合氣道真生会川崎高津道場 活動報告

2023.07.15

カナダからのお客様 part3

2023年7月9日の稽古に、カナダのトロントにある合氣道修行道場より、ガブリエル=ディマルコ道場長(合気会五段)と奥様のあゆみさん(合気会二段・真生会門人)がご参加くださいました。

以前にもご紹介していますが、合氣道修行道場は合気会所属ながら真生会とは長年に渡り交流の深い道場です。

合氣道修行道場(カナダ)HP→https://shugyo.com/

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お二人とも昨年に続いてのご来訪で、これでガブリエルさんは2回目、あゆみさんは3回目となります(「先生」とお呼びしたいのですが、ご本人方の希望で「さん」とさせていただいています)。限られた来日期間の貴重なお時間を費やして真生会の中でも特に侘しく存在感の薄い川崎高津道場にわざわざいらしていただけるのはとてもありがたいことです。しかも今回は午前中に春風館合氣道(新宿)の稽古にもご参加されたということで、お疲れのところ大変恐縮です。特に近頃の関東地方はこの時期としては異常に暑い日々が続いていて、ちょっと外を歩くだけでも気が遠くなりそうです。

稽古は通常の流れで礼拝、体操、基本的な一対一と多数者の体さばきを行った後、呼吸力養成法と片手取りでの呼吸技を時間をかけて練習しました。甚だ無能で真生会において端下の一門人でしかない自分(吉見)にご指導できることなど何もありませんが、先師と濱田先生から教わってきたことを自分なりの解釈で可能な限りお伝えさせていただきました。せっかくいらしていただいて、ただガッカリさせてしまってはとても申し訳ないと心配していましたが、幸い、「楽しかった」「よい稽古ができた」といったご感想をいただき、どこまで本当かはわかりませんが、少しだけ安心しました。もちろん自分はたくさんのことを学ばせていただきましたし、川崎高津道場の仲間たちにとっても得難い貴重な経験になったと思います。

自分が普段の稽古から特に心掛けていることは、「相手に力を感じさせない」ということです。真生会では「力を抜く」ことで生み出される「呼吸力」という理法をとても大切にしています。それは腕力を用いず、自然の理に即した無理のない力です。ちなにみこの場合の「呼吸」とは、単に息を吸う、吐くという行動を意味するものではなく、「陰陽」によって構成される世界観の全てを表す言葉のようです。これを人に置き換えれば自分と相手も陰陽の関係になります(どちらが陰でどちらが陽かは状況に応じて常に変化します。どちらかだけが優れているということはありません)。また「力」は物を持ち上げたり押し引きするような物質的な力とは違い、相手との結びによって生じる「働き」とか「作用」と考える方がよいかもしれません。即ち「呼吸力」とは、「自他の結びによって生じる作用(働き)」とでも言い換えられるかな…と思います。

一般的なスポーツや武道の発想では、「リラックスすればより大きな力が生み出せる」とか、「余計なところの力を抜けば一点に力が集中する」といったことになると思いますが、真生会の「呼吸力」はそれらとは全く違ったものだと思います。相手の力に対し、より大きな力で上回ろうとすることは、お互いの力をぶつけ合う「破壊の力」であり、「合氣とは愛なり」という合氣道の根本理念に逆らうものです。

いくら、「自分は力を抜いている」「この力は腕力ではない」と言い張ったところで、相手が力の抵抗を感じていたら、それはお互いに無理を生じる「破壊の力」です。一流を自負する料理人がどんな高級食材を集め、技巧をこらして作った自信満々の料理でも、お客さんが「まずい」と感じればそれは「まずい料理」です。それを「どうだうまいだろ!」と一方的にまくしたてて真実を抑え込み続ければ、お客さんは気分を害するし、自分は成長するどころかどんどん劣化していくでしょう。

晩年の先師や濱田先生の技は、「押した」「引いた」といった力を感じさせず、触れたらそのままフワフワとこちらの重心を不安定にしてしまうような感覚でした。決してより大きな力で相手を屈服させるようなものではありません。その手はズッシリと重いのではなく、薄紙のように軽く、「手を取った」という事実すら忘れてしまうような感覚でした。自分が求めているのはそうした合氣道の真の理想につながる「呼吸力」です。今の自分にはまだはるか遠くの雲をつかむような…というか、数百万光年先のアンドロメダ星雲をつかもうとするようなあまりに高すぎる理想ですが…。でも理想を追い求めてこそ「武道」ですよね。

稽古の後は席を移し、高津駅前の「はなの舞」(勝手に川崎高津道場の「公式宴会場」と指定しています)で懇親会行いました。合氣道のこと、カナダの社会のこと、色々お話させていただき、大変楽しい時間を過ごすことができました。

カナダは様々な人種、民族、宗教、思想の人々が共存しているため、道場で飲み会を開くにもメニュー選びで苦労するそうです。肉や魚を用いないで贅沢感のあるメニューを作ることができる精進料理のお店とかをカナダで開いたら喜ばれるかもですね。懇親会には先日ご逝去された濱田耀正先生にもお写真でご参加いただき(稽古も見ていていただきました)、お好きだったビールを一緒に楽しんでいただきました(と、思います)

ついつい時が経つのも忘れ、皆さんお帰りがだいぶ遅くなってしまい、申し訳ありませんでした。

日本とカナダはほとんど地球の反対側ですが、共に先師、濱田先生の技と心を受け継ぐ合氣道修業者として、今後も交流、研鑽していけたら嬉しいです。いま世界には争いの空気が色濃く流れていますが、開祖がハワイでご指導されたを際、「合氣道で銀の橋をかけに来た」とおっしゃられたように、合氣道を通して少しでも世界に友好の空気を送ることができたら素敵だと思います。

ガブリエルさん、あゆみさん、川崎高津道場のみなさん、今回も本当にありがとうございました。。

合氣道真生会川崎高津道場 吉見新

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