合氣道真生会川崎高津道場 活動報告
2024.07.20
カナダと岡山からのお客様
2024年7月14日(日)、カナダの合氣道修行道場と岡山県より3名の方が稽古に参加してくださいました。
合氣道修行道場(カナダ)HP→https://shugyo.com/
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ご参加下さったのは、合氣道修行道場の道場長であるガブリエル=ディ=マルコさん(合気会五段)、その奥様であり指導員のあゆみさん(合気会二段:現在は真生会門人)、合氣道修行道場の元門人で今は岡山で暮らし、岩間系の道場で稽古しているジャスティン=ヘイリーさん(合気会二段)の3名です。稽古には参加しませんでしたが、ジャスティンさんの奥様の加枝さんもご来訪くださいました。
ガブリエルさん、あゆみさんは過去に数度ご参加いただいていますが、ジャスティンさん、加枝さんは今回が初めてのご来訪で、自分(吉見)はお会いするのも初めてです。貴重なお時間と交通費、宿泊費などなどを費やして川崎高津道場のような辺境の侘しい道場にご来訪いただき、とてもありがたく、申し訳なく思います。しかもジャスティンさん、加枝さんご夫妻は、お仕事や観光のついでではなく、この稽古を主たる目的としていらしてくださったとか…、なんか本当にすみません…。無論、旧知のガブリエルさん、あゆみさんと会うことも大きな楽しみであったことと思いますが。
ガブリエルさんとあゆみさんはこの一週間前(7月5~8日)には熊本を訪れ、真生会本部道場の稽古と稽古会にご参加されたということです。自分などよりはるか上位の師範方と稽古された後で…というのはちょっとやりづらさもありますが、まあ、端下の自分が師範方と違ってヘタッぴーなのは当然だよね☆と思えば気楽です。もちろん、そんな自分にお客様方をご指導できるような資格はありませんので、今回も皆さんで楽しく稽古できるように、ということだけをひたすら心掛けていました。
稽古は通常の流れで、礼拝、体操、体捌き、呼吸力の練習と進め、綾取り(交差取り)に応じる小手返しや入り身投げなどを行いました。
真生会では小手返しや入り身投げも筋力や腕力を用いず、徹頭徹尾、呼吸力で行うようにします。
「呼吸力」というと、他の多くの会派では「自身の力を集中することで発揮される大きな力」といった解釈が一般的なようですが、真生会の呼吸力は、自身の力はすっかり抜いて相手と一体化し、自分にも相手にも無理がかからないよう技を行う理法です。真生会の呼吸力の技を受けると、瞬間的にフワリと自分の体が軽くなったような感覚になりバランスを失って「あれ、なんで?」という感じで投げられたり押さえられたりしてしまいます。大きな力でグーンと相手を動かすような他会派の呼吸力とは「180°正反対」といってよいくらいに違う独特な理法です。
諸会派で合氣道を稽古している方々は日本をはじめ、世界中に何万人といるようですが、先師や濱田師範長(前真生会代表)の技を受けたことのない人では、いくら想像を膨らませてもこの感覚はなかなか理解できないのではないかと思います。いうなれば見たこともない宇宙人か異世界人の料理の味を想像しようとするようなものですから。
ガブリエルさん、あゆみさんは先師と濱田師範長の両名に、ジャスティンさんは濱田師範長に指導を受けた経験があるそうです。3名とも普段は合気会、岩間系とそれぞれ真生会とはかなり違ったスタイルでの稽古に勤しんでいる方々ですが(しかもガブリエルさんは数十人の門弟を抱える道場長様です)、今回の稽古では普段の自分たちのスタイルに固執せず、常に真生会の稽古方法に順じ、「とにかく力を抜こう」という真摯な姿勢が感じられ、素晴らしいなー…と頭の下がる思いでした。
それと、川崎高津道場の仲間たちについても、自分(吉見)が相手の方を離れて別の方の様子を見に行くと、フリーになった川崎高津道場の仲間がサッと自分の元の相手の方と稽古しに行くという、これまでより一段と積極的な姿勢が見られ、すごく嬉しく思いました。
皆さんのおかげでとてもとても楽しい稽古となり、予定をだいぶ延長して20時過ぎに稽古を終了しました。事前には懇親会もあるから早めに終らせようと考えていたのですが…なかなか予定を守れなくてすみません。
稽古の後は、川崎高津道場の公式イベント会場と勝手に指定している(何せ道場から徒歩1分ですので…)高津駅前の居酒屋「はなの舞」に席を移し、濱田師範長にもお写真でご参加いただいて(稽古中も先師と並んで見守っていただきました)懇親会を開催致しました。
ちなみに、来日前、あゆみさんがガブリエルさんに東京周辺ではどこに行きたいか尋ねたところ、第一に川崎高津道場を挙げてくださり(ひじょ~~~に恐縮です…m(_ _;)m)、次に「焼き鳥」を挙げられたとのことです(笑)。自分も焼き鳥大好きです。。…鳥さんには大変申し訳ないことですが…鳥さんにも他の食材の皆様にも心から感謝です。
焼き鳥の隣は熊本名物としても知られる「馬刺し」です
懇親会では古武道や今回の稽古では使用しなかった杖など武器技の話題にもなりました。杖(じょう)の使い方は会派によって違いますが、大きな違いとして、「棒」として使うか、「槍」の代わりとして使うかという点があると思います。通常の稽古では棒の一種である「杖」を用いることから「棒術」「杖術」からその操法を学ぼうとする方が多いように思いますが、自分は開祖は杖を「槍の代わり」として用いていたように感じています。武具としての「槍」と「棒」では操法にも日本史上における在り様にもかなり違いが見られます。
青年期から壮年期の開祖は槍術を得意としていたと伝えられています。大正14年(1925年:開祖42歳ころ)に武道の専門家として初めて東京に招かれ、海軍大将の竹下勇氏の邸宅において賓客を前に披露したのは体術でも剣術でもなく、槍術の演武でした。開祖がいつ、どこで槍術を体得したか、詳しいことはわかっていませんが、青年時代の兵役中には宝蔵院流槍術などが練り合わされた銃剣術(銃剣はライフル銃の先に短刀を装着したもの)に練達し、教官の代わりに他の兵士たちに指導するほどであったということです。戦前の演武の映像や指導書では、現在の杖技に相当するような技を木銃(銃剣術の練習具)や槍で行っている様子が見られます。真生会の「杖の形」は、先師が開祖から教わった杖の操法を元に作成したものですが、その中には宝蔵院流槍術の技法に似た動きも見られます。通常の稽古で槍を使わなくなったのはスペースの問題(槍は3m以上が普通です)や安全上の理由からでしょう。木銃を使わなくなったのは戦前と戦後の社会の変化によると思われます。
川崎高津道場の稽古
ただ、開祖の槍術は「○○流槍術」という特定のものではなく、大正14年の演武の時点で既に自ら「これは独創の技である」としており、その独創性は戦後になってより操作の自由度の高い杖を主に使うようになってさらに加速されたように感じます。体技でも剣技でもそうですが、古武術や格闘技の技をそのまま取り入れてもそれはその古武術・格闘技の技であって合氣道ではありません。合氣道の技には合氣道の技としての在り方があります。それは、開祖の目指した理想の武道の在り方、自然の理に即し、「合氣とは愛なり」の心にかなっていなければならないということです。実現の難しい理想論に意味はない、と考える方も多いかもしれませんが、理想無き武道はただの暴力です。自分は安易な力による闘争論に流れされず、どこまでも理想の武道、真の合氣道を追い求めていきたいと思っています。
懇親会はその他にも先師や濱田師範長の思い出、それぞれの生活やお仕事のこと、初お目見えのジャスティンさん、加枝さんのなれ初めのお話などにポンポンと花が咲き、23時ごろ、お店の閉店と共にお開きとなりました。高津駅の改札内で互いにハグし合って別れを惜しむ皆さんの姿はとても微笑ましいものに思えました。路線の違う自分は一人ポツンと改札の外でその光景を眺めていたわけですが…。
ガブリエルさん、あゆみさん、ジャスティンさん、加枝さん、川崎高津道場の皆さん、本当にありがとうございました。おかげさまでとても楽しく意義深い稽古と懇親会を行うことができました。それぞれ遠い空の下ですが、これからも共に「合氣とは愛なり」の心に即して合氣道をを続けられたらとても幸せに思います。今後とも宜しくお願い致します!
合氣道真生会川崎高津道場 吉見新
~ 追記 ~
ところで、この7月14日はフランス革命記念日でしたね。フランス革命といえば「ベルばら」ですよねっ(←大好き)。フランス革命(1789年-)のその後の歴史は暗い側面も多いですが、「自由、平等、博愛」の革命精神は合氣道にも通じるものだと思います。
その前の週、ガブリエルさんとあゆみさんが参加された熊本本部の稽古会の日(七夕の7月7日)は濱田師範長の結婚式記念日だったような…。違ったら申し訳ありません。
お土産にいただいたカナダのワインです