合氣道真生会川崎高津道場 活動報告
2021.04.06
「羊羹」と「羊肉のスープ」 ~合氣道と古武術の関係
以前から合氣道と古武術、特に名称に共通点がある大東流合氣柔術の関係を質問されることがしばしばあり、どう説明すれば一般の方にもわかりやすいかずっと考えていました。
そこで最近になってふと思いついたのが、「羊羹(ようかん)と羊肉のスープの関係に似ているかもしれない」ということです。
ご存知のように、和菓子の羊羹(ようかん)は元々は古代中国の「羊の羹(あつもの)」、つまり「羊肉のスープ」でした。鎌倉時代から室町時代に日本に伝えられた羊肉のスープは、命を貴ぶ仏教の理念に基づいて羊肉の代わり小豆をつぶして成形したものを具材として用いる精進料理となり、さらに後に甘味が加わることで現在のようなお菓子になったとされています。
翻って合氣道は、開祖植芝盛平翁先生が柳生心眼流体術、大東流合氣柔術、柳生新陰流剣術、鹿島新当流剣術などなどの古武術を修業・研究しながら練り合わせ、自身の到達された「武の根源は万有愛護の精神である」という理念に基づいて生まれ変わらせた武道です。
多くの古武術にも武士道、仏教神道の宗教観と結びつく理念はあるものの、いざ合戦となれば敵を討ち取ることを本義とする古武術と、愛の精神を根源とする合氣道ではその理念も技法も大きく異なり、あり方をも全く異にする「別のもの」です。
ルーツが羊肉のスープで、名前も変わっていないのだから、「羊羹と羊肉のスープが同じものだ!」という人がいたらちょっとビックリです…
単純に名称が、あるいは表面的な技法が少し似ているからと言って、安易にそれらを同一視するというのは、一般の方ならともかく合氣道を稽古するものとしては見識が浅いと思います。ましてや後輩を指導する立場にあるような人間ならば、無責任に自分の思い込みや特定の誰かからの受け売りでものを言わず、広く歴史資料や数々の優れた文献に基づいて研究して得た知見をこそ他者に伝えていくべき責任があるのではないでしょうか?少なくとも、合氣道の師範・指導員で開祖の伝記や語録を一冊も読んだことがない、という方がいたら極めて恥ずべきことです。実はそういう方がかなり多いようですが…
もちろん、古武術も日本特有の歴史の中で生み出され、先人たちが苦難の中で継承してきた大切な存在です。いま自分の専門は合氣道ですが、古武術にも長年強い関心を抱いており、チャンスがあればしかるべき流派でちゃんと修業してみたい…という気持ちはずっと持ち続けています。
道場で一人こっそり木剣を太刀(概ね室町時代以前の長く反りが深い刀)に見立てて振り回してみたり、杖を薙刀や槍に見立てて合戦の様子を想像してみたりしていることは仲間たちには内緒です。。実際の合戦や人殺しはまっぴら御免ですが、合氣道の研究を深める上で、そのルーツである古武術を学ぶことはきっと大事なことだと思っています。
〈 日本古武道演武大会 〉
〈 薙刀道体験(中央の上下黒が吉見) 〉
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【おまけ】
今年はあまり桜が見られませんでした…。いつか道場の仲間たちとお花見したいです。。
あ、この桜の下でウナギ見つけました。横浜市内のけっこう繁華街のそばです。。
合氣道真生会川崎高津道場 吉見新