールなど。アイスランドも去年初めてセンター試験で取り上げられたのだが、早速2年続けての出題となっている。おもしろい傾向である。

とりあえず「地熱発電」から「火山島」を連想して、チがアイスランドとなる。この国のキーワードは問1でもあったように「火山」。

残ったツがデンマーク。一応検証してみると、ここでは「畜産」「平坦な地形」などがキーワードとして挙がってきそうだ。たしかにデンマークは農牧業がさかんな国だというイメージがある。また平坦な地形についても、この国を含むヨーロッパ北半分はかつて大陸氷河におおわれていた地域であり、それによって地表が大きく削られてしまっている。平坦であるのも納得だ。ツをデンマークとみなしてとくに不審な点はなさそうだ。

表1に移り、輸出品について考えてみよう。ヌが簡単だろう。原油があるのでこれをノルウェーとする。ノルウェーは産油国であり原油輸出国である。ニの肉類に注目してみよう。ツの文章の中に「畜産」という言葉が登場している。農牧業のさかんな国、デンマークでは肉類の輸出が多いと考えていいだろう。またニの統計は「機械類」の輸出も多いが、これはEUの一員であるデンマークとしてみればごく当然のことだろう。

最後に残ったナがアイスランド。チの文に「好漁場がある」と書かれているのだから、この国の主な輸出品が魚介類であると考えるのはごく自然なことだろう。

この問題は2問、つまり6点分あるので落としてはいけない。若干知識に頼る部分もあるが、それでも決して難しいわけではない(中学レベルの知識に過ぎないぞ)。

本問で得点するために必要なものは、1;ノルウェーが産油国であることを知っておく。2;アイスランドが火山国であることを知っておく。この2点のみ。あとは問題文中にいくらでもヒントが隠されている。丁寧に各文章を読み解けば必ず解答できる。あ、それと白地図で国の位置を知っておくことも大事だね。っていうかそれが一番大切!

というわけで白地図で国はどれくらい知っておけばいいかってことになるね。今回はノルウェーとデンマークとアイスランドの位置を知らなあかんわけや。この内デンマークはEU加盟国であり、知っておいて当然とは思う。00B本第1問問7参照。アイスランドは前述のように01A追で出題がある。地理Aの、しかも追試で取り上げられた国をチェックしておけってのもツライ話かもしれないが、やっぱりここでは前年度の問題はチェックしておかないとあかんってわけやな。これくらいはやっておこうや。というわけであとはノルウェーか。この国については(北欧自体はしばしば取り上げられるが)出題はあまりなかったな。「原油産出・輸出国」「フィヨルド」「水力発電」「EU未加盟」「不凍港」など実にキャラクターのはっきりした国であり、来年も出る可能性がかなり高い。センターでは難問は連続出題されるぞ!

 

問6 写真問題。これって意外と難しいと思う。せめて他の3つの地点が地図上で示されていれば手がかりになるんだが。。。

まず4が外れる。中央にあるドーム状の屋根と複数の尖塔を持つ建物はモスクと呼ばれるイスラム教寺院。ノルウェーはイスラム教ではないので4は除外される。モスクの写真は98A追第2問問8で登場している。また問題には直接関係ないが写真の都市はトルコの海峡都市イスタンブール。この都市は01B第4問問4の隠れキャラ。選択肢2の「海峡に面した」姉妹都市というのはイスタンブールと下関。しかしノルウェーみたいな高緯度国でイスラム教徒が多かったら大変やで!断食月が夏季の昼の長い時季に重なってしまったらツライぞ!?

1も除外していいと思う。白い壁の家屋が立ち並ぶ。これは地中海地方特有の風景。地中海沿岸は全体的に降水量が少なめの気候のため樹木の活発な成育が見られない。常緑広葉樹に含まれる硬葉樹が分布しているものの、低木であり建築用資材としてははなはだ不適当。というわけでこの地域では石灰岩を切り出して建材とした石造住居が一般的。

というわけで2と3が残る。これについてはもう感覚に頼るしかない。カンがいい者は苦もなく解けるんやろけど、そうでない者にとってはさっぱりやとは思う。でも2で明らかに水面が認められるわけで、これが海だとわかればよっぽどのひねくれ者でない限り、2をノルウェーの風景と考えるのではないか?

海面に急な断崖が迫っている。これがフィヨルド海岸。

この大問については、問1の「急峻な山地」、問2のフィヨルドの断面図、問3の急傾斜を表す密な等高線、問5の「急流河川」、問6の海に迫る断崖など、ノルウェーの地形についてやたらしつこく問われていたわけだ。一体こりゃ何なんやろね?第1問は北欧地誌というより、実質的にはノルウェー地誌だったわけだ。

 

第2問 6問中3問が統計をそのまま用いた問題。問2も円グラフに表されてはいるがやはり統計問題といえるし、階級区分図ではあるが問6も統計であるし、さらに統計の比重は高い。問5は米国の工業分布ということで知識問題のような印象を受けるが、過去問に元ネタがあり、決して難しくはない。唯一の文章問題の問6も元ネタがはっきりしたオーソドックスな設問である。問3の正解率がかなり低かったようだが、これは仕方ないだろう。それ以外の6問は簡単なので確実に得点に結びつける。むしろこの大問は時間がかかり過ぎないように注意すること。いや、統計問題で時間をかけるのはいいんやけどね、あまりかけすぎるとそれはそれで制限時間に引っかかってまずいことになるし。てきぱきと要領良く進んで行ってほしいわけだ。

 

問1 びっくりするくらいそのまんまな問題。工業製品統計っていうのはたくさん覚える必要はないが、少ないながらも絶対に知っておかなくてはいけないものがある。それが「自動車」と「鉄鋼」。だからこの問題についても実に順当な出題と言わざるをえない。

Aが自動車(米国・日本・ドイツ)、Bが鉄鋼(中国・米国・日本)、Cが船舶(日本・韓国)。

自動車の生産統計については、01B本第4問問1で選択肢の1つとして取り上げられている。その問題では韓国がポイントとなっているのだが(韓国は世界を代表する自動車生産国であるのに国民総生産はそれほどでもない。中国はその反対)やはり自動車統計は確実に知っておくべきものなのだ。

 

問2 まず米国を消去しよう。1の航空機に注目。世界で航空機を製造している国はほぼ米国とフランスのみに限られる。とくに日本の航空機は100%米国製であると言っていい。選択肢1は少なくとも(73年か98年かは不明であるが)米国である。またそれ以外に米国からの主な輸入品として挙がられるものが農産物である。日本は米・小麦・トウモロコシ・大豆・肉類・果実などを米国から輸入している。そこで3をやはり米国と考えていいのではないか。人口密度の低い米国では人口規模に比べて、より大量の農産物を生産している。まさに商業的に農業が行われているわけだ。それに対し、人口密度が高い韓国の農業はより自給的となる傾向がある。

残りは選択肢2と4。この2つが70年代の韓国と現代の韓国なのだが、判定は容易だろう。軽工業がさかんであり、まだ工業がそれほど発達しているとは言えない4がかつての韓国(つまり73年)。それに対し、2は機械類や鉄鋼の輸出が多く、堂々たる工業国へと躍進した(問1でも触れたが、自動車や鉄鋼の統計をもう一度確認しておいてほしい。韓国はたいへん工業の発達した国だ)現代の韓国と見なしていいだろう。

 

問3 たいへん正解率が低かった問題。いわゆる捨て問に当たると思う。

まず言葉の意味から。「海外現地法人数」とある。これは企業が事務所を外国に置くだけでなく、工場など生産の拠点を建設することも含むものであろう。商業上の取引など経済的なつながりが強い国や地域へと企業が進出するケースがやはり多いが、それだけでなく安価な賃金を求めての工場進出も考慮しておかなければいけないだろう。

99B本第3問問4参照。ここでは「海外への直接投資」とされているが、これについては外国に工場設備などをどれくらい造ったかの目安となるものである。よって厳密に言うと「現地法人」と「直接投資」とは意味が違うものではあるけれど、しかしこの2つについては日本と当該国との間の商工業の親密度を示すものであり、ほぼ同じようなものと考えていいと思う。

というわけで99年の問題のおさらいをしてみよう。80年代は韓国への企業(工場)進出が目立ったが、90年代前半は東南アジアへの、90年代後半からは中国への企業進出がそれぞれ本格化した。アジア地域への企業進出とはもちろん工場の進出なわけで、とくにそこの安価な労働力を求めてのものである。80年代までは韓国の急成長に合わせ、まだ賃金が安価であった韓国への工場進出が際立っていた。しかし90年代に入り韓国の経済レベルが上がり(1人当たりGNPが10000$/人に達する)また韓国内でも自国企業の成長があったため、日本は次なる労働力確保先として東南アジアに工場を進出させた。とくにマレーシアでは国の積極的な政策もあり、外国企業が進出しやすい条件が整っていた。90年代前半はマレーシアやタイなど東南アジアへと投資が大きくなったわけだ。

しかしこれらの国でも次第に賃金レベルが上昇するとさらに安価な労働力を求める動きが出てくる。90年後半になり中国の国情も安定し、国内のインフラなども整備されてくると、外国企業がこぞって中国へと進出するようになる。現在のところは衣類など価格の安いものが多い(収益性の低い衣類だからこそとくに労働力の安い中国で生産しなければいけないのだ)。

というわけで、問題に戻ろう。表2から。まずLに注目しよう。89年も99年も法人数(つまり企業数)1位である。しかしその伸び率はどうか?2995が3638に変化しただけである。中国の伸び方(89年はランク外であるのに、98年には2447で堂々第2位!急激な伸び方)に比べれば、微増に過ぎない。台湾の動きもおもしろい。3位だったのに7位に急落。法人数もほとんど変化していない。台湾ではなく中国に直接進出する企業が増えたということか。台湾は1人当たりGNPが案外高く、低コストを目的とした製造業にとってはおいしい地域ではないのだ。シンガポールに進出する企業が多いのはこれは製造業ではないだろう。シンガポールは日本と並ぶ高物価国である。アジアの経済の中心としてその重要性が90年代に入ってますます増大したということか。Mの増え方も顕著である。まさに90年代に入って急成長している。この10年間で法人数が倍増しているのだが、これはマレーシアにも言えることである。

ではLから。日本との経済的なつながりがとくに深い国である。90年代になって急にその重要性が増したというわけではなく、80年代から大切な国であった。これが米国であろう。ちなみに米国に工場が進出する理由は、アジアへと進出する理由とは完全に異なるものであることに注意。米国は高賃金国(1人当たりGNPは約30000$/人)であり、アジアのように労働費を節約するという目的ではない。キーワードは「貿易摩擦の解消のための現地生産」。とくに自動車において顕著。米国で日本車の人気が高く、日本から米国へと自動車がさかんに輸出されている。そのため、米国は対日貿易が際立った赤字となり(日本は対米貿易は黒字)、貿易不均衡となる。これに米国政府はクレームをつける。例えば日本の自動車メーカーに米国への自動車輸出の自己規制を強制する(そもそも米国人が日本の自動車を欲しがるから日本企業が輸出しているわけであって、それを日本のせいみたいに言う米国の論理はおかしいんだが)。しかし当然これによって最も迷惑をこうむるのは米国の一般市民。壊れやすく燃費の悪い米国車に乗らなくてはいけない。トヨタや日産、ホンダなどの日本のメーカーにとってもおいしい話ではない。そこでどうするか?トヨタは米国内に米国トヨタという企業を立ち上げる。内容は日本企業であるが、形式的には米国の企業として。米国内に工場を造って、米国人を雇用してトヨタの車を生産する。輸出するのではなく、輸出先の当該国において生産を行うことを「現地生産」という。これなら日本から米国への輸出も減少し「貿易摩擦が解消」され米国政府としても文句はない。米国民としてもトヨタ車が手に入りやすくなり、さらに工場に勤めることによって雇用機会も増加する。トヨタグループとしても国際的な企業として躍進を遂げる。まさにいいことだらけである。困るのは日本だけなんだが(笑)。日本での自動車生産が落ち込み、トヨタ本社の収益も減少するだろう(しかし米国トヨタを含めたトヨタグループとしての収益はむしろ上がるだろうから問題ないけどね)。工場の海外進出で閉鎖される国内工場も出てくるだろうし、そうなると失業者問題が深刻となる。まあ、それはともかくとして、とにかく米国への企業進出はアジアの低賃金国への進出とは意味合いが違うということだけ認識しておいてほしい。

さらにM。近年とくに法人数が増加した。これを東南アジアへの工場進出と結びつけて考える。タイである。1人当たりGNPが約3000$/人と安価で、機械組立工業など労働集約型(労働力を多く使用する)工業にとって都合のいい国である。東南アジアの中では政情も安定している国であり、企業としても安心である。

LやMに次いで重要性が高いのがOである。これはまさにこれから日本企業が進出しようと画策している国、インドネシアである。

逆に圏外に消えたのがN。これはオーストラリア。1人当たりGNPが高い(20000$/人)なので安価な労働力確保を目的とする製造業は進出する意味がない。また米国とは異なり人口規模が小さい(1500万人)ので、国内市場が小さく現地生産するメリットが小さい。また、米国における日系企業の現地生産は日本と米国の貿易不均衡(貿易摩擦)が原因であるのだが、日本とオーストラリアの間ではもともと日本が輸入超(つまりオーストラリアから資源などを大量に輸入するので、日本から見て貿易赤字となっている)となっており貿易摩擦は生じていない。むしろ日本からさらに多くの機械類などを輸出し、貿易のバランスをとらなくてはいけないくらいだ。以上のことから、オーストラリアに日系企業が存在する理由が実に希薄なのである。

というわけで答はタイとなる。しかしこりゃ難しいよ。たしかに統計資料には載っているんやけど(二宮書店「統計要覧2002」91ページ)、それでもタイを答えるのは辛いと思う。もっとキャラクターが明確な米国やオーストラリアなら十分出題の対象としてふさわしいと思うんだが。タイとインドネシアはともに90年代に入って日系企業の進出が顕著な国々であり、この2つの判定って難しいと思うよ。僕ならこの問題はインドネシアを除外して、3つの国を全部答える組み合わせ問題にするけどな(次の問4みたいなパターンね)。

 

問4 マレーシアの問題と言えるのではないかな。00A本第1問問6参照。マレーシアは近年テレビの生産と輸出が際立つ国である。もちろん日本の電器メーカーの工場がさかんに進出しているからであるが、このことについては必ず統計で確認しておく。01B本第1問問5も参照してほしい。マレーシアは東南アジアの中では工業化の進んだ国であり、1人当たりGNPも比較的高い(4000$/人)。

問3も手がかりになる。問3では「現地法人数」、問4では現地法人の中の「製造業」のみに限定しているので決して等しい数にはならないのであるが、ある程度は目安としていいと思う。米国(L)と中国、マレーシアの現地法人数をあらかじめ頭に入れてから問4に移ると考えやすいのではないか。米国や中国への進出がかなりさかんで、マレーシアはやや落ちる。

というわけで表3を見てみよう。マレーシアはたいへんわかりやすい。繊維・電気機械・輸送機械の3つの業種についてその合計が最も少ない(200に満たない)Rがマレーシア。またここではとくに「電気機械」の比重が大きいことにも当然注目しなければいけない。テレビの生産と結びつけて考える部分である。

PとQの判定。1人当たりGNPが低く(つまり賃金が安い)繊維のような安価なものを生産するのに都合が良い中国がP、残ったQが米国である。とくに米国は輸送機械の割合が高い。これは米国内における日系企業の現地生産。問3で解説しているので参照してほしい。

しかしこの問4は問3を重なっているところが多いよね!?

どうなんかな~こういう出題パターンって。問4は「マレーシアのテレビ」をネタにしたなかなかの良問と思うから、僕がセンター試験の編集者なら迷うことなく問3はボツにするんやが(笑)。

 

問5 99B本第2問問2問4に元ネタがある。

米国の工業の基本は「北東部に古い工業、サンベルトや太平洋岸に新しい工業」。北東部に集中するSは古い工業であろう。古い工業とは鉄鋼業や自動車工業のこと。よって選択肢より「鉄鋼」であることが分かる。

TとUの判定であるが、どこで見てもいいだろう。99B本第2問問4選択肢1にあるようにシアトルの航空機工業をチェックしておくといいかな。シアトルは米国大西洋岸北部の都市。よってTが「航空機」。

あるいはメキシコ湾岸に注目してみてもいいだろう。同じく99B本第2問問2選択肢1にあるようにここには大規模な油田が広がっている。何と言っても、米国は世界第2位の巨大産油国なのだ。メキシコ湾岸に多く見られるUを「石油精製」と見なしていいだろう。

 

問6 工業立地の問題はしばしば出題されている。

1;セメント工業は頻出。石灰岩産地に立地する原料立地型工業の典型例である。

2;ボーキサイトからアルミニウムを精製する工業はオイルショック後の原油価格高騰後、日本では急激に衰退した。ボーキサイトからアルミナを抽出し、それをさらにアルミニウムに加工するのだが、このアルミナという物質は酸化アルミニウム。そこから電気分解によって酸素原子を取り除きアルミニウムを精製するため、この工業は大量の電気を必要とする。オイルショック以前の日本では安価な原油を背景に低価格の電力を豊富に確保できた。しかしオイルショックの後は原油価格が高騰し、それにより発電コストも上昇した。これではアルミニウム精製には不利である。アルミニウム自体そもそも一円玉の原料に用いられていることから分かるようにチープな金属である。高価格の電力を費やして生産するほどのものではない。これにより日本国内のアルミニウム工業は急激に衰えていく。現在は静岡県蒲原町に国内唯一のアルミニウム精製工場があるのみ。

というわけでアルミニウムはほぼ完全に輸入に頼っている。そもそも原料であるボーキサイト鉱も国内では産出されず、100%輸入に頼るものであるし、それで構わないのだろう。アルミニウム精製業は安価で安定した電力が得られる水力発電と結びつく。現在我が国のアルミニウム主要輸入先はロシアであるが、世界最深のバイカル湖の豊かな湖水を利用して精製されたアルミニウムが日本へと送られているのだ。ボーキサイトは熱帯の土の中にあるのでロシアと関係ないんやけどね。まさに水力発電立地型工業のアルミニウム精製である。

3;過去問そのまんま。97B本第3問問7参照。高度経済成長を背景に60年代から70年代前半にかけて製鉄所の数は増加した。しかし近年は鉄山の衰退による岩手県の製鉄所の閉鎖に代表されるようにその数は減少した。また生産性の低い製鉄所がつぶされ、現在ある製鉄所がさらに大規模に拡張されたという背景もある。というわけで「工場数が増えている」が大ウソなわけだ。

また「輸出が増加した」についてはよく知らないけれどちょっと怪しい。現在日本の鉄鋼生産は横ばいあるいはやや減少。中国や韓国からの鉄鋼輸入も目立ち、「輸出が増加した」とは言い切れないのではないか。

 

問7 日本の都道府県の位置は分かるかな?最重要なのは愛知県。愛知県さえ分かれば何とかなるとは思う。

愛知県は日本で最も工業のさかんな県。名古屋という大都市があり、中部地方の中心として商業などもさかんであるが、とくに工業出荷額の多さに特徴がある県として認識しておこう。00B追第1問問5参照。愛知県の豊田市は日本で最も工業のさかんな都市なのである(工業出荷額順位が2位になっているが、この第1位は東京区部であり、23個の区の集合体である。つまり正式な形の市としては1位ということである)。

というわけで愛知県が黒く塗りつぶされているXかYが工業に関する統計(本問の場合はもちろん「人口1人当たりの工業出荷額」)であると推測される。

おっと、これでは候補は2つにしぼることはできたけれどここからが分からない。では次に重要な県として宮城県を挙げてみよう。東北地方の中心的な都市仙台市を抱える宮城県。00B追第1問問1参照。仙台のような都市を地方中枢都市というのだが、その地方の政治経済の中心的な役割を果たす。中央官庁の出先機関が多く、大企業の支店も多い。人口が多いのでその分だけ小売業も発達しているが、それより流通の中心として卸売業が集中している点が重要。銀行なども集中し、金融業もさかん。銀行の地方中枢都市への集中の様子は97B追第3問問3で北陸地方の地方中枢都市である金沢のモデルケースが挙げられている。

というわけで、宮城だけでなく、広島や福岡の値も大きいYが「商業販売額」と考えることができる。Yではさらに北海道、東京、愛知、石川、大阪、香川なども黒く塗られている。札幌のある北海道、東京23区のある東京、名古屋のある愛知、金沢のある石川、大阪市のある大阪などはそれぞれ北海道地方、関東地方、東海地方、北陸地方、近畿地方の中心的な都県である。香川だけがやや意外なんだが、香川の高松は四国の地方中枢都市として発展しつつあるのかもしれない。

それに対し、千葉県の値が小さいのもおもしろい。東京に依存する傾向が強すぎるってことなのかな。

というわけで、Xが工業。千葉がここでも低い。東京も低いが(出荷額自体は少なくないよ。ただしこの統計が「人口1人当たり」ということにも注意してね。人口規模が大きいので、「1人当たり」の数値がどうしても小さくなるね)原則として都心部では工業が成立しにくい。地価の高い都心部に工場を建てるわけにはいかないね。宮城県が白いのも同様の理由なのだろう。都市では商業機能が発達するが、工業がさかんなわけではない。

工業がさかん(この場合は「人口1人当たり」という意味だが)なのは北関東の諸県(茨城・栃木・群馬)、静岡、愛知周辺(愛知・三重)、富山、滋賀。富山と滋賀が意外やな。何でやろ?人口規模が小さいから相対的に「1人当たり」の値が大きくなっただけかな。北関東の県や静岡は実際の出荷額自体もかなり大きい。

最後に残ったZが「農業あら生産額」。北海道や東北、九州など農業畜産業がさかんな道県での値が大きい。

でもこの統計はなかなかおもしろいね。どの都道府県が一番いいかな。群馬や長野がなかなかイケてるかな。千葉が案外パッとしないね。香川はいいね。熊本がイマイチなんがちょっと意外。でも最注目は沖縄やで。工業・商業・農業いずれも低いレベルにとどまっている。この沖縄と本土の差をどうやって埋めていくのかが今後の課題であることが明確となっているね。僕らは沖縄を切り捨ててはいけないのだ。

 

第3問 やや雰囲気が異なる大問である。今までのセンター試験とはちょっと感じが違う。でも決して難しくはない。問5と問7が難しいかも。でもいずれも選択肢を2つにまでしぼることはできるはずなので、全体としては1問ミスで乗り切ってほしい。

 

問1 いわゆる断面図問題。断面図は地形図に絡めてしばしば出題されるネタであるが、本問はちょっとタイプが違う。新しいパターンやな。ちょっと戸惑うけれどどうかな?

インド半島を通過する大円(地球の中心を通過する断面)で切断しているらしい。同じ冊子にある地理Aの第3問の図1の世界地図を参照しておくといいだろう。インド半島を通過する経線(たての線)を引いてみる。その反対側(西経100°)に見当をつけて引いてみよう。カンで引いてもいいし、例えば99B本第2問問1にあるように米国中央を通過する経線が西経100°であることを知っていればよりスムーズに引けるだろう。

こうしておおまかに東経80°と西経100°の位置が把握できたら図1の断面図を見てみよう。ここで最大のポイントになるのは3と4の間の巨大な山脈。標高は6000mに達しているようだ。これはかなり高いね。こんなに高い山岳がそんなにあるわけない。これは最高峰が8000mを越えるヒマラヤ山脈であると考えていいだろう(おっとここでも数字が重要となっている。ヒマラヤ山脈を単に高い山脈としか認識していなかったらこの問題は解けない。だいたい標高何mくらいなのか知っておかなければいけないのだ)。赤道はヒマラヤ山脈のやや南を通過している。というわけで、答えは3と4にしぼられる。ここからは簡単にわかるね?

 

問2 南アジアの季節風の風向は超頻出!00B本第2問問3参照。インド半島を含む南アジア地域では夏季は南西季節風、冬季には北東季節風に支配される。というわけで、本問では7月の風向を尋ねているので、ここでは当然「南西風」を探せばいい。3と4で悩むかもしれないが、4はインド半島の東部ではむしろ東風となっていてこれではおかしい。バングラデシュこそ夏季の南西季節風によってサイクロンの襲撃を受けるところなのである。よってパキスタンからバングラデシュまでの広い範囲で南西からの風が卓越している3と答とする。

 

問3 ちょっと知識問題っぽい?99年に出題された米国と全く同じパターンの問題である。農業のポイントとなる等値線が問われている。

まずAについて。中国の場合、農耕が行われている沿岸部と遊牧地帯である内陸部とを分ける等降水量線はほぼ年間300mmなのであるが、それを手がかりにすれば300mmに近い値として400mmが導き出されるのだが、どうだろう。難しくはない。

あるいはそういうアプローチではなく、農作物の栽培条件と照らし合わせて考えるという手段もある。Aの線の外側では小麦が栽培されている。春小麦の一部は線の西側にも見られるが、ここは寒冷であるため蒸発量が少なく決して乾燥が激しいわけでもないのだろう。また冬季にはシベリア高気圧の影響も強い地域でもあり、降水が小麦の栽培時期である夏季に集中しているのであろう。ともかく、Aの等温線は小麦栽培の限界の線と考えてみてもいいだろう。そこで選択肢を見るのだが、100mmではいかにも厳しくないか?小麦は確かに冷涼少雨が栽培条件である。しかしそれはあくまで米と比較しての話で気温が低すぎたり降水が少なすぎたりしたらやっぱり成育できないものなのだ。米国の小麦地帯を考えてみたらいい。西経100°と一致する年降水量500mm付近の地域が米国の小麦地帯となっている。というわけで、Aの線が400mmの等降水量線であると考えるとつじつまが合うのだ。これでどうかな?納得?

さらにBについて。中学でも学習することなんちゃうかなあ?華南地域というのは米の二期作地帯なんだが、これは1月の平均気温が10℃を上回るという冬季も温暖な気候を利用してのことだよね。というわけで、Bは10℃を示すと即答してもいい。

でも考えてもわかるはず。選択肢は10℃か20℃。1月20℃なんていうのは熱帯地域。沖縄でだいたい1月15℃くらいやねんから華南地域もそれと同じくらいと考えられないかな~?

 

問4 このようなベタベタな宗教の問題っていうのは地理Bでは珍しい。ちょっとびっくり!地理Aではよくあるんやけどね。でも問題自体が結構簡単になっていて、地理Aだったらもっと本格的な問題になっていて難しかったんだろうが、難易度が低く抑えられている辺りは所詮は地理Bなんだなっていう感じがする。原則として地理Bでは地理Aほど知識が重視されない。

写真の判定をしよう。アは沐浴。ヒンドゥー教では聖なる川ガンジス川とともに生活をする。ウのように体全体をおおうような衣服に身を包むのは仏教の僧侶。髪の毛を剃っているのも手がかりになるかな。ということでイはイスラム教だろう。

帯グラフの判定。Pはヒンドゥー教が大半を占めるのでインド(参考問題;99B追第5問問2選択肢2。ちなみにこの選択肢は誤文であるね。どこが違っているかはPのグラフ参照)。Qは仏教が多いのでスリランカ。Rはイスラム教が多いのでバングラデシュ。

パキスタン(イスラム教)を含め、南アジア4カ国の宗教は超重要!っていうか簡単やね。

形式としては00A本第1問問3(こちらは民族構成やけど)に近いかな。同じく00A本第1問問5には写真を用いて宗教を判定させる問題(こちらは建物やけど)がある。一応、参考問題と言えるだろう。

(上級者の人へ)ここはどうでもいいことが書いてあるんでとくに地理に自信のある人以外読まないでね。南アジアと言えば、教科書などではスリランカとカシミール地方それぞれの宗教対立について触れている。スリランカでは多数派で仏教徒のシンハリ人と、少数派でヒンドゥー教徒のタミル人との対立が激しい。インドパキスタン国境のカシミール地方では、領主がヒンドゥー教、領民がイスラム教であるため、インドあるいはパキスタンへの帰属をめぐって紛争など発生している。この2点は私大地理などでは必須のネタであるのだが、なぜかセンター試験では全く出題されたことがない。カシミールの存在は無視されている。スリランカにしても、今回のように単に仏教国であるとだけ認識しておけば解ける(というかQのグラフを見て分かるように仏教徒が圧倒的なわけで、わざわざ少数派のヒンドゥー教徒についてかえりみる必要はない)問題ばかりである。この点から考えてみて、個人的に思うんだが、民族問題とか宗教問題って微妙な問題やん。だからセンター試験のような厳正さが求められる試験においては取り上げにくいんだろうなあって思う。実際にスリランカやカシミールだけではなく、複雑で微妙な民族・宗教問題はほとんど出題ネタになっていない。01B本第2問問7第4問問3では極めて珍しいことにダイレクトに微妙な民族・宗教問題が問われている。これは一体どういうことか?これは作成者が悪いよ。問題の質も低いし、これ作った人は同じ人だと思うけど、センター試験っていうものが何なのかわかってないよ。センター地理の問題って基本的には絶対に元ネタがあって、そこからの引用によって設問が設定されているはずなんやけど、上記の2問についてはそういうのが見当たらない。誤文として誤っている箇所も実に細かいというかとるに足らない部分である。これでは解答できないよ。悪問の代表的な例。

 

問5 「南アジアには火山はない」。センター試験でしばしば登場するこのセオリーが本問を解くカギとなっている。

誰でもシンガポールはわかったんじゃないかな?

高層ビル群が並ぶ2がシンガポール。シンガポールはNIESに分類され、他の3つの国のような発展途上国ではない。1人当たりGNPも30000$/人に達し、日本に匹敵する経済レベルを持つ。よって近代的な都市が描かれている2をシンガポールと見ていいだろう。

1も容易かな。中央に皮で作られたテントのような住居のイラストが見られる。これはモンゴルの遊牧民のものだろう。よって1はモンゴル。

で、ここからなんだが、3は中央にヤギだか牛だかよくわからない動物が描かれている。4では火口がパックリと口を開けた巨大な火山のようなものがある。どちらがインドネシアでどちらがネパールか?

3の動物名はよくわからないが、ネパールの属するヒマラヤ山脈周辺では遊牧がさかんである。この動物はチベット高原に生息するヤクなのだろうか?それは不明だが、背後に見られる急峻な山脈が世界で最も高く険しいヒマラヤ山脈であると考えられるので、これをネパールとしてみよう。

そして4。これが決定的となる。明らかに火山が描かれている。ここでポイントとなるのは「南アジアに火山は見られない」ということである。たとえヒマラヤ山脈のような新期造山帯ですら、火山はない。よってこれがネパールであるわけがない。つまりこれはインドネシアなのだ。

インドネシアのバリ島には有名な火山のアグン山がある。アグンとはヒンドゥー教の火の神。本家本元のインドではなく、ヒンドゥー教の辺境の地であるバリの火山になぜそんな重要な神の名が掲げられているのか。それはそもそもインドには火山が存在しないから。だからアグンなんていうおいしい名前をバリの人々は堂々と自分たちの山に付けることができたというわけなのだ。

 

問6 ドットマップによって分布状態を示している。似たような形式は01B追第3問問6でも見られた。米国の農産物分布を問うている。

まず羊から。羊が乾燥地域を中心に分布しているというネタはセンター頻出。ユーラシア大陸内部の乾燥地域にドットが多数見られるUが羊。

牛と豚については統計表を確認してみよう。牛の飼育頭数1位はインド、豚は中国なので、Tが牛、Sが豚であると判断できる。とくにインドの牛は重要。インドは牛は多いが牛肉の生産と消費は少ない。インドの主要宗教であるヒンドゥー教は牛を神聖な動物とみなし、牛肉食を禁じている。ただしあくまで肉を食さないだけで、乳は貴重な蛋白源として利用されているし、水田や畑地では使役用の牛が農耕にいそしんでいる。牛はまさにインドの生活に欠かせない存在なのだ。

インドで牛食が禁じられているというネタもしばしばセンター試験で問われる。次の問7がその典型例である。

また実はこの問題は日本に注目しても解けるところがミソ。湿潤な気候が見られる日本にほとんど羊はいないね。だから日本にドットのないUが羊。北海道の牧場には牛がたくさんいる。だから北海道にドットのあるTが牛。鹿児島や宮崎は豚が多い。サツマイモを飼料にしているわけだ。九州にドットの多いSが豚となる。

 

問7 やや正解率が低かったようだ。難しくないとは思うんだが。。。

魚介類の消費が多いYが韓国。日本と数値が近いことも手がかりになるだろう。XとZは肉類で判断しよう。問6とも重なるんだが、インドは肉類をほとんど食さない(牛はたくさんいるんだが、食用ではない)のだから、Zをインドとする。よって残るXはサウジとなる。乾燥地域であり羊が多く分布しているのであろう(問6のU図にはサウジが描かれていないのでちょっとわからないが)。

 

第4問 人口分野からの出題。地理B地理A共用問題はこの分野からの出題が多いが、02年もその典型的なパターンとなったわけだ。人口分野は平易な問題が多く、とっつきやすいのでここから始めたらスムーズに進めるんじゃないかなとは思うよ。

実際にこの大問も難易度は低い。全問正解を目指してほしい。数字で地理を考える習慣のない不勉強な者は問1や問5で間違えるかもしれない。でも君たちはそれらの問題をクリアして、他の受験者に差をつけることができるはずや。

 

問1 非常に重要性が高い問題。こういう問題の存在がセンター試験の特徴と本質を浮き彫りにする。

解答自体は容易。「世界の人口は60億人である」ということすら知っていれば誰でも解けるし、これは誰でも知っている事実である。このグラフは1995年で途切れているので2002年の人口は類推するしかないが、それでも「60億人」をキーナンバーとするならば答えは1か3に限られてくる。さあ、どちらか?ここからはちょっと考えなければいけないが、それでも判断に迷うことはないだろう。だって、今現在、地球の人口は減っているのか?いや、そんなことなないわなぁ。中国の一人っ子政策などの影響で一時期ほど人口増加率は高くないものの、依然としてアフリカ大陸では人口の爆発的な増加が続いているわけであるし、着実に人類はその数を膨張させているはずである。よって1はありえないので当然答えは3となる。実に簡単な問題。

ありがちな間違いは4。産業革命前を境に人口の増加率は急変した。それまでは人口はゆっくりと増加するだけであったのに、産業革命以降の大量生産の時代に入ってからは人口増加率が急激に上昇した。マルサスという学者はその著書「人口論」の中で、人口は等比級数的に増加し、食料は等差級数的に増加するので、いつか人類は食料不足の危機を迎えると説いた。こんなことを考えてしまうと、選択肢4を選んでしまうことになる。近年人口増加率が急上昇しているし、その曲線は2次カーブを描いている。でもこれは絶対に誤りやね。だって95年時点で人口が50億人に過ぎないわけやし。そもそもこのグラフ自体、1950年から95年というかなり現代に近い時期の変化を問うものであり、4のような人口変化の様子にはならない。

つまりこういうことやな。産業革命がもたらした人口変化やマルサスの懸念した人口動態なんかは、少なくともセンター地理のレベルにおいては全く不要だということ。ここでは単に「60億」という数値を確実に知っておくことだけが求められる。僕は授業の中で、産業革命が世界の人口にもたらした影響なんか無視してるし、マルサスについても名前すら言わない。ただし「60億」だけはしつこく口が酸っぱくなるほど繰り返し言っている。そういうことやで。

 

問2 インドの話ではあるが発展途上国の一般的な話題と考えていいだろう。インドという国名にこだわる必要はない。低所得国(つまり1人当たりGNPが低い国)ではその経済レベルの低さゆえに福祉政策が実施しにくい。よって育児手当なども十分に保障されているわけがない。答えは3である。

この問題などはかなり簡単な部類に入ると思うが、それでも間違ってしまう者もいるわけで、そういう人はどうしようかなあ?とりあえず問題文をしっかり読むことはもちろんなのだが、インドという国について、インド特有のケースにこだわってはいけない。あくまで一つの発展途上国の例であると考え、インドだけではない、発展途上国で生じている一般的なケースであると考えなくてはいけない。

そしてそれからは「発展途上国」に対立する概念として「先進国」を設定し、両者の違いについて考察していくべきである。

第5問問6でも見られるのだが、ここでも「大阪」「宝塚」という都市名が登場する。大阪特有のこと、宝塚特有のことを考えるのではなく、大阪は「都心部」と読み変え、宝塚は「郊外」と読み変え、それぞれ都心部と郊外の特徴を対比させながら考えていかなければいけない。

というわけでインドの問題というより「発展途上国」全般を考えるべきである。しかも反対語として「先進国」という概念を頭に置きながら。

ちなみに3のような手段によって出生率がやや上昇したのは先進国であるスウェーデン。ある時期に出生率が極端に低下した。これではまずいと思ったスウェーデンは福祉政策を徹底し、出生率を上昇させることに成功した。上昇したと言っても、もちろん発展途上国に比べれば低いものであるが。参考問題は99B追第5問問3。

選択肢1・2・4については検討の必要すらないのでパス。

 

問3 良い問題。こういう見慣れないグラフを適切に読み取る力っていうんがセンター地理で最も必要とされる能力なのだ。

問題文が長いのでこれをしっかり読むこと。まずA・B・Cの判定からしよう。一番割合が高いAが「15歳以上65歳未満」に当たる。これは分かるよね?何てったって、15歳から65歳っていうその差50歳分の人口なわけだから、全人口の半分以上を占めているのは当然のことだ。

ではBとCを判定しよう。1990年に注目。Bは30%、Cは10%。つまりBの方がCよりも多い。90年の段階で世界の人口は増えているわけだから(問1の図1参照)、生まれた数より死んだ数が少ないということになるはず。死んだ人の方が多ければ人口は減ってしまうわな。つまり、Bが子どもの数、Cが老人の数と考えるべきだろう。

ではここからやはXとYの判定。

Aの生産年齢人口割合(15~65歳)は常に60%程度でありあまり変化がない。よってこれを手がかりに判定するのはやめよう。

というわけで、Bの幼年人口割合とCの老年人口割合から考えていくことにする。Xは老年人口割合が他の年次に比べ高く、幼年人口割合はやや低めである。この状態では人口増加率は低くなる。それに対し、Yでは老年人口割合が低く、幼年人口割合が高い。人口増加割合が高い。

1950年と2030年、どちらの方が人口増加割合が高いだろうか?いや、誰も2030年のことなんかわからないか(笑)。ではとりあえず分かる範囲で、1950年から2000年くらいまでの間で考えてみよう。ここで最も重要なポイントとなるのは中国の一人っ子政策。現代の中国では産児制限により、出生率を抑えた。世界の人口の5分の1に当たる大国での人口動態が世界全体に与える影響は大きい。数十年前に比べ、現在の人口増加率はやや低く抑えられている。Yを1950年とするとつじつまが合う。そうすると下から4本目くらいのグラフの時期に、幼年人口割合がとくに高く、老年人口割合がその分だけ低くなっている様子がうかがえる。人口増加率がたいへん高くなっていると考えられる。1960年代から70年代にかけてであり、中国は人口増加につとめた時期と重なる。中国人口の自然増加率は00B追第3問問2の図2に示されているので参照してほしい。

Xは2030年。世界は次第に高齢化が進んでいっているのである。

 

問4 1;問1問2問3が人口の自然増加に関する問いであったのに対し、この選択肢1は人口の社会増加に関するものになっている。人口についての出題は、自然増加と社会増加とをしっかり区別しておかんと混乱するで!

現在の日本で人口が減少している地域としては「地方」と「都心」が挙げられる。経済レベルが低く仕事もあまりない地方からは高賃金を求め労働力が大都市圏などへと流れていく。地価が高く住環境の悪い都心からは郊外などに若い夫婦が流出していく。人口の社会移動によって変化する年齢層は20~30歳くらいの若い層が中心である。逆に老人たちは地方だろうと都心だろうと元々自分たちが住んでいた地域に留まろうとする。よって、地方や都心など人口減少地区においては相対的に老年人口割合が高くなるということだ。よって「農山村部で低い」が誤り。

2;これはちょっと難しいな。「地理」の範囲で「国際的合意」というような政治経済的なキーワードがポイントになることはないのだが。ここでは「農産物の関税が引き上げられている」に注目してみようか。これってどうだろうね?2つの点において疑問を感じる。日本はおそらく農産物の輸入は増加している。何となくだけれどもそう思う。それに世界の貿易の流れとして、自由貿易を推進するというものがある。関税などを設定し貿易を制限しようとするものが保護貿易(国内の産業を保護しようとするという意味)。それに対し、関税などをなくしより活発な貿易を実現しようとするのが自由貿易(自由とは無料ということ。つまり関税をなくしてしまうという意味)。だから関税を引き上げるということはむしろ世界の流れに逆行しているということになる。そんなことを日本政府がするかな?僕にはおおいに疑問である。

3;これはどうかな?核家族化はさらに進行し、独居老人などむしろ一人暮らしの世帯数も増加していると思われる。都市部では依然としてワンルームマンションなどもさかんに建設されているわけだし、はっきりとした根拠はないけれど、平均世帯人員数は相変わらず減少傾向にあると思っていいんじゃないか。

というわけで4が正解となる。正文判定の問題なので、3つの文の誤りを指摘しないといけないわけで、その辺りがちょっとしんどいな。とくに選択肢2や3はかなり微妙なところをついているので判定がキツイ。難しい問題だったと思うよ。

 

問5 計算問題。センター地理では必ずこういった計算問題が登場することを知っておこう。計算問題があるんだっていう心構えができているだけで、心の余裕がずいぶんと違うと思う。単なる暗記科目だと思っている者はこういう問題でビビる。

人口密度は人口を面積で割って求められる。よって人口と面積がわかれば計算できる。

まず人口。人口上位10カ国は言えてほしいな。あるいは大まかに人口が多い国のイメージをつかむだけでもいい。いや、どうせそれぞれの国の人口規模も大事になってくるんや。ベスト10は知っておいていいだろう。国名とその人口を。

というわけで、選択肢にある米国、インド、インドネシア、日本はいずれも人口ベスト10に入る国々である。米国で2.5億人、インドで10億人、インドネシアで2億人、日本で1.25億人。

面積は広い国を知っておく。1位のロシアは日本の45倍の国土面積を持つ。2位カナダは26倍、3位中国は25倍、4位米国は24倍、5位ブラジルは22倍、6位オーストラリアは20倍、7位インドは9倍。

日本の人口密度は知っておいてほしい。あるいは人口と面積を知っておけば計算できるね。38万平方キロ。(1.25億÷38万=330)というわけで、1が日本に該当する。

この日本の人口密度を基準に考えていこう。

インドは人口は日本の7倍、面積は9倍であるので、人口密度は9分の7倍であり、約280人程度となる。

米国は人口は日本の2倍、面積は24倍であるので、人口密度は約30人程度となる。

よって2がインド、4が米国。消去法により3がインドネシア。

都市人口割合は参考にする必要はない。

 

問6 重要な問題。センター地理Bにおいて最も出題の頻度が高い分野がこの都市問題についての話題である。具体的な都市名が問われることはまずないが、都市問題について先進国特有のものや発展途上国で顕著に発生しているものなどについて整理しておくことが必要。ホンマによく出るところやで~。落としたらアホや。

とくに本問の場合、いずれの選択肢も過去に出題された内容がほぼそのままの形で再び出題されている。いわば「パクリ」ともいうべきレベルなのだが、問題作成者が過去問を研究しそこからの抜粋という形で設問をつくっているのがうかがえてすごくおもしろい。

1;直接的な元ネタは00B追第3問問1。他にも似たような問題は多い。

人口は経済レベルの低いところから高いところへと移動する。これは時代を問わず場所を問わず、経済活動を行っている人類普遍の法則。とくに中国のように同じ国内で経済的に大きな格差がある場合、その人口移動は極端なものになる。貧しい内陸部から豊かな沿岸部への人口移動。これはセンター試験では実によく出題されるネタであり、今さら言うまでもないかな。

2;参考問題は98B追第3問問5選択肢5。

メキシコシティという固有名詞ではなく、一般的な発展途上国の大都市と読み変えて考えればいい。先進国である日本ですら東京圏に人口が集まる傾向が強いのだ。大都市と地方の経済格差が大きい発展途上国ならいっそうその傾向は強くなる。

3;スラムの原則「先進国は都心に、発展途上国では都市周辺に、スラムが形成される」というセオリーそのまんまな問題。先進国では都心部の老朽化・荒廃が進み、住民や企業が流出。それによって空白となった都心に失業者や移民が住み着きスラムとなる。発展途上国は都市成立の歴史は新しい。しかし急激に巨大化したため、都市内に人口を収容しきれずその周辺に地方から職を求めてやってきた(そして仕事にありつけなかった)人々が住み着くようになる。この都市周辺にへばりつくスラムは際限なく巨大化していくのである。

4;これもおもしろい問題。イギリスは出題率の高い国の一つであるが、とくにこの国はなぜか知識問題が問われることが多い。ロンドンの開発もよく出るネタ。ロンドンは歴史の古い都市であり、都心部のドックランズ地区は老朽化が激しくスラム化した。それをインナーシティ問題という。その解決のため、近年再開発が行われ、オフィスビルやレジャー施設、集合住宅などが建設された。元ネタは98B追第3問問4選択肢4。

5;選択肢2の反対。タイのバンコクに限らず発展途上国の大都市ならどこでも発生している問題。特定の都市に各種の機能や人口が集中し、それゆえ都市問題が深刻化する。

6;これについては参考問題はない。というか、そもそも都市人口割合が話題とされることすらほとんどないわけでかなり特殊な文であると言える。これについてはもうカンで解くしかないだろうね。都市への人口集中が進まないということは都市人口割合が低いということ、つまり農村人口割合が高いということ。そもそも農村人口割合の高い地域とはどんなところか。それは豊かな自然環境の存在。温暖で湿潤で農業がさかんに行われる。モンスーンアジアなどを思い浮かべればいい。都市人口割合の低い国(それは同時に農村人口割合が高い国ってことになる)の例としてタイがまず挙げられる。それに対し、乾燥国サウジアラビアには豊かな農村が存在しない。一部の遊牧民やオアシスの定住者以外は都市生活者となるだろう。自然環境の厳しい国では都市人口割合が高いと認識しておく。

しかし近年センター試験においてはサウジアラビアが取り上げられることが非常に多い。小麦を自給していること(99B本第4問問5選択肢1)や、海水の淡水化(01A本第3問問4)など。さらに02B本試では第3問問7の食料の問題でも登場している。一体こりゃナゼ???しかもサウジといえば絶対に問われるはずの原油関係のネタや聖地メッカのネタは登場していない。あえて避けているようにすら見える。もちろん、サウジだけで大問「サウジアラビアについて次の問1~問6に答えよ」なんていうことはないだろうけれど、ちょこちょここれから頻繁に顔を出す国であることは覚悟しておくべき。前述の原油の統計や宗教の聖地の話題は当然マークしておくとして、意外と穴なのがサウジの国土面積における牧場牧草地割合の高さ。砂漠だらけの国と思いきや実は草原国だったりする。これも砂漠の緑地化事業を積極的に推し進めているからか。統計で確認しておいてほしい。

 

第5問 ここ数年、本試のラストの大問は地形図を交えた地域調査が定番となっているね。00年はヒロシくんのネパール調査、01年はヒロミさんの山形県、そして今年はエリさんの釧路。とくに01年が千葉と山形の比較、02年が兵庫と釧路の比較ということで傾向も似通ったものになっている。

問1は容易、問2の地形図も難しくはない。問3はセンター過去問をこなしておけばどうってことはない。問4は正解率が低かったが小学校や中学校の知識問題。問5は農業区分のキーワードが出てくるが、それはセンターではしばしば問われるものであり、特別な問題ではない。問6はきわめてありがちな問題であり、容易。ここは全問正解を狙ってほしい。

 

問1 ずいぶん常識的な気候グラフ問題。簡単なので間違いは許されない。はっきり言って中学生でも十分にできる問題だと思う。

一般的な考え方としてはローマがポイントになると思う。ローマは地中海性気候である。これは知っているよね。ローマの位置は99A追第3問問5で一応話題とされているように、イタリア半島中央部にある(イタリア半島を脚に見立てればヒザの部分に当たる)。 ここならば典型的な地中海性気候が現れていると考えていいだろう。夏季乾燥・冬季湿潤がキーワード。よってAがローマである。

BとCの判定は気温年較差を中心に考えるといい。

釧路の気候はどんなものか?日本の一般的な気候を知っておいてもいいだろう。東京で、最暖月平均気温25℃・最寒月平均気温5℃である。つまり夏の暑い月の平均気温は30℃近くに達し、寒い月の平均気温は0℃に近づくということ。イメージはしやすいと思うよ。というわけで、釧路は北海道にあるわけだから、東京の気候よりはやや寒冷であると考えていいだろう。ここで注目はC。夏季の気温は20℃、冬季の気温は氷点下に達する。これが適当なのではないかな?

というわけでBがウルムチ。ウルムチという都市が具体的に中国のどの辺りにあるのかは知らないが、とにかく「内陸部」であることだけは確かなようだ(問題文参照)。内陸部ならば、海洋の影響は受けないのだから、気温の年較差は増幅されるはず。Bのグラフは最暖月25℃最寒月-10℃ということで、その差は何と±35℃にも達する。日本では考えられないくらいの気温の寒暖差である。こんな特殊な気候が現れるのだから、これを中国内陸部の都市と考えていいだろう。降水量が少ない(乾燥気候だと思われる)のも手がかりになる。

 

問2 地形図問題ではあるが、決して難しくないと思う。第1問問3に比べて、一般的な地形図問題となっている。つまりいかにもセンター試験っていう感じにはなっていない。

1;右岸と左岸の区別はつくかな?上流から下流の方をながめて、右手が右岸、左手が左岸。この図の場合、釧路川は北東から南西に向かって流れているので、阿寒川が流れ込む北西岸が右岸、釧路市街地が広がる南東岸が左岸ということになる。というわけで、①の文を参照してほしいんだが、右岸に「集落」がみられると書いてある。図を見る限り、集落といえるほどのものはないようだ。しかも「扇状地」とある。扇状地は山地と平地の境目に形成されるものであり、低平な地形が広がる釧路川右岸にそんなものは存在していない。右岸と左岸の意味が分かること、扇状地についておおまかな知識があること(中学校レベルで十分)がポイントである。

2;これについてはとくに否定することはない。保留。

3;1990年の図に見られる釧路川は天然の地形ではないだろう。1890年代には存在しなかったし、直線的な流路となっているし。人工的な地形である。

4;たいへんめずらしい問題。地図記号が問われることはセンター試験ではほとんどない。とくに地理Bでは。本問の場合、地理Aとの共用問題ということで、いわゆる普通の問題パターンも出題されているということか。

しかし官公署とはねぇ(涙)。かなりマイナーな存在でありそんなのまで知っておけっていうのは無理だと思う。このような正誤判定不可能な選択肢が解答であるわけはなく、正解候補からは外してしまっていいんちゃうかなあ。よってこの選択肢は正である(っていうか官公署はあるってことね。よう知らんけど)。

5;選択肢4とは対照的にこちらはありがち。なぜなら「土地利用記号」を話題としているからである。地図記号は不要、でも土地利用記号はマスト!1990年代の図で釧路川周辺の土地利用の様子を眺めてみよう。「荒地」の記号が多い。一部分、右岸「昭和」付近に「畑地」の記号も見られるようだ。でも「水田」はちょっと見当たらない。めっちゃ細かいところまで探したらもしかしてあるのかも知れないけれど、センター試験レベルでは一見して見当たらなければ、存在しないと見なしていいと思うよ。そんなに意地悪問題なんか出さへんって。

ここでおまけ。北海道東部っていうのは実は米作不可能なのだ。釧路などはその代表的な地域。沿岸を寒流である千島海流(親潮)が流れているね。この影響を受けて夏季の気温が上がらない。問1の釧路のグラフを見たら分かるけれど、7月や8月でもかなり気温が低いね。これがこの地域で水田が見られない理由。さらにこの寒流にそって風が吹いてくるのだが、これは「やませ」という風。夏に北海道から東北地方の太平洋岸に吹き込み、低温をもたらす。冷害の原因となる。この地形図において水田の土地利用記号が見られないのは至極当然の話なのだ。本州ならは地形図北部の湿地なんかは水田に利用されているやろうね。

6;砂浜海岸は海岸線沿いの点々によって表される。1890年代地形図の釧路川河口から北西に延びる海岸はまさに砂浜海岸。同じ場所が1990年代には人工的な港湾に改造されている。見たまんま。

 

問3 北海道に豊富な原料とは針葉樹林のこと。水を大量に使用するパルプ製紙工業。ごくオーソドックスな問題だと思う。

 

問4 こういう問題を見るとまさに中学レベルの知識の確かさがセンター試験には要求されているんやなあと実感する。日本地理は高校地理ではほとんど扱われない。ただしセンター試験では日本地理は知識問題として出題される。しかも本問のように地名も出るぞ!

問題自体はこんな風に考えたらいい。まず魚の種類に注目。タラやサケは冷たい海域に住む寒海魚。そのため北海道の釧路で水揚げが多い。それに対し、マグロやカツオというのは日本海流に乗って暖かい海を回遊する暖海魚。日本近海だけでなくインドネシアなど赤道近くでの漁獲も多い。遠洋漁業の根拠地である焼津での水揚げが中心。よって消去法によりアジが長崎となり、答えが⑤となる。

ただ、この問題の正解不正解を分ける境界は何だろう?それは焼津を知っているかどうかってことだと思う。マグロやカツオが遠洋漁業によって日本から離れた海域で獲られる魚種であることは想像できるとして(え、それも無理?ほなしゃ~ないな。アキラメや・涙)果たして焼津がそれらの代表的な水揚げ港であることを知っているかどうかってことや。これは完全に中学校、いや小学校の知識。高校で学習することではない。焼津の特徴を知らなくてはいけないというかなり純度の高い知識問題となっているのである。しかも中学レベル!

たかだか3点分ではあるけれどこういった問題を正解したかったらやっぱり中学社会の勉強をしっかりやっておくべきなんだと思う。

02B本で登場した都市名を挙げてみよう。バンコク・ローマ・ウルムチ・釧路・焼津・長崎。ほとんどが第5問に集中している(第4問と第5問が地理BA共用問題であることを考慮すると、地理Bではいかに地名が問われないかが明らかである)。このうちバンコクは別に都市名を知らなくても解答可能。ウルムチについては中国内陸部という説明がなされているので、これも知らなくても解答できる。ローマは知っておいてほしいけれど、ヨーロッパ主要国の首都でもあるし、むしろ知っていて当たり前の常識と言えるのではないか。

となると、釧路・焼津・長崎がポイントとなる。でもこれらは高校の授業で学ぶ類の都市名ではない。中学校、いや小学校で学習するのではないか?とくに焼津なんかは遠洋漁業の基地として漁業の項目では必ず登場してくる地名である。こういう問題をクリアしたかったら、中学地理の問題をしつこくやっておくことやで。センター試験で求められる知識は中学レベルである。思い知れ!

 

問5 ホイットルセー農業区分は大事。これはセンターに出る。

ホイットルセーという学者は世界の農牧業をタイプ別に分類した。気候条件によって制限される伝統的な農牧業として「焼畑」「遊牧」「オアシス農業」を、アジアの農業として「アジア式米作」「アジア式畑作」を、ヨーロッパ起源の農牧業として「酪農」「混合農業」「地中海式農業」を、新大陸の農牧業として「企業的穀物」「企業的牧畜」を、近代に成立した商業的性格の強調された農業として「園芸農業」「プランテーション農業」を、それぞれ挙げている。

この問題でキーワードになる言葉、それは「企業的」である。一般的な傾向としてアジアの農牧業は「家族中心の零細経営的」であり、アメリカやオーストラリアなど新大陸の農牧業形態は「企業的」となる。これは農牧業区分において非常に重要なポイントである。

選択肢4に注目。「企業的」という言葉が用いられている。アジア(根釧台地はもちろんアジアである)の農牧業について「企業的」をいうキーワードを使用している時点で不審に思わなければいけない。僕はこの言葉を見た瞬間に4を誤り選択肢とした(つまり解答とした)。

時間に余裕があればさらに突っ込んで分析してほしい。「穀物」にも注目。はたしてこの図において(おっと、この時点で初めて図を見るわけだ。つまり僕はこの問題を図を全く見ないで解いたってことやで。君たちはマネしてはいけないよ・笑)「穀物」は栽培されているのだろうか。穀物とは米・小麦。トウモロコシのことである。採草地や放牧地が中心であり、耕地は見られないようだ。つまり穀物の栽培はなされていない。これにより改めて4が解答であることがはっきりするだろう。

さらにダメ押しで言うならば、そもそも「企業的穀物」とはイコール商業的に大規模に栽培される小麦のことである。やっぱり新大陸の農業についてのキーワードであり、そもそも北海道の農業を表す言葉ではない。

1・2・3の選択肢については検討の必要はないが、一応参考までに。

1;防風林が農地(この場合は採草地兼放牧地)の東側にある。この方向から吹いてくる風を防ぐ意味があるのだろう。ちなみにこの東風はおそらく「やませ」であろう。夏季に千島海流(親潮)に乗って吹いてくる冷涼な風。農作物の成育に影響を与え、冷害の原因となる。

2;日本の農民1人当たりの農地面積は1ha。北海道でその値は10haに達すると言われている。ヨーロッパ並みの広さ。この数値を知らなくても、北海道の広大な牧場を思い浮かべれば容易に解答できるだろう。

3;採草地が見られる。

 

問6 ラストはいきなり都市圏の問題。01年の第5問でも似たような問題があり、地域調査の定番的存在か。

宝塚という都市名こそ登場しているが、問題文で「京阪神大都市圏の郊外にある」とその特徴が説明されており、郊外に位置する都市の一般的な特性を押さえておけば十分に解答可能であろう。

郊外の特徴は?郊外とは都心部と対照的な存在である。企業などが集中し昼の人口が多い都心部に対し、郊外はいわゆるベッドタウンとして夜間人口の方が大きくなる。この昼夜間人口のバランスを考慮するべき。

まずX。昼夜間人口比が1を大きく上回っている。下の式を見てみよう。(昼夜間人口比=昼間人口÷夜間人口)である。つまりこの値が1を超えているということは(昼間人口>夜間人口)ということ。とくにXの場合、1.46というたいへん高い数値を示しているわけであり、昼間人口が夜間人口を大きく上回っていることがわかる。官公庁や企業のオフィスが集中しており、通勤して市内に入ってくる人が多いということで、これを大阪市と考える。

その反対に昼夜間人口比が小さい値になっているZは通勤者を大阪市に送り出している宝塚市であると考えられる。ベッドタウンと呼ばれる住宅都市である。

昼と夜の人口に大きな差がないYが釧路市であろう。釧路はこの地域では中心的な都市であり、もちろん周囲からの通勤者もいるのだろうが、大阪市に比べればやはり規模は小さいわけで、都市圏の広がる範囲も限られている。釧路市内で働く者の多くが釧路市内に住んでいるということだろう。

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