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2014.03.14
4種類あるんだな。
4種類あるんだな。
先日ある友人から指摘を受けた。メルマガで連載している地理ブログの内容で「インナーシティ」に関する説明がおかしいんじゃないか?
ただ、彼が言うのはバージェスの都市構造を日本の都市に当てはめた場合の漸移地帯に対する解釈のことで、そもそも本来的にはインナーシティとは異なっている。しかし、なるほど、一つの言葉を巡っても実に多面的な解釈が存在するのだな、と改めて思う。
ボクが常々意識しているのは、4つの解釈。「教科書的な意味」、「学術的に正しい定義」、「試験に出題されるパターン」、そして「授業における省略と誇張」。
たとえばスプロール現象に関してこの4つを捉えてみよう。教科書においては「郊外における虫喰い状の乱開発。農地や林地の間に住宅地が無秩序に散在する。」のような説明の仕方がされている。
しかし、本来のスプロール現象は経済や都市開発に密接に関わる用語であり、意味合いがやや異なる。「郊外に住宅地が分散して配置されるため、道路や都市施設などのインフラ整備が効率的に行われない」という点を強調しておかないといけない。
とはいえ、これではわかりにいし、今ひとつピンとこない。だから授業ではこうやって教えてしまう。「農地や林地の間に住宅地とかあったらごちゃごちゃしてあかんやろ?しかも工場やゴミ焼却場まで近くにあったら、何となく嫌やん。だから住宅地は計画的に建設しなあかん」で、片付けてしまう。決して正しくはないんだが、もっと深い意味が知りたい生徒は大学生になってから自分で調べてみたらいいし、とりあえずの切っかけとして身近な問題に落とし込んでしまう。自分の生活体験と授業内容の間にギャップ(狭間)が生じることはできるだけ避けないと。
ただし、我々はあくまで「受験屋」なのである。究極的にはテストでどうやって出題されるのか、というパターンを提示するだけに我々の存在価値(レエゾン・デートル)がある。だからスプロール現象については「郊外」における「無秩序な開発」なのだから、文章正誤問題で問われる際には反対語としての「都心部」や「計画的な開発」といワードに注意せよ。近年の出題傾向として「ニュータウン開発」の対義語としてスプロール現象が登場することが多く、これも意識しておこう。こういった、実戦でそのまま使える知恵を彼らに授けることが第一の目的となる。
「これは間違っているんじゃないか、これが正しいんじゃないか」というのはそもそも不毛な議論であって、要はケースバイケースでどういった要素を強調して提示していくかということなんだと思う。仕事柄もちろん「試験」をメインコンセプトに教えてはいるんだが、それが成り立つためにはやはり「学術」的な土台は大事であるし、高校からの授業の継続性も考えれば「教科書」も無視できず、おもしろい授業のためには「誇張」も必要となる。この辺りのバランスとコントロールを考えていきたいとは思っている。
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