ニュースレター
2024.02.11
シェルム弦楽四重奏団 インドネシアKDMでの活動報告‼️
【いざ!KDM へ】
KDM と音楽 ―シェルム弦楽四重奏団と共にー
インドネシア・ツアーの6日目、快適な鉄道の旅によってバンドンからジャカルタに戻っ た私と演奏家3名は、大勢の人々でにぎわう昼のガンビール駅で J2 ネットの皆さんと無事 に合流し、ストリートチルドレン養護施設の KDM へ向かいました。
到着すると、現地待ち合わせのじゃかるた新聞の青山さん、ヤマハの井土さん、優しい笑 顔の KDM の先生方と初対面の挨拶を交わした後、先生に敷地内の施設についてご案内頂 きました。その時にあちこちで、恥ずかしそうに微笑む小学生から中・高校生くらいの子ど もたちや、一体何者?と不思議そうに様子を伺っている年少の子どもたちの視線に、私たち のワクワク感も高まっていきました。
KDM は J2ネットさんが長年交流を続けている児童養護施設なので、日本人の訪問者に は慣れているのでしょうが、私たちのように全員が、よくわからない細長く四角い鞄らしき もの(=楽器ケース)を背負いながら敷地内を歩く姿は、子どもたちにはさぞ物珍しかった だろうと思います。次いで、インドネシアでの私たちの活動について、少しお話致します。
【インドネシアでの音楽アウトリーチ活動】
私は、シェルム弦楽四重奏団と共に 2015 年から毎年、インドネシアやマレーシアなどア ジアの国への演奏旅行を実施しています。訪問国では一般向けのコンサート会場での演奏 とは別に、音楽によるアウトリーチ活動、つまり演奏家の方が出向いて、児童を含む地域の 人々へ音楽を届けに行くという活動もしています。コロナ禍による約4年の活動休止を終 え、2023 年 10 月には念願のツアーが再開した中、今回は、以前からこの活動を通して交流 のある J2 ネットさんのご紹介で、KDM を訪問することになりました。
【KDM の子どもたちとの音楽交流】
敷地内の東屋風の、屋根と四方を囲む柱だけがある多目的広場には、既に椅子や演奏場所 の準備がされてあり、さっそく演奏家たちが譜面台や楽器の準備を始めると、少しずつ子ど もたちが集まり始め、その様子を興味深そうに遠くから見つめていました。
準備が整うと同時にスタートです。演奏家たちは簡単な自己紹介の後、弦楽器について子 どもたちとの楽しい Q&A を盛り込みながら説明し、続いてクラシック音楽、子どもたち もよく知る子供向けの映画音楽、子どもにもなじみ深いジャワの有名な伝承曲などを演奏 しました。最後に、楽器体験時間を設け、希望する子どもたちと先生が、日本から持参した
児童用サイズのヴァイオリン演奏に挑戦しました。
【自由に音楽を感じるということ】
終始、子どもたちは思い思いの場所に座ったり立ったりしながら、あるいは、時々、東屋 の外に出ては、ふらっとまた戻ってきて座って聴く、というように、ゆったりとした様子で 私たちの活動に参加してくれていました。集中して無言で聴いている子たちもいる一方で、 ある二人の女児は、演奏家のすぐ前でお互いに向かい合い、演奏を BGM に「アルプス一万 尺」風の手遊びをしていました。音楽の感じ方、楽しみ方は、人それぞれです。今回のアウ トリーチ活動のような場合では、一般的なコンサート会場の観客のように、椅子に行儀よく 座って演奏者の方だけを向いて静かに聴く、というスタイルではなく、子どもたちに自由に 聴いてもらうことに意味があると思っています。演奏した曲や演奏する楽器にとても興味 を持っていた子、あまり関心を持っていなかった子、楽器体験をもっと続けたそうにしてい た子等など、反応は本当に様々でした。曲の好き嫌いも様々だったと思います。
もちろん子どもたちが音楽や楽器に興味を持ってくれたらとても嬉しいですが、そうで はなくても、自分自身の感じ方が「経験」として子どもたちの中に残ることが大切だと考え ます。その「経験」がいつまでも彼らの記憶に残るか否かは、ここでは重要ではありません。
ほぼ屋外ともいえる演奏場所は、じっとり汗をかく暑さでしたが、時折感じる快適な風に 譜面台の楽譜が飛ばされるアクシデントが発生したため、急遽先生に洗濯ばさみをお借り して対応しました。演奏者の「ほうら、うまく解決したでしょう?」とばかりに得意顔をす る姿が子どもたちの笑いを誘うなど、全体的にほのぼのとした空気が流れる時間でした。
【音楽アウトリーチは双方向型の活動】
音楽アウトリーチ活動は、演奏者側が一方的に音楽を届けるだけでなく、参加者側から活 動実施者が得るものがある「双方向型の活動」です。実際、今回の訪問で私たちは他の訪問 先と同様に、活動の意義や活動方法・内容について短時間ながら学ばせて頂くことができま した。得られたものを今後の活動に生かしていこうと思います。
最後に、J2 ネットの皆さんのきめ細かいご準備とご配慮への感謝を述べたいと思います。 またご一緒に活動できる機会を、楽しみにしております。
今回の訪問演奏家: シェルム弦楽四重奏団より
木野雅之(ヴァイオリン)、
松野木拓人(ヴァイオリン)、
池田海渡(ヴィオラ)
国際交流音楽プログラム プロデューサー
松野木 京子