2013年度地理A本試験解説

たつじんオリジナル解説 [2013年度地理A本試験]    

 

<2013年度地理A本試験第1問>

 

[1] 図法は教科書から消えている内容ではあるが、地理Aに限定して、こういう形で出題される。Aは誤り。正距方位図法は「中心点から任意の点まで」の距離と方位が正しい。Bは正しい。これはメルカトル図法。角度が正しく、航海図に利用された。

 

[2] 人間の数を数えるわけにはいかないだろう。2が誤り。3のように地下の状態まで観測できる点に驚くが。

 

[3] なるほど、ちょっと凝った図を使った問題で、かなりの難問になっていますね。意味がわかりにくいし、おそらくこれは捨て問でしょう。

とりあえず丁寧に読解していこうか。

まずこうした問題については、東京とサンフランシスコの時差を調べないといけない。「時刻」を見てみよう。東京で「18」時の時に、サンフランシスコは午前「1」時。時差は17時間(*)であることを図から読み取ろう。

ここ以降は図から離れていい。東京の18時はサンフランシスコの1時。これに飛行時間の9時間を加え、サンフランシスコ着は(現地時間の)10時となる。

EとFの図を比べ、サンフランシスコが10時となっているのはFである。1時に9時間加えた10時というのは、べつに24時を超え、翌日になっていたりするわけではない。同じ日である。

(*)時差を考える場合には、より進んでいる(東に位置している)都市を基準として、そこから何時間遅れているかを西側の都市について考える。東に位置するのは東京。東京はサンフランシスコより何時間進んでいるのか、を考える。「東京はサンフランシスコより17時間進んでいる」ということ。「サンフランシスコは東京より7時間遅れている」と考えるとややこしい。

 

[4] これも図がわかりにくい。捨て問と考えていい(そもそも地理Aの平均点は40店ぐらいだからね)。

Jに注目。水系が複雑である。河川=谷であるが、谷があれば尾根もあるはず。つまりこの地域は山地である。黒い部分すなわち水域が増えている。ダムが建設されたのだろうか。シが該当。

Kも複雑だが、こちらは水系がシンプルに変化している。谷が埋められ、平坦な土地となり、ニュータウンのような住宅地となったのだろうか。サに該当。

Lは、さほど細かい川はみられず、平地と思われる。大きな河川が干拓や埋め立てによって陸化している。スに該当。

 

[5] 最近の地理Bではちょっとみられないタイプの地形図問題。特定の地形(この場合は扇状地)の特徴が問われるのは地理Aならでは。

1;等高線間隔に注目。P—Q間の方が密である。正しい。

2;後背湿地は氾濫原に特徴的な地形。氾濫原とは河川中下流域の平坦な地形。誤り。

3;この地形は扇状地。河川と等高線が直交し、なだらかな斜面となっている。こうした地形には目の粗い土砂(レキ)が堆積し、水はけがよい。河川水は伏流し、地表に水のみられない水無川となる。

4;等高線に注目。下流側に向かって凸となっている場合、天井川である。

 

問6 ケッペンも地理A特有。

寒帯は非農業地域。北極海周辺のツンドラなど。夏の気温が十分に上がらないZが該当。

冷帯は冬季に凍結する気候.北海道など。ただし夏季は気温が上がり、農業が行える。Xが該当。

温帯は凍結しない気候。冬の気温が高いYが該当。

 

問7 寒流とは高緯度から低緯度に向かって流れる海流で、低温の海水を温暖な海域に運ぶもの。「方向」が大事なのであり、温度自体は関係ない(周囲の海水との温度差は重要だが)。「暖流が寒流に変わる」というのは海流の方向が変わることを意味しているにだが、氷河の融解はともかくとして、そうした事象は生じていないだろう。

1のメタンガスがちょっと難しいが、地中に含まれているものも多いそうで、地下で氷づけにされているものが融解によって空気中に放たれるのだそうだ。

 

問8 先述のようにケッペンは地理Bでは出題されないが、それとは関係なく、乾燥の定義は知っておくべきだと思う。乾燥とは「降水量<蒸発量」となる状態のことで、無樹木である。砂漠(植生なし)やステップ(草原)がみられる。

1の「砂漠」、4の「草原」は乾燥。残った2と3の判定だが、いずれも樹木はいちおう存在しているようだ。しかしどうだろう?2には「サボテン」とある。これはたしかに樹木ではあるが、特殊な例外として乾燥気候に適応したものであることは想像できるだろう。北アメリカ大陸西部は、外来河川コロラド川の存在や、グランドキャニオンなどで、十分に乾燥のイメージはあるだろう。2を乾燥として、残った3が湿潤。

ちなみに3はサバナ(サバンナ)気候であり熱帯に含まれる。乾季に葉を落とす樹木がみられる。

 

<2013年度地理A本試験第2問>

 

問1 東南アジアの多くの国で、工業製品が主要輸出品目になっている。

 

問2 フィピンでバナナ、フランスでワイン。

 

問3 航空交通の問題だが、地理A特有。でも地理B的思考でも十分解答できるのでは・

Aは北アメリカとの関係性が強い。アメリカ合衆国からみて、太平洋を挟んで最も近いアジアである日本の空港とみるのは自然だろう。

Bはオセアニアに特徴がある。オセアニアは人口も少ない地域であり、本来なら便数は限られたものになる。それなのに主要な航空路の一つとなっているということは、位置的に近い東南アジアの空港と思われる。マレーシアの首都クアラルンプール。

 

問4 ポーランドがブラインドになっていたらキツかったが、ここがオープンになっているから問題ないだろう。

Pはイギリスとの関係性が強く、旧植民地のインド。英語使用人口が多い国でもある。

Rも同様に宗主国と植民地の関係から、旧ポルトガル領のブラジル。言語も同じ(ポルトガル語)。

Qのフランスは消去法でいい。そもそも出稼ぎ労働者を送り出す国ではないし、ベルギーは単に隣国だから(しかもベルギーの公用語の一つはフランス語である)たまたまフランス人が滞在しているだけだろう。

 

問5 ちょっと難しいが何とか解答してほしい。正解(誤り)は2。例えばNAFTA(*)を考えてみる。NAFTAは「モノ」については国境を越えて自由に移動できるが、「ヒト」についてはそうではない。出入国は厳密に管理され、移民も手続きは厳格化されているだろう。

(*)北アメリカ自由貿易協定。調印国はアメリカ合衆国を中心に、カナダとメキシコ。域内の自由貿易が実現されている。ただし人の移動に関しては自由ではなく、とくにメキシコからアメリカ合衆国への入国は審査が厳しい。

 

問6 繊維工業がわかりやすい。労働集約型の軽工業製品は、賃金水準の低い地域で成立。Yが中国となる。

輸送機械とは自動車のことで、これについては貿易摩擦解消のためにアメリカ合衆国へ日本企業がさかんに進出したことを思い出せばいい。XとZを比較し、値の高いXがアメリカ合衆国。

サービス業は消去法でいい。

 

問7 よくわからないんだが、3が正解(誤文)かな。通信費用は確かに安いものではないかもしれないが、それでも企業の国際進出はさかんに行われている。

 

<2013年度地理A本試験第3問>

 

問1 標高6000mに達する山脈と高原が示され、これらはヒマラヤ山脈とチベット高原だろう。国境を越え、中国側に張り出しているエが正解。チベットは中国の南西部である。またヒマラヤ山脈がネパールと中国の山脈国境であることもポイントかな。

 

問2 ムンバイは鉄板!季節風の影響によって6月から9月に降水が集中し、他の時期は乾季となる。クが該当。

他の二つは気温で判定すればいいと思う。高緯度のデリーが低温でキ、低緯度のチェンナイが高温でカが正解。

それにしても最近ちょっとデリーがよく出題されているな。チェックかもしれない。またチェンナイは以前にも(*)気候グラフが取り上げられていたが、この都市のおもしろいのは比較的冬に近い時期に降水が多いこと。インド半島は冬季は北東から風が吹き、半島東岸のチェンナイは風上斜面となっているので、この時期の降水が多くなったりする。興味深い地域ではある。

(*)2003年度に出題。センター地理は10年周期説がある!?

 

問3 これ、いい問題ですね。

誤文は4。茶はそもそも『低塀な地域』では栽培されない。これだけで解答するのがスマート。

ここからはおまけ。

1;インダス川が外来河川であることは絶対に知っておかないといけない。外来河川とは乾燥地域を流れる川のことで、つまりインダス川流域は乾燥地域である。「灌漑」が行われているとみて問題ないだろう。灌漑とは人為的に農地に水を与えることで、降水量が少ない地域では一般的に行われている。

2;インド半島の土壌レグールは非常に大切。玄武岩の風化した黒色の土壌で排水性が良い。綿花栽培と結びつく。

3;ガンジス川下流のデルタとは具体的にバングラデシュを考える。南アジアは雨季と乾季の差が明瞭な地域であり、河川流量が大きく変化する。雨季には洪水の危険性も。

4;アッサム地方とはインドのネパールに接する地域。問1の断面図でいえば、「図2」と書かれている箇所の上にちょっとした斜面であるよね。これがアッサム。夏季に南西から季節風が吹き込むことで、降水がみられる。世界最多雨地域の一つである。豊かな降水と丘陵地形を利用して茶の栽培が行われている(プランテーション)。

 

問4 これも良い問題!地理Bの問題っぽい。

鉄鋼(粗鋼)生産についてはベタに順位を知っておく。1位中国、2位日本、3位アメリカ合衆国。よって①が日本。

近年成長している②と③が韓国とインドと考えていい。変化の少ない④が先進国のフランス。

②と③の判定のポイントは1970年。つまり古い時代から鉄鋼業がさかんだった国とそうでない国。韓国は1980年代に高度経済成長期を迎え、この時期に工業生産も急上昇した。これに対し、インドは20世紀初頭より国内の豊富な資源を利用して鉄鋼業が興った国である。②がインド、③が韓国となる。

 

なお、2008年度地理B本試験にはこのような問題がある。

 

問4 インドの工業化について述べた文として適当でないものを、次の①〜④のうちから一つ選べ。

 

① イギリスの植民地時代には、財閥系の民族資本によって、綿工業や製鉄業などが発展した。

② イギリスからの独立直後は、輸出指向型の工業化がすすめられ、電気機械工業が発展した。

③ 1960年代後半ごろには、社会主義的な計画経済のもとでの経済発展が伸び悩みをみせ、鉄鋼生産なども停滞した。

④ 1990年代以降には、経済の自由化政策のもとで、コンピュータ関連産業が発展してきた。

 

②は誤文なので、他の選択肢が正文。鉄鋼業に関する①と③のうち、とくに①に注目。古い時代に鉄鋼業が成立していたことがわかる。タタ財閥という民族資本によってジャムシェドプルに製鉄所が建設された。このことは下の2010年度地理B本試験の選択肢にも表れている。

 

ジャムシェドプルは、周辺で産出する石炭と鉄鉱石を背景にイギリス植民地時代から鉄鋼業が発達し、

インドの鉄鋼業は、古くて新しいネタである。重要!

 

問5 サはちょっと難しいけど「沐浴」が正解。平ったく言えば単なる「水浴び」のことですね。シは問題ないでしょう。インドではウシは貴重な家畜。

 

問6 これ難しいんだよね。デリーのみ何とかわかるかな。

2009年度地理B本試験にデリーについてこうした記述がある。

古くからの市街地に隣接して,官庁街や住宅地,放射状道路が計画的に整 備された。

放射状の道路がみられるチがデリーであり、タがMとなる。デリーはインドの首都であるが。とくに市内のニューデリー地区は植民地時代にイギリスによって行政地区として開発されている。

KとLについては写真から判定するしかない。文章のニュアンスとして、イスラマバードの方が整然とした街路区画があり、自動車に対応した幹線道路もみられるのだろう。コルカタは無秩序な市街地が広がるのみ。全体にごちゃごちゃとした印象があるタがコルカタでLに該当。より整備された印象があるツがイスラマバードでKに該当。

 

問7 これもいい問題だなぁ。現代社会は格差が広がる社会である。経済レベルの高い都市部はさらに裕福になり、低い農村部はさらに貧困となる。

 

全体的にこの第3問は傑作ですね。地理Bの問題としてもクオリティが高い。とくに過去音がしっかり意識されている部分がいい。

 

<2013年度地理A本試験第4問>

 

問1 人口ピラミッドの問題はもっと出題されてもいいと思うんだけどね、なぜかとくに地理Bではほとんど出題されていない。

人口ピラミッドは底辺に注目。0〜5歳児の割合。出生率と比例し、つまり人口増加率と対応する。

人口増加率は以下の表に従って考える。

 

2%;アフリカ

1.5%;ラテンアメリカ・南アジア

0.5%;東アジア・アングロアメリカ・オセアニア

0%;ヨーロッパ・ロシア

 

アフリカのタンザニアで底辺が長く、4が該当。次いで長い2がラテンアメリカのブラジル。短い1と3が中国とヨーロッパ。1と3の判定は不問だが、一人っ子政策の実施によって近年とくに子どもが減少傾向にある1が中国となる。

 

問2 「製造業における1時間当たりの賃金」が1人当たりGNIと考える。1人当たりGNIは、ドイツ>日本>韓国>ハンガリーの順。1がドイツ、2が日本、3が韓国、4がハンガリーとなる。なお、ドイツは経済レベルが高いだけでなく、EUの一員であることから、同じEU圏内の他の国からの労働力の移動が際立っている。

 

問3 オランダは低地国であり、火山も存在しない。地熱発電は行われない。

 

問4 なるほど、対になり得る言葉を探してみて、怪しい選択肢を考えてみよう。「西」には「東」という反対語があり、これがどうも引っかかる。

図を参照。オゾン総量が460を上回る部分が南極大陸の右側にある。付近にオーストラリア大陸があることから、こちらは「東経」の範囲に含まれ、東半球である。

ところで、「オゾン全量が多い地域があるものの」となっているけれど、オゾン量が多いのは良いことなので(オゾンが紫外線をブロックする)、なぜ「ものの」のように逆説になっているのかよくわからない。

 

問5 地形と関係するものは地震・津波。海溝に面するような大地震が生じる海洋に接する国でこれらの被害が大きいはず。津波は海底地震に起因する波動である。Yが該当。インドネシア諸島の南側にはスンダ海溝が走り、スマトラ島沖地震の震源になった。

さらにサイクロンはインド洋で生じる熱帯低気圧。インド洋に面するのはミャンマーである。Zに該当。

サーズのような伝染病は地形との関係性はない。消去法でいいだろう。

 

<2013年度地理A本試験第5問>

地理B第6問と同じ。