2016年度地理B追試験[第2問]解説

たつじんオリジナル解説 2016年度地理B[追試験] 第2問   

 

<第2問・問1>

 

[ファースト・インプレッション] 三角グラフを用いた産業別就業人口構成の問題。非常にベタで、いい問題だね。

 

[解放] 三角グラフの見方には気をつけよう。第1次産業に注目するのがコツ。左下から頂点に向かって、0から100までの目盛りがつけられているのを、まず確認。それぞれの点について、第1次産業就業人口割合を判定しよう。

①の「1980年」に注目。ここから底辺に平行する直線を、左方に引いてみる。第1次産業就業人口割合は「50」%となる。①の「2008年」も同様の作業をしてみると、値は「35」%である。①は約30年間に、50%から35%へと、第1次産業就業人口割合は15ポイント低下している。

②は「30」%から「18」%、③は「35」%から「8」%、④は「8」%から「2」%に、それぞれ値を低下させている。三角グラフは、第1次産業就業人口割合だけ、正確に読み取ることが重要である。

ここでセオリー。第1次産業就業人口割合と1人当たりGNIは、原則として反比例する。1人当たりGNIとはすなわち「賃金水準」なのだが、農業を中心とした第1次産業は集積性が低い産業であり、この割合が高い国は全体の賃金水準は低くなる。

選択肢の4つの国について、1人当たりGNIの順に並べると「カナダ(50000ドル)>韓国(25000)>ブラジル(10000)>フィリピン(3000)」。現在の第1次産業就業人口割合の値に注目し、①がフィリピン、②がブラジル、③が韓国、④がカナダ。③が正解。

なお、③については1980年の値が②より高くなっている。これについては「韓国の高度経済成長は1980年代である」というお約束を思い出そう。韓国は1980年代に重工業化を果たし、経済が大きく成長した(ソウルオリンピックは1988年だよね)。1980年の段階ではまだ経済水準は低く、第1次産業就業人口割合もかなり高かったのだが、1995年には工業化が進展したことによって、その値は低下している。「1980年代に大きな動きがあれば、韓国」なのだ。

 

[アフターアクション] とにかく、三角グラフの読み方に徹底的に慣れておいて。数値の読み取りをミスったらそれでおしまいだから。とくに、産業別人口割合の場合は、(左辺の)第1時産業就業人口割合が非常に重要になる。「底辺に平行の直線」を引いて、左辺の数字を読み取るようにしよう。

さらに、韓国が非常に重要。韓国は「1980年代の国」。1970年代から始められたセマウル(新農村)運動によって、農作業の合理化と省力化が進み、余剰となった労働力が都市へと流出した。この人口移動こそ、1980年代の都市を中心とした工業化の進展の基礎となったもので、急速な高度経済成長へとつながった。韓国で1980年代に生じた大きな変革に「第1次産業就業人口割合の低下」、「都市人口割合の急激な上昇」、「1人当たりGNIの急激な上昇」などがある。財閥という巨大な企業集団を中心に工業化が進み、日本企業の進出が相次いだのも1980年代。「オリンピックはその時代を象徴する国で開催される」のだが、韓国のソウル五輪は1988年である。

 

 

<第2問・問2>

 

[ファースト・インプレッション] 鉄鋼業に関する文章正誤問題。このパターンって、都市名が問われることが多い(タラントやピッツバーグ)んだが、これはそうじゃないみたいだね。おっと、またブラジルが登場!

 

[解法] 統計に基づいて考える問題っぽいね。

①;インドは現在、鉄鋼生産が拡大している代表的な国。おそらく最新統計では、アメリカ合衆国を抜いて、世界3位なんじゃないかな。国内の資源を十分に活用している。「鉄鋼業の衰退」はありえないし、「鉄鉱石の国内消費は減少」しているわけがない。これが誤文で正解。

②;中国は、世界の鉄鋼生産において圧倒的なシェアを占める国。世界最大の鉄鉱石と石炭の「産出量」でありながら、同時に鉄鉱石と石炭の「輸入量」においても世界最大。つまり、どんだけ使ってんだ!?ってこと。正文。

③;ブラジルは国内の鉄鋼生産は少なくないが、しかし鉄鉱石の輸出量も多い。例えば、最新統計でブラジルの最大の輸出品目は鉄鉱石であり、貿易相手国は中国なのだが、つまり「いかに莫大な鉄鉱石がブラジルから中国へと輸出されているか」ということ。正文。

④;これは考えなくていいでしょう。たしかに、旧ソ連時代は世界最大の鉄鋼生産国だったロシアだが、1990年代以降はその生産も停滞した。現在も「増加傾向に転じた」程度であり、決して急激に生産が伸びているわけではない。「豊富な鉄鉱石産出」については。たとえばウラル山脈にマグニトゴルスクという世界最大級の鉄山があるのだが、そのことをほのめかしているのだろうね。ウラル山脈は古期造山帯なのだが、石炭よりも鉄鉱石産出で名高い。

 

[アフターアクション] 文章正誤問題ではあるんだが、実は統計問題っていうパターン、多いので注意してね。常に統計は意識しながら問題に当たること。それにしても、中国の鉄鋼生産ってヤバいでしょ?鉄鉱石の産出1位なのに、輸入も1位で、鉄鉱石の主な輸出国であるオーストラリアとブラジルにとって最大の輸出相手国は中国となっている。たしかに人口の5分の1は中国に集中しているのだが、鉄鋼や鉄鉱石、石炭については、世界全体の半分以上が中国に過剰に集まっている。工業において、中国がいかに突出しているかを、我々は知るべきなのだ。

 

 

<第2問・問3>

 

[ファースト・インプレッション] 鉄道かよ!?鉄道みたいな交通ネタって地理A特有のもので、地理Bではめちゃくちゃ珍しい。

 

[解法] 鉄道輸送については、まず日本を考えてみよう。輸送って「貨物」と「旅客」があるんだけど、日本の場合、鉄道っていえば何と言っても「通勤電車」でしょ。逆に貨物については鉄道はそこまで便利ではない。トラックなど自動車が小回りが利くし、あるいは大量に安価に輸送するならばやっぱり船舶が最もコストが安い。こうした状況を鑑み(かんがみ。「考えて」っていう意味)、日本の鉄道は「旅客>貨物」と判断する。

で、アメリカ合衆国の鉄道輸送については、日本と正反対と考えよう。自動車化が進むアメリカ合衆国。国土が広いので航空機による移動も多いかも知れない。新幹線がなく、地下鉄も限られた都市にしかないのだから、そもそも「旅客」用の鉄道は発達していない。これに対し、石炭などの資源を輸送する場合に、鉄道は非常に重用されている。資源産地が内陸部にあるのだから、船舶輸送には頼れないものね。アメリカ合衆国の鉄道は「旅客<貨物」である。

このことから①を誤りにしよう。鉄道網はたしかに広がっているかも知れないが、大陸横断鉄道にしても開通したのは150年以上前の話。鉄道は決してメジャーな旅客輸送の手段ではないわけだ。

 

[アフターアクション] 交通ネタは地理Bではほとんど問われないので、戸惑った人も多いのでは(僕も戸惑った)。とりあえず、日本の鉄道事情は頭に入れておいて、アメリカはその反対やって感じで思っといたらいいんじゃないかな。

それにしても、ここでも中国登場。発展途上国(1人当たりGNIが低い)ではあるんだけれども、国としての経済力は大きい(GNIが大きい)ので、国家的なプロジェクトは続々と推進され、鉄道の整備はその一つであるわけだ。

 

 

<第2問・問4>

 

[ファースト・インプレッション] これ、いいですね。こういう統計をそのまま問う問題って、僕は好きです(笑)

 

[解法] 「綿織物の生産量」がオープンになっているが、これを見る必要ってあるのかな。とりあえず、これは放置しておいて、ア〜ウの判定、行きましょう。選択肢は「綿花の生産量」、「綿花の輸出量」、「綿花の輸入量」です。

 

こうした問題のポイントとして、まず日本に注目するというのは、ある。しかし本問の場合は、ア〜ウまで日本の値は全て「ゼロ」なので、この手は使えない。

それでは、素直に統計で考えていきましょう。「綿花の生産」は、中国、インド、アメリカ合衆国、パキスタンが上位国。とくにポイントになるのはアメリカ合衆国で、そもそも「南部」(国土の南東部)はコットンベルト(綿花地帯)とよばれ、綿花のプランテーション栽培が行われた地域であるのは有名。「アメリカ合衆国=綿花栽培」と結びつけるのはそんなに困難じゃないよね。現在の綿花の主生産地は、「南部」からより西方の灌漑農業地域へと移動しているが(テキサス州やカリフォルニア州での生産が多い)、依然としてアメリカ合衆国が世界的な綿花栽培国であるのは間違いない。

アメリカ合衆国の値が大きいのは、アとイ。しかし、アには中国がない。中国は黄河流域や内陸部(ウイグルなど)が主な栽培地域である世界最大の綿花生産国である。イを「綿花の生産量」とする。

残ったアとイ。「輸出」と「輸入」なので、これはもちろん正反対のデータとなるわけだが、一つ一つ検討していこう。アは、アメリカ合衆国、インド、オーストラリアの順。主な綿花生産国としては中国が外れている。それに対し、イは中国が圧倒的な値を占め、インドネシアやトルコも含まれる。インドが外れているのが特徴的ではあるが、どうだろう。

なるほど、ここで冒頭の「綿織物の生産量」がカギとなるわけか。綿花の資産がないにもかかわらず、綿織物の生産が多い国っていうのは、綿花の輸入国であるはずだ。インドネシアがそれに該当するんじゃない?

それに対し、綿花の生産が多いのに、綿織物の生産が少ない国は、綿花を輸出してしまっているということだ。これって、アメリカ合衆国のことじゃないの?

思考問題(図をしっかり読んで、考えましょう!)としても素晴らしい問題になっているね。正解は③。

ただ、ちょっと気になるのはインド。生産は2位でかなり多い。で、実はかなり輸出もしていて、輸入はゼロ。でも、製品の生産は中国と並んで世界最大レベルだったりするんだよな。これがちょっとわからない。中国は、生産1位で、輸入量が極めて多くて、それでいて綿織物の生産はインドと変わらないでしょ?まぁ、そういったグレーゾーンも含めて、統計っていうもんなのかもしれないけれど。

 

[アフターアクション] ファーストインプレッションでは、「統計そのまんま」って書いたんだけど、実際には全然違ってたね(笑)。かなり考えないといけない。知恵を振り絞って解きましょう。こういう問題が解けるようになったら、かなり自信を持っていいと思うよ。

 

 

<第2問・問5>

 

[ファースト・インプレッション]何だこりゃ???めちゃめちゃ簡単じゃん!それにストレートに答えも①だし(あっ、言っちゃった・笑)。工業立地というより、日本地理のベタな問題だね。

 

[解法]カ;「付近の豊かな林産資源」から、北海道の針葉樹を考えるのが普通だろう。Aに該当。この都市は苫小牧。

キ;世界遺産にも指定された富岡製糸場がある。製糸とは、生糸すなわち絹の糸をつくる工場。桑を栽培し、蚕を飼育する。群馬県のBが該当。

ク:「カルスト台地」で十分でしょう。もちろんこれは秋吉台のことで、山口県のCが該当。石灰岩を原料にセメント工業が成り立っている。

 

[アフターアクション]中学地理そのまんま。中学の勉強を徹底しておきましょうね。

 

 

<第2問・問6>

 

[ファースト・インプレッション] あ、この問題、いいっすね。1人当たりGNIとGNI、両方を考えないといけないんじゃないかなって予感。

 

 

[解法]1人当たりGNIの高い先進国は、知識産業が発達しており、知的財産については提供する側であろうから、当然「受取額」が多くなる。①〜④のうち、「受取額>支払額」である①〜③は先進国、「受取額<支払額」の④のみ発展途上国ということになる。

しかし、ここで一つ大きな疑問が!?1人当たりGNIについては、選択肢の4つの国は、いずれも高い値を有し、全てが「先進国」といえるわけだ。泣く泣く(?)一つの国について、発展途上国と判定しないといけないのだが、どうだろうか。

ここは「シンガポール」に注目していいと思う。もちろんアジアだからダメっていうわけじゃないけれど、知識産業の開発や研究という点においては欧米の先進国に一日の長があるんじゃないかな。例えば、日本から大学生が留学に行く場合でもアメリカ合衆国やイギリスが優先され、シンガポールってパターンはあまりないんじゃないかな。もちろん先端産業自体は発達しているのだろうけれど、それは欧米の「知的財産」を使うことによって成り立っているのではないか。④をシンガポールとする。

残った3つについては、いずれも欧米の先進国であり、キャラクターは変わらない。よってここは国そのものの大きさを考えてみよう。人口そしてGNIは、「アメリカ合衆国>イギリス>スウェーデン」の順。3か国とも1人当たりGNIは高いのだから、人口と1人当たりGNIの積であるGNIについては、人口順と考えていいよね。アメリカ合衆国は3億人を超える人口大国であるのに対し、北ヨーロッパのスウェーデンの人口は1000万人に達しない。「受取額」が多い国はそれだけ多くの知的財産を提供しているということであり、この金額が国の大きさを対応していると思えばいいよね。①がアメリカ合衆国、②がイギリス、③がスウェーデン。

 

[アフターアクション] あまりスッキリはしない問題だよね。どうしても、シンガポールの判定が苦しい。①から③については、国の規模で簡単に判別できるんだけどね。難問ではあるんだなぁ。

 

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