2016年度地理B本試験[第4問]解説

たつじんオリジナル解説[2016年度地理B本試験第4問]     

 

ヨーロッパ地誌。ベーシックな印象を受けるが、東ヨーロッパの範囲が比較的取り上げられているのが新鮮かな。それにしてもやや傾向が変わった難問が多い。解説も苦労しました。最後にはカンに頼ってる問題もある。君たちは、ここを2問ミスぐらいで乗り切ることができたらいいんだけど。

 

<2016年度地理B本試験第4問問1>

 

[ファーストインプレッション]農業区分や農作物が基本なんだが、地形に関するワードが問題を解く鍵となっている。こうした複合的な問題は傾向として新しい。

 

[解法]Dを当てる問題だが全て興味深いので①から見ていこう。

①のキーワードは「稲作」。ヨーロッパにおける稲(米)の栽培地域は地中海沿岸のみ(栽培限界はしばしば出題されているね)。この点で選択肢はCとDに限定。保留。

②のキーワードは「侵食作用によって緩斜面と急斜面が交互に現れる地形」で。これはケスタ地形。2009年度地理B本試験で断面図が登場しているので、そちらも参照してみよう。センター地理でケスタ地形の地域として取り上げらえるのはパリ盆地だけであり、これがBの説明であることはすぐにわかる。ちなみに、実はセンター地理で「ケスタ」という言葉が登場したことは、ない。カタカナ言葉ではなく、図や文章として出題されているのだということを認識しておこう。さらにもちろん「小麦の大規模栽培」も重要。フランスが世界的な小麦生産国であることはみんなもよく知っていると思うけれど、とくにフランス北部のパリ盆地がその中心地であることが重要。大陸氷河の外縁に当たり、肥沃な土壌(レス)が集積しているのだ。個人的には、この選択肢②が最も重要と思うし、なぜこれが解答として問われなかったかが不思議。

③のキーワードは「石灰岩」。これ、もちろんカルスト地形だよね。ポリエは初登場なんだが、かつてドリーネという小凹地に関しては問われたことがある。旧ユーゴスラビア北部のスロベニア(カルスト地方)に典型的にみられる地形であり、Dが該当。よって、この③が本問の解答となる。自動的に①はC。

その①だが、ここでは「河川の堆積作用によって形成された平野」とあり、沖積平野のこと。沖積平野は扇状地、氾濫原、三角州から成り、日本の平野の多くはこれに該当する。世界で沖積平野として取り上げられる代表例は、イタリア北部(ポー川沿いのパダノベネタ平野。Cの地域)とインド北部(ガンジス川沿いのヒンドスタン平原)。センター試験で黄河下流の華北平原が「河川の堆積による」で一回登場したことがあり、それはそれで間違っていないのだが、一般的な地理の知識としてはあまり重要な部分ではない。とりあえず「イタリア北部とインド北部が沖積平野」と知っておいていいんじゃないかな。また、沖積平野については水利がよく、米作に適していることから、「ミシシッピ川下流のアメリカ合衆国南部」や「長江沿いの中国・華中地方」などもこれに該当する代表的な地域となる。こっちはおまけかな。

残った④がAとなる。イギリス本島北部のスコットランド地方を横断するようにいくつもの「断層」がみられることはよく知られている。大規模なものではないから、地震を引き起こすようなものではないが、よかったらチェックしておこう。最も分かりやすい例というと、巨大な生物がいると言われているネス湖がこの断層によって形成された地溝湖だったりする。しかし、そもそも周囲は氷河によって削られた地形であり植生にも乏しく、間違いなく有機養分の少ない貧栄養湖なのだが、そんなところに食料をたくさん必要とする巨大生物が棲んでいるというのはいくら何でも無理があるんじゃないかと僕は思うわけで。

なお、スコットランド最大の都市グラスゴーや行政の中心であるエディンバラなどではハイテク産業が発達し、一帯は「シリコングレン」とも呼ばれている。もちろん世界最大のハイテク産業に集積地であるアメリカ合衆国太平洋岸のシリコンバレーに由来する名称なのだが、「グレン」というのは地溝帯のこと。

さらにおまけというと、ここに「高地」とある。イギリスはそもそも古期造山帯で全体の標高が低い国なのだが、あえていえばこの地域はやや標高が高い。「ハイランド地方」という名称もある。でも、結局「山」というより「丘」程度のもんなんだけどね。以上、豆知識でした。

 

[アフターアクション]上でも説明しているように、僕ならB=②を取り上げる。これが一番重要なトピックだと思う。ただ、カルスト地形は絶対知っておくべきことなので(スロベニアのカルスト地方なのだ)、とくに無理難題というわけでもなかったかな。ただ、ちょっとおどろいたのは、「ポー川沿いの沖積平野」、「ポリエ」、「スコットランドの地溝帯」が取り上げられた点。これ、どうなんだろうな。僕は決して重要ではないと思うし、逆にこんな細かいことを知っておくと、もっと重要な全体の概要がぼやけてしまう。勉強の最後にあくまで参考知識として知っておくに留め、基本的には無視しておいていいと思う。そういえばポリエの説明をしていなかったけれど、これは石灰岩地域が広く溶食され(二酸化炭素を含んだ雨水によって溶かされる)、平坦になったもの、規模でいえば、「ドリーネ<ウバーレ<ポリエ」。小凹地のドリーネに対し、ドリーネが複数くっついた大きな凹地がウバーレで、さらにそれらが連結して広い平坦地になったものがポリエ。

 

 

<2016年度地理B本試験第4問問2>

 

[アフターアクション]ドナウ川にはちょっとビビったかな。東ヨーロッパもこうしてどんどん出題されてくるわけだね。要注意。しかし、それ以上に驚いたのが、アルザス地方が取り上げられていたところ。フランスとドイツの国境地域であり、戦争のたびに両国の領土に入れ替わっていた地域。「最後の授業」なんていう小説でも有名だったりする(知ってる?)。現在はフランスなのだが(最後の戦争つまり第二次世界大戦でフランスがドイツに勝ったので)、フランス寮内でありながら、ドイツ語が使用されている地域なのだ。本問を解くのにここまでの知識が必要かどうかは何とも言えないけれど、ただ、歴史的要素がこれまで以上に重要視されてきたことは間違いない。数年後に始める新テストを意識してのことなんだろうね。

 

[解法]都市名は登場していないけれど、それぞれに関するベタな知識が問われているので、難易度は高いと思う。それぞれの選択肢を検討していこう。

①;「音楽の都」ということで、オーストリアのウィーン。ドナウ川沿いのLが該当。ウィーンについては過去に本試験でも登場しており、知っていくべき都市の一つ。

②;明確なキーワードはないが、とりあえず商工業の発達した経済レベルの高い地域であることは読み取れる。保留。

③;「隣国との間で帰属の移り変わりがあった」ということから、フランス東部のアルザス地方が考えられ、この地域に位置するKのストラスブールが該当。アルザスはドイツ語が使用される地域であるが、古い時代よりドイツとフランスとの間で帰属が争われてきた。戦争のたびにドイツとなったり、フランスとなったりを繰り返し、現在はフランスの一部となっている。ストラスブールはアルザス地方の中心都市で、アルザス地方の歴史的背景に加えライン川に面する交通の便利の良さもあり、EU議会が置かれている。

④;「連邦国家を構成していた」ことから旧ユーゴスラビアが考えられ、Mが該当。この都市は、セルビアの首都ベオグラードである。セルビアは旧ユーゴスラビアを構成していた最大の国。

以上より、Jについては残った②が正解である。ドイツ西部のKは、ルール地方。ライン川下流域で豊富な石炭を基盤として鉄鋼業が発達した。近年は重工業が斜陽化するものの、再開発により先端産業の新たな集積地として注目されている。

ただ、選択肢②の文章の中に「鉄鋼業」、「先端産業」などのキーワードがないのが気にはなるんだが。「外国企業」についてはそもそもEUは国境線を超えた自由な経済活動がさかんなので、これは当たり前。「金融機関」については経済レベルつまり1人当たりGNIが高いこと。たしかにJはその要件を満たすが、ただし明らかに経済レベルが低い(しかもEU圏ではない。セルビアはEU未加盟)Mを除けば、他の地点もあながち間違っているともいいにくいのだ。ちなみに「金融機関」の「中枢管理機能」である欧州銀行が置かれているフランクフルトは、本図の「ライン川」の「イ」の文字付近に位置する(ライン川には接していない)。ちょっと決め手に欠く選択肢とはいえる。

 

[アフターアクション]新しくいろいろなネタが出てきたのでビックリの小問。アルザス地方は冒頭で説明したので他の都市やキーワードについて。

①;「強大な帝国」はオーストリア・ハンガリー帝国のことだが、これはどうでもいいでしょう。ウィーンという都市が音楽の都であることはよく知られているが、その位置となると知らない人が多かったのではないかな。オーストリアは、西欧や東欧に対し「中欧」とも呼ばれる地域に位置するので、場所を確認しておこう。

②;「コナーベーション」というのは「連接都市」という言い方からわかるように、複数の都市がつながって一つの巨大な都市圏を形成したもので、ルール地方はその代表例。ドイツには東部にドイツ、南部にミュンヘン、北部にハンブルクなどの巨大都市があるが、実は人口規模が最も大きいのはルール地方。数十万人規模の都市が連続し、コナーベーションを形成している。イメージとしては、目玉焼きを考えたらいい。生卵をフライパンの上で割って目玉焼きを作るのだが、黄身の部分が「都心部」で白身が「郊外」、すなわち全体で「都市圏」となる。狭いフライパンの上で、たくさんの生卵を割っていくと白身通しがくっついてしまい、大きなひとかたまりの目玉焼きになるよね。これがコナーベーションのイメージ。小さな都心部とそれを取り巻く郊外が、複数くっついてしまって、一つの巨大な都市圏になる。

④;第4問問1に続いて旧ユーゴスラビアが登場している点が新鮮。これからは旧ユーゴスラビアの国々についてしっかり理解しておかないといけないのかな。「1990年代の政情不安や紛争」も旧ユーゴスラビアそしてセルビアのキーワード。旧ユーゴスラビア構成国の中には、スロベニア(Dの国)やクロアチアのようにすでにEU加盟を果たしている国もあるが、セルビアなど他の国についてはその限りではなく、経済レベルも極めて低い。

 

 

<2016年度地理B本試験第4問問3>

 

[ファーストインプレッション]階級区分図。観察するポイントが多いので、この形式の問題にはおもしろいものが多い。階級区分図は「割合」を表すものであるが、各指標を計算する際の「分母」と「分子」の双方が重要になる点も、深い思考力が試されるところである。味わって解こう。

 

[解法]階級区分図は割合の高低を表す。割合は、ある指標を他の指標(ともに変数である)で割ることによって算出される。3つの指標が取り上げられるのだが、その影には6つの指標が存在しているということ。考える部分は非常に多いので、じっくり取り組もう。

最初に選択肢となる3つの指標について分析。「農業人口1人当たりの農業生産額」をA、「農地面積1ha当たりの農業生産額」をB、「農産物の輸出入比」をCと置いてみよう。Aは「農業生産額」÷「農業人口」、Bは「農業生産額」÷「農地面積」、Cは(問題文の注釈にあるように)「農産物輸出額」÷「農産物輸入額」である。

まず、Aについて。「農業生産額」は一般に人口規模や面積が大きい国で大きくなるのだろうが、はっきりしないので保留。ポイントになるのは間違いなく「農業人口」である。国の規模に対して農業人口が小さい国にイギリスがある。農業すなわち第一次産業の就業人口割合が1.5%で、世界で最も低いレベルである。イギリスだけではなく、ドイツなど北部ヨーロッパの国においてこの値が低くなっていることを知っておこう。というか、そもそも第一次産業就業人口割合は1人当たりGNIに反比例するのであり(平均所得が低い国は、国民の多くが農業に就いているということ)、これをヨーロッパに当てはめるならば、1人当たりGNIが「北部>南部>東部」であるので、第一次産業就業人口割合は「北部<南部<東部」となる。つまり、Aは「北部>南部>東部」となる傾向があると推理できる。イギリスが低位となっているアとイは除外され、東ヨーロッパが全般に低い(そしてイギリスが中位)であるウがAに該当する。

さらにBについて。これは「農地面積」に反比例するものである。耕地面積割合の高さに特徴がある国にデンマークがあるが(国土面積の半分が小麦畑など耕地となっている)、アとイのいずれもデンマークは高位なのだ。これではわからない。保留。

そしてCだが、これは「輸出額」に比例する。例えばオランダは園芸農業の国であり、野菜や肉類、乳製品などが商業的(つまり輸出することを前提で)に栽培している。しかし、アとイ、いずれもオランダは高位であるのだ。これも保留。

というわけで、今度は指標ではなく図から直接読み取る。アとイを比べてみて、値が正反対となっている国はないだろうか。例えば、アイルランド、スペイン、ポーランド、ハンガリーではアは低位、イは高位となっている。これが手掛かりになるんじゃない?

僕が最重要の国と位置付けたのはハンガリーなのだ。大陸氷河の外縁部に位置し、肥沃な土壌であるレスに恵まれた国。小麦やトウモロコシの生産が盛んで、輸出も多い。この国で「輸出÷輸入」が低いはずがないのだ。イをCとして、残ったアをAとする。ハンガリーはドナウ川に沿う盆地の国で、平坦な農地には恵まれていると予想される。農地に余裕がある国では土地生産性が低いのが一般的であり(逆に狭いオランダなどでは極めて集約的な農業がみられる)、Aが低いとみても無理花井。そもそも小麦やトウモロコシについては穀物であるので(肉類や野菜と比べ)価格が安いので、Aの値が極端に高いものとはならないだろう。以上より、⑤が正解。農業に特徴がある国として(とくに穀物の自給率が高い=輸出余力がある)ハンガリーを知っておこう。

 

[アフターアクション]「解法」の部分ではスムーズに解いたような振りをしているけれど、実は結構悩んだ。ウはともかくとして、アとイの判定はやっぱり難しいよ。手掛かりとなる国は決め手となったハンガリー以外にもアイルランド、スペイン、ポーランドがあるのだが、これらが農業的には全然異なった特徴をもっている国。仕方ないから、かなりこじつけて自分を納得させたのだが、どうなんだろうか。以下にそのことについて書いてみるので、みんなもちょっと考えて欲しいな。

 

アイルランド・・・大陸氷河に削られたやせた土壌であるため、土地生産性は低く、Bは「低位」となる。人口規模は小さく、ジャガイモの生産が多い国なので、輸出は多くなり、Cは「高位」となる。

ポーランド・・・大陸氷河に削られたやせた土壌であり、土地生産性は低い。ただし、商業的な混合農業が営まれ、豚肉の生産が多く、これらは輸出されている。

スペイン・・・厳しい気候環境にあるため(降水量が少ない)、土地生産性は低い。しかし、オレンジ類の世界最大の輸出国であるなど、温暖な気候を利用しての野菜や果実の生産は多く、輸出額も比較的多い。

 

どうかな。上のような文章にまとめてみると、こじつけが強いものの、それなりに納得できるんじゃないかな。でも、よく考えてみると、「肥沃だから耕地が広く、土地生産性が下がる」ハンガリーと、「土地がやせているから土地生産性が低い」アイルランドやポーランドって、真逆のことを言ってるよね。さらに、主要輸出品目が「穀物」であるハンガリーと「果実」であるスペインを同列に扱ってもいけないような。正直、苦しい問題ではあるんだわ。下に一覧にしてまとめておいたので、参照してください。あいまいな問題だわね。

 

 

土壌

気候環境

人口

特徴的な産物

ハンガリー

肥沃

恵まれている

少ない

穀物

アイルランド

やせている

厳しい

少ない

ジャガイモ

ポーランド

やせている

厳しい

多い

穀物・肉類

スペイン

・・・

厳しい

多い

果実

 

 

<2016年度地理B本試験第4問問4>

 

[ファーストインプレッション]これは難問。とりつくシマがないぞ。しかもキのような中途半端なところを解かないといけない。どうしたものか。最後はカンに頼らないといけない予感がする。

 

[解法]①〜④のグループを経済レベル順に並べてみる。経済レベルというのは要するに1人当たりGNIのことで、「③>①>②>④」の順。非EUであるスイスとノルウェーは極めて1人当たりGNIが高い国であり、EU域内においては「北部>南部>東部」の傾向がはっきりしている。

一般的に経済レベルが高ければ、それだけ仕事の数も多く、失業率が下がると思っていい。

となると、明らかに(自国民も外国人も)失業率が低いクが③になるだろう。これは疑問の余地がない。

他については、②が特殊。スペインやギリシャ(そしてポルトガルは)経済破綻したことでニュースになった国。自国民の失業率が20%とは異常な状態なわけよ。カが②とみるのは自然だろう。

で、残ったキとケなんだわ。これが難しい。全体の失業率に大きな違いがあるわけではないが、キはとくに外国人の失業率が高い。でも、これってよく考えたら当たり前なんだわ。経済レベルの高い(つまり賃金が高い)国には外国から多くの労働者が入ってくるわけだが、いざ景気が悪くなって工場が閉鎖されるぞ!なんていえば、残念ながら真っ先に切られるのは外国人労働者なんじゃないかな。自国民はおそらく学歴も高く、身分も安定しており、もちろん正社員として採用されている比率も高いはず。一方、外国人は一時的な出稼ぎの可能性もあり、切られる時は簡単に切られやすい。キの国々には外国人の流入も多いと思うのだが、彼らにとって厳しい雇用条件が強いられているという背景もあるとみられる。

それに対し、ケが興味深いんだが、みんなは気づくかな。これらの国々においては失業率は「自国民>外国人」なんだわ。これ、どうしたことだろう?そもそも外国人労働者の流入が少なく、データに誤差が大きく出やすいということもあると思う。ただ、僕は思うのだが、外国人に特殊な技能を有する人が多く、その雇用が景気の動向に左右されにくいんじゃないのかな。単純な組み立て工場ならば、誰でもできる仕事でもあるし、解雇もされやすい。それに対し、金融やマスコミ、あるいは工業でもコンピュータ関係など高度な知識が必要な業種ならば、簡単に切られることはないと思うんだわ。

つまり、キの外国人は単純労働の出稼ぎが主であるのに対し、ケの外国人は特殊なスキルを持った専門職の人々が多いということ。「発展途上地域から労働者が流入する」先進地域がキならば、「先進地域から技術者が流入する」ケが発展途上地域とみていいと思う。キが①、ケが④となる。どうだ、これで正解か!しっかし苦しいな(涙)

 

[アフターアクション]いやぁ、やっぱり最後はカンだった(そして①で正解でした)。あまりいい問題じゃないよね。スペインやギリシャは、拡大前のEUにおいては最も賃金水準の低い国々だったので、自動車をはじめさまざまな労働集約型の工業が進出してきており、雇用は十分であった。しかしより低賃金である東ヨーロッパ諸国がEU経済圏に含まれることによって、そうした工場は国外へと転出し、あわれスペインやギリシャの人々は仕事を失ってしまったのだ。これが自由経済圏の宿命とはいえ、かくしてスペインとギリシャの経済は破綻した。そのことは、本問については両国の高い失業率に表されている。

そうしたスペインとギリシャ(そしてポルトガル)の事情ぐらいはぜひ知っておきましょう。

 

 

<2016年度地理B本試験第4問問5>

 

[ファーストインプレッション]ここまで細かな都市名や難解な図表読解がもとめられる問題ばかりで難易度が高かったけれど、ようやく本問で気が抜けるね。さほど難易度は高くない。

 

[解法]サ;「西部の資本主義体制」がかつての西ドイツ、「東部の社会主義体制」がかつての東ドイツ。1990年に統一され、すでに20年以上の時間が経過しているが、経済格差はむしろ固定化されている。ドイツが該当

シ;「南部」のタラント(イタリア半島を足に見立てた場合、足の裏に位置する港湾都市)に臨海型の製鉄所が建設されたことはかつてセンター試験でも出題されている。イタリアは「豊かな北部、貧しい南部」の対比が明瞭な国であり、南部振興のためにタラントの製鉄所だけでなく、半島を縦断する道路(アウトストラーダ)の建設などが国家的プロジェクトとして実施されたが、その効果は限定的なものでしかない。イタリアが該当。

残ったスがベルギー。ベルギーが多言語国家であり、北部フラマン地域でオランダ語、南部ワロン地域でフランス語が使用されていることまではみんなもよく知っていると思うけれど、これらの2地域に経済格差があることまでは知らなかったんじゃないかな。北部の「羊毛」はフランドル地方で、日本では「フランダースの犬」で有名。この地域にはアントウェルペンという港湾都市であり、石油精製工業のほか、伝統的にダイヤモンド加工業が発達していて、経済レベルが高い。南部は資源産地であり(図をみたらわかるけれど、石炭産地であるドイツ西部のルール地域と比較的近い)かつて鉄鋼業が栄えたが、現在は衰退。内陸部の資源産地の鉄鋼業は例外なく衰退しているので、ベルギー南部もその一つということ。アルデンヌ地方リエージュが代表的な都市。

 

[アフターアクション]ベルギーが登場しているのだから、言語の違いやダイヤモンド工業などが問われるべきだったが、それがないのが肩透かし。それがあったらもっと簡単に解けたと思うんだけどね。

タラントは実は意外に出題率が高いので、過去問がある人は、2010年度地理B追試験第4問問3、2005年度地理B追試験第3問問5を参照しておいてください。

 

 

<2016年度地理B本試験第4問問6>

 

[ファーストインプレッション]定番問題じゃないですか。こういうオーソドックスな問題が登場するとホッとするね。

 

[解法]これは素直に②を誤りとしてしまっていいだろう。EUはいわば「内輪」の世界であるので、ヨーロッパ地域の結束は固くなっていくものの、外部との関係性は相対的に薄れていく。とはいえ、ここでは「減少した」が気になるのだ。世界全体がグローバル化し、経済規模も拡大する中で、そもそも「投資が減少」することなどあるのだろうか。アメリカ合衆国や日本による工場進出はもちろんあるだろうし、(1人当たりGNIは低いが)経済規模の大きいロシアや中国からの投資も増えているのかもしれない。「割合」と「実数」の差は明確に意識しないといけない。東ヨーロッパ地域については、西ヨーロッパ諸国への依存度は上昇しているのかもしれないが、合計の投資額はそれを上回る勢いで拡大し、ヨーロッパ域外からの投資額そのものは(つまり「実数」としての金額は)増加しているとみて間違いないだろう。

 

[アフターアクション]EUの問題というよりも、「経済」の問題であり、「統計」の問題であるよね。世界全体の経済規模は拡大の一途であることは意識しておく。さらに割合としては低下していても、実数として増加するということは十分にありえることなのだという、統計学的常識も把握しておくこと。

 

 

 

 

 

鈴木たつじん公式サイト

センター試験・地理Bの学習のために、いろいろなアドバイスをしていきます。

検索

モバイルサイト