2016年度地理B追試験[第1問]解説

たつじんオリジナル解説[2016年度地理B追試験]

 

第1問 世界の自然環境と自然災害                   

 

冒頭の大問は常に自然環境。今回はそこに災害も加わってはいるが、とくに意識するほどのものではなく、例年と同じパターン

 

<第1問・問1>

 

[ファースト・インプレッション] 火山はよく出題されるテーマ。地震も最近はよく出題されている。地震をプレート境界に結びつけ、そして火山の場所は一つ一つ知っておくこと。

 

[解法] 火山と地震に関する問題。日本に住んでいると「地震=火山」と考えがちだが、決してそうではないからね。例えば、近畿地方には火山がないけれど、神戸ではかつて大震災が起きたわけだし(原因は活断層)。

「火山が存在するところは必ず地震が起きるが、地震が生じるところ全てに火山があるわけではない」というセオリーを意識しよう。

まず、地震について判定。Aはアフリカ大地溝帯に沿う。これは地震が多そう。Bはイラン高原からヒマラヤ山脈やチベット高原につながる山系であり、新期造山帯と思われる。ここも地震が多そう。Cはニューギニア島。かん太平洋造山帯であり、地震が多いだろう。Dはアマゾン低地で、ここは安定陸塊(安定陸塊であってもアフリカ地溝帯のようなプレート境界は地震が発生するが)であり、地震はほとんど生じない。このことから、④をDとする。

さらに、A〜Cの判定だが、ポイントはさっき述べた「ヒマラヤ山脈」なんだよね。世界最高峰のエベレストを含むヒマラヤ山脈であり、インド・オーストラリアプレートが北上することで、ユーラシアプレートを押し上げ、巨大な褶曲山脈が生まれた。実はここって「火山がない」ことで有名なのだ。っていうか、ヒマラヤ山脈を中心に、北のチベット高原、南のインド半島など、この地域全体に火山は分布しないのだ。新期造山帯の二つの系統のうちでも、アルプス・ヒマラヤ造山帯についてはインドネシアや地中海沿岸の限定的な地域を除き、火山が多くみられる場所はない。火山が「ゼロ」っていうのも驚きだけれども、ここは③をBと判定しよう。

①と②は不明。ただし、アフリカ大地溝帯や環太平洋造山帯はいずれも名高い火山があるし、AやCの枠内にも多くの火山があると思っていいと思う。余裕があれば、アフリカ地溝帯に沿うタンザニアのキリマンジャロ山や、ニューギニア島にそびえる標高5000メートルに達する巨大な火山(名前は忘れました・・・)を確認しておいてください。

 

[アフターアクション] 火山の場所は非常に頻繁に問われるので要注意。ここでは「南アジアに火山がない」というセオリーを徹底して確認しておこう。南アジアだけでなく、トルコやイランにもほとんど(*)火山はないので、このこともぜひ知っておくべき。

(*)そう、「ほとんど」なんですよ。例えば、トルコ東部のアルメニア国境に近いアララト山は非常に有名な火山で、「ノアの方舟」の伝説があるところだし、イランも首都テヘランの北に高くそびえる火山がある。とりあえず「ほとんど」火山がない、として覚えておいてください。

 

 

<第1問・問2>

 

[ファースト・インプレッション] 東日本大震災から5年がたって、こうした問題も出せるようになってきたってことなのかな。我々の脳裏によぎる、鮮烈すぎる津波の脅威。

 

[解法] プレートテクトニクスは理論としては問われないが、海溝や海嶺といった地形がどこにあるのかという話題については非常によく問われる。中央アメリカから南アメリカの太平洋岸に沿って海溝が走り、北から「中央アメリカ海溝」、「ペルー海溝」、「チリ海溝」である(わざわざ名前を覚えるまでもないけど)。プレートテクト二クス理論によると(この程度のことは問われますが)「海溝=プレートのせばまる境界」であり、海洋プレートが大陸プレートの下にもぐり混んでいる。④の「広がる」が誤り。広がるプレート境界としては、「海嶺」や「アフリカ地溝帯」があり、とくに海嶺は大西洋中央海嶺、インド洋中央海嶺、東太平洋海嶺が重要。

 

[アフターアクション] とにかく、海溝と海嶺の位置はチェックし、そして「海溝=せばまる境界」、「海嶺=広がる境界」だけ覚えておく。プレートがいかに動いているか、といった理論的な部分が問われているわけでもない。教科書には海溝や海嶺のしくみについて断面図が示されているが、それもセンターでは登場したこともない。理論は横に置いておいて、単なる知識で解くジャンルである。

 

 

<第1問・問3>

 

[ファースト・インプレッション]大体こういった問題は最も極端なものを選んだらいいっていうのがありがちなパターンなんだが(笑)。①が答えなんちゃう?

 

[解法] Rはミャンマーの沿岸部。ミャンマー自体は東南アジアだけれども、気候に関しては南アジアと同じように考えた方がいいかな。つまり季節風の影響が極めて強いっていうこと。

季節風の風向は、原則として「夏は海から、冬は陸から」吹く。シベリアを中心に考えるとよく、冬になったらシベリア(ユーラシア大陸東部)に巨大な高気圧が形成され、そこから風が吹き出す様子をイメージしよう。夏は反対で。

日本列島を含む東アジア地域の季節風は「夏は南東風、冬は北西風」である。日本からみれば、北西の方向がシベリア。

インド半島を中心とした南アジアの季節風は「夏は南西風、冬は北東風」である。インドからみれば、北東の方向がシベリア。

インド半島の東側、バングラデシュが面する海域が「ベンガル湾」だが、よく見るとRもベンガル湾に面しているよね。つまり、Rも南アジアの一部と考え、夏になると南西風、冬になると北東風が卓越すると考えていい。夏は海から湿った風が入り込み「多雨」となり、冬は内陸部から乾いた風が吹き出し「少雨」となる。

ここでグラフ参照。①は明確な雨季と乾季がある。②も一見そう見えるけれど、「最少雨月」でも200ミリ降っていることに注目しよう。200ミリってかなり多いよ。日本でも降水量の多い夏や秋の降水量って1か月それぐらい降っている。つまり②に関しては、むしろ「乾季はない」と考えるべき。

③と④については、そもそもの降水量が少ないと考えていいよね。④は論外としても、③にしても最多雨月の降水量は一応100ミリあるけれど、②の最少雨月にも及んでいない。雨季というほどのものでもないかもしれない。

以上より、①をRと判定する。

 

[アフターアクション] Rと同じような降水パターンが現れる都市として、インド半島西岸のムンバイをぜひ知っておこう。世界最大規模の人口を有する港湾都市であるが、雨季と乾季が極端であることでも知られる。年降水量は3000ミリに達するのだが、降水は5月から9月に集中し、それ以外の時期はほとんど雨が降らない。Rと同様に、季節風の影響が極めて明確な都市である。

なお、②〜④については判定は不要だが、一応参考までに。

②はS。赤道に近く、年間を通じ熱帯収束帯の影響が強いため、最少雨月であっても十分な降水がある。

③はP。南アフリカ共和国東岸では、穏やかな温帯気候がみられる。降水量も適当。

④はQ。アラビア半島の乾燥地域であり、年間を通じ降水量が少ない。

 

 

<第1問・問4>

 

[ファースト・インプレッション] 衛星画像を用いた非常に興味深い問題。カンボジアという国名が重要な問題ではないのだが、それでもやはり東南アジアの雨季における洪水の様子が伺えることは貴重。しかし、残念ながら写真がよくわからないんだよなぁ。文章でしっかり判定しましょう。

 

[解法] 写真がちょっとわかりにくい。一応、見える範囲で解説すると、中央を縦にメコン川が流れていて、その周囲が黒くなっている(つまり水域ということ。氾濫しているのでしょう)。メコン川の西のプノンペン市街はグレーの地域にあり、これは土地がやや盛り上がっているために浸水は避けられているようだ。図4の断面図も参照してみると、その様子がわかるんじゃない?

それはともかく(写真や図に意味は結局ないんかい!?)、文章を読んで答えを判定していこう。Xについては「浸水は軽微」とある。少しだけ盛り上がった土地なのだろう。河川に沿い、微高地(*)であるがゆえに家屋が立地し、洪水を免れる地形として「自然堤防」が選択される。逆にYは「広く浸水しやすい」とあり、こちらは完全な低地のよう。写真でもたしかに色がとりわけ濃く描かれている。こちらは「後背湿地」となる。

最後にZについては「浸水はほとんどみられない」とある。プノンペン市街と同様に、小高い台地の上にあると思っていいんじゃないかな。選択肢より「河岸段丘」が該当。土地が数十メートルほど隆起し、階段状の地形になったもの。

(*)自然堤防について、巨大な土手のような地形を想像している人はいないかな。イメージとして最も近いのは、野球でピッチャーが投げるマウンド。周囲より数十センチほどこんもりとした地形になっているでしょ?河川が吐き出した土砂が、その周囲に少しずつたまって、「マウンド」になる。洪水になっても、水はけが良いから被害は最小限。決して、洪水をせき止めるような「堤防」ではないので、注意してくださいね。

 

[アフターアクション] 写真にあまり意味はなく、文章によって小地形を区別するという、ちょっとトリッキーな問題。そもそも、世界を対象に小地形を問う問題っていうのに違和感があったのかな。

ただ、本問の目新しさはそこではなく、あくまで地形そのものの問われ方にある。とにかく「自然堤防」に注目。自然堤防は「微高地」と考えるべきで、せいぜい数十センチメートルほどの土砂の高まり。本問では「河岸段丘」も登場するが、これが段差数十メートルの階段状の地形であることを考えれば、いかに自然堤防が「微細」な地形かわかるだろう。河川のそばで、かすかに盛り上がった地形。しかし、そこは周囲の湿地より数十センチ分だけ高いので、浸水の被害は免れることがある。こうした認識を確実に持っておいてほしい。

 

 

<第1問・問5>

 

[ファースト・インプレッション] 植生の問題って案外と珍しい。「針葉樹林」や「硬葉樹林」などの植生の名称がダイレクトに問われている。

 

[解法] 植生については以下の区分で考えてみよう。

 

(1)植生があるかどうか。植生がないならば「砂漠」となる。あれば(2)に進む。

(2)樹木があるかどうか。樹木がなく、草原が広がる場合は「ステップ」、樹木が疎らで長草草原に覆われている場合は「サバナ(サバンナ)」。樹木が十分にある場合は(3)に進む。

(3)樹木と気候帯の関係。冷帯林ならば「針葉樹」、熱帯林ならば「常緑広葉樹」。温帯林の場合、やや冷涼な地域ならば(東日本や中部ヨーロッパなど)針葉樹と落葉広葉樹の「混合林」、温暖な地域ならば(西日本や南ヨーロッパなど)ならば常緑広葉樹であるが、さらに細かい分類が必要となるので(4)に進む。

(4)硬葉樹と照葉樹の区分。硬葉樹と照葉樹はいずれも常緑広葉樹に分類される植生である。地中海性気候(やや乾燥する)の場合は、オリーブなどの「硬葉樹」、西日本や中国南部など降水量が多い地域では、カシやクスなどの「照葉樹」となる。

 

以上、わかったかな(笑)。くどくどと説明してしまって、逆にわかりにくかったかも。最も重要なのは(4)の「硬葉樹」です。そう、本問についてもポイントになったのは硬葉樹ってことだね。ケのアルゼンチンは地中海性気候ではなく、当然硬葉樹でもないのです。④が誤り。

 

[アフターアクション] 上の説明はくどかったな(笑)。もっとシンプルに考えて良かったね。アルゼンチン東部はパンパという「温帯草原」に覆われている。もちろん「硬葉樹」ではないのだ、っていう感じで。

他の選択肢については検証の必要もないでしょう。実は③がちょっとよくわからないんだけれども、放置でいいかな。

 

 

<第1問・問6>

 

[ファースト・インプレッション] 石炭には不純物として硫黄が含まれている。石炭を燃焼させる場合には、同時に硫黄も燃焼されることになり、硫黄酸化物が生じる。硫黄酸化物が上空にて雲の一部となる時、水と化合して硫酸がつくられ、これにより雨水の酸性度が上がる。

このようなしくみをまず理解しておいてください。なお、日本では脱硫(石炭から最初の段階で硫黄を除去する。燃焼後の排煙からも、硫黄酸化物を取り除く)が進んでいるため、原則として硫黄酸化物の排出はない。

 

[解法]シが日本。我が国は脱硫を徹底的にしているので、基本的に自国が原因の酸性雨はみられないのだ。しかし、中国から硫黄酸化物が飛来し、これが酸性雨をもたらしている。

さらにサが中国。「環境対策の遅れ」ですね。

残ったスはドイツ。ヨーロッパは早い段階から酸性雨とのその被害が確認されたが、その対策へも積極的に取り組みがなされている。ちなみに、スウェーデンで開催された国連人間環境会議は1974年。

 

[アフターアクション] シンプルな問題だと思う。エコの国の代表例としてドイツを知っておくといい。最近では、「ゴミの分別の徹底」や「紙のリサイクル」について、ドイツが模範的な国であるという話題が登場している。

 

 

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