合氣道真生会川崎高津道場 活動報告
2022.07.20
合気道と時代劇
実は(?)自分は子供の頃から時代劇が大好きで、小学生ながら一日に2~4本(1本一時間)の作品を見て過ごしてた時期もありました。まぁ・・・、ちょっと変わった子供であったことは否定しません。特に好きだったのは水戸黄門(主演:東野英治郎ほか)や大岡越前(主演:加藤剛)、江戸を斬るⅡ~(主演:西郷輝彦)などです。
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大人になってしばらくは時代劇を見る機会は減っていましたが(テレビでの放送そのものが減ってましたからね)、近頃は機会があってまた古い作品なんかをよく見ています。そうした中で、武道と時代劇はつながりが深いように感じています。それは単に立ち回り(刀などによる戦闘シーン)のことだけを言っているわけではなく、人々の所作、礼儀作法、思想、衣服、家屋などなど作品全体の中に見られる伝統生活の様子から感じられることです。
時代劇はそのほとんどが「江戸時代」(1603-1868)を舞台にしています。例えば「水戸黄門」は江戸前期(17c)、「大岡越前」や「暴れん坊将軍」、「鬼平犯科帳」は江戸中期(18c)、「遠山の金さん」などは江戸後期(19c)が舞台です。ちなみに新選組や坂本竜馬が活躍する「幕末」は江戸後期の更に終盤、1853年からの約15年間です。
江戸時代がどんな時代かと言えば、大きな内戦や対外戦争がない比較的に平和な時代が200年間ほど続き、武家の支配の下での身分秩序や社会制度が確立し、生活、文化、農業、商業、手工業など様々なものが発展した時代です。武士の在り方も庶民、特に都市部の町民たちの在り方も戦国時代までとは大きく変化しました。一般庶民の活動が活発になるのも江戸時代の大きな特徴です。浮世絵、歌舞伎、落語、講談、文楽、俳諧など江戸時代を代表する文化を発展させたのは庶民たちでした。庶民、それも下層に位置する労働者階級までが文化の中心的な担い手であったことは、世界史上において非常に珍しい江戸日本の特徴です。寿司、蕎麦、天ぷら、そしてウナギの蒲焼なども江戸中期以降に屋台から広まった食文化です。そうした社会で武士たちの中にも「より武士らしくあろう」という姿勢と「庶民に同化して気軽に過ごそう」という姿勢とのせめぎ合いがありました。そうしたユニークな時代背景が物語の舞台として魅力的であり、数多くの時代劇が生まれる源泉となったのだと思います。現代社会に通じる点も多く、共感しやすいという理由も大きいでしょう。
江戸後期の武士の像
江戸時代の武士の家
屋台が立ち並ぶ盛り場
武道のルーツである古武術が成立し始めるのは室町時代後半ごろ(15c半ば)からですが、流派の数が増大し、各地に公私の道場が開かれるようになるのは江戸中期のころからです。そのため古武術の様式や礼法、技法、思想には江戸時代の世界観が大きく反映されていると考えられます。時代劇を見ていると、そんな時代の雰囲気を様々な形で感じ取ることができるのです。
もちろん、テレビの時代劇は「フィクション」であって、実際の歴史とは異なるところも非常に多いです。そうしなければ映像にできないシーンやドラマとしておもしろくできない場合も多いからです。しかしそういうものだと理解して見ていれば、十分に歴史的世界観の実感につながります。
例えば武士たちの刀の取り扱い方、様々なケースにおける礼法、和室での立ち居振る舞い、袴姿の所作などにはついつい目が行きます。現代の合氣道では指導者、有段者など一部の人以外は袴をはかない団体も多いですが、袴とズボンでは立ち居振る舞いが大きく変わります。
現代社会に浸っていると忘れがちな、「剣槍が身近にある生活」の中で武術が発展したという事実も再認識させてくれます。江戸時代の武士の武術の中心は何と言っても剣術でした。その他に向上心のある武士たちは槍術、弓術、鉄砲術、馬術なども稽古しました。柔術の稽古は「対武器」を想定することが当然でした。更に現代の合氣道界では「座り技なんてどうして練習するの?」と思っている方も少なからずいるようですが、時代劇を見ていると「うん、必要だよね・・・」とすんなり納得できます。時代劇から学ぶことは多いです。
ただ、あまり気にすまいと思っていてもやはり気になってしまうのが立ち回りのシーンです。正直、ほとんどの作品においてこれがちょっと・・・・なのです。もちろん俳優さんは武術を修業したことがない方が多く、短い撮影期間の中で練習する時間もあまりないから仕方ない、ということは理解できます。しかしそれにしても、「剣の達人」「柔術の使い手」といった設定の人々でさえ、実際に戦うシーンとなると「え・・・?」となってしまう場合が多いのです。
そこで、俳優の皆さんは少しの期間でも合氣道を稽古してみたらどうかと思います。合氣道は、体術あり、剣術あり、棒術(→槍、薙刀にも応用できます)ありで様々な武術の要素を身に付けることができます(注:武器をあまり使わない団体・道場も多いです。私たち合氣道真生会はよく使います)。しかも古武術の要素を多分に有していながら多くの古武術よりも動きがダイナミックかつ柔軟でスピーディーです。多数者掛かりもあるし、剣や棒を持ったままの飛び受け身も普通にします(他の武道、武術ではほとんどしません)。これって時代劇俳優さんの素養としてすごくお役立ちでは・・・と思うのですが、いかがでしょう?
興味を持った時代劇関係者の方はお気軽にご相談ください。喜んでご協力します(笑)合氣道真生会川崎高津道場 吉見新