2005年度地理B本試験[第3問]解説

2005年地理B本試験[第3問]

 

まず第4問を最初にやるのはお約束として、次に君たちはどの大問に取り組んだかな。僕は何となくこの第3問に進みました。地誌問題で知識に偏っている分、難しいかもしれないが、時間的なロスは少ないだろうかなって。

というわけで中国をテーマとした地誌問題になっているわけだが、僕的にはアフリカとかラテンアメリカにヤマを張っていて、そういう意味ではちょっと意表を付かれたかな。近年も03B本第3問、00B追第3問などで中国は大きく取り上げられているし。とはいえ、やはり中国は巨大な存在であるし、センターだけでなく各私大においても出題率が極めて高い地域であるので、ここで出題されたことはさほど驚くに値しない。

 

問1 

[講評]おっとビックリ!経緯線に関する問題。こんな風に経度差が問われた問題は初めてじゃないか。

 

[解法]今までに出題されたことのないパターンではあるが、決して焦ることはない。だって、経線間隔なんて世界地図を見れば一発でわかるわけだし、世界地図だってこのセンター試験の冊子の中にはどこかに一つぐらい含まれているよ。

というわけで探してみると、とりあえず第2問の図1に完全な世界全図ではないけれど、参考になりそうな写真がある。イギリス(経度0度)と日本(東経135度)に印をつけ、さらに第3問図1の範囲をこれに当てはめてみる。Pはほぼ西日本と同緯度、Qはインド半島中央部ぐらい。さあ、どうだろう?135度の半分程度と見なしていいんじゃないか?

 

[関連問題]経線緯線に関する問題は少ない。直接的に問われたものは、04B本第1問問1のみ。この問題にしても、本問と同様に他の問題で示されている世界地図を参考にして解けばいいわけで、難問というほどではない。

これ以外では赤道がしばしば取り上げられている。03A本第1問問1、00B本第1問問1など。

 

[今後の学習]赤道の位置は必ず知っておかなくてはいけないが、これ以外の緯線経線については特別な知識はいらないだろう。最低限、日本を通過する緯線経線(北緯40度が東北地方、東経135度が兵庫県明石市。東京はおおよそ北緯35度・東経140度)さえ知っておいたら何とかなると思う。

とにかく、地理Bだけでなく、地理Aそして時には世界史でも世界全図が示されていることがあるため、こういった緯線経線を問う問題っていうのは出題者としても出しにくいとは思うんだが。

 

問2 

[講評]大きな地形の断面図問題。最近ちょこちょこ見られるようになったパターン。でもこれは難しいと思うよ。実際、正解率も低かった。①と②で迷うんだ(涙)。

 

[解法]まず簡単なものから解いていこう。③がエに該当。南端の部分が海岸付近にあるのだから、左端の標高が高い断面図は削除できる。③のみ左端の標高がほぼ0m。これは簡単。

さらにイを判定しよう。ここにはチベット高原という世界有数の高度を誇る巨大な山岳地形がある。④に注目。左端の標高は6000mに達する!これは異常な高度だぞ。富士山の山頂でも4000mには届かないのだから。このことから④がイに該当すると見ていいだろう。チベット高原は過去問でもしばしば登場する地形であり、この判定も難しくないと思う。

で、結局ここからなんだよね~みんなが迷うのは。左端の標高だけ確認してみようか。①は約2500m。これは結構高いと思っていいんじゃないかな。例えば古期造山帯であるオーストラリア東岸の最高峰は2000m程度。それよりも高いのだからこちらは新期造山帯と考えるべきか。一方、②の方は約1000m。山岳というより高地や高原といった感じ。さほど急峻な地形でもないようだ。

以上のことが手がかりとなるのだが、どうだろうか。

チベット高原やヒマラヤ山脈などインド北部から中国南西部にかけての標高6000mを越えるような地形の連続を考えれば、地点ウの標高もかなり高いことが想像できないだろうか。少なくとも新期造山帯(ヒマラヤ山脈の東の延長上にあり、アルプスヒマラヤ造山帯の一部分と思われる)とみて間違いないのではないか。

それに対し、アの方はどちらかといえば安定陸塊など平坦な地形が中心で、山脈があったとしても古期造山帯で標高がさほど高くないのではないか。アルプスヒマラヤ造山帯でもないだろう(アルプス山脈やヒマラヤ山脈を結んだライン上にあるわけではない)し、かといって環太平洋造山帯でもありえない(太平洋沿岸ではない)のだから、新期造山帯であるわけはないのだから。

以上のことから、標高が高い①がウ、低い②がアとなる。

ちなみに、②の断面図では中間部分(1000km付近)がなだらかな高原(さほど標高は高くないが)になっているようだが、これはモンゴル高原。モンゴルという国はやや高原上に国土がある。

さらに①の断面図について、800km付近の盆地はスーチョワン盆地。人口1億人が居住するが、平均所得が極めて低いために省外への出稼ぎが多い。また1000km付近に2列の急峻な山脈(標高3000mほど)があるが、これはよくわからない。

 

[関連問題] 地形図問題などにおける小地形の断面図問題も多く出題されているが、ここでは省略。大陸や地球全体のような広大な範囲におけて断面図を判定する問題をピックアップしてみよう。

04B追第2問問1参照。赤道一周の断面図。どの部分が海洋で、どの部分が大陸なのかを判断するところから始める問題。具体的な標高が示されていないので、断面図の高低から推測するしかないのが辛いところ。

02B本第3問問1参照。「北極点と南極点を通り、インド半島を通過する地球の大円」についての断面図。横方向の断面は「赤道」の一言で済むのに、縦方向はこんなに説明しないといけない(苦笑)。こちらは標高が示され(陸地と海洋の違いも明らか)ている。

以上、97年以降で出題されたのは上記の2問。ただしこれらが地球全体の断面であるのに対し、本問は中国という限定された範囲での断面図であるので傾向が異なっているともいえる。どうだろうか、今後はどういった形で断面図問題が出題されるのだろうか。様子をみてみたいジャンルである。

中国全図が登場した問題もいくつかあるので、せっかくだから一つ見てみよう。00B追第3問問1図1がわかりやすい。Bがスーチョワン省だが、本問の①の断面図と参照して、スーチョワン盆地の位置を確認しておくといい。

また、ここでは手がかりの一つとしてチベット高原の標高もポイントとなっている。チベット高原は、03B本第1問問3などで登場。

 

[今後の学習] 難問であったので間違えていても気にすることはないのだが(笑)、それでもあえて解答のコツのようなものを伝授しておこう。それはやはり「数字に敏感になる」こと。ここでも漠然と断面図をとらえるのではなく、数字(とくに左端の標高)に注目することによって、正解へと近づくことができた点については留意しておかなければいけない。また、普段から地図を見るべきとは思わないが(もちろん見るに越したことはないのだが、無駄が多すぎる)、もし見る余裕があったとしたら、ここでも数字に注目するクセをつけておくこと。だいたいどこの山が標高どれくらいなのだろうか、大陸のこの部分の標高はどれくらいなのだろうか、そういった数字に着目することによって、この手の問題は何とかクリアできたりするんだが、どうだろうか。とくに理系諸君(そして文系でも経済系の諸君)、君たちが大学で修めようとする学問には数字が付き物だろう。数字の重要性を体で覚えろ!

 

問3

[講評]うわっ!ハイサーグラフ!一昨年からいきなり登場したものであるが、3年連続で出題されたことを考えると、これからはこの対策も必要になってくるのではないだろうか。でも正解率は高く、難易度的にはとくに問題なさそう。ハイサーグラフそのものに過敏になることはなく、冷静に数値を読み取ってほしい。

 

[解法]ハイサーグラフは大まかな形から気候を想像することをしてしまいがちだが、それではいけない。アバウトにとらえると思わぬ怪我をする。数字を詳細に読み取り、必要とあらば普通のグラフに書き換えるぐらいの丁寧さが欲しい。

とりあえずグラフを読み取って、表の形にしてみた。グラフの横軸(数学でいうところのX軸)が降水量で単位はmm、縦軸(同じくY軸)が気温で単位は℃。多少あいまいな数字になっているが、これぐらい判読できれば問題ない。

 

[カ]

     1月  2月  3月  4月  5月  6月  7月  8月  9月  10  11  12

気温   -6    -4     3    10    16    21    23    24    18    11     4    -4

降水   10    10    30    30   120   140   350   200   100    30    30    10

 

[キ]

     1月  2月  3月  4月  5月  6月  7月  8月  9月  10  11  12

気温   16    16    18    23    25    27    28    28    27    25    22    16

降水   20    30    30   200   250   400   400   550   250   150    30    20

 

[ク]

     1月  2月  3月  4月  5月  6月  7月  8月  9月  10  11  12

気温   -5    -1     5    12    17    20    22    21    17    10     3    -4

降水    0     0    10    20    50    50    80    90    50    20    10     0

 

もちろん君たちはここまですることはないが、よかったら参考にしてほしい。

さて、どれがどの都市だろうか。

まず最も気温が高いものをエのホンコンと考えていいだろう。キが該当。

夏季に降水が極端に多い(一か月に500mm以上降るってのはかなりのもんだ!)ことについては、この地域は熱帯低気圧(台風)の上陸がよくみられるところであることを考える。

さらにカとクであるが、ことらは気温の高低だけでなく、年較差にもさほど差はない(本来なら海に近いピョンヤンの方が気温年較差が小さく、内陸部のランチョウの方が大きいという傾向がはっきりしそうなものだが)。よってここは降水量に注目しよう。海から遠く離れ、水分が供給されにくいと考えられる内陸部のランチョウでは降水量が少ないと思われる。そもそも水がなければ雲だってできやしない!年降水量が少ないクが該当。

逆に海に近い(といっても別に海に面しているわけではないが)ピョンヤンにおいては海からの水分供給も豊かであろうと思われ、降水量が多くなるはず。よって冷涼であっても比較的降水が多いカが該当。

ピョンヤンの降水には季節的な差異が大きく、夏季は多雨で冬季はほとんど降水がない。夏季は南東からの季節風が卓越し、日本海方面から湿った空気がさかんに運ばれ、朝鮮半島は雨の多い気候となる。一方冬季には内陸部からの北西季節風が卓越し、これらは乾いた風(内陸部から吹き出すのだから当然である)なのでこの一帯の降水量は少なくなる。

ちなみに、最暖月平均気温25℃、最寒月平均気温-5℃というのは北海道の札幌とほぼ同じ。気温的にはピョンヤンもランチョウも札幌に近いということ。ただし降水量においては札幌は雪がやや多いかな。

 

[関連問題] 97年度以降ハイサーグラフが出題された例を挙げてみよう。

04B本第1問問4参照。世界の3地点のハイサーグラフが取り上げられている。これは非常に判定が難しく、ケープタウンの夏季乾燥型の気候、パタゴニアの少雨気候など、多少世界の気候分布に関する知識が問われている。それだけにあくまで「例外的」な問題ともいえ、参考にする必要もないのだが。

03B本第3問問1参照。限定された地域(この問題の場合はインド)における3地点のハイサーグラフであるという点において、東アジア限定の本問との類似性を感じる。ただし、この03B本第3問というのが、センター史上に残る悪問であり、センスのない出題者が過去の傾向を無視して作った駄作であるので、そういった意味で参考にすらならないだろう。

というわけで2例あるわけだが、いずれも取るに足らない問題ばかりで、参考にするまでもないというのが僕の個人的見解。ただし05年の問題に関すれば、「赤道の近くでは気温が高い」「海から離れていれば降水量が少ない」という簡単なセオリーに基づいて考える「思考問題」としての性質が強く、過去の2例とは異なる。

むしろこちらの方がセンター試験における気候判定問題の正統的な形式といえ、雰囲気は02B追第3問問2に近い。まず気温の高低によって縦方向の位置関係を判別し(北が寒く、南が暑い)、気温年較差や降水量によって横方向の位置関係(沿岸部か、内陸部か)を判別する。

都市名そのものは、ランチョウやピョンヤンは初出であり、一方ホンコンは重要な都市名として頻繁に登場しているものの、都市についての知識が問われるわけではなく、とくに意味はない。

 

[今後の学習] ハイサーグラフが厄介なんだが、これで過去問3題ほど出揃ったわけでもあり、これらを用いて十分に練習しておいてほしい。時には上のように表にして、そして時には通常の見慣れた雨温グラフなどの形にして。ただ、講評の部分でも述べたが、この問題な正解率そのものは高かった。みんなもしかしてそんなにハイサーグラフというものを苦にしていないんじゃないか。一昨年と昨年の問題は難しかったが、それはハイサーグラフが難しいのではなく、問題そのものが難しいのだ。だからそちらで苦手意識を作ってしまった人については、本問であっさり正解して自信をつけて来年の試験に備えてほしい。グラフの形式にさえ戸惑うことがなければ、基本的に気候判定問題はサービス問題だ。これまでも比較的難易度の低い問題が数多く出題されているよ。

 

問4 

[講評] 民族・宗教に関する問題。内容そのものはオーソドックスなものであり、とくに特殊なことを問うているわけではないものの、地理B選択者にはこのジャンルを苦手とする者も多いわけで(暗記に頼る部分であるので)、そういう意味では正解率の低い難問といえるだろう。最初から民族・宗教ジャンルを捨ててしまっている人にとっては、ミスして当然の問題であるし、ここは適当にマークして、気分を入れ換えて次に進めばいいだけの話だ(無責任!?笑)。

 

[解法] 「シルクロードはイスラム教」、これ一発で解ける。

古代の中国をヨーロッパを結んでいた交易路であるシルクロードを知らない人はいないよね。この図1においては、ペキンを中心とする華北地方からランチョウ付近を通り、さらにC地区から西方に抜ける。中国で作られた生糸(絹)がヨーロッパなどにもたらされたわけだが、当時この交易路をさかんに往復していたのはアラブのイスラム商人など。もともと商人の間に広まった宗教であったイスラム教は、彼らの手でシルクロードの交易都市の住民の間にも広められていった。

以上より、「C地区=シルクロード=イスラム教」と考え、選択肢より④が該当する。「日干しレンガ」は乾燥地域のキーワードだが(土を焼いていないので降水によって溶解してしまうため、雨の多い地域では使用されない)、問3のランチョウのグラフからもわかるように、中国北西部は降水量が少ない乾燥地域。

隣接するいくつかの国とあるが、これはカザフスタンなど中央アジア(注)の国々であろう。

(注)中央アジアとは旧ソ連に属していたアジア諸国のことで、具体的にはカザフスタン、ウズベキスタン、トルクメニスタン、キルギス、タジキスタンのこと。いずれもシルクロード沿いに発達した交易都市を中心に成立した国々であり、イスラム教が主に信仰されている。気候は、降水量が少なく、全体的に乾燥している。

 

[関連問題] シンチャンウイグル自治区は03B本第2問問2で登場。ただしキーワードは「オアシス農業」で宗教とは関係ない。

シルクロードに沿うアジア内陸部で主にイスラム教が信仰されていることが出題された例もいくつかあり、こちらの方が参考になるだろう。

01B追第1問問4参照。旧ソ連南部(つまり中央アジア)にはイスラム教が分布している。

98A追第1問問7参照。旧ソ連南部はイスラム地域であり、「コーラン」「豚肉を食すこと、飲酒の禁止」などがキーワードとなる。

出題例こそ多くないものの、非常に重要なトピックである。「トルコ~イラン~カスピ海~中央アジア~中国北西部ウイグル=シルクロード=イスラム」と頭にインプットしておこう。

また、さらに民族宗教ネタに苦手意識を持っている諸君のために、地理B本試験限定で、民族宗教についての知識がないと解けない問題を数年分挙げてみる。たいしたことないのがわかるよ(笑)。

04B本第3問問3参照。①ラテン系民族は主にカトリックである。②スラブ系民族は主に東部ヨーロッパに分布し、北西ヨーロッパで主に信仰されているプロテスタントとは重ならない。③ペルシアとはイランのことである。④トルコはイスラム教の国である。

03B本第3問問6参照。スリランカは南部に多数派仏教徒(シンハラ人)、北部に少数派ヒンドゥー教徒(タミル人)。ただしあまり地理Bの問題としては適切とは思えない。

03B本第3問問7参照。インドでは宗教的な理由などから牛肉を食さない。ただし地理Bの問題としては適切とは思えない。

03B本第4問問2参照。③シンガポールの公用語は4つ。④マレーシアのブミプトラ政策はマレー人優遇政策。

03B本第4問問4参照。米国において、黒人割合が高いのは南東部の諸州(いわゆる「南部」とよばれる地域)、ヒスパニック割合が高いのはメキシコとの国境沿いやフロリダ半島、インディアン割合が高いのは西部内陸部の乾燥地域(居留区が設けられている)、アジア系の割合が高いのは太平洋沿岸諸州。

02B本第3問問4参照。インド=ヒンドゥー教=沐浴、スリランカ=仏教=托鉢、バングラデシュ=イスラム教=礼拝。

01B本第1問問4参照。フィリピンは旧宗主国スペインの影響でカトリックが広まった。

01B本第2問問7参照。第二次世界大戦後に建国されたのはイスラエル。ただしこの問題は他の選択肢が難しく、悪問である。

とりあえずこんな感じです。。。

 

[今後の学習] 参考までに他の選択肢についても解説しておこう。どうでもいいんだけどね(読まなくていいよ。とくに②と③は・笑)。

①「焼畑農業」は原則として熱帯地域だけで見られるものであるので、まさかA、B、Cのような高緯度に位置し冷涼と思われる地区で行われているとは思えない。よって最も南部に位置するDが該当。「隣接する国」というのが具体的にどこの国を指すのは不明だが、ミャンマーやタイのことだろうか。「山岳民族」にこだわることはないが、「なるほど、この一帯は山岳で覆われているのか」と気付くと、問2で選択肢を①と②との間でしぼる時に使えたりするのだ(もちろん標高が高く険しい地形が見られる①を選ぶべき)。

ちなみにDはユンナン(雲南)省というところ。内陸部でありながら比較的降水量が多い(年間2000mmぐらいで、沖縄などと同じぐらい降る)のが特徴。長江やメコン川などアジアを代表する河川の源流ともなっている。そういった湿潤な気候であるため、茶や米の原産地ではないかとも言われており、人々の生活もかつての日本との類似点が多い。関連問題の項でも説明したが、この地にはカルスト地形が見られ、独特の石灰岩地形が広がっている。水墨画で細長い円筒形の山が切り立った風景を見たことがないか。あの妙な形の山は石灰が侵食されることによって形成されたのだ。02B本第3問問3図3参照。ユンナン省が南西水稲区となっている点に注目。温暖で降水が多く、東南アジアのような地域性を持っていると考えたらいいのではないか。っていうか、ユンナン省に住む少数民族って何だ?知らんぞ~。かなりマイナーな(もちろんそれゆえ価値の高い)民族なんだろうね。

②「チベット仏教(ラマ教)」を信仰している人々は、チベット高原(チベット自治区)の他、ブータンとモンゴルに多い。つまり朝青龍もラマ教徒ってこと(だと思うよ。違ったりして!?)。で、Bの地域なんだが、ここはモンゴル人が中国の側にはみ出して分布しているところで「内モンゴル自治区」という(ちなみにモンゴル国のことを、中国人はたまに「外モンゴル」なんていったりする)。民族的にはモンゴル人が住んでいるのだから、彼らの信仰する宗教もチベット仏教(ラマ教)なのだ。「この民族が中心をなす隣国」というのはモンゴルのこと。モンゴルはソ連の影響が強い国でかつては社会主義(計画経済)だったが、ソ連崩壊後、東ヨーロッパやロシアなどと同じく、資本主義(市場経済)へと完全に移行した。

この点で現在でも社会主義を掲げる中国とは異なっているのだが、実際には中国もかなり資本主義的になってきており、似たようなものかもしれない(ま、完全な社会主義はご存知北朝鮮ですな。社会主義は政府が全てを決定するため、一部に権力が集中しやすく独裁国家となりやすいのだが、ここはその典型ということでしょうか???)。

③「固有の表音文字」っていうのはハングル文字のことでしょう。独特の床暖房というのは朝鮮半島の暖房施設である「オンドル」のことでしょう。オンドルっていうのはセントラルヒーティング方式を考えてくれたらいいんだけど、壁とか床の中に空気が通る穴を張り巡らし、外から熱風を送り込むというもの。冬の寒さがそれほどまでにキツイってことなんだろうね。よって朝鮮半島に隣接するAには朝鮮民族も住んでおり、彼らの伝統的な生活様式を守っていると思われ、これが該当。ちなみにAはチーリン(吉林)省。03B本第4問問5表1に名前だけ登場している。ここは普通の省であり、朝鮮民族のような少数民族が自治を行っているところではない。中国国内には比較的多くの朝鮮民族が住んでいるのだが、彼らに自治区は与えられていないのだ。

[今後の学習]本問における最初のキーワードは「日干しレンガ」。「日干しレンガ」というと、北アフリカや西アジアが真っ先に思い浮かび、こういった高緯度地域とは結びつかなかったかもしれない。とはいえ、このシンチャンウイグルというところも立派な(?)乾燥地域であり、当然日干しレンガは使用され得る(というより、森林がないのだから、建材として日干しレンガを使うのはマストだね)。このように自然地理的なキーワード(日干しレンガ=乾燥地域)に注目することは非常に重要。

ただし本問においてはもう一つのキーワードである「イスラム教」に注目して解いた人が多かったんじゃないかなと思うし、おそらく出題者もそれを意図している。とはいっても、やっぱり宗教に関する問題は君たちが非常に苦手とするところ。地理Bに比べ民族や宗教に関する問題が充実している地理Aの問題を解いて、鍛えておいてほしい(それか全然やらないで、捨て問にするか。それもアリやで・笑)。

 

問5 

[講評] 階級区分図による問題。最近こんな風に階級区分図を用いて出題する問題って必ず一問ぐらいあるような気がするなあ。問題そのものの難易度は微妙なところ。確実に段階を踏んで考えていかなければ間違うよ。焦ってイメージだけで解くな!

 

[解法] まず階級区分図ということで、当たり前のようにチェックしておかなければいけないことがある。それは各統計項目が割合・率(相対的な数)であるかどうかということ。穀物の生産量に占める米の「割合」、人口「1人当たり」域内総生産額、第1次産業就業者「比率」、農村人口「1人当たり」ヒツジ飼養頭数と、いずれも相対的な数であり、いずれも階級区分図を用いて表すにふさわしい(しかし、何で「ヒツジ」ってカタカナになってるんやろう?ま、どうでもいいけど)。

では考えていこう。人口1人当たり域内総生産額とあるが、そもそも域内総生産って何だ?ま、言葉ば似てるから国内総生産と同じようなものと思っていいね。国内総生産ってことは国民総所得と同義語だ。つまりGNI。だから人口1人当たり域内総生産額については、「1人当たりGNI」をイメージして解いていって間違いなかろう。「国」ではなく、省や自治区などの地域ごとの統計なので「域」という言葉を使っているだけで、実際には同じものなのだろう。

さて、1人当たりGNIならば「先進国で高く発展途上国」で低いというお約束がある。これを中国の国内に当てはめるならば、「先進地域で高く、発展途上地域で低い」ということになる。さあ、「先進地域」とはどこだ?これは言うまでもないね。沿岸部に決まっている。とくにシャンハイ(長江の河口付近に位置するんだが、場所はわかるかな。00B追第3問問1図1において、A地域の右下にくっついている小さなエリアがあるよね。海沿いに。これがシャンハイ市。シャンハイはどの省にも属していない独立した市で、中央直轄市となっている)から南部に連続する沿岸部において、経済成長が著しく、中国の他の地域に比べ、所得水準が高いとみて妥当だろう。

このことを頭に入れながら図4を確認する。上で述べたシャンハイ以南の沿岸地域で「高」となっているものは、②と④。知らなくてもいいが、とりあえず省名も紹介しておこう。シャンハイ市の南が茶で有名なチョーチャン省、さらに南が同じく茶で有名なフーチェン(福建)省、そして海沿いに南西に続くのがコワントン(広東)省で、ここは酢豚(サトウキビとパイナップルが使われてるよね)など広東料理で有名。で、以上の4つの市と省が②と④ではともに「高」くなっている。

しかしこれだけでは判定しにくい。他の選択肢を見ながら候補を絞っていこう。まず「人口1人当たりヒツジ飼養頭数」。一般的にいってヒツジは乾燥地域に分布する。粗食に耐え、体毛は皮膚蒸発を防ぐ。同じく一般的にいって内陸部は乾燥地域である。ゆえに内陸部に「高」が分布する①か③がこれに該当するはず。

「第1次産業就業者比率」について考えよう。農林水産業の従事者であるが、この業種はどうしても第2次産業や第3次産業に比べれば所得水準が低い。つまり儲かる仕事ではないということ。これゆえに中国国内でも経済レベルが低い地域においてこの割合が高いのではないか(逆にいえば、第2次産業や第3次産業の割合は低くなる)と予想され、内陸部がまさにそういった地域となる。これも①か③が該当。少なくとも所得水準の高いシャンハイやコワントン省で、第1次産業人口割合が高いはずがない。こちらは第2次あるいは第3次産業の割合が高いはず。

よってこの時点で、①と③は(どちらがどちらかわかる必要はない)決定したので、正解の候補から除外する。

さて重要なのは「穀物の生産量に占める米の割合」だ。穀物といえば、米と小麦とトウモロコシが世界3大作物とよばれ、他の穀物(ライ麦やこうりゃんなど)に比べ、とりわけ生産量が多い。とくに中国は米と小麦の生産は世界第1位なので、ここでは米と小麦の違いに注目しながら解いていこう。

米と小麦の栽培条件の違いは有名だろう。米が高温湿潤な気候環境を好むのに対し、小麦は少雨冷涼。わかりやすい図として02B本第3問問3図3があるのでこれを参考にしてほしい。この図は細かすぎるのでもっと大まかな分類にすると、東北地方(大豆・コウリャン区、春小麦区)、華北(冬小麦・コウリャン区、冬小麦・アワ区)、華中(水稲・小麦区、スーチョワン水稲区、水稲・茶区)、華南(水稲二期作区)と区分される。

この図からみても明らかなように、水稲は温暖で降水量が多い(とくに降水量が重要である。華北と華中の境界にホワイ川という川とチンリン山脈という山脈があるのだが、これに沿って年降水量約1000mmの等値線が通っており、これより北の畑作地域(小麦の栽培が主)と南の米作地域(米の栽培が主)とが明確に分けられている)華中から華南地域において栽培されうるものである。以上より、華北などに「高」が分布する②は該当せず、南部に「高」が集中している④が穀物の生産量に占める米の割合に該当する(注)。

(注)余談だが、おもしろいポイントをみつけたので紹介しておく。それは「中」の分布について。東北地方の省で「中」となっているところがあるが、これは米の生産が多いのではなく、穀物そのものの生産量が少ないのだろう。厳しい自然環境で、しかも人口もさほど多くないため、商品作物の大豆などはさかんに栽培されるが、自給作物である穀物の栽培は重視されていないのではないか。華北と華中の境界の省で「中」となっているのは納得である。米を栽培するものの、やや降水も少なく冷涼で、あまりたくさん作れないのだろう。またスーチョワン省も「中」である。実はこの省は米の生産はきわめて多い(00B追第3問問1によると全国で第2位のようだ)のだが、それ以上に人口規模が大きく、裏作として小麦の栽培も行われているところなのだ。このような二毛作の影響で小麦の生産も比較的多く、それゆえに米の割合が相対的にやや下がり「中」となっている。スーチョワン省の南に隣接するユンナン省なども「中」となっているが、こちらは山岳地帯であり耕地が開きにくいことや、石灰岩地形が広がることなどから水田に利用しにくい土壌となっていることが原因だろう。

以上、④が除外されたので正解は②となる。沿岸部で経済レベルが高いという傾向がはっきりしている。ちなみに最北西のシンチャン・ウイグル自治区や東北地方の諸省で「中」レベルとなっているが、これはこの地域が発展しているというわけではもちろん無く、単に自然条件が厳しい地域ゆえ人口規模が小さく、それゆえに「1人当たり」の数値がやや高くなったに過ぎないと思われる。

(別解)消去法でなく、直接解くやり方もある。人口流動の項で学習するのだが、中国沿岸部の経済成長地域への出稼ぎ者の多くはスーチョワン省出身である。それはこの省が極めて貧しい経済レベルにあるということで(人口規模が大きいので「1人当たり」の値が小さくなっている)、省外へと高賃金を求めて労働者が移動するのだ。このことを頭に入れておけば、スーチョワン省で「低」となっている階級区分図こそ人口1人当たり域内総生産額であることがわかる。それゆえに②が該当。このやりかたはスーチョワン省の位置を知っておくことが要求されるが、過去問でも取り上げられたことがあり、現代中国を象徴するものの一つとして知っておくべき省といえる。

ついでなんで①と③も判定する?ヒツジは多湿な地域にはいないもののなので(日本には少ないよね)、沿岸部のハイナン島(コワントン省の南の島)や内陸部ではあるが比較的湿潤なユンナン省が「高」となっている①は外れ、④となる。乾燥だけではなく、寒さにも強いような感じがするね。

よって①が第1次産業。シャンハイだけではなく、ペキンやテンチンなどの大都市で「低」い値となっているのが特徴的。

 

[関連問題] 04B本第1問問2参照。国別ではあるが、本問との類似を感じる。とくに農業就業人口率。それに中国も登場しているしね。

02B本第3問問6参照。家畜の飼育頭数。ドットマップによって絶対分布が示されている。実数であり割合ではないが、それでも本問との関連性は強い。ヒツジの分布地域が内陸部に広がっているのが明らか。そしてこういった地域は人口も少ないので、当然「1人当たりのヒツジ飼育頭数」はさらに大きな値となる。「内陸部」「乾燥」そして「イスラム地域」がヒツジ分布のキーワード。

00B追第3問問4選択肢④参照。「華南の沿岸部の省」は中国国内の先進地域である。

00B追第3問問4選択肢②参照。もちろん華中から華南にかけての沿海部が経済成長がとくに著しい地域だが、それ以外に「華北」の沿海部も比較的経済レベルが高く、郷鎮企業という私企業が増加している様子が説明されている。

 

[今後の学習] 比較的難易度は低かったと思うが、それでも間違えた者は多少いたので、やはり注意力不足が怖い。たしかに階級区分図とは視覚的にとらえやすく、それゆえにイメージや第一印象だけで「雑に」解いてしまいがちだ。しかしこういった「わかりやすい」図であるからこそ、君たちは@ていねいに」解かないといけないのだ。とくに本問は②と④まで候補をしぼるのは非常に容易。でも、ちょっと待てよ、そういった問題だからこそ、落とし穴があると思え。君たちが最も間違える確率の高い問題っていうのは「意味不明の問題」ではなく「引っかけ選択肢が用意してある問題」なのだ。本問の場合は④が明らかな引っかけ選択肢。正解の②と引っかけの④にまでは候補をしぼれて当然。でもここで引っかけ選択肢という甘いエサに食いついてしまったら、君たちは出題者の思うツボ。それって悔しいじゃないか!出題者の意地悪に気付いて、それをあざ笑うかのごとく、君たちは華麗に正解を導いてほしい。でもそのためにはやっぱり慎重さが必要ってことだよ。「雑に」解くなよ、時間をかけて「ていねいに」!

おっと最後に、非常におもしろいネタがスーチョワン盆地に関してあるので紹介しよう。

00B追第3問問1図1を参照してほしい。Bがスーチョワン省である。長江流域のスーチョワン盆地のほぼ全域を占め、人口規模は1億人に達する。

さあ、この図と本問の図4を比較してみよう。何か気付かないか?そう、スーチョワン省が2つに分離しているのだ。広い方がそのままスーチョワン省で、分離した小さな方はチョンチン市。今まではチョンチン市はスーチョワン省の中の一つの都市だったのだが、近年ここは中央直轄市に指定され、スーチョワン省から「分離独立」したのだ。これもみなスーチョワン盆地の貧しさゆえ。出稼ぎ者の人口流出が大きな社会問題として「民工潮」あるいは「盲流」とよばれるようになり、政府としても放っておくわけにはいかない。チョンチン市だけを取り出し、ここに重点的に投資をして、新たな産業を生み出そうとしたわけだ。しかしもちろんそんなにうまくいくわけはないね。今だにスーチョワン盆地は人口流出地帯であり、そういった投資がされたからといってチョンチンもさほど豊かになっているようでもないしね(②の図を見れば、チョンチンが「中」に過ぎないことがわかる)。

それにしてもえらく図体のデカい市やなぁ~。九州より大きいんじゃないか!?同じ中央直轄市には首都ペキン、その外港テンチン、人口最大都市シャンハイがあるけれど、それらがあくまで「市サイズ」であるのに対し、チョンチンなんてちょっとした国のサイズやで(笑)。あ、そうそう、実はチョンチン市の人口は3000万人を超え、一応「市」としては世界最大なんだそうだが、でもこんな広いなんて反則だよね(笑)。名前だけは「市」だけれども、実際には「省」と考えた方がベターなんじゃないかな。だから、例えば都市別人口ランキングなんていう時にはチョンチンは登場しないわけです。あしからず。

 

問6

[講評] よく読めば簡単な問題だと思うのだが、案外ひっかかった人が多い。理系の諸君には難しかったのかもしれない。ま、しゃあないわな。中学までの社会科の知識が問われる問題でもある。

 

[解法] 最も注目して欲しいキーワードはサの「この国から中国に進出している国も多い」なのだ。意味わかるかな?サ国は経済レベルの比較的高い国であるということなのだ。貧しい国の企業ならば、外国に進出するなんてことあるだろうか。安価な労働力を求めて高賃金国から低賃金国(この場合はもちろん中国)へと工場を進出させることを考えてもいいし、それよりもっと単純にサ国が「豊かな」国だとストレートにイメージしてもいい。この瞬間に「サ=韓国」と考えられるのではないか。1人当たりGNIは約10000$/人であり、これは中国の約1000$/人とは比べものにならない。また韓国は自動車生産世界第5位、造船世界第2位など非常に工業の発達した国であり、外国へと工場を進出させるケースも十分に一般的となっているであろう。

以上より韓国が決定したので、ここからはシとス。ただし「安全保障理事会の常任理事国」なんていう意味はよくわからんけど重要そうなポストに、まさかベトナムなんていう小国が就いているわけもなく、これについては「大国」ロシアが当てはまると考えていいだろう。よってシがロシア、スがベトナムとなる。

(注)安全保障理事会について。これは中学の公民で習うものだと思う。地理のジャンルではないが、一応説明しておこう。

国際連合が結成されたのは第2次世界大戦が終わる直前であり、戦勝国側である米国・イギリス・フランス・中国・ソ連(現在はロシアにその権利が引き継がれている)の発言権が大きく、敗戦国側である日本・ドイツ・イタリアはやや低い扱いをされている。その国連の中心機関の一つである安全保障理事会においてもやはり戦勝5カ国の力は大きく、彼らは「常任理事国」として決定事項に対する拒否権を有するなど日本などそれ以外の国々に比べれば圧倒的な地位の高さを保っている。

 

[関連問題] こういった国際問題に関する出題は近年しばしば見られる。しかしとくにその形式において類似している印象があるのは、01B本第2問問5。ここでは、中国とベトナムや北朝鮮などとの関係が問われている。

とはいえ、例えば中国ベトナム関係についての記述を比較してみると、01年の問題では「1970年代に戦火を交えた歴史があるが、現在は両国ともに市場経済化を進め、国境鉄道の再開と時を同じくして、人や物資の移動が増えている」であるのに対し、本年は「石油資源の埋蔵が有望視されている地域の帰属をめぐっての対立もあるが、この国の主要輸出先として中国は上位にある」となっている。つまり両方の問題で記述されている内容に共通点は全くない。似た形式で同じ国を扱っているのにここまで内容が異なっているなんて、過去問を重視するセンター試験において、とても珍しいことなんじゃないかと思う。

ベトナムで「石油資源の埋蔵が有望視されている地域」とあるのは、南シナ海のナンシャー(南沙)諸島のことであるが、これについて過去に出題例がある。98A追第3問問2であるが、市販されている赤本に含まれていないので、ここで問題を紹介しておこう。

重要な資源である石油をめぐっては、戦争や領土・領海問題が生じている。南シナ海のナンシャー(南沙)諸島周辺にも海底油田があり、いくつかの国が領有権を主張している。ナンシャー諸島に対して領有権を主張していない国を、次の①~④のうちから一つ選べ。

①タイ ②中国 ③フィリピン ④ベトナム

で、正解は①のタイ。タイは南シナ海に面する国ではなく、さすがにこの島々に対し領有権を主張するのは無理があるだろう、という理由。ここではっきりとナンシャー諸島に領有権を主張する国として中国とベトナムが示されており、これが本問の伏線になっているともいえる(。。。でもないかな?地理Aの、しかもかなり古い問題だし)。

ロシアの経済事情については、01B追第1問問7が興味深い。ロシアは決して巨大な経済力を持つ国ではないため、その開発においては米国や日本などの資金協力も必要であり(選択肢①)、韓国など外国に資金援助などはとうてい不可能(選択肢②)。そして自国企業を海外に進出させるほどの高い経済レベルも持つわけではない(選択肢④)。ロシアの1人当たりGNI、そしてGNIを統計で調べておくといい。ロシアは決して「進んだ」国ではない!でも国際政治の舞台ではデカイ顔してるんだよな~図々しいというか傍若無人というか。日本もちょっとは見習うか(笑)。

 

[今後の学習] こういった国際事情に関する問題が出題されるたびに、新聞やニュースなどを通じ時事問題については精通しておかなければいけないんじゃないかって強迫観念を持つ者もいるかもしれない。でも、そんなことしていたらキリがないんじゃない?そりゃ、新聞を読むのは大事だし、テレビでニュースを見るのがもともと好きな人もいるよね。しかし、だからといってそれを強制するっていうのはどうかなぁ。貴重な勉強の時間を割いてまでやることではないような気もするよ。

だから僕は思うんだけれども、ここは完全に開き直ってしまったらいいんじゃないか。「俺は(私は)社会の情勢なんて全然知らないけれど、それでも地理でいい点取るぞ」って。それは実際に十分可能なことだし。

本問にしても、「中国に進出」をキーワードに高い経済力を持った国であると想像できるし、「常任理事国」から大きな政治力を持った国であることがわかる。こういったことは「知識」ではなくて「問題を解くセンス」だよね。新聞やニュースよりも、センター試験の問題により深く習熟し、最後は知識ではなくセンスで問題を解いてしまう。それってかなりスマートなことなんじゃない?時事問題を知らないことをコンプレックスに思うな(っていうかさあ、そもそも最新の時事問題なんてセンター試験に出ないわな。だって北朝鮮の問題作ったところで、センター試験の実施日までこの国がどうなっているかなんてわからないんだからね)。

 

問7

[講評] おいしいぞ!統計そのまんまの問題。こういった問題を確実に正解して、他の受験生に差をつけろ。

 

[解法] 統計に基づいて考えていこう。

①中国が圧倒的で韓国と日本はほぼゼロ。これは小麦だろう。小麦の生産は1位中国、2位インド、3位米国。一方、日本は小麦のほとんどを海外からの輸入に頼っており、韓国も似たような状況だろう。

④韓国と日本に集中。これは造船。造船1位2位は韓国と日本で他に比べ圧倒的。

さあ、ここで答えは2つにしぼられる。魚介類と自動車。統計を思い出してみよう。「自動車保有台数」という統計はセンターでは出題されたことがないので、ここでは「自動車生産台数」を考えるといい。1位米国、2位日本、3位ドイツ、4位フランス、5位韓国、6位スペイン、7位カナダとなっており、中国はランク外。

魚介類に関する統計としても「食用の魚介類の消費量」はセンター未出だが、「漁獲量」は取り上げられたことがあり、1位中国、2位ベルーで、日本や韓国はその下。

これらのことから考えて、②は自動車ではないか。日本がこの3か国中では圧倒的に大きな値となっている。一方、③が魚介類だろう。中国が大きい。

おっと、ちょっと待て!センター過去問では「1人当たり魚介類消費量」というものはしばしば出題されており、そこでは日本と韓国がともに高い数字だったはずだ。③ではこの2か国が小さい値となっており、これはおかしいのではないか、と。

しかし心配無用。「実数(絶対的な数)」と「割合(相対的な数)」をきちんと区別しておけば大丈夫だよね。世界全体の食用の魚介類の消費量をαと置いておこうか。そうなると、中国の消費量は(0.37α)、日本の消費量は(0.07α)、韓国は(0.02α)。このように実数として表してみる。

で、ここからは「1人当たり魚介類消費量」を考えてみよう。本当に日本人の方が中国人より魚を好むのか。中国の人口は13億人。よって1人当たり魚介類消費量は(0.37α/1300000000)。人口1.3億人の日本の1人当たり消費量は(0.07α/130000000)となる。この2つを比較してみれば、日本人の方が中国人に比べ、約2倍の魚介類を消費している計算になる。韓国についても中国の値を上回るはずだ。人口4500万人として計算してみるといい。

ゆえに③を1人当たり魚介類消費量と考えて不都合な部分はない。

 

[関連問題] 統計を中心とした問題なので、統計も必ず確認しておくこと。

02B本第2問問1参照。造船、自動車生産に関する統計。

02B本第3問問7参照。韓国と日本でともに1人1日当たり魚介類供給量が多い。

01B本第4問問1参照。韓国で自動車生産が多いことがポイント。

00B追第4問問6参照。漁獲統計。中国1位。

01B追第3問問6参照。小麦の生産統計。中国1位。

また実数と割合の関係についてももう一度確認しておくこと。

00B本第1問問3参照。5カ国中で人口規模の大きい米国は、パソコン保有台数という「実数」もやはり大きくなる。こういった実数を人口規模と対照させて考えるセンスを常に持っていてほしい。

 

[今後の対策] 問5と似ていて、本問も選択肢を②と③に限定するまでは容易。つまり②が明らかに「引っかけ選択肢」として用意されているというわけだ。こういう問題に対処する方法は、とにかく時間をかけてゆっくり解くこと。ていねいさを心がけることで、落とし穴に落ちる過ちを避けることができる。それともう一つアドバイスをするとしたら「見直しをしない」こと。問題を解く時には一期一会の精神で、後からもう一回考えればいいやなんていう気持ちを持たない。その場で全力投球をして考えることが大事だよ。だって、後から見直すと、君はもう一度迷うことになるぞ。そして迷ったら最後、君は吸い寄せられるように「引っかけ選択肢」へと答えを書き換えてしまうのだ。この可能性は高いぞ。そもそも引っかけ選択肢はそういう風に作ってあるんだから。浅い考えならば必ずそちらが正解っぽく見えてくる。

例えばこの問題に3分かけるとして「3分で解く」のと「2分で解いて、1分見直す」のならば、どちらがより深く考えられるのか。それはやっぱり3分丸ごと考えた方がいいよ。3分使うからこそしっかり「3分」分だけ深くまで至ることができる。2分なら「2分」分なんだ。で、それでマークして、後から「1分」分だけ考えるって?それじゃあ、深くまで到達できないよ。むしろ浅い考えしかできなくて、まんまと「引っかけ選択肢」に引っかかってしまうのだ。

ちゅうわけで、本当に君たちはゆっくり深く考える姿勢だけは大切にしてくださいね。とくに本問なんて統計そのまんまの問題ともいえるわけで、こんなんを失点したらもったいない!

あ、それから「実数(絶対値)」と「割合(相対値)」の違いももちろん意識しておいてね。人口がケタ外れに大きい中国ならば、実数の値もそれなりに大きくなって当然なのだから。